宮城県の水道民営化問題

命の水を守るため、水道の情報公開を求めていきましょう!

宮城県の水道民営化問題を考える市民連続講座第3回 「宮城県は水道民営化ナンバーワン!   じゃなくて、ロンリーワン…?」 後編

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報告2「国内の水道民営化(コンセッション)は広がっているのか?」

みやぎ型管理運営方式に関する第二次公開質問状の内容解説 小川静治さん(東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センター 事務局長)

小川静治

今日は第3回目の市民講座ですが、始めてという方もいらっしゃると思いますので、 第1回目、第2回目でどんな話をしていたのかというエッセンスを、最初にちょっとだけ復習的に見ていただこうと思います。 

 

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             小川静治さん作成資料

いまご覧いただいている <宮城県が掲げる水道民営化の「目的」と「手段」> というわけのわからないタイトルですが、一言で言うと、水道民営化は何のためにやるんですか? ということです。宮城県は、水道の民営化の目的は「何だ」と言っているのか?

ここに掲げてあるような内容を、実は宮城県は説明していないんです。つい先日行われた事業説明会でも、水道民営化の目的ということについては説明をしていません。

目的ということで「県が水道3事業の最終責任を持ち公共サービスとしての信頼性を保ちながら、3事業を一体として民間の力を最大限活用することにより、経費削減、更新費用の抑制、技術継承、技術革新等を実現し、持続可能な水道事業経営を確立する。」とあります。つまり県は、「持続可能な水道経営を確立する」ことを目的として置いているんです。

「じゃあ、持続可能な水道事業って、どういうことなの?」という部分は説明がない。水道ですから、そんなこと当たり前ですよね。人が住んでいる以上、持続可能でなければ困るわけです。

今どういう危機に直面していて、持続可能なものにするためには何をしなければいけないのかを、具体的に明らかにすることが必要なのにもかかわらず、県はそれをやっていない。

黄色い部分の「経費削減、更新費用の抑制、技術継承、技術革新」をやること自体を目的にしている。本当は、最終目的の手段として、経費削減だとか、更新費用の抑制等々に取り組まなきゃいけないのに、経費削減だけを一所懸命言っている。

「手段が目的化していると言わざるを得ないんです」と、前回も報告させていただきました。命の水を守る市民ネットワーク・みやぎの基本的な考え方がここにあります。

県が最終的な目的をきちっと説明していないので、県民は理解ができないんです。

県がどういうことを考えているのかがわからないので、何回説明を聞いても、いわゆる残尿感が残るっていう(会場から大笑)、「なんか、わかんないんだよね~」っていう状態に、今あると私は思います。

 

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             小川静治さん作成資料

復習の2です。民営化したいと言っている中身を、本当は県が説明しないといけないんですが、われわれのほうで図解をしてみました。

人口減少、節水型社会が進む中で、水道事業の収入が減ります、と。管路や設備の更新をするために、約2,000億円ぐらいのお金が必要になる、と。このお金を捻出することができなければ、水道料金の上昇を避けられない、と。だから、民営化してコスト削減するんだ、と飛躍するわけです。

こういう管路や設備の更新をどう進めていくかということこそ、県は語らなきゃいけない。「こういうふうに具体的にやっていきたい」とか、「いくつかの方法があります。Aパターン、Bパターン、Cパターン」とか。そういうことを言う中で、「こうこうしなければ値上げしなければいけない」と説明をするならわかるんですが、そこは省略して一気に民営化へと行くわけです。

「民営化してコスト削減するんだ。コスト削減して料金の上昇を抑制するんだ」と手段が目的化されていることが、この図を見てもわかると思います。

下のほうに、それぞれこういうことではないですか? というのを入れてあります。

まず、現在公営でやっている水道事業の中で、コスト削減をどういうふうにするかを、徹底的に追及することをしているのか? 民間に「お願いします」と言う場合でも、 佐久間先生からもお話がありましたけれども、実際にはすでに民間の人たちに協力してもらっているんですから、県と民間の人たちの間で「コスト削減こういうふうにやろうよ」と、研究して取り組むことはいくらでもできるんです。それを言わないで、「民営化が必要なんです」とすり替えてしまう。

全体を一言で言えば、「説明責任を果たしていないんじゃないですか?」ということになると思います。

 

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             小川静治さん作成資料

復習の3番目です。一昨年の12月、2年ぐらい前ですが、水道法が改正されました。

水道法改正の概要というところに5点書いてあります。広域連携を推進するだとか、 適切な資産管理をするだとか、それはそれで必要性のあることに触れられています。 で、4番目の官民連携の推進ということで、この改正水道法は水道民営化ができるようにした。右側のほうにある水道の基盤を強化するための基本的な方針ということで、 このようなことを置いた。

