宮城県の水道民営化問題

命の水を守るため、水道の情報公開を求めていきましょう!

9/14エフエムたいはくの「みんなで話そう!あしたの宮城 ― 地域主権という希望」(第11回)    みやぎ型では発注者と受注者がほぼ同一なので「合法的な利益相反関係」が形成される懸念がある!

2023年9月14日放送、エフエムたいはくの「みんなで話そう!あしたの宮城 ― 地域主権という希望」(第11回)の音声&文字起こしです。

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今回の記事の目次

◆水道と下水道は、公衆衛生の切り札として歴史上登場している

◆10年後には575件を民営化するという政府の計画

◆会計検査院が指摘「民営化のほうが、コストが上がってました」

◆みずむすび社の決算は、県の予算・決算・監査の対象ではない

◆合法的に利益相反関係が形成される

 

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

エフエムたいはくをお聞きのみなさん、こんばんは。

「みんなで話そう!あしたの宮城 ― 地域主権という希望」の時間です。

今晩も、番組のパーソナリティは、命の水を守る市民ネットワークみやぎの面々が務めてまいります。私は、多々良です。よろしくお願いします。そして、私たち市民ネットワークの共同代表の佐久間敬子さん、よろしくお願いしまーす。

佐久間さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

佐久間です。よろしくお願いします。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

ハイ。そして、もう1人、共同代表の小川静治さんに行っていただきます。小川さん、よろしくお願いします

小川さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

よろしくお願いいたします。

水道と下水道は、公衆衛生の切り札として歴史上登場している

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

で、今日のこの番組の話題なんですが、そもそもこの番組は、この宮城県が抱える様々な問題を取り上げて、それを住民が参加した形で、つまり地域主権で、どうやって解決していくか? 前進させていくか? ということを、共に考えていくわけなんですが、その番組の発端は、水道民営化問題なんですよね。

で、今回は、宮城の水道民営化が始まって、この9月でちょうど1年半だという節目でもありますので、改めて水道の問題に立ち戻って、考えていきたいというふうに思っています。

で、えー、実は、私たち命の水を守る市民ネットワークみやぎは、先だって、8月5日の土曜日だったんですが、命の水を守る学習講演会を開催しました。

で、その時にお招きした講師の先生は、太田正さんとおっしゃる大学の先生をお招きしたんですが、作新学院大学の名誉教授であられて、えー、公共事業の経営や財務、いろんな公共サービスをいかに運営していくべきか? という問題について、非常に詳しくて深い考えを持ってらっしゃる先生をお招きして講演をしていただきました。で、この講演がとても良かったんですよね。

「誰ひとり取り残さない持続可能な水道をめざして」というテーマで講演をお願いしまして、それに先生が付けてくださった副題は、「拡大・加速するPFI事業と水道コンセッションを考える」という内容でした。

ま、PFIコンセッションっていうのは、水道のいろいろな設備やインフラ、この所有権は県が保有したままで、運営権を分離して、その運営権だけ民間企業に売却するというやり方を、「コンセッション」いうわけなんですがね。

これが、このみやぎ型、宮城で始まった民営化の特徴なんですよね。で、このことを テーマにして、太田正先生は講演をしてくださいました。

で、佐久間さん、そもそも、この太田先生に、今回、「講演をお願いしよう」となった経緯と言いますか、動機といいますか、これはどんなことだったんですか?

佐久間さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

ハイ、えっと、佐久間です。あのう、太田正先生ですね、この水道問題を含む、まあ、公共事業の経営とか財務のご専門ということで、あの、いま隣にいる小川さんがですね、大変いい論文を書かれてるということを教えてくださったんですね。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

そうですね。あの、小川さんが太田先生の論文見つけたんですね。

佐久間さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

あの、『日本の科学者』という論文なんですけども、これに、あのう、水道の民営化、広域化のことを書いておられた。そしてですね、あの、他の著者が、あの、私たちが 学習会にお呼びした橋本淳司さんとかね、近藤夏樹さんという方も、違ったタイトルで論文を書いておられたんですね。

 

『日本の科学者』 2019年目次 より

jsa.gr.jp

 

「よし、じゃあ、この太田先生に、ぜひお願いしよう」ということで、えーと、私がご連絡を取ったんですが、後からですね、いや、太田先生は、実はですね、仙台市の水道事業の経営問題に係る、ま、検討会、委員会ですかね、経営検討委員会の委員長でもいらっしゃる方ということがわかってですね、「おお、これはすごい!」と。

