宮城県の水道民営化問題

命の水を守るため、水道の情報公開を求めていきましょう!

宮城県の水道民営化問題を考える市民連続講座 ここがヘンだよ! 「みやぎ型」        前編 公共サービスの課題と「みやぎ型」の欠陥

2020年8月29日、東京エレクトロンホール宮城401中会議室にて、「宮城県の『水道民営化』問題を考える市民連続講座 第2回 ここがヘンだよ!『みやぎ型』  宮城県上工下水一体官民連携運営事業(みやぎ型管理運営方式)って何?」が、命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ主催で行われました。

f:id:MRP01:20200829173624p:plain

 

開会の挨拶 命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ 佐久間敬子共同代表

 

佐久間敬子

みなさま、こんにちは。ホントに大勢の方がご参加くださって、大変ありがとうございます。 雨とカミナリが鳴ったんですね。酷暑の夏でございますけれど、大勢ご参加いただきありがとうございました。

昨日の(安倍首相の)辞任の発表、そして9月の総裁選、それから年内解散がありえるかなという情報が流れております。私たちのこの水に対する運動も、安倍政権の一つの目玉政策、これを押し戻していくという意義があると思っておりますので、今後も、 みなさまと一緒にこれをなんとか阻止するよう頑張ってまいりたいと思います。

7月4日に東北工業大学の江成先生から下水道の講座をお聞きいたしました。改めて公衆衛生、下水道というものを見直すような大変有意義な学習会でございましたし、参加者のご質問が非常にハイレベルで、主催者は非常にインスパイアされたということで、 閉会の挨拶で中嶋共同代表が「連続講座をやる」と言ってしまいましたので、やりましょうということになった経過もございました。

今日のテーマは二つ設定しております。 一つは、このみやぎ型というものについて、非常に重要な公共サービスの観点が削られているのではないか、と。 これが一つです。

それから、前回の講座でご紹介しましたけれども、私たちが県に公開質問状を出し、 回答がありました。この回答に対して見解を発表しておりまして、そのことを小川さんから詳しくご説明がありますけれども、その中で非常に大きな成果が上がったもの、と。この二つを中心に今日は学習会をしたいと思っております。

公共サービスということについて、なんか私たち民営化とかですね、新自由主義というような価値観・思想にすっかり頭が洗脳されちゃってて、公共サービスって何だろうかということを、ちょっと忘れかけていたと思いますね

私たちの公開質問状では前文で、この水道事業というのは公共サービスの最たるものだということを言っております。しかも、このコロナの時代、コロナ後の時代を見据えた場合に、この公共サービスの運営権を民間にほとんどお任せしちゃう、これは果たして時代にあった方策なのだろうか? と、ある意味深い問いを発しました。(これに対して)県からは何の回答もございませんでした。

ここで、この公共サービスの意味というものを考えたいというのが一つです。これは、別に日本のことだけじゃないんですね。国連では、「水・公衆衛生は人権だ」という 価値観が、2000年頃から次第に定着して、2010年にはそういう国連総会の決議も出て おります。

水と公衆衛生が人権だという場合に、大きな問題に関わるのは、運営を誰がするのかということで、今回のテーマになります。そのあたりを勉強してまいりたいと思います。

それから、みやぎ型の問題点ということで、公開質問状に対して県が回答した中で、 コンセッション、みやぎ型の謳い文句である事業費の削減、これをですね、全くまあ 期待値、希望的な願望というのですかね、これに過ぎなかったということが、公の文書で明らかになった。これが大きな収穫であったと思います。その期待値というものが、何の根拠もない、何のデータによる裏付けもないということが明らかになったわけです。

ですからみなさん、この期待値に過ぎないというのを私たちがうまく使って、この事業は決してバラ色ではないんだということを、みなさんと共に訴えてまいりたいと思います。

今日お配りしましたチラシに、9月9日に県が説明会をするということになっておりまして、(定員)100名ですので、これから間に合いますから、みなさんも申込みをしてください。私たちの運動があって「説明会をネグレクトできないな」という状況になっていると思います。 

 

みやぎ型説明会

 

みやぎ型説明会

www.pref.miyagi.jp

 

それから、私たちの運動、ほかでも、これに呼応する運動が展開されておりまして、 9月13日は浜松で全国のつどいがあります。

命の水を守る全国のつどいin浜松2020

 



save-public-water2020.mystrikingly.com

 