目の前に様々な問題があるから、水道法を改正したんですよね。ということは、全国の各自治体が、「これはいい道具ができた。水道法が改正されたんだから、これに基づいて自分の自治体の水道事業を変えていけばいいんじゃないか」、というふうに思っても不思議ではないわけです。改正水道法がきちっと的を得たものであるならば、水道コンセッションに取り組む自治体は一挙に増えるはずです。

どの自治体でも、「水道事業どうしようか~」と、将来のことを考えています。「どうしようもないなあ」と、みんな悩んでいるんですから、改正水道法が施行されれば、「よし! これで、ちょっとやってみよう」というふうになるはずなのに、ならないというのが今の実態です。

水道法が改正されたことによって、各自治体にそういうムーブメントが起きないというのは、改正水道法それ自体が、現在の水道事業の問題を解決するための処方箋としての役立ち度が劣るからではないか? そういわざるを得ないです。ここら辺までが、前回までの復習です。

 

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             小川静治さん作成資料

で、いきなりロンリーワンに行くんですが、これは、今年の4月、首相官邸で行われた未来投資会議で出された資料の一つです。上のほうに、デューデリジェンスとか、マーケットサウンディングとか、いろいろ発展段階があるんですね、左から右のほうに。右側のほうに行けば進んでいるということで、水道事業では、宮城県の状況が一番進んでいるんです。

前回の市民講座でもお話をしたんですが、私は、宮城県大阪市を除くここに書いてある全市町村に連絡を取りました。「今どうなってますか? ホームページ等で見ることができれば教えてください」と言いました。

最初の奈良市。「えっ、あー、それはもう議会で否決されましたので、ナシです。」と、担当者は非常に困惑した様子で答えました。

浜松市は、止まっているのがはっきりしていますので、問い合わせませんでした。

伊豆の国市。「や、これは、伊豆の国という市全部をやるのではなく、300だったですかね、600だったですかね、それぐらいの世帯の団地があるんです。別荘地みたいなんですけど、コンセッション方式で民間にやってもらおうと思ってるんですが、決して、全市でやろうということは考えていません。」

お隣の村田町。これも困惑してましたね。「なんか、あの進められてるようですけど、どういう状況なんでしょうか?」と言ったら、「いやあ、ここまで来たんですけども、もうこの先には進めないということなんです。近隣の白石とか他の市町村と一緒に、 包括的な民間委託ということで舵を切って、この民営化の問題については断念しました。」要は、広域になったということです。

以下同文で、ニセコ市、近江八幡市木古内町大牟田市、全滅です。木古内町は北海道ですけど、実をいうと、このコンセッションについてはお金が出るんです。

最近話題になってますよね、北海道の寿都町それから加茂箭内村。私、北海道出身で、後志管内で非常によく知っているところです。友達もその村出身のが2人いるんですが、例の寿都町であれば20億出ると言ってました。何か作るためにやるのではなくて、「調べるときにお金出しますよ」と言うんです。だから実際上は見せ金です。

今回の水道民営化の調査も、様々な取り組みに補助金が出るんです。だから、木古内町の担当者が、「補助金3,000万でしたかね、4,000万でしたかね、お金が出るんで、この機会に水道事業の問題について調べようと言うんで、調べました」と言っていました。

そこから先は、この表を見てもわかるようにどこも進んでいない。進めたのは宮城県、それから大阪市。この大阪市はクセ者で、宮城県は「管路の更新は県がやります。それ以外のところは民間に」と言っていますが、大阪市はその逆なんです。大阪市では一度否決されている。宮城県と同じような形でやろうとしたが否決されたため、管路の更新だけを今やるというふうになっているようです。要は、宮城県大阪市だけなんです。それ以外のところは全滅というのが今の状態です。

政府は、平成26年から30年の4年間ぐらいで集中取り組み期間というのを設けて、この期間で一生懸命お金を出して、「いろんな自治体みんなで民営化に向けての弾みを付けよう」とやったんですが、結果は宮城県大阪市だけ。後に続くところはありません。

 

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             小川静治さん作成資料

下水道は、宮城県以外では浜松市が、市民があまりよくわからないうちに、しれっと民営化しちゃったんです。で、上水道をやろうって時に、わあっと反対が出てきて上水道は止まったということです。

