宮城県の水道民営化問題

命の水を守るため、水道の情報公開を求めていきましょう!

宮城の水が危ない!ストップ水道民営化 Part.1   講演 「水は人権 コンセッションではいけない」

2021年5月23日、仙台弁護士会館にて、命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ主催の「宮城の水が危ない! ストップ!水道民営化 市民集会」が行われました。

みやぎ型管理運営方式 水道民営化反対 市民集会

 

 

miyagi-suidou.hatenablog.com

 

 開会の挨拶

 

多々良哲 命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ

多々良哲さん(司会)

「宮城の水が危ない! ストップ!水道民営化 市民集会」

本日は、みなさん、お集まりいただいてありがとうございます(と一礼する)。

みなさんご存じのとおり、いま宮城県は、村井知事肝入りの政策として、みやぎ型管理運営方式と称して、水道民営化、正確に言うと、水道コンセッションなんですけれども、これを押し進めようとしています。

私たちは、これを何とか凍結すべく、署名運動に取り組んでいます。

ですが、宮城県は、この4月、5月、6月にかけて、コロナ感染拡大の状況にもかかわらず、県内数カ所で県民説明会を強行に開催しまして、6月の宮城県議会で、みやぎ型について、承認を得る手続きを進めてしまおうとしています。

なんとか、ここで、私たち県民の力を集めて、あるいは、全国の「水道を守ろう!」「命の水を守ろう!」という運動を進めていらっしゃる方々と結びついて、これを止めていきたいと思っています。今日はそのための集会です。よろしくお願いします!

 

今すぐネット署名を!

キャンペーン · 宮城県議会議長 石川光次郎殿: 宮城県の「水道民営化」手続きを凍結してください! · Change.org

宮城 水道民営化反対 ネット署名

 

個人用の署名用紙は、下記のアドレスでダウンロードできます。

http://www.miyagikenmin-fukkoushien.com/pdf/index/4.3shiminnshuukai%20shomeiyoushi.pdf
命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ 署名用紙 水道民営化反対

 

団体用の署名用紙は、下記のアドレスでダウンロードできます。

http://www.miyagikenmin-fukkoushien.com/pdf/index/4.3shomei%20danntaiyou.pdf

みやぎ型管理運営方式 署名用紙

紙とネットの重複署名はできませんのでご注意ください。

代筆はできませんので、必ずご本人でご署名くださるようお願いいたします。

署名用紙のダウンロードができない方や多数枚ご必要な場合は、佐久間敬子法律事務所(tel.022-267-2288)へお電話ください。

 

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佐久間敬子 弁護士 命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ

佐久間敬子さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

みなさま、こんにちは。

かくも大勢の方にお集まりいただいて、ホントに嬉しいし感謝申し上げます。ちょっと開会遅れましたが、これから無事にこの集会が実行されればいいなと思っております。

いま司会の多々良さんから、ご報告がありましたけれども、この宮城の水の 民営化ですね、6月15日の県議会に、議案を提出するということで、私たちのこの運動は、大詰めを迎えています。

私たちはこれまでも、再三にわたって、十分な説明が行われていない、県民は納得していない、そして、県から水を買っている受水市町村ですね、ここも、「なかなか事態がつかめないで、ヤキモキしている」と新聞で報道されましたが、そういう実態があるということで、6月県議会に、このコンセッションを認めると、最終決定するという条例は、ぜひ、凍結してほしいという請願をする、それに、みなさんに賛同していただくという運動を展開してまいりました。

3月31日から始めまして、50日を経過しました。全国のみなさんから署名が集まってますし、署名に必ず、応援メッセージが付いてるんですね。ホントに感激しました。

こういうみなさんの力を借りて、残る約3週間ですね、いっそう、この請願署名運動というものを、不退転で進めていきたいということの私たちの決意表明、みなさんの一緒にやりましょうというお気持ち、これを結集して、また今日からスタートしていく、と。これが、この集会の第一の目的です。

いま多々良さん申し上げたようにですね、県はこの受注業者が決まってから、事業説明会やってます。私も、参加して驚きました。バラ色の水道事業を描いてるんですけも、どうしてそうなるのか中身がわからないんですね。それは、ある意味で当然のことなんですね。

みなさんにお配りした資料に、私たちの署名推進Newsというのがありますが、その裏を見ていただくと、詳細な事業計画書というのは、事業開始は来年の4月ですが、その 1カ月前、来年の2月末、ここまでに提出されるということなんですね。

 

みやぎ型管理運営方式 凍結署名

みやぎ型管理運営方式 各種計画書

「おかしいんじゃないか」、と。「中身をもっと説明してほしい」ということですが、それができないことになっている。県は、「コンセッションというのは、そういう方式なんです」と言ってます。

公共サービスというのは、県がいろいろ説明して、県民がいろいろ疑問を出して、質問して、意見を取り入れて、政策が決まっていく。これが当たり前の方式だと思いますし、そういう形で、行政と住民の間の意見交換をやっているわけですね。これとは全く違った異質の手続き、これがコンセッションだというふうに思います。

6月の県議会は、そういうように、内容も漠としてわからない、ブラックボックスみたいなものを決めるわけです。

果たしてそれでいいんですか? 