ただ、あのう、行政の、あの、運営してる委員会だからね、「果たして来てくださるかなあ」って心配はあったんですね。あったんだけど、ま、「チャレンジしてみましょう」ということでご連絡したところ、あのう、ご快諾いただいたということで、あの、今回の学習講演会ね、実現したんです。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

うんうん。

佐久間さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

しかも、今ね、多々良さんご紹介してくださったタイトルが、「誰ひとり取り残さない持続可能な水道をめざして」ということなんですが、これに対して、「よし」ということで、実に、あの、この内容を膨らませた形でご講演していただいたということだったんですね。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

そうですね、うん。

佐久間さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

で、太田先生ですけども、仙台市の事業の検討委員会、水道事業の検討委員会の他に ですね、千葉とか神奈川とか宇都宮とかね、那須塩原とか、こういうような、あのう、自治体の水道関連の、まあ、委員会と審議会とかね、検討会の会長さんなどをなさっているいうことで、各自治体の、まあ、水道事業、ま、あのう、自然的にも社会的にも 条件が違うわけですね、各自治体ね、そういうところの、あの、水道事業にも関わっておられて、現地の状況に応じた水道事業のあり方というようなことも非常に詳しくご存知だということで、あの、お願いしたんですね。

で、もう太田先生からご承諾いただいた後に、ちょっと、あの、私がですね、仙台市の水道事業の経営検討委員会の委員長として、あの、第1回の委員会で委員長ご挨拶をしてるんですね。それをちょっと見たところ、非常に、あの、感銘を受けたということもありました。

で、ご紹介しますと、2020年の11月からこの委員会っていうのが開始されてるようなんですけど、当時、まあ、コロナで、公衆衛生の問題が非常に大切だと、そういうこと、みんなね、痛感しましたね。

それで太田先生のご挨拶がね、あの、そういうことを、こう、踏まえて、翻ってみると、水道とか下水道は、公衆衛生の切り札として、歴史上登場している。そういうね、歴史にもう一度思いを馳せなければいけないというふうに考えています、と。

そして、水道事業っていうのは、1年365日24時間、絶えることなく安全で安定的な水の供給を行うという、そういう意味では最も大切な事業としてエッセンシャルファシリティーとしての水道事業なんだ、と。

それをね、みんなでもう一度再確認して、そういう重要な事業を絶やすことなく後世に伝えていく。これが、私たちの仕事ですよというふうなことをおっしゃってて。

私、あの、久しぶりにですね、こういうような、あの、ま、ホントに清々しい言葉を 伺って、非常に感銘を受けて、「これは、太田先生のお話は期待できるな」と思って、あのう、大変、あの、嬉しく思った次第なんですね。

 

第1回 仙台市水道事業経営検討委員会 議事録 4ページ より

第1回 仙台市水道事業経営検討委員会 議事録https://www.suidou.city.sendai.jp/nx_image/01-jigyou/01-311-09.pdf

 

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

なるほど。

佐久間さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

で、(太田先生の)話はそれにまさしく違わないって言うか、私たちの期待を上回る、素晴らしい、あのう、ご講演だと、私、そういうふうに思います。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

そうですね。いまの太田先生の最初のご挨拶はいいですね。

佐久間さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

ねえ、すごいね。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

そもそも水道っていうのは、住民の健康や公衆衛生を守るために始まったもんだ、と。だからこそ、公共事業として大切なものなんだ。公共事業として守っていかなきゃなんないもんなんだということをね、おっしゃってるんだと思うんですよね。

佐久間さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

そうですね。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

うーん。そういう立場に立った先生が、その、仙台市の、えー、経営検討委員会の委員長をやってくださってるっていうのは、心強いですよね。

佐久間さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

そうですね。頼もしいですね。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

しかも、その委員長、現職の委員長さん、「はたして講演してくださるのかなあ? 」って、私たちは勝手に忖度しちゃったんだけども、太田先生はなんのその、引き受けてくださって、その講演の内容も素晴らしかったということですよね。