四国の須崎市。ちょうど、県会議員の福島さんがいらっしゃってますが、実際にここに行ってこられたようです。7~8年かけて準備をしてやられたということです。ただ、民間側としては、採算度外視で、先行投資的な意味合いが大きいものだったということです。要は、ここでも2つしかやっていないということです。

 

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             小川静治さん作成資料

工業用水になりますと非常に数が少ない。工業用水は経産省の扱いなんです。たとえば宮城県熊本県、それから、ここでもまた大阪市が取り組んでいる。工業用水は、市民にとってはほとんど関係ないです。工場ですから。環境負荷の問題が若干ないわけではないですし、経営上の問題はありますけど、市民に生活上の問題はほとんどないと言っていいと思います。

 

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             小川静治さん作成資料

これは、去年の未来投資会議の「こんな話しました」という資料です。

「水道分野については、6件の数値目標の達成を認める。ただし、6件のうち実施方針の策定完了済みという後戻りしない手続きまで到達している案件は1件もないため、引き続き重点分野とし、」と言っています。

政府も、進んでないってことがわかってるんです。

なんでこんな状況の中で、村井さんがマッチョに「オレ 頑張るから」って頑張るのか?これはもう理解できない。冒頭で言いましたけど、目的がはっきりしていないということです。

先ほども言いましたように、私は北海道の出身です。国鉄の民営化は、成功したのか、しないのか? こういう問いに日本はまだ答えを出していません。でも北海道に行けば、ハッキリしているわけです。失敗です。ズタズタですからもう。北海道内JRで行けないんですから。

国鉄民営化というものが、JR東海JR東日本のようにバカ儲けするところを作り、もう一方で、JR北海道JR四国のように瀕死の重傷のところを作る。そこは地方経済も疲弊していく。これが、民営化の持っている本質だと思うんです。民間に任せるとこういうふうになるんだということ。もちろん、単純にすべてのものがそうなるという意味ではありませんが、一つの見方として見ておく必要があると思います。

  

それから、民営化問題について、今回の公開質問状の中に入れました。
miyagi-suidou.hatenablog.com

お手元の資料の4~5ページです。

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この質問状を見るうえで、この図をちょっと見ていただきたいと思います。

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まず、用語の問題ですね。PFIとかPPPとか、わけがわからないので、ここからもう敷居が高くなるんですけど。

PPPというのは、Public と Private 。「官と民のパートナーシップで一緒にやりましょう」という官民連携なんです。「公と民がいろんな共同の取り組みをやりましょう」と。

PFIというのは、Private Finance ですから、「私のお金を公に入れて、様々な形で運用しましょう。公営の様々な施設運営に民間のお金を投入しましょう」ということです。 そういう枠組みで、膨大な公の市場を民間に開放する。

 

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官民連携という取り組みの中でPFIが中心になっている。そして、PFIの一つとしてコンセッション方式があるんだと思ってください。

村井知事は「仙台空港の民営化」と言っています。これは「PPP/PFIコンセッション」だと、至る所で言っています。つまり、この青い点線で囲んだ部分が仙台空港の民営化です。仙台空港がコンセッションなら、水道の民営化はどうなんですか? 私たちは「民営化でしょ」と言ってるんですが。

公開質問状の5ページに、村井さんがこれまで言ってきたことを5項目入れてあります。1番目は、2016年未来投資会議で「実は、宮城県は上水、下水だけでなくて、工業用水も一緒にして、上工下一体での民営化というものを考えてございます。」と発言しています。みやぎ型管理運営方式は「民営化です」と言ってるんです。

そのことについて、4番目のところにありますが、昨年2月の県議会定例会で、内藤隆司県議(当時)との質疑で、「あなた、水道民営化といったじゃないか」と追求されると、村井さんは、「一番わかりやすい表現ということであえてこういう言い方をいたしました。」と、しゃあしゃあと答えてるんです。これって、訂正も何もしていないんですよ。「私が民営化という言葉を使ったことは、間違いでした。」というふうなことを一切言っていない。

「わかりやすい表現をしました。」ということですから、命の水を守る市民ネットワーク・みやぎが「水道事業の民営化」と言っても、わかりやすいんだから、何も問題はないですよね。でも宮城県は、何度も何度もいろんな説明をする時の枕詞で、「水道事業の民営化ではありません」と言うんです。

第一回目の質問状を出すときに、われわれが若干説明したあと、県のほうからコメントされたんですが、最初の言葉で「今回の問題は水道の民営化ではありません。みなさま方も注意してください」と、ボクらがいるところでマスコミに対して言うんです。威圧するんです。これって異常だと思いませんか? 