これには、小川さんがZoomになるかもしれませんが参加する予定になっております。また、伊達・水の会の方々が、フランスにいらっしゃる広岡さんというコンセッションの専門家の方の学習会を企画しているということです。浜松と同じ日で両方というのは無理なんですけれども。

 

みやぎ型、フランスから何を学ぶ

 

是非こういう運動とも呼応して、何とかこの民営化、コンセッションを阻止してまいりたいと思います。今日は本当にありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。 

 

公共サービスの課題と「みやぎ型」の欠陥                命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ 中嶋信共同代表

 

中嶋信

わたくし 8年前に徳島大学を退職しまして、それで宮城県にまいりました。何でかというのはいろいろあるんですけれども、やっぱり震災復興を手伝わなきゃいけないなという気分がありました。それでお手伝いをしていて、今も実は、震災復興県民センターの事務局長が小川さんなんですけども、そのもとで働いているのかな?(笑)ということなんですね。

「この国のシステムがおかしい」というのが、わたくしの考え方です。社会システム、物理的な加える力があるんですね。それを抑える力がないという問題で、それは今回のコロナの場合でもはっきり見えてきていると思うんですね。ですから、我々が今のこの組織を作り変えていかなきゃいけないと考えているわけです。それも勉強の一つというふうに考えてください。

公共サービスは一体どんなものであるかということについては、よくわからないところがありますよね。たとえば、福祉とか教育とか交通なんかがよく知られておりますけど、いずれも住民生活に密着した存在でありまして、その動向はこれからの地域の暮らしのあり方を規定します。これは誰が担当するのかということが一番大事です。

「公共だから、公がやるんだろう」と考えた人がいますけれども、これは大間違いです。「公共」と「公」は違います。「公」というのは、 お上です。「公共」というのは、みんなです。

そこのところの区分けが大事だということを主にお話していきたいなと思うんですが、お話の順番は、水道事業の法的な枠組み、それから、いま変わりつつあるんですけども、それの新自由主義的な考え方の整理、そしてその上で、じゃあ私たちはどんな水道事業を展望するのか、というような順番でお話をしたいと思います。

 

www.jichiken.jp

 

 

水道の法的な枠組み
           中嶋信氏講演スクリーンより

(公共サービスは)地方公共団体が運営を担当する例が多いわけですけど、基本的には、国の全体の仕組みなんですね。憲法に基づいておりまして、憲法の第25条、健康で文化的な生活を営む権利を保障するためにいろいろあって、その一環として公衆衛生の改善が必要ですよってことでそのような仕組みができてるわけです。その一環として 水道法が制定された。これが1957年のことなんですね。

公共サービスの課題と「みやぎ型」の欠陥

              中嶋信氏講演レジュメ

 

水道法第一条の2行目のところに目的があります。水道法って何の目的ですか?「もつて公衆衛生の向上と生活環境の改善とに寄与することを目的とする。」 このためにやるんですよってことが、まず基本です。

水道事業っていうのは、なんかお上から水をもらってるんだというふうに考えてる人がいるんですけど、それはちょっと思い違いです。みんなの事業であって、その目的は、住民の安全安心なんだっていうことです。

そのような仕組みに充実させていかなくちゃいけないということで、ごちゃごちゃ書いてあるのが第二条ですが、書いてあるのは誰が担当するかということだけです。書いてある順番に、国、それから都道府県、それから市町村、そして4が水道事業等です。

この4が今回新しく加わって、法律の中に明確に入ったことなんですね。水道事業等、これは民間業者のことです。これがどんなことをするのかということについて規定しております。

ですから、水道事業というのは、お上がやるんじゃないんです。国がやる、県がやる、それから市町村がやるよってことですけども、それらを動かしているのは主権者である住民ですから、住民が一緒になってやるんです。それのお手伝いとして民間企業が入りますよっていうのが、新しい法律の趣旨なんですね。 

水道事業というのは確かにいろんなことをやるんですけれども、目的は公衆衛生の向上であり、生活環境の改善ということで、そのためにどういう努力をしなきゃいけないのかなんですが、水道事業の前提になっている水循環についてわからないと展望が出ませんので、それをちょっと確認しておきたいと思います。

 

中嶋信

このクマの写真すごいでしょ。星野道夫さんって冒険家がアラスカで撮った写真ですよね。鮭が「最悪!」とか叫んでるんです(笑)。 こういう状態になってると、私たちは水が使えるんですけども、こういう大きな川になる前の段階から想像しなきゃいけないですね。