ハイ、それでは、その太田先生がどんな講演をしてくださったのか? その内容をね、ぜひ、みなさんにご紹介していきたいというふうに思うんですけども。

◆10年後には575件を民営化するという政府の計画

小川さん、まず太田先生が講演の中で最初に取り上げたのが、今、そのう、みやぎ型っていうものを、あのう、コンセッション、日本で最初に始まった水道コンセッション。しかも、ま、1年半が経過したんだけども、今のところ後に続いてきてるとこがない、と。日本で唯一の水道コンセッションとして、今ある、とね。これを、やっぱり、しっかり分析しなきゃ駄目なんだ」ってことをおっしゃっていて。

その理由は、今でもね、現政権においても、やっぱり、このPFIコンセッション、つまりは、こう、どんどん公共事業を民営化していくという、えー、こういうやり方、えー、所有権は公共が持ちつつも、運営は民間に任せていく、もう売却しちゃうというやり方がね、拡大されようとしてるんだという指摘があったんですよね。

この先生のお話を、あのう、小川さんからちょっと、紹介していただけますか。

小川さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

はい。えー、私もちょっと不勉強で、あの、今年の5月に政府が発表しているという、まあ、方針をね、「これから、こうふうにやっていこう」ということで、太田先生からご紹介いただいたんですが。

あのう、まず、あのう、PFIっていうアルファベットで3文字、わかりづらいんですよね。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

それは、そうですよね。

小川さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

これは、まあ、一言で言えば、「公共がやっている事業を、民営化する」と。だから、民営化というふうに考えて、捉えて、あの、かまわないと思うんですよね。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

そうですね。

小川さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

だから、「いろんな民営化が、これからどういうふうに進めようとしてるか? 」っていうことで、政府は計画を持ってるっていうことなんですね。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

なるほど。

小川さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

その内容がですね、ちょっと衝撃的で、あのう、今の時点で、水道の民営化であれば、6つの自治体で8の事業、上下水道とか工業水道とかということで、それぐらいの数しかないですよね。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

全国でね。

小川さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

民営化がされてるのが。それをですね、10年後には、この、上水であればね、100件、下水で100件、それから工業用水で25件。だから225件。今は、先ほど最初に言いましたように、8件ぐらいしかないのに、225件しようっていう、そういう計画を持ってるんだということを、あの、先生が最初に報告されていました。

 

 命の水を守る学習講演会 2023/08/05 太田正氏資料 6ページ より

 

 命の水を守る学習講演会 2023/08/05 太田正氏資料 5ページ より

 

特に、その、民営化というのは、水道だけではなくてですね、空港だとか道路だとか、公園だとか、そういう施設も民営化すると計画立ってるんですけども。全体の、先ほど言った政府の方針からいくと、「10年後には575ま、600近い件数を民営化しようじゃないか」っていうふうに言ってるわけですね。

 

命の水を守る学習講演会 2023/08/05 太田正氏資料 3ページ より

 

だから、その中で225ですから、あのう、水道が占める割合も、半分までいきませんけども、近いということで、政府がものすごく、この水道の民営化に力入れてるっていうことなのがわかると思うんですよね。

だから、それについては、あのう、宮城県が上工下水道の民営化を最初にやったので、政府がいろいろ進めてくこの目標を達成するためにね、宮城県のことをリーディングケースということで、いろいろ紹介していくでしょう」と。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

なるほど。

小川さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

だから検証というのを、ちゃんとやらないといけないんですよ」っていうことを最初におっしゃってました。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

なるほどね。

小川さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

だから、われわれが、やはり、あの、民営化された以降の問題を整理していくっていうことが、非常に重要なんだなというふうに改めて思いましたね。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

そうですね。うん。私たちはたまたま宮城県に住んでいて、このみやぎ型、水道の民営化、コンセッションというものに遭遇してしまったんですけども。

でも、これは、今のお話ですと、政府は、「どんどん全国に拡大していこう」と、「225件まで持っていこう」というふうにしているということですから、今、宮城県民の私たちが、みやぎ型をしっかり、こう、見つめていく、ね、決して関心を薄れさせずに注目していくことは、非常に日本の水道の将来を占う上でも重要ですよね、うん。