「民営化でない、民営化でない」と、壊れたレコードみたいに何回も同じことを言うので、「民営化でしょ」ということを、5ページのところにいくつかの事例を挙げて質問をしました。

この5つの事例を読んでいくと、要するに民営化だ、と。「民間にお任せする」ということを、村井さんはしきりに言います。民間に運営をお任せするということは、民営化ではないんでしょうか?(会場から笑い) 民間に委託するということは、今もそうだと言えばそうだけれども、それをより踏み込むんだから、「民営化と言葉を言い換えたほうがわかりやすいよね」と思います。

時間がありませんので、今回質問状にしたことを2つほど説明します。

6ページは水質の問題、試験体制の問題です。非常に乱暴な言葉を使うと、「とにかく県の回答はふざけてる」。前回の第一次質問に対してまともに答えていない。ですから7ページのところで、「回答していない事項を回答してください」ともう一度同じ内容を掲げました。

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7ページの真ん中にありますけど、(4ー3)なぜ「現行水質検査・試験体制の維持」を求めないのか?理由を示してください。

命の水を守る市民ネットワーク・みやぎが様々な取り組みをする時に、現場の技術者の人たちの協力を複数いただいています。実際に水道事業に関与した人たちです。その人たちと連絡を取りながら、あるいは相談をしながらまとめたものなんですが、質問状のこの部分は、その方々も大賛成という意思表示をしてくださいました。

「6.10質問」というのは、6月10日の第一次質問状のことです。

その質問4で、みやぎ型導入による検査項目、試験項目の内容について質問しました。回答はここがポイントです。「上水については県が公表している水質検査、下水については現行の県が管理している水質管理基準を参考にすることとして、上水・下水ともに水質は現行と同等、または水質管理は現行と同等以上とすることを求めているので、水質及びその管理体制が低下することはない」と言うんですね。

だったら、「参考にする」だとか、「現行と同等以上」だとか、わけのわからないこと言わないで、「今やってることをそのままやってください」と言えばいいでしょ。そうすれば県民のみなさんは安心するんです。

 

8ページはコスト削減の問題です。

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これものらりくらりで、(県は)はっきりわからないことを言う。ボクらが質問していることに的確に答えないんです。

8ページの中ほどにありますが、県は197億円以上のコスト削減を条件に提案を受ける。その提案内容を盛り込んだ契約をするから、コスト削減は間違いなく実現すると回答しています。

これ、言い換えると、「わが校は東京大学に入学させることを間違いなくできるようなカリキュラムを組みますので、東京大学に入りたいという意思をちゃんと表明さえしてもらえば、そしてわが校の教育を受けていただければ、東京大学には間違いなく合格いたします。」と言ってるのと、同じじゃないですか。そんなの、わかりっこないです。高校は3年間かもしれないけど、このコンセッションは20年間です。

20年間で、たとえば今回のコロナのような問題、昨今、航空会社の赤字のいろんな問題が言われてますよね。何があるかわからないわけです。20年間というのは、民間からすればきわめてリスクがある。そういうリスクを負わせながら、間違いなく197億円削減させるんだということは、20年経たないと誰にもわからない。

具体的に、コスト削減を誰がどのような方法で認定するのかを契約の中で明確にして、「こうなったら、こうこうこうですよ」というようなことを入れないと、間違いなく 実現してもらうことはできません。197億という具体的な数字を約束させるということは、民間からすればきわめてリスクがある。197億いかなければ契約違反ですから。

 

みなさんがご覧になっている冊子の最後の前のページです。(筆者注:第2次公開質問状に添付された資料のページのことです。)

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宮城県は2022年から民営化をやると言っています。2021年までは公営でやっていて、2022年から民営化したら、なんでこんなに、ページをめくるようにコストがスパーンと削減されるんですか? 

たとえば大崎広域水道を例に取って2022年単年度で削減効果を見ると、公営から民営に変わると動力費が11%減ると言っている。あり得ないです。民営になったからと言ってそんなに自動的に下がるわけではない。修繕費がなぜ15%も下がるのか? 薬品費が、なぜその年から9%も下がるのか?