どういう辺りからかというと、たとえば、これはドイツの黒い森ですね。シュバルツバルト。ドイツトウヒという黒っぽい樹があって、これが中心になっているので黒い森と言われていますけれども、ドイツの南西部にあるヨーロッパの水源地帯です。ここに どんどん雨が降って溜まるんですね。溜まるということが大事。

で、溜まったのがこんな形で噴き出してきます。後で話す小川さんが、「ボクんちの 近く」なんて騒いでますけど、北海道の羊蹄山という有名な湧水です。大きなところに雨がどんどん降って、それが噴き出してきて、川になって流れてくるというのが普通 なんですが、たまにこういう絵があります。

これは去年の5月に撮った写真でスイスの標高3000mくらいの地点なんですが、氷河の縦線わかりますか? 雪がどんどん降ってきて、これが積もるんですね。押さえられて押さえられて固く凍っちゃうんです。で、重いから降りてくるんです。それでだんだん下がって温度が上がってくると水になります。スイスの場合には氷河から直接水が出てくるんです。

いずれにしても、大きな水の循環があって、その恩恵に私たちが関係してるってことが大事なわけです。 

 

            中嶋信氏講演スクリーンより

私たちが使っている水道というのは、だいたい都市地域の利用の一つの形態です。都市地域だと工業用水とかも使うのでいろいろな方法があるんですけど、「水道というのはほんのわずかですよ」と考えてください。

たとえば、シュバルツバルトのようなところに落ちてきた雨が溜まって、川になって 流れてきて、農村で使われて、あるいは途中で都市に行って流れてという大きな循環がある。こういう大きな循環があってその一部として水道があるという捉え方が必要です。

というのは、たとえばこの辺に悪い業者さんがいて、有機水銀なんか流しちゃったら、使えなくなるわけでしょ。農業地域でホルモン剤を大量に使った場合には、その後の 水道の質の問題が起こりますよね。

ですから、こういう流域の大きな循環を上手く機能させて、その一部として水道事業を展開していくという大きな見方が必要だろうとわたくしは思います。私たちの水道の蛇口の奥に何があるのかということを想像する力が必要なんです。

私たちが安心してきれいな水を飲めるためには、上流でどうなっているかということを考えてほしいわけです。山に木が生えていて、土がきちんと固まっていて、そこに水が蓄えられて、地下水になって、それが噴出してきて川になるわけですね。

この図は、1990年代に私がもらった図なんです。誰からもらったかというと、当時は 建設省と言ってましたが国土交通省、公共事業の地元の事務所です。建設省の地方出先と考えていいんですけど、そこの所長からもらいました。

わたくしは当時ダム・ファイターをやっておりまして、ダム・ファイターというのは アメリカ流の表現ですけれども、ダムを作らせない運動する団体ですね。それに関わっておりまして、建設省の人っていうのはボクはあんまり信用してなかったんですね。 公共事業をどんどんやって、無駄な事業をやって、「ダムは無駄」というスローガンが当時あったんですけど、そんなことばっかりやってると思ってたんだけど、実は建設省の出先の方も、最先端を担ってる方も、結構心配してたんです。「これはまずいぞ」と考えてたんです。

ダムをドーンと作るとですね、水の流れが変わるわけです。それでいいのかって問題があります。やはりきちんと勉強した人なので、ただ公共事業やって景気を刺激すれば いいんだと考えてたわけではなかったようです。

そういう人の中でボクがすごいなと思ったのは、近畿の公共事業を全部担っていた淀川水系工事事務所所長の宮本博司さんです。近畿の公共事業の胴元です。この人の所に行って話を聞きました。

「ボクはダムを造るのは反対なんだけど、どうですか?」と言ったら、「ボクらも駄目だと思ってます」と言ってました。実際、宮本博司さんは5つのダム事業を止めました。そういう人たちもいたんです。大きな観点で水の循環をとらえたら、勝手に壊したらいけないってことがわかってたんですね。ただ、上からは景気刺激策のために公共事業が必要なんだからということで、一生懸命それを担っていたということのようです。

(水道は)都市の地域を中心としてほんの一部だけで行われている事業なんです。もっと大きな水系の中のほんの一部分だという捉え方をしてほしいですね。 

 

山村の変容

たとえば、いま山村がどうなってるかです。シュバルツバルトのような水源地が日本のそこら中にあるわけです。たとえば鬼首。スキー場があって立派な水源地があるんですけども、今どうなってるかと言うと、森が崩れてるんです。