県議会の議員さんたちは、重大な責任を持って、この議会の議案について、ご自分たちの意見を出すということになると思います。

今日は、もう一つこの集会の目的があります。それは、水は、命の水だ。公衆衛生にとって不可欠なものだ」、と。それを担う事業体というのは、やはり、公共であるべきではないかと私たちは考えています。

そこで、尾林先生、PFI、PPPの第一人者でいらっしゃるわけですが、 尾林先生に「水は人権―水道事業にコンセッションを導入してよいのか」というタイトルで、お話を依頼しました。

そうしましたら、みなさんにお配りしたレジュメにありますように、先生からのお借りしたタイトルは、「水は人権 コンセッションではいけない」ということなんですね。

まさにこれが、私たちが漠然とと言いますか、あまり明確ではなく考えていたことを、先生がこういう明確な言葉で表現してくれたという、ホントに私たちの希望したとおりのお話が伺えるかなと思っています。

それから、今日の集会ですが、仙台市内の平和団体で構成している憲法記念行事というのがありますが、その企画の一つとして、参加させていただいています。

あまり宣伝されてないので、みなさんおわかりでないだろうと思いますが、「水は人権だ」。これは、2010年の国連決議、総会決議があるんですね。

そして、憲法25条2項で、公衆衛生の向上増進は国の責務と書いてあります。従って、憲法上の問題として捉えなきゃいけないと思いました。

仙台では、様々な平和愛好団体や憲法を守ろうという団体が活発に活動していますが、なかなか水の問題に関心を持っていただけていない状態だと思いました。

そこで、これは私たちの人権の問題、それから、民主主義、住民自治の問題、そういう意味で、憲法の理念に沿った水道事業が展開されるべきであるということを、もう一度確認したいと思いまして、尾林先生にご講演をお願いしたわけです。

先生大変のお忙しくて、今日は岩手のほうからお越しいただいたようですが、私たち、一番最初に、尾林先生、橋本淳司さんに講演をお願いしたという、そういうご縁もありまして、ご無理を聞いていただいて、講演に至ったわけです。

きょうはホントに、尾林先生ありがとうございます(と礼をする)。

みなさんもどうぞ、じっくりと勉強して、私たちは、「この水道事業のコンセッション、駄目なんだ」と確信を持ちたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 

 講演  尾林芳匡弁護士 「水は人権 コンセッションではいけない」

 

youtu.be

 

私の話はお手元のレジュメに沿って、「水は人権とはどういうことなのか? 」という話をして、途中で、一昨年に、水道再公営化したパリと、再公営化への機運が高まっているロンドンに行った時の報告を挟んで、その後、またレジュメに戻るというやり方でお話をさせていただきます。1時間程度でよろしかったですね。

じゃあ早速、中身に入ります。レジュメの1ページです。

注)尾林芳匡氏の講演レジュメは下記からダウンロードできます。

http://www.miyagikenmin-fukkoushien.com/pdf/index/5.23mizuwajinnkenn.pdf?fbclid=IwAR2tfME_uY6q3YDsqF9vTzjS_nnMYDjhpn4JHsi09snbJy2hxScCf7EZ9JA

尾林芳匡 みやぎ型管理運営方式

             尾林芳匡氏の講演レジュメより

 

水道法には、「清浄にして豊富低廉な水の供給を図る」ということが書いてあります。水道事業という時に、「きれいであること、たっぷりあること、そして安いこと」というのが、とても大切です。

なんで水道で、このようなことが決められるのかと言いますと、憲法25条の生存権保障にその理由があります。

みなさん、生存権という時によくご存じなのは、憲法25条1項の健康で文化的な生活を営む権利のほうが、すぐ思い浮かぶし有名なんですけども、注目していただきたいのは、25条2項に、公衆衛生は国の責任だということが書いてあります。

どういうことかと言いますと、地方自治体が責任を持つとか、公衆衛生について個々人が、お金を持ってる人だけが衛生が良くなるようなことをやっていたのでは、公衆衛生は守れないからなんです。

今、たまたまコロナがこうなっていますけれども、コロナの感染を防ごうと思ったら、仙台市だけであるとか、福島県だけであるとか、そんなふうに地方自治体に責任を押し付けていたのでは、コロナは防げません。人の移動がありますので、たちまち、感染が広がってしまいます。

同じように水道が、衛生的な水が豊富に安く供給されるということが、一つの自治体でもうまくいかなくなった時には、その地方自治体の住民は、清潔な水を十分に使うことができなくなって、汚い水で伝染病が広がる、水を通して疫病が広がるということが、かつてあったわけです。

そのようなことになれば、たまたま地方自治体として、きれいな水を供給する自治体があったとしても、隣町から疫病が広がってきます。

こういう意味で、公衆衛生というのは、地方自治体任せにしてはいけないんです。

ですから今、しばしば水道民営化の中で議論されているように、「このままいくとこの地方自治体は、水道料金が値上げになるぞ」みたいに、あたかも、地方自治体しだいのようなことを、メディアなんかが流すことがありますけど、あれはそもそもの考え方が間違っています。