推測は、コスト削減の率を20年間に機械的にバラしてやったので、民営化導入の年から削減されるというふうになったと思われます。ここで言いたいのは、こういうやり方をするということは、「試算がいい加減でしょ」ということです。これは試算の信頼性に関わります。「信頼できません」ということです。

数字が食い違うということは、大阪都構想218億円問題も似たような感じだなと思いながら、水道民営化の問題を子細に見ていくと、いっぱい ボロがあるということがわかる。私から見ると、いろんな計算、試算がいかがわしい。

民間の日本総研に任せて、(県は)自分たちで計算してないんですよ。もっと言えば、計算できない。計算できないから、質問しても答えられない。そういう状況の中でも、彼らは水道の民営化を強引に進めようとしている。

最後になりますが、先ほど例に出しました国鉄の民営化のように一回民営にしてしまうと、目的もわからなくなってしまい、何十年か経った後に振り返ったら、「あら?!」という話になる。こういうことを起こしてはいけない。

そういう意味で、われわれはこの水道の民営化の問題について、非常に細かいことも含めて、しつこくやるということだと思います。ネチネチとやる。そういうことをやっていかないと、彼らは気づかない。まあ言っても気づかないという別の問題もあるんですけど。(笑)

冒頭に佐久間先生からお話しいただいたように、本当に民主主義の問題だと思うんです。宮城県のこれからを考えた時に、この問題をあいまいにして黙って通すことが、間違いなくわれわれの生活にプラスには何もならない。何とか公開質問状やこの後の議論で深めていければ。11月15日に出前講座もありますので、そこでも県との間でやり取りができればと思っています。

 

会場の参加者との意見交換

多々良さん(司会)

小川さんありがとうございました。

非常に納得度が高いというか、聞いた人が誰もが「そうだよな」と思える話ですよね。それはエビデンス、根拠がはっきりしているからです。

いやあ、この質問状を受け取った県の担当者はイヤでしょうね。同情します。(笑) どうやって答えるんだろう。(笑) 県の企業局の人たちはそれなりに頑張って、優秀な人たちがそろってるんですけど、この質問状に答えなければならないという仕事は、イヤでしょうね。村井知事は、優秀な部下にこういう仕事をさせちゃいけないと、私はホント思いますね。

Aさん

小川さん、詳細な報告ありがとうございます。

本来ですね、水道料金の出発点というのがあると思うんですが、宮城県の水道料金は、平均家庭で4,249円。非常に高いということで、全国第3位です。青森県第1位、北海道第2位、宮城県第3位、山形県第4位で、全国平均の料金は3,244円です。

その原因は、小川さんの報告にもありますが、受水費が高い。受水費は何から決まるかと言うと、減価償却費、過大な投資だというふうに言われてます。それを削減できるのかどうか?そういう視点をずうっと2年間研究してきてるわけですが、宮城県に対するオルタナティブと言うんですか、具体的にわれわれの側でどうすれば、まあ広域化とかダウンサイジング、それからIT化とか、イノベーションも含めてですけど技術向上で、岩手県の中央広域事務組合の75億円削減というのは佐久間先生からお話ありましたけど、じゃあどういうふうにすれば公営でダウンサイジングしていけるのか? 

たとえば仙台市だと、青下の森プロジェクトということで、青下ダムを廃止するというプランが去年から始まったんですね。11月21日の水道局の報告ですが。具体的に進められている仙台市であるとか岩手県であるとかの事例を含めて、われわれの側からダウンサイジングについての見解を報告していくというふうなプランニングがどうなってるのか、小川さんに教えていただきたいと思います。

小川さん

あのう、結論から言えばわかりません。たまたま昨日、わが家に帰ったら、みやぎ県政だよりと市政だよりと仙台市水道局のH₂Oが届いていました。H₂Oは3カ月に1回出されているそうです。その中に管路の更新についての考え方が説明されていました。「あっいろんな方法あるんだな」と、その時私、強く思いました。

同時に、岩手県の中部水道企業団でも、ダウンサイジングのやり方を、まさにプロの人たち、実際に担っている人たちが、数年がかりで議論して、「こうやればできるんじゃないの」というふうに導いたという経過があるわけです。だから最初に言いましたように、わかりません。それは、現在の自治体の担当者もまだわかっていないと思います。

だから、いま必要なことは、将来に向けてどうしていったらいいか、管路の更新やダウンサイジングも含めて、ホントに熟議することだと思うんですよ。

それは、自治体の側でもそうだし、同時にそのことを市民の側に伝える。そのことで、これからの水道はどうあるべきなのか、まあみんながみんな、私もこの水道の問題に関わるまでは、上水道と下水道が一緒に徴収されてるってこと自体もわかりませんでしたからね(笑)。情けない話なんですけど。

だけど、そういうことを繰り返していく中で、全体をこれからどうしていったらいいのかということが、少しでも明らかになっていくんじゃないか、と。そういう意味で民主主義の問題だと、私は思うんです。