杉っていうのは比較的成長が早いのね。だいたい50年ぐらいで材になります。(苗を)植えるときは一間巾です。狭いから大きくなったら枝が交差しちゃう。だから必ず見てて、間伐をするんです。たくさん植えて間引きをするわけです。それで立派な樹を残していくんです。50年経ったらそれが売れて儲かるよっていう仕組みなんです。

さて、そこで問題ですが、間伐してません。値段が安いからやる気がないんです。それと、間伐するというのは、いつも地域にいて見てなきゃダメなんです。突然行って「やるぞ」というわけにはいかない。過疎で住めなくなって、都市に移住しちゃった場合には、間伐はできないです。だから放置林になっています。

今度、放置林を見に行ってください。かなり悲惨です。ふつう、林に入ると虫が多くてイヤだという人が多いですけど、虫はほとんどいません。土がないからです。土がないから草も生えません。だから虫もいない。嫌いな蛇もいません。食うものがないから。

どうしてそうなったかというと、線香林と言って、線香のように細い樹が生えていて、そこに雨が降ると草が生えていないから土が流されちゃうんです。瓦礫だらけです。 最近、洪水が起きて、倒木がどっと流れてきて堰を壊したとか、住宅に被害を与えたという例が結構多いですね。それはそのためです。線香林のような全く頼りにならない樹が根こそぎ落ちてくるんです。

それは何のせいかというと、人が住めなくなったから。日本の水源地帯というのは、 実はそういう所にあるんだということを覚えてほしいんですね。水源涵養林が衰退しておりまして、水の循環系全体が壊れている。ということは、ぜひ林業も重要産業である宮城県では考えてほしいと思うんですね。そのようなきわどい状況にあるんだということをまず覚えておいてほしいわけです。平凡な生活を保障するためには、水の循環系全体が改善される必要があるんです。ところが、そこが、特に山岳地帯、森林をたくさん抱える地域で崩れてるって問題をぜひ考えてほしいんです。 

 

さてそこで、2番目の話をいたしましょう。 

水道事業は実は巨大な水循環の一部分であって、その問題を解決するには大きな循環をとらえておく必要があるよということまできました。そこのところで、水道事業がいま民営化しつつあることはおわかりのとおりです。これはアベノミクス、もはや死語になりましたけれども、サッチャーレーガンですから今から15年ぐらい前かな、その頃から出てきている新自由主義の考え方です。

いちおう経済学の先生やってましたから簡単なことは言えるんですけど、ケインズ流の財政政策が使えなくなりました。どうしてか? 使いすぎてお金がなくなったから。 財政的に破綻しました。だから出すのはどんどん手控えにして、お金がないのは民間に代わってもらいましょうというのが新自由主義です。従来のケインズ流の財政政策が失敗しちゃったので、それの後始末のために民間活力を導入というふうになったんだと考えています。

ですから、なるべくやりたいようにやらせる。そのためには規制緩和ですよということで、一生懸命取り組んだのがアベノミクスであったわけです。それの一つの表示として注目されているのが公共サービスなんです。公共サービスが、水道だけでなく教育とか福祉とか交通とかいろんなものがあるんですけれど、そこの部分を民間企業に任せてしまったらいいじゃないかという考え方に転換してくるわけです。

ですから、これまでの資本主義の欠陥が表面化したので、何とかしなくちゃいけないというので出てきた ”策略” と考えてよろしいかと思いますね。ただ、そういうふうに言っちゃあまずいですから、「財政政策、失敗してさあ」なんて言うとどうしょもないですから、一応ここで「新しい成長戦略だ」なんて言葉を使う。

で、公共サービス成長戦略というのを、実は2015年に日本政府は定めます。公共サービスを儲けの産業として展開する。そうすることによって日本経済を成長させるんだというよくわかんない理論です。竹中平蔵とかっていう人たちが一生懸命がんばったんですけども、そういうような人たちが進めた例なんですね。

で、どんなことをやったかなんですけども、まずは水道については、広域で整備するということと官民連携をさらに推進しようというので、先ほど一番最初に確認したような法律の改正を行ったわけです。いろんな人が出てまいります。たとえば世界的には、 ヴェオリア社、スエズ社。いずれも多国籍企業です。イギリスではテムズ・ウォーターというのがあって、これが世界の3大水メジャーです。こういった企業が、世界の国々が民営化に進んでいるので、この際儲け時だと入り込んでくるわけですね。このヴェオリア社は日本の政府の戦略チームの中にも職員を派遣しております。日本人の方です。 このことは福島みずほさんが国会で取り上げてましたけども。事業だけでなくて、事業を作る計画のところにまで入り込でるわけです。 