もし一部の地方自治体で、財政基盤が弱かったり、水の供給に不都合が生じた時には、国の責任でしっかり支援をして、どんな地方自治体でも、住民が豊富に清潔な水を安く得られるように支えるのが、国の責任だというのが、憲法にも水道法にも書いてます。

水道法は、(2)(3)にいきますけれども、2つのことを、国の責任と地方自治体の責任を書き分けています。

つまり地方自治は、その地方の様子をよくわかっていますので、地域の自然的社会的条件に応じて計画を作ることが、地方自治体の責任だと書いています。

そしては、財政上技術上の支援をするのが責任だと書いてあります。

私は、最近のコンセッションについての議論を見ていて、本当に逆立ちしてると思うんですけれども、国が、「財政上の支援をほしかったら、20年間、コンセッションで企業に任せなさい」ということを、今の政権は打ち出していて、それに地方自治体の側が、地域の条件やさまざまな事情を抜きにして、「国が財政支援をしてくれそうだから、水道を売り渡しましょう」ということに慣れてしまっていると、まったく、憲法と水道法が予定している事態と、あべこべの事態が進んでいます。

地域の実情に応じた地方自治体の計画を、国が支援するのではなくて、国が地方自治体に向かって、「水道についての計画を作る権利や、水道料金をコントロールする権利を、手放しなさい。そうすれば、財政支援を少ししましょう」という形で、あべこべなことをやっている。まことにおかしな許しがたいことだと思っています。

1ページの2番にあるように、水道事業は地方公営企業です。しばしば地方公営企業は、企業なので、独立採算が必要であるかのように言われます。しかし、決してそうではありません。

地方公営企業法の中にも、必ず、水について、社会的な企業主義だけを強調すればいいというものではなくて、公共の福祉のためにやらなければいけないということが書いてありますし、地方自治体が財政的に企業の支援をすることも許されています。

それから、このように水道は公共性があるにもかかわらず、1ページの下の3番と4番に、それからレジュメの2ページの5番にありますように、繰り返し繰り返し、「水道を、民間企業にやらせてはどうだ」というような提言がなされてきました。

尾林芳匡 みやぎ型管理運営方式

             尾林芳匡氏の講演レジュメより

 

まず、日本水道協会の調査によりますと、民間的手法を水道事業に導入することについては、ずっと経済界が、「やらせろ、やらせろ」と言ってきたわけですけども、ほとんどと言っていいほど進んでいません。

中にはいくつか、株式会社が経営するという法律的な仕組みの水道事業があるんですけども、それの多くは、県が中心として、実質上、半官半民でやっているような所がほとんどで、今回宮城県で問題になっているように、純然たる民営企業が、お金儲けのために水道事業をやるという経験は、わが国にはまだありません。

それから、2ページの上のほうにありますけれども、経済界は次々と、三井住友銀行やみずほ総研や大和総研などが、繰り返し繰り返し、「水道を企業にやらせてほしい」という提言を出してきています。

私は、全国をこうして、水道民営化に反対する住民運動のみなさんのために、学習会に駆け回っていますけれども、時々、「水道民営化に大変問題があるということは、尾林先生の話を聞いてわかったけれども、何のために、水道民営化っていうのはやられようとしてるんですか? 」という質問を受けることがあるんですね。

これは全く答えは簡単で、水道でお金儲けしたい人が、「やらせろ」と言ってるために過ぎません。営利企業に任せるとよくなるという要素は、1パーセントもありません。

ですので、このようにコンセッションでやりやすくした水道法の一部改正の経営俯瞰をしてきたのが、こういうみずほ総研とか大和総研の人たちで、この人たちが、「設備を全部自分たちで所有をして、災害で壊れた時には自分たちで修理をしなければいけないようでは、お金儲けはできないから、災害の時の修理などは、地方自治体が税金でやってもらって、お金儲けするところだけ自分たちやらせてほしい」ということを提言をし、そのとおりに国の法改正がされたということにすぎません。

コンセッションという言葉を、後で説明し忘れるといけませんので、本来の意味をここで一言、申し上げておきますけれども、お手元にスマホお持ちの方は、コンセッションを英語でどういう意味なのか、ちょっと検索をしてみてください。concession かな。

なんというのが出てくるかと言いますとね、利権ですよ、利権。お金儲けをする特権。

世界史の高校生向けの教科書で、最近英語版が出ていまして、パラパラ見ていましたら、19世紀のイギリスが、中国大陸に進出していって、特定の街とか特定の鉄道について、特権的に収益を独占する権利を持つっていうような、イギリスのアジア進出という章があるんですが、その中に、租界と言って、この地域だけはイギリスが全部儲けていい、そういう特権を、特定の地域について設けた所に、高校生向けの英語版の世界史教科書に、ちゃんとconcession て出てきていましたので、間違いありません。私だけが言ってることではなくて、間違いありません。