会計検査院が指摘「民営化のほうが、コストが上がってました」

で、そういう方針をですね、今の政府が持ってるっていうことなんですが、一方で、私、非常に「へえ~」と思ったのは、太田先生が、日本の政府の内閣の機関である会計検査院が、このPFIコンセッションというものに対して、非常に、こう、鋭い、いろんな疑問を投げかけている、えー、いろんな提言をしているということを、非常に太田先生強調されました。これについても、小川さんから紹介してくださいますか。

小川さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

はい。この会計検査院という、まあ、政府の機関の中ではね、非常に独立性の高い機関が調査をした結果が、これ2021年ですから、ほぼ2年ぐらい前に公表した、まあ、検査院の指摘っていうのがあるんですね。そのことを、先生、取り上げているんです。

で、あの、会計検査院が指摘したことっていうので、いくつか事例が最初にありましてね、たとえば、1つは、あのう、民営化した法務省の民営化事業ということで、島根県にある刑務所を民営化した、と。で、その民営化した刑務所は、食事の異物混入だとか、遅配だとかで、年間平均65.6件、発生した。で、2012年には144件、いろんな問題が起こった、と。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

増えてるじゃないですか。

小川さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

ねえ。で、要するに、刑務所というクローズドなところで運営をして、まあ、そういう問題を起こしたということが、一般にはあまり知られないわけですよね。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

ですよね。

小川さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

だけども、いわゆる民営化の中でそのような問題が起こったっていうことを指摘、1つの象徴的な事例と指摘してですね、非常に、あのう、マスコミ等が注目したのは、政府がやった民営化の事業で29の事業を調べたんです。その29の事業を調べたところ、民営化の導入した効果、「民営化して、こういう結果が出ましたよ」ということについて、事後検証した事業はなかったってわけですね。

だから、民営化しっぱなしということで、経過した後の検証をしていない、ということを指摘しています。29のうちですね、検査院のほうで、27の事業を独自に、民営化した場合とそれ以前で公営でやった場合の維持管理費を比べたところ、全部の事業、つまり27事業全部で、民営化が、従来のやり方よりも1.6倍から2.85倍高額になった、と。

つまり、「民営化のほうが、コストが上がってました」ということを会計検査院が指摘したということなんですね。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

ええ! そうなんですか? ちょっとビックリな話ですね。

小川さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

だから、僕らもそのことについて、会計検査員のやつはあまりよく知らなかったんですけど、太田先生のお話を通じて調べてみたところ、そのようなことが検査院として報告していたということです。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

へえ~。

小川さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

だから、会計検査院が指摘したことっていうのは、いろいろ特徴的なことがありましてね。あのう、実は、会計検査院の報告に先立って、これ、2018年なんですけども、イギリス、英国ですね、ここで、あの、ここ、あの、PFIの発祥の地というふうに言われていますね。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

そうですよね。

小川さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

そこで、あのう、「PFI、もう止めた」と。要するに、「民営化、もう止めた」っていうことを、国の方針として決めたんだそうです。手法として採用しないということですね。

で、その理由が、従来の手法、つまり公営でやってた場合に比べて高コストである、と。「コストが高い」というのが1つですね。

それから、「民営化の効果検証がされていない」というのが2番目です。

3番目に、あのう、「民営化が有利になるような計算方法を、 導入可能性調査をやっていました」ということが、その他に1、2点あるんですけれども、特徴的にはそのようなことでした。

これって、いま言った英国の指摘している3つの点っていうのは、先ほど言った会計検査院が指摘したことと、かなりダブることですよね。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

いや、ほぼ重なるじゃないですか。へえ~。

小川さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

ということなんですね。だから、本家の英国では、このようにPFI民営化については、「もう止めた」というふうになっているにもかかわらず、日本政府は、完全に周回遅れで、「さらにこれを広げてやっていきましょう」ということを今年度の方針の中で明らかにしたんだっていうことをですね、先生のほうで、あのう、強く警戒すべきであるということを指摘されていた。こういう関係になっています。

 

  命の水を守る学習講演会 2023/08/05 太田正氏資料 4ページ より

 

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

なるほど。よくわかりました。イギリスっていうのは、えー、コンセッション、いろんな公共事業、公共サービスを民営化していこうという手法の発祥の地ですよね。サッチャーイズムなんて言われた時代、1980年代からね。

そのイギリスにおいて、もう、2018年、だいぶ前にですね、民営化っていうのは、そもそも効率が上がってないという総括がされてたってことなんですね。ね、ですから、「今後はやんないよ」という総括がされてるにもかかわらず、日本の現政権は、未だにそれを拡大していこうとしている、と。

ところが、日本のほかならぬ会計検査院がね、実は、日本においても、「その民営化でどれだけ効率が上がってるんだ? 」というその効果は、全く自己検証されていない、と。

で、会計検査院がしょうがなくて自分でやってみたら、実はかえって、「民営化によって高コストになってた」ってことがわかってしまった、と。こういうことなんですか?