議員の方々もそうでしょうけども、自治体の担当者自体も迷ってる、あるいは困ってるはずなんです広域化の議論をどういうふうにするかという問題もありますけど、そこに引っかけてもかまわないので、とにかく、将来に対してどういうやり方でアプローチしてくのか? ということを、投げかけ続ける以外ないというふうに私自身は思っています。

Bさん

毎度同じような話をしてるんですけど。この前の戦災復興記念館でも、私、質問したんですけど。県のほうは現行と同等以上にするから何の心配もないというふうに、さっき誰かも言ってましたけど。

私、名取ですけど、名取市役所の方に聞いても、県は今までどおりだから何も心配ないからの一点張りらしいんですね。名取の市会議員にも聞いたんですけど。たぶんどこの自治体も、県からはそういうふうに言われてると思います。「今と同じですから、何の心配もないです」と。

そう言われて、各自治体の役場の人は反論できないですから。できるかもしれないけれども、県から言われれば鵜呑みにするしかないわけです。だから私も、もうちょっと各現場の役場が、もう少しね、住民の立場に立ってモノを言ってもらいたいなと思っていますけども、半分無理かなという感じもしてるんだけども。ここは議員の方に頑張ってもらえればと思いますが。

私、ちょっと先ほどの小川さんのご説明の中でですね、全体的には、大変的確なご質問内容になってると思いますが、一つ追加と言うか、私が考えてるのは、いまと同じ、同等以上にするというのが県の論理なんですね。そうであれば、要するに浄水場というのは工場ですから、水を作る工場ですのでね、不良品を出しちゃダメなんですよね。

不良率で考えますと、今はいちおう不良率ゼロなわけですね。ゼロではない、0.1%とか、ないとは言えないんですね。けども、まあいちおうゼロですと、全国浄水場どこも不良率はゼロですということですね。

今度のこのコンセッションやらさせた場合に、じゃあ不良率ゼロになりますかという、それを証明してもらわないきゃいけないと思うんですね、県には。それはゼロじゃなくて1%ですと、1.5%ですと、あるいは3%ですと、かもしれないですね、実態は。これ、我々わかんないわけですよ、水を飲む側は誰も。県民誰もわからないですよ。

県はゼロです。今と同じゼロですと言っても、もしかしたら1%かもしれないし、3% かもしれない。それを、県は責任もって否定してもらわないといけないですね。同等 以上ですと言うんであれば、じゃあ1%の不良率でないですよ、3%でもないですよと、ゼロ%ですよということを、県は立証する責任があるわけです。

立証した上でないと水を流してもらっちゃ困るわけですね。だって同等以上にするって言ってるわけだから。不良率がゼロであるということを、立証してもらわなくちゃいけないと私は思ってます。これについてはまだ県のほうにも、私は個人的にメールで問い合わせしてますけど、まだいろんな場面で県に聞こうかと思ってますけどね。

とにかく、こういう水に関わらず、すべての製造業、浄水場も水の製造業ですから、 必ずこういう不良率は、普通のものであれば1%とか0.5%とか、まあ0.2~0.3%です。メーカーの方はご存知だと思いますけど。浄水場の場合はゼロ%じゃないといけないとなってますね。

いま「ゼロ%です」というふうに言ってるわけです。だったらば、このコンセッション、ゼロ%ですよねということを、県がね、立証しないといけないですよね。全然立証もしないし、説明もないわけですよ。この前聞いたときも、何もそういう話ないからね。そのことについては、県はね、頭にないんだなと思います。不良率ゼロであることを立証させるってこともね、非常に重要かなと私は思ってます。

小川さん

Bさん、ありがとうございます。

ご指摘のとおりと思います。私の現役時代の感覚というか仕事の関係で言っても、現在やっている方式は何十年も積み上げてきた試され済みのものなんですよ。その到達点というのは、Bさんが言うように0.001とか0.0001とか、そういう水準をキープしているわけです。「何も変える必要がないでしょ」ということなんです。

もちろん、改善は必要なことはあるかもしれない。そのことによって0.00001とか上がるかもしれない。ホントに細かい努力ですけど。それを、民間にして、変えてしまうということであれば、Bさんがおっしゃったとおり、今までのやり方を捨てて新しいやり方をするんであれば、まさに「不良率ゼロを立証しなければ、それやっちゃいけません」ということになると思います。

だから、われわれは、「今までやってきたことをちゃんとそのまま継続しなさい」と、「試されてきたことなんだから、いいじゃないそれで」というふうにこの(公開質問状の)中で入れた。立ってる立場は同じだと思います。

福島さん(宮城県議)