要するに、お金儲けをするための特権であります。

もともと、このお金儲けをする特権という意味は、おそらく、PFI法という法律の中に、コンセッション、つまり、運営権方式というのを盛り込む、実行作業をした中央省庁のお役人たちは、よくわかっていたと思うんです。

ですけれども、このお金儲けをするという本質的なことについて、あえてぼかして日本の法律にする時に、「運営権」というように、収益をする利権、特権、利権という言葉をですね、あえて翻訳の時にねじ曲げて、「運営する権利」というふうに訳語を当てて、法文の中にそれを書き込んだというのが、実態であります。

さて、そのようなコンセッションは、世界中に例がありまして、2ページの真ん中に、世界で進む水ビジネスと再公営化といって、海外で水道事業を営利企業に任せた時に、何が起きたのかということを、何点か紹介をしておきました。

フィリピン・マニラ市では、水道料金が4倍から5倍に跳ね上がりました。

アメリカのアトランタ市のバックヘッド地区では、水道の蛇口から、お金儲け主義の企業が、水質を維持するための設備のメンテナンスをサボったために、茶色の水が出た。

あるいは、ボリビアコチャバンバ市では、雨水まで有料化されて、社会的に弱い層が、衛生的な水を得られなくなって、住民の暴動が起きましたし、フランスのパリでは、料金高騰に加えて、不適切な経営実態が問題となったということであります。

私が海外の事情を、こうして紹介するのはなぜかと言いますと、冒頭に申し上げましたとおり、私はPFIについて、日本中の失敗した事例だとか、サービスが低下した事例だとか、企業が経営破綻した事例だとかを紹介をして、批判をしてきたわけです。これは、事実に基づいて、実証的に批判をしてきたわけです。

ところが、水道が純然たる営利企業に任された時に、どういう問題が起きるのかということについては、「日本の国内の実例で、こんなふうになります」という実例を、紹介することはできません。なぜなら、日本はすべて公営水道だからです。

そこで私は、水道が民営化された時に、どんな問題が起きるかを、実証的にみなさんに説明するためには、日本国内の事例を見ていただけではいけないということに思い至りまして、今から2年前に、自らで企画をして、自ら旅行社に持ち込んで、「尾林弁護士と行くパリ、ロンドン 水道再公営化を見る旅」というのを、企画して主催して参加して、行ってきました。

そこで見て聞いてきたことを、少しご報告をさせていただきますので、ここで、パワーポイントのほうに画面を移していただきたいんですが。じゃあ、時間も限られていますので、どんどん進みましょう。海外の実情から水道民営化を考える。

              尾林芳匡氏プレゼン資料より


 

             尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

日本では、2018年水道法改正で、コンセッションっていうのが容易になりましたけどれも、それを批判していくうえで、世界的な水道民営化への批判や、パリ市など、数百の地方自治体で再公営化されていること、そして、一番最初に民営化の旗を振ったサッチャーさんのイギリスでも、再公営化を求める世論が広がっていることなどを、よく知る必要があるということで、日本で水道民営化に対抗するためには、世界に学ぶことが必要であるということで、企画立案し、引率をし、解説をし、行ってきました。

 

             尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

まず、パリでは、水の館やCGTという労働組合、水企業に働く人たちの組織、それから地方議員の人たちの話を聞きましたし、ロンドンも UNITE the UNION という組合や、WE OWN IT という市民団体に話を聞いてきました。

 

              尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

             尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

これが水の館です。特徴はですね、パリに観光に行った方はご存知かと思うんですけど、ガイドさんが知らないんですね。観光のガイドブックに載っていません。 

 

 

             尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

これは近くから撮った所です。

 

              尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

これが入った所でして、正面にある設備が無料の給水設備です。

再公営化されたパリ市の水道局は、公園ですとか道路に、無料で市民が水を汲める場所をたくさん作って、スマホアプリでどこにあるかが検索してわかるようになっています。

それから、その施設がこういう形をしていて、その奥に、人の形で水滴みたいなものがありますけれども、これがパリ市水道公社のロゴマークで、オー・ド・パリ、パリの水っていう意味だそうです。

 

            尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

中はこんなふうになっていて、日本にも、水道局が設備を説明する施設があちこちにありますので、ぜひ一度、勉強に行っていただくといいと思うんですけれども、水源からどんなふうになってるかが説明されています。

       

                                         

             尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

これが全体像です。

 

              尾林芳匡氏プレゼン資料より

 これが水道管の中の様子です。

 

               尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

これは何をやっているかというと、水道博物館の中にも、無料で汲める水が、ちゃんと用意してありまして、そこで私が嬉しそうに水を汲んでいるシーンですね。

日本にいますと、どの公園にも水飲み場が無料であって当たり前ですので、「何を尾林弁護士は、わざわざパリまで行って、嬉しそうに水を汲んでいるんだ」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、後でも出てきますけど、無料でパリ市民に衛生的な水を提供する、いくつかの供給施設では炭酸水も無料で提供するようになっていて、これがパリ市の水道再公営化の一つのシンボルになっていますので、この後も何回か、ただ水汲んでるだけなのに、えらく嬉しそうにしているというところが出てきます。それはご容赦ください。