 

公共領域

           中嶋信氏講演スクリーンより

じゃあこの公共の部分についてどう考えたらいいのか、ちょっとおさらいだけしておきたいと思います。 「公」と「公共」は違います。「公」は地方公共団体などの「公」です。要するに政治組織、行政組織ですね。大きくは国、都道府県、それから市町村が「公」です。

地域の経済主体は、いろんなのがあって、たとえば民間企業があります。それから家庭経済もあります。家庭経済というのは「いやいやとてもお話しできるような水準じゃない」と考えるかもしれないけど、量が圧倒的に多いです。だから重要な経済主体です。

で、みんな原理が違うんですね。民間企業はどういう原理で動いてるかというと、言うまでもなく市場原理です。「儲からなかったらいけないよ」という活動です。地方公共団体は、これは地方自治法に定められていることですけど、住民の福祉のために頑張る組織です。だから市場原理ではありません。家庭経済はどういう原理で動いているか? あんまり考えたことないでしょ。何か困ってる人がいる(笑)。 家庭経済は、 ちょっと照れくさいんですけど、家族の幸福のために動いています。だからみんな運動原理が違うんです。

だけども共通する分野があります。保育であるとか学校教育であるとか、あるいは交通であるとか。そういう日常生活でみんなが必要なみんなのもの。みんなのものというのはコモンと言います。コモンズとも言いますけどね。社会的共通資本と宇沢弘文が言いますけども、そういうようなみんなが大事にするものがあるんです。共通部分のここが公共です。

大きくなったり小さくなったりするので、それぞれの団体が大きくなったりしてますけど、この重なる部分もどんどん大きくなったりするんです。たとえば保育。まずは自分の家で保育しますよね。その後どうするかっていうと、共同保育所に入れて、自分達のグループでやって、あるいは民間の保育所が出来てそこに預けて、それから公営の保育所に移すとかですね。公共の部分というのは、自分の家の近いところから行政に近いところまでいろんなところがあって、それぞれのところで公共の事業が展開されているんですね。

水道事業も、実はそういう組織であって、民間も協力するし、公共事業の中心の担い手は行政ですね。市町村です。地方公共団体が担当した部分を減らして、その部分を民間企業にお任せしましょうというのが民営化です。今その方向に進んでいるわけで、そうなるとどういう問題が起こるか? 

さっき言いましたように、それぞれ運動の原理が違う。住民福祉のための経済活動、 あるいは儲けのための経済活動、それから家族の幸福のための経済活動、それぞれ違うんですけども、中心となるものが変わると地域の公共のスタイル・性格が変わってきます。そこの議論をどうしたらいいのかということが次の問題になろうかと思うんですが、時間がないので先に進みますね。 

 

住民主権

水道事業はまさにここの公共部門で行われておりますけども、どんどん民間に移していくと市場原理に引っ張られて、家族の幸せとか住民の福祉から離れていく可能性があります。だから、ここのところをどうしようかという問題が起こりますけれど、これは最後のところで確認いたします。 

公共サービスの課題と「みやぎ型」の欠陥

              中嶋信氏講演レジュメ

レジュメのほうをちょっとご覧いただきましょうか。公共サービスというのは実は、先ほど佐久間先生もお話されましたけど、未熟な概念でありまして、まだ固まっていないところがあります。それについて一応、理念法だけはあるんです。2009年に公共サービス基本法というのが出されまして、そこで基本的な枠組みが作られています。基本的な枠組みが作られただけであって、それを具体的にどう実施するかという実施法はないんです。

どうしてそんなことなの?って心配ですけども、たまたま民主党が政権とった時がありましたね。ああこういう言い方失礼だったかな。その時に、「やはり公共サービスは重要である。そこのところをどうしましょうか?」というので基本法を作ったんです。 それが(レジュメに)示してあるものでして、これは、先ほどの水道事業もそうですけど、基本法があったらそれをどう実施するかという法律が次になきゃいけないんですけども、そこがやられておりません。だから理念しかないんです、残念なことに。未熟なのはそういうことで確認できますよね。

「じゃあ、公共サービスっていうのはどういうものなんですか?詳しく800字で答えなさい」とか、答えれないです。そういう状況なんですね。だけど、いちおう方向としてはわたくしはこれは大事なので、これを手がかりにして充実させていくのが私たちの仕事かなというふうに考えます。

