今回の記事内容
みやぎ県政だより(令和4年7・8月号)に掲載されたみやぎ型の解説記事
みやぎ県政だより(令和4年7・8月号)に掲載されたみやぎ型の解説記事
さらっと特に問題はないかのような書きぶりですが、世界的な水道民営化の専門家であり、この7月に杉並区長に就任した岸本聡子さんの『水道、再び公営化! 欧州・水の闘いから日本が学ぶこと』の一部を再編集した PRESIDENT Online の記事を読みながら、みやぎ型管理運営方式について再考してみましょう。
【新杉並区長★岸本さとこ
— 集英社新書編集部 (@Shueishashinsho) 2022年7月11日
『水道、再び公営化!
欧州・水野闘いから日本が学ぶこと』】
新杉並区長・岸本さんの就任記者会見が始まりました。自転車での初登庁に象徴されるように、政治に新しい風が!https://t.co/G4jB2yz3hk
岸本さんの本も、あわせて、新しい帯にかえて重版です! pic.twitter.com/zfkICPou6r
「コンセッション方式」とは何なのか
みやぎ型管理運営方式は水道コンセッションです。
県主催の令和3年度「みやぎ型管理運営方式」に関する事業説明会で配付された資料には、これについて下記のように説明されています。
ここでは
<様々な「官民連携手法」の中でも、民間活力を最も活用して大きなコスト削減が期待できる手法がコンセッション方式です。>
とあり、続けて、
<事業そのものを完全に売り渡す「民営化」ではありません。>
と強調しています。
ところが、コンセッションで民間企業に売却される水道事業の「運営権」は、別の企業にも売り渡せる財産権であり、金融機関から融資を受ける担保にもできるため、コンセッションは、従来の業務委託や外部発注とはまったく異なる 民営化その ものだ、と岸本聡子さんは断言します。
ここで誤解しがちなのは、「運営権」ということばだ。この「運営権」は単なる契約上の地位ではない。法によって設定された物権(財産権)を指す。
そのため、企業は「運営権」を別の企業に売りわたすことができるのだ。また、担保権としても機能するため、この「運営権」を担保として金融機関に差し出せば、融資を受けることもできる。
この一点からも、コンセッション方式が地方自治法にある「指定管理者制度」を活用した業務委託やアウトソーシング(外部発注)とはまったく次元の異なるものであることがわかるだろう。コンセッション方式では企業の判断によって、他者に「運営権」を売り払うこともできるのだ。
ある会社を信頼して水道事業を委ねていたのに、気づけばどこの誰かもわからない別会社が「運営権」を手中にすることもあり得る。これでは安定した水の供給は危うい。
ところが、水道法改正の審議で、安倍政権は繰り返しこう答弁してきた。
「改正水道法がめざすのはコンセッション方式であって、民営化ではない」
コンセッション方式では水道施設の所有権は自治体に残る。したがって、世論が懸念する民営化などではないと、政府は言い繕いたいのだろう。だが、コンセッション方式とは「運営権」の取り扱いだけをみても、その内実はずばり、民営化そのものなのだ。
(「最重要インフラ「水道」の民営化は本当に必要なのか…杉並区の初の女性区長が研究者として訴えていたこと」 PRESIDENT Online より)
水道ビジネスほどおいしい事業はない
契約期間が数十年と長期にわたるだけに、水サービス企業が「運営権」を取得する際に自治体に支払う対価は巨額となる。しかし、その代金を水サービス企業が自社の資金から支払うわけではない。多くの場合、「運営権」を担保にして市場や金融機関から必要な資金を調達して、自治体への支払いとする。その債務の利息は当然、自治体や公的機関が低利の公的資金を借り入れた場合より高くつく。
加えて民間企業の場合、当然のことながら、社員の給与以外にも役員への報酬、株主への配当、さらには複雑なコンセッション契約を処理するための高額な法務費用などもコストとして発生する。親会社がある場合はその分の利潤も確保しないといけない。
こうした運営コストは公営の水道事業では不要なものだが、民営化すれば、多くの場合、住民の支払う水道料金に反映されてしまうのだ。
その一方で、水道事業は自然独占(消費者が水道管を選ぶことはできないために自然と地域一社独占になること)なので、水サービス企業は一度運営権を手中にすれば、その後は誰とも競争することなく、安定した利益を貪り続けることができる。グローバル資本にとって、水道事業ほどおいしいビジネスはない。そのため、今後も世界中で多くの人々が水メジャーによる水道サービス民営化の脅威にさらされることになるだろう。