 

             尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

水道公社の聞き取りも行きまして。

 

               尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

これが入り口で、eau de paris というロゴマークがちゃんと周りに立っています。

 

              尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

パリ市の水道公社で、一般財源を基本的には使わないで、水道料金が3.43€(ユーロ)の1/3が公社収入になり、水をつくり配水に使い、48.3%は下水で、残りの20.3%が税金である、と。

 

             尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

19世紀後半に水道網ができたんですけれども、1987年のシラク市長時代に、官民混合の会社を作って、出資割合が、ヴェオリア社の子会社、そしてスエズの子会社とパリ市の共同出資の企業ができて、再公営化まで、この民間企業が担当した、と。

で、2010年に再公営化され、この時は、市議会の市長が、契約更新しない決定をして、公的な水道に戻し、2009年には100%市が管理する統合された水道公社となります。

 

             尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

民間時代の経営は、極めて不透明で、水道料金の上昇がどの程度だったかというと、1985年から2008年にかけて174% もの値上げをしました。

民営化されている時の2000年の調査でも、値上げをすべて正当化することはできないと結論付けられています。

2つの巨大企業は、下請けに仕事をさせて、自分たちのグループ会社に高値発注をすると、複雑な契約関係で、情報公開はされない。

本日の集会資料の中に、情報公開規定の案が配られていますけれども、その中に、「契約当事者以外の競争上の地位を脅かす情報は公開しない」って書いてありますね。

いつもこれ、企業秘密を隠すときの決まり文句が、「競争上の地位を悪くする」っていう言葉なんですけれども、要するに、水道企業が下請け会社に高く発注をして、経費を高く装って、それで、「経費がかさんだぞ」と言って、水道料金の値上げを正統化しようとする。

「何でそんなに下請代金を高く払わなければいけないのか? 」と情報公開請求しようとした時には、「それは下請け企業の競争上の利益を損なうので、情報公開できません」と言って、隠されるという仕組みになっています。

パリでも、民営化時代そうでしたし、近く決められそうな宮城県の担当企業の情報公開規定でも、しっかり、「競争的地位を脅かす時には、情報公開しないことができる」となっていますので、肝心かなめな、自分の息のかかった会社に高く発注して、経費を高く装うという仕組みに、メスを入れられる仕組みっていうのは、コンセッションのもとでは絶対に作れません。

競争が起きないので、工事経費がかさんで、水道料金の上昇がもたらされているということが問題でした。再公営化の後は、供給は水道公社がする明確な関係になりました。

 

               尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

再公営化去れた公社の理事会には、市議会議員の代表が13人、それから市民団体の代表が3人、雇われている職員の組合の代表などが2人、専門家が2人など、まさに、議会の様々な会派の人たちに意見を聞いて、住民団体も、雇われている職員の方の代表も参加をして、水道事業を議論する理事会になったというのが、再公営化であります。

2010年に再公営化されて、理事会がさっそくに水道料金を8%引き下げをしました。

もともと再公営化前の2006年に、水の監視機構というのがあって、水オブザバトリーと言うんですけれども、そこは、「水道料金が高いぞ」ということを、すでに進言していましたので、スムーズに水道料金の引き下げ決定が実現したそうです。

今日配られている資料の中に、20年間で担当企業がどれだけの利益を見込んでいるかという数字が出ていました。92億円利益を上げる予定だそうです。

コンセッションというのは、利益が上がると、担当民営化営利企業の株主配当になったり、懐に入れて、何にも県民に還元はされません。

しかし、再公営化されたパリ市の水道公社は、直ちに利益が上がりすぎているぶんを、あるいは役員報酬が高額になっているぶんを、主人公である市民に還元しなければいけないということで、値下げをしたわけです。

コンセッションに行く前から、20年で92億円の利益が見込まれているのであれば、その92億円の利益のぶんは、宮城県民に対して水道料金引き下げで還元ができるが、公営水道の素晴らしさなんです。

それから、再公営化されて、私たちの調査の時点で、すでに10年間経っていたわけですけれども、水質の規制は100% 守られていて、利用者のアンケートの満足度は94%。

それから、自らの水道料金収入の中から、7,500万€(ユーロ)の設備投資をしていて、設備投資、つまり、水道管を新しく修繕するようなお金というのは、自己資金が74%で、その他に日本で言う企業債、地方債みたいなものですね、それを使っているというお話でした。

 

              尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

パリ市の水道公社は、水資源や環境保全についても責任を持つ、水源である流域を守るという活動もしています。

これも大切な点なんですが、営利企業というのは、自分たちが儲けをするために、たとえばですね、ゴミの焼却場を担当するとなった企業は、とにかく燃やすゴミを増やしたいということをするんですね。

ところが、多くの自治体は環境政策として、燃やすゴミを減らして、分別をして分けていって、資源としてリサイクルしようとする政策をとっていますので、お金儲けをしていくということと、環境保全をする地方自治体の政策とは、時として矛盾をするわけです。

