宮城県の水道民営化問題

命の水を守るため、水道の情報公開を求めていきましょう!

「『みやぎ型管理運営方式』を知り、ともに考える出前講座」は、宮城県がまさかのドタキャン!!(1) 水道事業への住民参加のゆくえは?!

2020年11月15日、仙台弁護士会館4階で開催される予定だった命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ主催の「『みやぎ型管理運営方式』を知り、ともに考える出前講座」は、直前になって、宮城県から「実施できない」という連絡があり、急遽、命の水を守る市民ネットワーク・みやぎが提出した第二次公開質問状とそれに対する宮城県の回答についての解説学習集会に変更となりました。

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多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

本日は「『みやぎ型管理運営方式』を知り、ともに考える出前講座」を開催するということで、みなさんにご案内を差し上げておりました。その出前講座があるということでお越しくださった方も多いと思うんですが、申し訳ありません。

おととい金曜日に、県企業局のほうから、「出前講座は実施できない」「講師の職員を派遣しない」という連絡が来て、昨日そのことが確定しまして、申し訳ありませんが、今日は出前講座という形では開催できなくなりました。

昨日、メールやFacebookで出来る限りの発信はしたのですが、きょう出前講座があるものだということでこの場にお越しいただいた方もいらっしゃると思います。本当に申し訳ありません(と頭を下げる)。主催者としてお詫び申し上げたいと思います。

なので、(今日は)内容を切り換えまして、私たちが県に提出した第二次公開質問状の回答が、これも数日前なんですが、県から届きましたので、その解説を中心に、当ネットワークの事務局のメンバーから、この間の経過や今のみやぎ型管理運営方式、水道民営化をめぐる諸問題について、みなさんにご報告する学習集会ということにさせていただきたいと思います。どうかご理解をお願いいたします。

まず最初に、当ネットワーク共同代表の佐久間さんから、この間の経過説明を含めまして、開会の挨拶をさせていただきます。

 

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佐久間さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

みなさま、こんにちは。

ご紹介いただきました水ネット共同代表の佐久間敬子でございます。今日はお天気が良くて、たぶん紅葉の見頃なんですよね。こんな貴重な日曜日にわざわざお越しいただきまして、大変ありがとうございました。

いま司会の多々良さんからご報告いたしましたけれども、出前講座が出前講座でなくなってしまいまして、私たち自前の講座というふうに切り換えさせていただきました。 ご存じなくこの会場にお越しになった方がいらっしゃると思いますが、本当に大変申し訳なく、深くお詫び申し上げます。ただ、それに代わるわれわれの講座で、みなさまが「今日も来てよかったな」と思っていただければ、大変うれしく思います。

今回の出前講座が実現できなかった経過を、簡単にご報告いたします。

今年の2月に、古川と白石で県が説明会をいたしました。県民のみなさんにできるだけみやぎ型を説明をするということでしたが、その後コロナの問題があり、なかなかこういう説明会が実施できない、また、県のほうで出前講座をやるのもままならないという状況だったと思います。

そんな中で、そろそろコロナも収まりつつあるかなということかもしれませんが、9月9日に久しぶりに説明会をしてくれました。100名の定員で、私たちも参加して、そこで県の説明と参加者からの質問を受けて、みやぎ型についていろいろ議論の場になったんですね。

県は「出前講座は引き続きやりますよ」ということを強調していましたので、私たちは是非やってもらおうと今日の日を設定しておりました。

この日は、本当は違う企画を考えていました。みなさんに、ブルーのご挨拶という文書をお配りしています。

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この問題の先進的な取り組みをしている浜松の水ネットの方々や、そのほかの方々とZoomでつないで、水道のコンセッションについて、全国の活動、知識、成果を共有する集会にできないかということで、この会場を取っていました。

しかしやはり、県民のみなさんは、ほとんど(みやぎ型のことを)ご存知ない。コロナでホントに苦しい生活を送ってきていて、労働環境も変わっている。

県が9月9日に説明会をやってくださったので、「では私たちも出前講座にしましょう」ということで、今日の集会の内容を出前講座に切り換えて、県の担当者の方といろいろやり取りしてまいりました。

そうする中で、金曜日だったんですが、私たちの出前講座の企画内容が、県の出前講座の仕様に合わないということで、実施しないという連絡がまいりました。私たちは大変ビックリして、「どこが県の出前講座の実施要項に合わないんだろうか? 」と、いろいろ考えましたが、腑に落ちないことがいっぱいありました。県の言い分も、担当者とちょっとやり取りしましたが、責任者は不在で、直接お話を伺うことはできませんでした。