どうもこんにちは。私も連続講座、今日も3回目参加しております。

今日ちょっと地元で行事がありまして、遅れたんですけども、途中から聞いた小川さんの報告の中で、高知県須崎市のことがありました。浜松市の次が須崎市なんですが、須崎市は人口2万弱で、しかもそこの下水道全部ではなくて部分的で、だいたい2,000人ぐらいの下水道事業をコンセッションにするのに7年ぐらいかけたというぐらいの規模です。

で、その前に浜松市が、やはり下水道のほうをやってますけど、それも浜松市全体ではなくて、合併した3市2町なのかな、11ある処理区域のうち3つだけをコンセッションで民営化したということです。浜松市も、ちょっと不正確ですいませんけど、40万ぐらいの処理人口なんですけど、今回宮城県が行う民営化の下水道は4事業あるんですけど、約76万人なんですね。だから下水道だけを見てもすごい規模なんですよ。浜松市の倍をやろうとしていますし、須崎市にダウンサイジングするのにも、国がお金を出して、「ダウンサイジングしながらコンセッションしましょう」というのに非常に積極的になっていって、ようやく2つ目の事例ができたということなんです。

宮城県がしようとしているのは、まだどこもやっていない上水道のコンセッションと、全国で3つ目になるかもしれない下水道と、あと全然住民にはピンとこない赤字で施設の3割ぐらいしか使われていない工業用水まで一緒にして、住民のみなさんがよくわからないうちにドンドンドンドン進めようという、ホントに乱暴でむちゃくちゃなことをやってるなあというのを、私は須崎市に行って非常に感じました。

須崎市でも、議会で一度否決したんですね。「こういうやり方はダメだよ」ということで。それから結局、「施設の改修は自分たちでやりましょう」ということに、須崎市もなっています。それは職員の技術力を担保しなくちゃいけないから。全部出したんではそういうのが損なわれるというような形になってます。

小さい町が国がかりでコンセッションの事例を作ろうというのにも、議会も非常に真面目に取り組みましたし、行政のほうも、やはり将来的に技術者の技術力をちゃんと持ってなくちゃいけないということで計画を変えたりということでやっているのに比べて、宮城県がやろうとしていることは、ホントにむちゃくちゃだなあというふうに思っています。

下水だけでなくて上水、それに工業用水もくっつけてますし、蛇口までという浜松市がやってるように基礎自治体がやるコンセッションじゃなくて、自治体に卸してる上水、それから下水にしても広域ということで、なかなか見えにくいところを狙ってやってるなあという感じが非常にしてます。

実はもうすでに3つの企業グループが応募して、競争的対話というのも3回目が12月にします。1月の末か2月の初めには、この3グループのうちの1つが、優先権者ということで決まります。それが決まったら、ある程度の情報は開示されるんですけど、それまではその3グループがどういう企業が応募してるのかさっぱりわかっていないというか、 非公開というのが今のPFIの手法になっています。

最近、仙台市ガス局の民営化なんか、仙台市ははっきり言わないけれども、河北新報がスクープして「東北電力東京ガスがやります」みたいなのが流れてるんですけど、県の水道民営化は一切流れてきません。ただ、業界に詳しい人の話ですと、どうも浜松のようなヴェオリアオリックスが中心になってるところが第1候補なのではないかという話も聞いています。ただ、それも聞いていますというか、流れていますということで、噂話にしかすぎないんですね。

非常に大事な問題が、住民に秘密のうちに進められて、 そして情報が一気に開示されたら次は、来年の6月か9月の県議会にその企業グループとの契約の議案が出されます。まだまだ皆さんよくわからない状態になっていること自体、私たち議会側の責任が大きいんですけども、たくさん問題点を指摘しながら、大きな市民運動で契約の議案を出せないようなところまで追い詰めていく必要があるなというふうに思っております。

今議会で一番私が問題だなと思ったのは、料金改定の議案は議会に出されるんですが、それ以外のことについて、議会が関与する保証が今の契約書のどこにも出てないんです。だから調査することもできない状態に今あります。

そういった問題点を指摘しても、「1月末になったら、そういったことをみなさんにお知らせします」ということで、今すべてが秘密にされているということです。非常に 問題なので、与党の議員のみなさんにも問題点を訴えて、管工事事業者のみなさんも、「結局は外資とかいろんな大きな資本が入ってきて、今まで入ってきていた利益が中央あるいは外国に持って行かれるようなことになるんだよ」みたいな話もしながら大きな世論にして、ストップさせていかなくちゃいけないなと思ってるところです。雑駁で、すいません。以上です。

多々良さん(司会)

ありがとうございます。

いま福島県議の報告にも合ったように、そもそも私たちの命の水、この水道事業を買い取ろうとしている企業名さえ私たちは全然わかんないんですよ。これ、すごい話ですよね。こんなんでいいのかと思うんですけど。

来年の6月か9月の県議会には運営権者の設定の議案が出てきますから、間違いなくわかるんですけど、その前に1月か2月に、そういうことってわかりそうなんですか?