 

              尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

水道公社が生物多様性を守ることで、地域全体の環境保護に貢献するとか、飲み水ほど質を良くしなくても、たとえば、水撒きに使う水などは、中間水と言って、そのようなネットワークも作っている。

 

                尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

それから、パリ市全体の気候変動対策も担っていて、公社そのものに太陽光発電を設置しているし、エネルギー使用量を減らしているそうです。

 

              尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

公営化された水道の大切な政策の柱が、先ほど来、私が嬉しそうに水を汲んでいる、社会的弱者、一般市民に、水道へのアクセスを保障するということ、水道料金を払えない時の供給停止を遅らせるとか、水道料金を低く定めて統制する、そして教育的キャンペーンとして、水道水の利用を推進する。

つまり、ペットボトルで、自動販売機でお金を使って、高い企業の儲けにつながるような飲み物を消費するだけでなくて、公営の水道でしっかりのどを潤すということを、教育的な政策としてもやっているということです。

 

              尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

これが、パリ市内に千以上も無料給水所を設置して管理をしていて、一部の給水所では炭酸水も無料で、位置はスマホで知ることができるということです。

 

              尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

調査では77% のパリ市民が水道水を飲んでいて、利用者に対する調査を常に実施をし、市民の声を聞く!水道事業でも。

宮城県では、今ですね、大変説明会のやり方が乱暴で、市民に情報も提供されないし、市民の声をしっかり聞かないということが、問題になっているようですけども、市民の声をしっかり聞くということが、公営水道の眼目だということであります。

 

             尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

労働組合に話を聞きに行きまして、5つの主要組合の1つで71万人いる組合です。

 

             尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

パリ市郊外のモントルイユに巨大なビルがありまして。

 

             尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

たくさんのナショナルセンターや産業別組合が入っています。

 

              尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

中庭が広くてですね、そこここで労働者が集まっているような組合のビルでした。

 

 

              尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

で、説明を聞いたんですけれども、施設の所有が完全に民間企業のものになる方式ではないコンセッションが、フランスではむしろ主流であったということです。

なんですか、「コンセッションは民営化なのか、そうでないのか」みたいなね、議論をやっている人たちが、宮城県議会ではいたようですけれども、実は、コンセッションというのは、設備の所有者としての様々な責任を企業が逃れて、災害などで水道設備が傷んだ時には、税金で修繕するけれども、経営してお金儲けするところだけは民間企業が持っていくという方式で、フランスでも開発されていたものだそうです。

 

              尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

それから、組合役員の方に聞きましたけれども、利益を増やすために子会社化を進めて、仕事は子会社に発注されて不透明になった、と。つまり、高値発注を子会社にするということですね。

子会社は、水事業に関わる人を低い労働条件で雇うようになっていた、と。で、民営化されていた1985年から2010年までの25年間、パリ市から出向した人と、新たな雇用された人の労働条件が、分離した状態で進んだ、と。

 

              尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

労働組合としては、市民向けの啓発活動もしている、と。

 

              尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

市議会議員の方にも話を聞きまして、市民運動やいくつかの非営利団体が、社会党共産党緑の党・急進党の共通プログラム、というのは共通政策ですね、共通政策として、水道の再公営化を掲げて選挙を戦って、市議会の多数派を取り、市長にも水道再公営化を公約をしてもらって、その市長をみんなで押して、当選してもらうということであります。

当たり前のことですけれども、水道コンセッション、民営化というのは、議会の多数派と宮城県で言えば県知事が推進派であるから進んでいるわけでありまして、議会の構成と知事の姿勢を変えるということが、一番の大きいメンタルであるということは、パリ市でも、まさに同じであります。

 

              尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

ロンドンに着きまして、また組合の聞き取り、ヒアリングに向かいます。

 

              尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

UNITE the UNION というのは、ロンドンの中心部に本部ビルがある140万人の20の部門の様々な産業を組織しているという組合です。

 

              尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

これが水道事業の組合の方で、イギリスはいま民間企業に担当されていますけれども、Office of Water 、略してOfwat(オフワット)という水を監視する公的機関ができていまして、様々な担当する民間企業に、「お宅もっとちゃんとやれ」というような指導をするんだそうですね。

で、この企業はですね、「13億ポンド投資せよ」というようにOfwatから指導を受けたのに、3億ポンド投資するだけで、あとの10億ポンドはサボタージュしたっていう話を、告発をしていました。

日本でコンセッションになると、どういうことになるかと言いますと、監視をして、「もっとここの修理をしっかりしなさい」という、このOfwatのような機関、組織そのものが、現状ではないんですよ。

そして、後でも説明しますけれども、水道事業ちゃんとやってるかどうかのモニタリングは、誰がやるかって言うと、担当企業が、「自分でやります」ということになってるんです(と苦笑すると、会場から「ダメだ」の声が上がる)。