小川さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

そうです。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

なんと、これ、佐久間さん、「どうしましょう? 」って話なんですけどねえ。(笑)

佐久間さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

そうです。いや、今ね、ご紹介いただいた会計検査院のね、記事ってのはちょっと新聞にも載ったんですよ。それをちょっと詳しく調べていって、いま小川さん、ご紹介くださったようなね、内容だったと思うんですけども。

この2021年の5月、会計検査院の報告が出た時点で、われわれのこの運動はどうだったか? っていうと、まさに2021年5月にですね、あの、このみやぎ型を引き受ける会社の設立登記なんかがされてるんですね。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

あ~、そのタイミングで既に、そういう話が出てたんですね。

佐久間さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

そして、その後の秋に、このみやぎ型というのが正式に議会で議決されて。7月5日ですから、まあ、2ヶ月ぐらい経ったね、あとですね。そういうタイミングなんですよね。

で、しかも、その、今ご報告いただいたね、イギリスの労働党が、そのサッチャリズムで民営化の先鞭をつけてあらゆる公共事業を民営化したね、そこがね、まあ、あのう、様々な不祥事を受けて、しかも割高だった、と。40%も。そういう報告があって、「PFIは止めた」となってるわけですよね。

で、こういう、その歴史に学んでいない、と。ね、直前の歴史ですよね。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

ホントそうです。

佐久間さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

それは一体何なのかな? ということで、非常に、ある意味では驚きというかね、不信を持ってるんですね。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

ホントそうですよねえ。

佐久間さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

あのう、太田先生のお話にちょっと出てこなかったんですけども、この英国の会計検査院の報告があった翌年に、あの、イギリスのPFIの最大手請負事業のカリリオンというのが倒産した。破産して、そして、それで、えーっと、英国政府は破綻処理に222億円のお金を投じたという、その、非常に恐ろしいね、事件もあったわけですよ。

だから、こういうことに学んでいないんだなとつくづく思っておりますし、いや、これからでも遅くないのでね、こういう、その、公共事業を民間がやっても全然利益が上がらないはずですから、本来の公営、公共事業に戻していくということが、やはり、大切かなっていうこと、改めて、あの、感じたんですね。ハイ、以上です。

◆みずむすび社の決算は、県の予算・決算・監査の対象ではない

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

はい。で、さて、そういう水道コンセッションがですね、日本においては、全国初、 みやぎ型として、宮城県でスタートしたわけですけども。

次に太田先生が指摘したのは、ま、そういうコンセッションの中でも、ま、みやぎ型の特徴というか、問題点というか、独特なところがあるんだよ、とね。それは、非常に、今後禍根を残す可能性があるよという指摘もされてたんですけど。この辺をちょっと、小川さんからまた紹介していただけますか。

小川さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

はい。みやぎ型っていうのを比較的俯瞰してですね、先生のところでもお話されていたんですけども、一番、あの、強調していた、あの、みやぎ型の問題点っていう点で言うとですね、自治体、ま、宮城県ですね、予算だとか決算の対象には、みずむすび社の決算は対象にならないわけですよね。県の決算ではないわけです。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

そうですね。

小川さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

監査の対象ともされない。つまり、今までだと、県営の事業ですから、県がきちっと、県民がわかるような形で、まあ、内容的にはわかりづらいんですけどね、公表されてる場所がある。必ず公開されるわけですよね。

その監査の対象にはならないっていうことは、県民の関与っていうのが、実質的に閉ざされるということを意味するわけです。

だから、そこが本来、先ほどの番組の冒頭にありましたけれども、「水道事業ってのは、何のために、どういうことでやられているのか? 」ってことを考えた時に、住民の意向だとか、住民の考えというものは極めて重要、尊重しなきゃいけないものと思われるんですけども。