(「最重要インフラ「水道」の民営化は本当に必要なのか…杉並区の初の女性区長が研究者として訴えていたこと」 PRESIDENT Online より)
みやぎ型の運営権対価は10億円
みやぎ型管理運営方式では、宮城県の上工下水道9事業の運営権をまとめて10億円で、株式会社みずむすびマネジメントみやぎに売却しました。↓
宮城県上工下水一体官民連携運営事業(みやぎ型管理運営方式)公共施設等運営権実施契約書より
宮城県上工下水一体官民連携運営事業(みやぎ型管理運営方式)公共施設等運営権実施契約書より
宮城県上工下水一体官民連携運営事業(みやぎ型管理運営方式)公共施設等運営権実施契約書65ページより
株式会社みずむすびマネジメントみやぎのHPで公表されている全体事業計画書では、10ページに運営権対価に関する記述があります。↓
「なお、運営権対価は20年間で減価償却し、その減価償却費は県から当社が受け取る水道料金等を原資とする費用で手当をすることになります。」(株式会社みずむすびマネジメントみやぎ 全体事業計画書20220315公開.pdf 10ページより)とも述べられています。
みやぎ型における資金調達
みやぎ型における資金調達に関しては、
「十分な資金力を有する構成員からの厚い出資金、株主から劣後融資に加えて、三井住友信託銀行をメインアレンジャーとし、地元の七十七銀行、仙台銀行を含む融資団から長期プロジェクトファイナンスで資金調達を行うことで、追加調達リスクの排除、金融機関による外部監視機能を有効に働かせるとともに、地域経済活性化にも寄与します。」(株式会社みずむすびマネジメント みやぎ全体事業計画書20220315公開.pdf 10ページより)
とあります。
そして、「プロジェクトファイナンス」とは、
「本事業からの収入の確からしさを根拠として借入を行う」(株式会社みずむすびマネジメントみやぎ 全体事業計画書20220315公開.pdf 11ページより)もので、
「そのため、当社の事業運営においては県および経営審査委員会からのチェックだけでなく、銀行からも厳しい監視の目が注がれることになります。
例えば、融資契約を締結した際に計画していなかった事項への支出の禁止や、その変更には銀行への客観的な説明と承認が必要なこと、株主が保有する運営権者の株式、主要な契約等には担保権が設定される等の措置等が一般的には取り決められています。さらに、銀行と発注者は直接協定を結んで、財務的な不測の事態が発生した場合の事業継続や資産等の取り扱いを定めます。」(株式会社みずむすびマネジメントみやぎ 全体事業計画書20220315公開.pdf 11ページより)
と解説されていますが、みやぎ型におけるプロジェクトファイナンスの詳細は、県民には公開されていません。
2021年11月19日の建設企業委員会でも、次のような質疑応答が行われています。
2018年4月に事業を開始した浜松市の下水道コンセッションでは、運営会社の浜松ウォーターシンフォニーが多額の株主配当を行っています。
浜松市への情報公開請求で、浜松ウォーターシンフォニーの2019年度の利益に基づく2020年の株主配当と、2020年度の利益に基づく2021年の株主配当の金額がわかりました。役員報酬はわかりませんでした。
— 浜松市の水道民営化を考える市民ネットワーク (@suidou2018) 2021年12月17日
法人税、株主配当、役員報酬は公営事業のままだったら、発生しないものです。#止めよう水道民営化 pic.twitter.com/IX6SYEw52Q
浜松ウォーターシンフォニーの株主は以下の6社です。
ヴェオリア・ジャパン株式会社
ヴェオリア・ジェネッツ株式会社
JFEエンジニアリング株式会社
オリックス株式会社
須山建設株式会社
東急建設株式会社
役員報酬額は公開されていないそうですが、公営事業のままであったなら発生しなかった法人税や株主配当、役員報酬は、本来は管路の更新などの設備投資に回されるべきものなのではないでしょうか。
「みずむすびマネジメントみやぎ」の株主構成
みやぎ型管理運営方式の運営会社である「みずむすびマネジメントみやぎ」の株主は、以下の10社です。
メタウォーター株式会社
ヴェオリア・ジェネッツ株式会社
オリックス株式会社
株式会社日立製作所
株式会社日水コン
株式会社橋本店
株式会社復建技術コンサルタント
産電工業株式会社
東急建設株式会社
メタウォーターサービス株式会社
宮城県上工下水一体官民連携運営事業(みやぎ型管理運営方式)基本協定書 より
宮城県上工下水一体官民連携運営事業(みやぎ型管理運営方式)基本協定書 より
みやぎ型管理運営方式においても、「みずむすびマネジメントみやぎ」の株主配当を 注視していく必要があります。