ですので、公的な監視機構が確立しているイギリスでさえ、13億ポンド修繕が必要なところを、3億ポンドだけやって、お茶を濁すということがまかり通ってるんですから、日本がどうなるのかは、大変心もとないものがあります。

 

              尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

それから、労働組合の話を聞いただけではなくて、イギリスには民営化された公共サービスを住民の手に取り戻すことを運動のテーマにしている We Own It という市民団体がありまして、あるきっかけで、私はこういう団体の存在を知りまして、是非ここの団体に話を聞きたい。

We Own It というのは、私よりも前に日本に、イギリスのこの市民団体を紹介した人というのは一人もいません。なので、私が翻訳を付けまして、中学生でもわかる英語ですけど、「私たちがそれを所有する」と言っても、面白くもなんともないでしょ。で、私が本を書いたりする時に、「私たちこそ所有者だ」運動と名付けました。

 

              尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

この真ん中の女性が代表者でして、Cat Hobbs さんと言うんですけど、「イギリスは、サッチャーの民営化を世界に普及させたが、公的所有のほうがいいんじゃないかという意見がまだあった」と。

イギリスでも、世界でも、民営化が、経済的にも社会的にも機能していないことを示す証拠は、山のようにある。

トランスナショナル研究所の調査やグリニッジ大学の調査などで、データは十分に出ている。

で、市民団体の役割というのは、今日、市民運動をやっているみなさんが。大勢聞いていただいていると思いますので、草の根の人に伝えることが役割で、研究機関が出しているものを読む時間がない人のために、わかりやすく発信するということを心がけているということでした。

 

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              尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

We Own It の説明の続きですけど、イギリスの話ですね、今度は。

民営化された25年間に、借金ゼロから出発したが水道事業の借金が560億ポンドに、日本円にすると、6兆円ぐらいですかね、あっという間に増えていって、投資家の報酬のぶんだけ借金になった、と。

つまり、もともとは、借金なしで経営されていた水道事業なのに、何億円という報酬を取るわけですね。

どんな報酬を取ってるかと言うと、9つの企業については、250万ポンドの報酬を取ってる、と。250万ポンドって言うと、日本円にすると3億円ぐらいですね。

ですから、水道で大儲けをする企業っていうのは、役員の人たちに、多くのお金の報酬をバラ撒いています。それが、市民の水道料金によって、そういう人たちの何億円っていう報酬を賄うわけです。

さて、宮城県を担当しようとしているヴェオリア社の役員の人たちは、どのぐらいの役員報酬を取って、みなさん達の収める水道料金が、そういう人たちの何億っていう役員報酬になるのかと思うと、少し、ちょっと我慢ができない感じがする方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。

そして、水道事業の健全さを測る一つの物差しに、漏水率というのがあります。

つまり、設備投資が十分に行われないで、設備が老朽化したものを放っておいて、さらに運用して、儲け本位、経費節減ばかりやっていると、水が漏れる率がどんどん上がってくるんですね。

イギリスでは、20%から25%の水道の漏水率だそうです。つまり、1トンの水を浄水しても、最終供給するまでの間に、3/4トンぐらいまで減ってしまうということですね。

それから、水企業が汚染を輩出して、川や海や汚染水を浄化することに投資しない結果が、これであるということも告発をしていました。

 

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              尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

We Own It の戦略は3つあるということで、1つは、証拠に基づいた政策。パリやスコットランドなど、公営で良く機能しているところから学び、再公営化した時の移行チームを作って、学びながら公営に進めていきたい。

 

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              尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

2つ目に、新しい水道公社は、市民参加の統治でやりたい。

地方議会に選出された政治家、企業経営のわかる人、水道労働者と水道利用者など、地域社会の声が反映される理事会の構成、市民参加の新しい機関を提案して、協同組合のイメージで、政府から独立しているべき。利用者の声を反映する。

つまり、さっき前半で紹介したパリ市の水道公社が、何をどうやっているかということをそのまま、イギリスの市民運動の方たちは学んで、イギリスの企業による水道を、このように直そうじゃないかという運動をしているということです。

 

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              尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

3つ目が、21世紀型で環境を守る政策。

脱炭素、水の消費量を減らす、漏洩率を引き下げるための設備投資を進める。水道アクセスを社会的弱者も含む100%に保障する。無料の給水設備を作って、炭酸水を含めて供給する。

民営化された水道会社の投資家への支払いを、ここが大事なところですね、投資家への支払いということは、さっきの億の単位の役員報酬や株主への利益配当を、市民サービスのために使えば、1週間あたり、700箇所無料の給水施設を作っていくことができるというようにして、イギリスの市民運動は、「一部の水道会社の役員報酬を、みなさんのための無料給水施設を作ることに回そうじゃないか」と、きわめてわかりやすいメッセージを伝えているそうです。

地域の人と共に活動し、広大な土地を狩猟に貸し出し、水源地を守る植林をするなどの活動をしています。

 

 

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              尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