私たちとしては、明日以降、私たち共同代表と誰かと(県に)行って、この経過について、県の言い分を十分聞いてきたいと思っています。そのうえで、こちらのほうで言うべきことがあればちゃんと言うという形で、今回の出前講座を実現できなかったことの結論をちゃんとつけたいと思っています。

これは後日、何らかの形でみなさまにご報告をしたい思っています。以上の次第で本日は大変申し訳なかったと思っておりますけれども、このあと私たちの講座をお聞きいただいて、私たちと共に学習の成果を深めていただければと思います。

これまで私たちが考えてきたことの要点をまとめてご覧いただき、私たちがやってきたことの主要な内容を簡単にご紹介して、私たちから見ると実に問題があるこの水道のコンセッションに対して、これから共に運動をしていく、あるいは、ご支援をお願いするということで、このブルーの紙をご用意させていただきました。

ご覧いただいて何かありましたら、ご意見をお願いいたします。カンパのお願いもしておりますので、もしお気持ちがありましたら、是非ご協力いただきたいと思います。

今日は、みなさんの貴重なお時間を全く違った内容に切り換えさせていただいき、本当にご迷惑をおかけしてしまいましたが、以上の事情がございますので、どうぞ自前講座のほうをよろしくお願いいたします。

 

道コンセッションと住民参加

   中嶋信 共同代表(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

 

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こんにちは、中嶋です。

公共サービスは、どういうふうに構成するのかということを、おさらいしておきたいというのが私のお話です。

公共サービスというと、なんとなく「お上」がやってくれるものと考える人が多いかと思いますが、そうではなくて、共に働くという意味の「協働」が必要なんだということについて、概略を確認したいと思います。

「公共サービスをどういうふうに良くしていくのか?」という議論がこれから必要ですが、その際に、やはり関係の業者さんに頑張ってほしいし、もちろん行政にも頑張ってもらう。だけど一番大事なのは、実際に結果を受け取る住民の意見をきちっと反映することだという話をします。

ちょっとわかりずらいので、簡単な図を描きました。

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          中嶋信氏プレゼンスクリーンより

地域の経済というと、「民間企業が頑張ってる」とか、あるいは「行政がしっかりやってる」と言うけれども、経済的な規模では、意外と家庭経済というのが大きいんです。ホントに人数多いですから。ここが経済活動を活発にすると、企業がうまくいくし行政も安定するという関係になっているんです。ここのところの協力関係をどう作っていくか? ということで要になっているのは、(真ん中の)PSと書いてある部分の公共領域です。

たとえば教育。教育は公共サービスの重要なテーマで、教育委員会がやってます。業者さんも教育資材を提供したりしていますが、実は、PTAを通じて(家庭が)協力しているんですね。登下校の見守りなんかを、家族がやっています。運動会にも行くし、全体として支えて成り立ってる。「公共サービスはみんなでやるものだ」と考えることが、大事だと思うんです。

他にも、たとえば保健衛生なんかがそうですね。「保健所がやるんだろ。コロナなんか全部保健所がやればいいんだ」と考える人は少ないと思うんです。みなさんマスクしてらっしゃる。住民も保健衛生に関わってるわけです。

そのようなことで、全体として「公共の領域というのはみんなで支えるという関係が大事なんですよ」ということです。ここまでは極めて当たり前のことなんですが、特に今これが重要だということについて、詳しく知りたい方はこの本を読みなさいということなんですけど、パスしましょう。

 

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          中嶋信氏プレゼンスクリーンより

公共サービス基本法というのがございます。 この中では、そういう趣旨から「ちゃんと住民の参加を求めましょう」ということが書いてあります。

基本的な法規としては、憲法25条の健康で文化的な生活を営む権利ですが、この第2項に公衆衛生のことが入ってます。

それを受けて、公衆衛生の制度整備をしなくちゃいけないからということで、1957年に水道法が制定されています。「公衆衛生の向上と生活環境の改善に寄与」と目的が書いてあり、そのために行政が頑張るけれども、それだけではなく、関係の業者も住民も、協力しましょうということですね。