そういうふうに、あの、仕組みとしてですね、このみやぎ型ってのは、あのう、まあ、スキームというふうに言ってましたけども、仕掛けっていうことですね、これは、そのようになっていないということです。だから、それが1つ非常に大きな問題です。

◆合法的に利益相反関係が形成される

もう1つは、当然、いろんな事業やってる中で契約関係って生じるわけです。何か物事を発注しますっていう、発注して契約結んで事業やっていくということになるんですが、みずむすび社が作ったOM会社というのがあるんですね。実際にオペレーションする、水道事業をオペレーションする会社があるんですけども、ここがですね、自分たちの仲間内で、いわば発注をするということが実際的に起こっている。

そういうふうな、まあ、先生の言葉を使って言うと、そのう、「合法的に利益相反関係が形成される」

ちょっとわかりづらいと思うので、具体的に、あの、お話するとですね、今回、経営審査委員会っていうのが8月に行われて、その中で報告されてたんですけども、中央監視装置っていうのが、なんか、水道事業であるんだそうです。

それは、あの、東芝の機械なんだそうです、今やってるのはね。東芝の機械を、今度、その、みずむすび社が変える、と。中央監視盤を、監視装置を変えるということで、えー、みずむすび社の出資会社である日立に変えるっていうんです。

で、東芝は面白くないわけですね。今までやっていた受注したのを変えられるわけですね。何の理由もなく、ポンと。

そうすると、もう、本来ならば、みずむすび社ってのが、県であればですよ、あのう、東芝だとか日立だとか、まあ、いろんな会社があるんでしょう、そこと、あの、「新しい機械を入れるんだから」っていうことで、見積もりを取って、安いところ、提案内容がいいところに決めるっていうことになるんですけども、そういうプロセスは、ないんですよ。

だから、もうみずむすび社は、株主である日立製作に頼みますっていうことをハナから決めてやる、と。だから、県民は、「いや、それって大丈夫なんですか? 」っていうことも言えないという。

自分たちだけでやっているということで、完全に、普通の会社であれば利益相反ということで、「実際に発注する側が、受注する側の立場にも関与してるので、透明性がありませんよ」っていうことで、「そういう関係はやめましょうね」っていうことは、普通やられるわけですけど。

今回の水道民営化の中では、いま言った受注者と発注者が同じという、実質的にね、 そういう利益相反関係が、いわば合法的に作られている。「これは問題ですね」っていうことで、あのう、先生が、あの、指摘されていました。まあ、あの、特徴的な問題点という点で言うと、そういうことになろうかと思うんですが。

えー、もう1つあるのはですね、公営であれば、不要になる民間事業者に対してですね、有利な条件でいろんな環境だとかが整備されてる、と。

で、具体的に言うとですね、今回、あのう、経営審査委員会で明らかになったんですが、いま物価値上げがひどいわけですよね。物価上昇がひどいので、水道民営化の中ではですね、コンセッションを受けた側は、値上げしたら、値上がりしたら、「県はお金補填しますから」というふうになって、4000万円、今回補填されてるんですよ。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

はあ~。年間?

小川さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

年間。それは今までのところでね。4000万円も、追加で県が、「お金、あ、大変ですね!」って言って。(笑)

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

すでに、1年目、2年目にね。

小川さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

だから、こんなことって、県営でやった時や公営でやってた時には必要ないわけですよ。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

ですよね。

小川さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

民営化されたが故にお金払うという、こんな馬鹿な話が まかり通るっていう、で、こういう状態が問題ですねっていうことで、民間 事業を支援するような形で、水道事業の民営化の枠組みが作られてるということで、指摘がされていました。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

なるほど。えー、太田先生のご講演は、ホントに私たちもそれなりに、今まで宮城県の水道民営化問題、この水道コンセッションっていうものについて、勉強したり取り組んだりしてきたんですけども、それでもね、すごく、こう、新鮮な指摘というか、目からウロコ的な、「なるほど、ここに、こういう問題点があったよね、潜んでいたよね」ということを指摘してくれるお話でね、小川さんがいま紹介してくださったっていうような話は本当にタメになりました。

さて、次回もね、この太田先生の講演の中身をもう1回取り上げてみなさんにレポートしたいというふうに思っています。

今日は、どうも、佐久間さん、小川さん、ありがとうございました。また次回も、よろしくお願いします。聞いてくださったみなさんも、どうもありがとうございました。