たとえば、「多様化する国民の需要に的確に対応するかどうか」とかですね、「国民が自由に選択できるかどうか」とかですね、それから「サービスの中身についての勉強とか情報提供」、それから「進め方についての住民の意見の反映」、こういうのが必要なんだという考え方は、私は大事なポイントだと思うんです。

そのような事業をどう進めるかということについてはこれから考えていきたいと思うんですけども、そういうことをやりたいなと考えている人の考え方はその下に、「公務公共サービス労働組合評議会」の提案があるかと思うんですが、こういうものを軸にして決めていかなくてはいけないだろうと思うんです。

これの公共サービスを改良する現場からの提案の②を見てみましょうか。市民参加および近接決定の原則。どのような事業にするのということについては、利用の一番近い人が参加して決めましょうということです。ヨーロッパの場合には近接性の原理という言葉がよく使われるんですけども、住民生活に大事なことについては住民の意見を踏まえてやる。だから国が決めるんじゃない。地域の政府で意見をまとめて決める。これが近接性の原理です。そのような考え方で提案していくことが必要だろうと思うんですけども、民間企業に委ねちゃった場合にはそこから離れていくだろうということが容易に予想されるわけであります。水道法の第一条の趣旨は、言うまでもないことですけども、国民生活の安心なんです。そこから離れていく可能性があります。

二つのことをわたくしはお話したんです。一つは、水道事業とは大きな水循環系の中の一部分であるということと、もう一つはその事業の質についてどのように定めたらいいのかどう決めたらいいのかということですけれども、公共部門についての決定の仕方、「公共の議論を踏まえて決めるべきなんだけども、民営化したらそれはおかしくなるね」ということを言いたいわけです。

今日のお話は、みやぎ型の欠陥ということですけども、大きな欠陥はその二つです。 大きな水循環を無視している。それから、公共性を担保するための意思決定の仕方について無視している。これではいい事業を展望することはできませんから、私たちはここで止めなければいけない。 

 

SDGs

            中嶋信氏講演スクリーンより

そういうことについてちょっとはみ出しますけども、ちょっと許してね。3分ぐらいで終わるから。これは佐久間先生がお話されたいま国連が取り組んでいるSDGsですが、その中の6番目「安全な水とトイレを世界中に」という課題があるんですね。「2030年までにやりましょう」というのが目標。

コップとトイレをセットにした図なんで、ちょっとこれは気になるんですけど。無視しておきますが(笑)。「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」というのが目標です。で、それが図られたかどうかを毎年々々点検するんです。点検する時のチェックのポイントは何ですか?「水と衛生分野の管理向上に向け地域コミュニティの参加を支援」することによって内容を良くしますというのがSDGsの戦略なんですね。すべての人々に水と衛生を保障するんだというけれども、じゃあ具体的にどうやってやるんですか?という時に、ポイントになるのが地域コミュニティの参加。先ほどの言い方で言いますと、近接性の原理です。これをどう生かしていくのかということが大事なんだということになろうかと思います。 

 

加茂の大楠

もう時間すぎちゃったんでやめちゃいますけども、ちょっと雰囲気を変えますね。これ徳島県の西側にあるおっきな樹です。大楠です。加茂の大楠と言います。2007年に調査をして、この樹はだいたい樹齢1000年ぐらいだ。西日本で一番大きい樹です。高さは 27mぐらい、東西の幅が50mぐらい。ここに車があるのわかるでしょ。すごいでかいです。1本で大きな森ってぐらい。トトロが8匹ぐらい飼えるんじゃないか。今のうそだけど(笑)。

こういう樹があるのはどうしてなんでしょうか?って想像できますかね?すごいんです。(樹の)上もホントみずみずしいんです。こういう巨木を育む自然の力というのは実際どういうところにあるかというと、そのすぐ近くに吉野川が流れています。

 

吉野川

これは表流水です。表流水と地下水とは、伏流水とは、行ったり来たりしてるんです。すぐ近くにそういう大きな水源があって支えているので先ほどのような巨木が生かされているんだと考えたらいいと思いますね。

ボクらはこれから宮城県に対していろいろと注文をしないといけないんですけれども、そういう時にこういう大きな視点で議論したいなというふうに思います。

ちなみに、これ(カヌーに乗っている)私です。(会場から驚きの声)ダムファイターになったと言いましたけれども、なぜかというと、吉野川でカヌーで遊んでたんですね。そしたら、「川のお世話になってるんだからダム中止に協力しろ」と言われて、「ハイ」って、それからなんかその方向に進んでしまったんですね。失礼。余計なこと言いました。終わります。