この水道法は2018年に改訂されました。大きな違いは、コンセッション方式の導入

コンセッション方式というのは、民間企業に委託するので、民営化なんて訳しますが、民間企業に丸投げではありません。言うまでもないことですが、事業の実施責任は行政にあります。「公営で、実際の運営について民間の協力を得る」という仕方になっています。

なぜこんなことが必要になったか? 水道事業がいろいろと問題を抱えているからです。たとえば、1980年代から90年代にかけてたくさんダムを作ったんです。これから人口がどんどん増えるから、水需要が多くなる。だから備えをしっかりしようと、どう考えても乱開発に近いようなことをやってしまった。

管路がすごく長くなった。管路(の寿命)は基本的には40年です。そのあと直さなきゃいけない。今その直す時期にあたってるんですが、その費用をどうやって出すかという問題が起こるわけです。

住民人口が減ってますから、水の需要が減って、水道料金で稼いで埋めるということは難しくなる。ここで新しい方式を考えなくちゃいけないということで、その一つの手法として、コンセッション方式という「行政が責任を持つけど、実際の運営は民間企業に託する形」が考えられています。

公共サービス基本法は2009年にできていますが、公共サービスをどうやるかという十分な議論はできていなかった。たとえば今回は、出前講座はいらっしゃらなくなりました。ここら辺についても、もう少しもっと前から仲良くしてればよかったなあと思うんですけれども、なかなかお互い慣れていないので、協働がうまくいかないところがあるんですね。

だけど、公共サービス基本法には、国と地方自治体の責務を明記しています。しかし、これにとどまらないんですね。基本理念として、「国民の意見の反映」と書いてあるんです。国民の意見を反映した事業にしなくてはいけない。 これは公共サービスの基本的な使命と書いてあるんです。この点について、関係する者たちが、一緒に仕事しなきゃいけないということになってるわけです。

 

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          中嶋信氏プレゼンスクリーンより

水循環系が安定しているということが、水道事業の原点です。いい水が、ふんだんに来る。しかも安く入る。そのためには、流域全体の自然環境とか、水の利用の仕組みが、うまくできてなきゃいけないわけですが、この水循環系が混乱状態になってるんです。

たくさん申し上げたいけど、3つだけ言います。1つは、山村社会が解体してます。水源地が崩れてる。山があって、そこに林が生えていて、そこで水を貯えるんですけど、山を守る人がいなくなった。だから山が荒廃して、水源涵養機能が衰えてるんです。

どうするか? 水源を守るっていうのは大事な問題ですよ。いまは人がいなくなってるわけですから、広域的にそれを支える仕組みを作っていかなきゃいけないと思います。

それから、実は宮城県の水道事業というのは、水を半分ぐらい余してるんです。あとで人口が増える、あとで工業がどんどん盛んになる、水需要が増える、と見込んだんだけど、その結果、過剰な水源開発をした。それを維持するのにすごく費用がかかるんです。これをどうするんですか? という問題がいま問われている。

水道代を払う人口はどんどん減っている。じゃあどうやって節約するのか? あるいは、どうやって水をうまく使うのか? を考えなきゃいけない。遠くから運んでくるんじゃなくて、もっと近いところで水源を確保するという方法もある。

ちなみに、仙台市内にたくさん企業がありますが、自己水源を持っている企業が多いです。自分で地下水を掘って使うほうが水道代が安いんです。その結果、過去の水源開発は無駄になってしまう。ここら辺の使い方をどうするんですか? という議論は、絶対必要だと思うんです。

いろんな乱開発で環境負荷が増大しているので、最初に問題とした良好な水循環系という水道事業の前提になっているものが、本当にもろくなっている。利用者としても考えなきゃいけない。

ですから、流域の住民が全体で参加して、水循環を再構築する、デザインし直すということが、いま求められていると思います。さしあたり水道事業をコンセッション方式に切り換えていくということで、そこに議論が集中しがちですけど、本質的に問われているのは、この地域の水循環をどう再構築していくか? それに対して、行政、民間企業、それから私たち 住民が、どのような協働を作るのか? ということで、これこそが肝心だと思います。

 

miyagi-suidou.hatenablog.com

今回のお話のテーマについて、より詳しくわかりやすく中嶋信先生が解説した講座を、上の記事で文字起こししています。是非こちらもお読みください。

 

11月15日のレポートは、 近日アップ予定の次の記事に続きます。ご期待ください!!

「『みやぎ型管理運営方式』を知り、ともに考える出前講座」は、宮城県がまさかのドタキャン!! (2) これで民主主義って言えるのか?!