福島さん(宮城県議)

わかりそうです。公表するみたいな話をしてましたね。

多々良さん(司会)

それは3企業グループがどこかということを全部出すんですかね?

福島さん(宮城県議)

いや、優先権者です。

多々良さん(司会)

優先権者。なるほどね。いま福島さんが噂話ってことでおっしゃいましたけど、結局、どこにもヴェオリアが絡んでるんじゃないかっていう噂があるんですけど、そうなんですか?

福島さん(宮城県議)

そうですね。今いろんな民営化のコンサル事業者があずさ監査法人なんですけど、オリックスの役員の方が役員になっている監査法人なので、まあそういう構図でできてるのかなみたいな。浜松もそうです。

多々良さん(司会)

もうすでに、利益共同体というか、利権の構造ができていて、「3つの企業グループが応募してるよ」つったって、どこに当たっても全部そういうトコが絡んでるっていう(苦笑)そういう可能性もある、と。わかんないですけど、噂もあると。そういうことですね。ハイ、議会の情報や視察先の情報もご提供いただきました。

嵯峨さん(仙台市議)

市会議員をしております嵯峨です。

ここは市民のみなさんがおられるので、仙台市の取り組みですとか、あとは七ヶ宿ダムから受水している仙台市も含めて県内の17の市町の状況も付け加えさせていただきたいなあと思います。

17の受水市町で連絡会を作ってまして、仙台市がその事務局になっております。それでこの間3回ほど、県に様々な質問状を出しています。去年までは、県の答えは、すべてほとんど検討中、検討中という回答だったんですね。最近9月かな、また県に質問状を出しました。そうしたら、ちょぴっとは進んできていました。

ところが、先ほど小川さんが報告したように、モニタリング検査のところは、やっぱり同じように「水質管理基準を県が管理しているのを参考にすることとしている」とか、「水質管理は現行と同等以上にすることを求めています」みたいなことを書いてあるんですね。

それから災害時の体制をどうするのかですね。東日本大震災の時は、市の水道の復興の報告にも書いてあったんですが、七ヶ宿から来ているもの凄いでっかい道管が破断しましたよね。それで仙台市もかなり水道ストップが長引いたんですけども、その時書いてあったのは、圧倒的にマンパワーが不足していた、と。そういうふうに報告書で述べているんですよね。

あと企業が撤退した場合どうするのかということで、企業が撤退した場合の回答はですね、「撤退したらまた別な事業者を募集します」みたいなことが書いてあったのね。(笑)えーって、そんな撤退して、じゃその後、県民はどうやって水を使えばいいんですかとね、次に事業者募集する間どうするんだろう?非常に無責任な回答だなあと思ったんですね。

仙台市の場合は、先ほどおっしゃっていただいたように、水道の基本計画改定で、これから人口も減少するので、老朽化した浄水場を修繕なんかする時は、統廃合してダウンサイジングをして、コスト削減を図っていくだとか、水道管の更新なんかも大きな口径じゃなくて一回り小さな口径にしていくだとか、非常に現実に沿った計画にはしているんですね。だから非常にまともな考えだなあと思ってはいるんですね。

やっぱり受水17の市町が継続して、こういうふうに粘り強く県のほうに質問状を出し続けるということは非常に大事だなあと思ってるんです。だから私たちそれに呼応して、受水17市町と一緒に住民のみなさんを巻き込んだ形で、ホントに運動を強めていかなきゃいけないなあと思っています。まだまだやっぱり多くの県民のみなさんは、この民営化のことは必ずしも周知というのか、わかっているっていう状況ではないのかなあと思うので、とにかく仙台市は一番大きいですから、頑張っていきたいなと思っています。

それから、先ほど水道料金が高いのは、仙南仙塩広域水道の受水料金じゃないか、と。それは確かにそうなんです。でも建設費、初期投資の返済もほぼ終わったみたいですよね。そうすると、あとはむしろ料金を安くすることが可能なんではないのかなあ(福島さん「今年下げたんです」)。下げたんですね。そういう展望なんかも、むしろ見えてくるんじゃないのかなあと思うので、その点でも、皆さんともっともっと世論を高めていく必要があるかなと思っています。以上です。