再公営化は、We Own It が心がけているように、「再公営化はできるんだ!」と、希望を市民に伝えて勇気づけていくっていうことが大事だと思っている、と。

署名を集めて、国会議員に働きかける。 公営施設に戻ったらやってほしい「私たちの水の計画」。

2018年は、民営化29年を鍵かっこ付きで「祝う」フラッシュモブのパフォーマンスをやった、と。

どういうのかと言うと、水道でボロ設けして、水道を漏らしている会社のTシャツを、それぞれの会社について用意して、この写真を見ていただくと、これはホームページから取ったんですけど、胸に企業名が書いてあるんです。たとえばヴェオリアとかね(と笑う)。それで、スポンジを、バケツを用意しておいて、どこが一番、税金を支払っていないかを、投げつけて当てる、と。「ここがズルい、ここが許せないという所にぶつけてください」っていう、市民の怒りを、水道でボロ儲けしている会社に向けるということですね。

2019年は、水道会社の本部に行って、抗議行動をし、多くの報道もされたそうです。

 

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               尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

「民営化された英国の水道は、あまりにも実績がひどく、イギリスの民営化の実態を、これから民営化しようと狙われている国の人々には、きちんと伝えてほしい。私たちの国で得た水道民営化についての教訓を生かしてほしい。水道民営化は、経済的にも、道徳的にも、間違っている、と自信を持って言いたい。」We Own It の方からのメッセージです。

 

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             尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

この尾林弁護士と行くツアーは、浜松からも、名古屋からも、神奈川からも、水道労働者市民団体の方が参加していただけたんですけれども、まず、水漏れの漏水率はどうかという時に、イギリスのロンドンを訪問して説明を受けた後で、ディスカッションと言いますか、日本との交流になるわけですけども、「漏水率は? 」ということで、私は聞いて知っていましたので、「このツアーには、日本の水道で働く方も参加していますので、日本の漏水率がどのぐらいか聞いてみましょう」と言いましたら、神奈川の方も、名古屋の方も、口をそろえて、数パーセントから、うーんと最悪で5パーセントということですから、もうイギリスの民営化水道と比べると、圧倒的に優秀な水の管理をやっている、と。

それから、今の水道コンセッションの動きには、新潟県が県議会ぐるみで反対意見書を出したり、テレビでも反対の声が放送されたりという話も聞きました。

で、先方も、「日本の公営水道は素晴らしく質が高いのに、何のために民営化するんですか?」と同じような質問をされましたので、私がお金を儲けたいだけです」と言っておきました。

それから、下水道に続いて上水道も、民営化コンセッションが狙われている浜松市から、有名な市民活動家お二人が参加して、「この方たちは、下水道に続いて上水道もコンセッションに行こうとするところを、住民運動の力でストップをかけたんだ」という話をしましたら、イギリスの市民団体の方や労働運動の方たちが、大変関心を持って、身を乗り出して、「どんな運動をしてストップをかけたのか? ぜひ聞かせてほしい」ということを言われました。ここはちょっと、私が通訳に挟まって、「日本ではWednesdayのことを水の曜日と言うんだ」と、ここから説明したんですね。

何で水曜日に運動するかってわかんないじゃないですか、イギリスの人たちには。Wednesdayのことを水の曜日って言うんだ、と。様々なマテリアルを一つ一つ、Tuesdayは火の曜日とかね、そういって日本では決めてるけど、Wednesdayが水の曜日なんだってことから説明を始めて、水の問題なので、毎週水曜日に市役所前でスタンディングをやってアピールした。

反対署名を集めた。DVDを使って学習会をたくさんの回数やって、「どんだけ反対署名を集めたか? 」とイギリスの人から聞かれて、当時ですけど、3万7千だと言ったら、そしたら、イギリスの労働組合市民運動の人たちが、「Amazing!(驚くべき数だ)」というふうに言いましたですね。

つまり、地球の裏側のイギリスで、民営化された水道の問題を告発しているような人たちから見ても、日本の浜松市上水道のコンセッションを延期させた市民運動の取り組みというのは、素晴らしいものがあったわけです。

そのように、海外を訪問調査するというのは、現地の様子を聞くだけではなくて、こちらの運動の様子などを伝えた時の先方のリアクションというのが、またですね、こちらから行った参加者のすごく強い確信になったわけですね。

宮城県のみなさんも、私は、大変な運動をやってるってことを、SNSなどでよく承知してますので、これで宮城県がコンセッション中止になったら、間違いなくですね、世界中からアメージングと称賛されるということは、間違いないと思っています。

 

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              尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

1985年に民営化されたけれども、30年間ですね、公営水道時代の施設を基本的にそのまま使って、民間企業は儲けをしただけだということを聞いてきました。

一般の企業であれば、自分のところで使う設備は、20年に一度とか、きちんと更新と言って、老朽化したものを新しくするために設備投資するじゃないですか。

でも、公営水道を民営化した先の企業と言うのは、設備投資しないんですよ。設備投資をケチってケチって、とことん公営時代の設備を使い倒して、儲けだけ上げて終わっていく、と。

 

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             尾林芳匡氏プレゼン資料より

 

世界の経験は水道民営化の誤りを示していて、パリとロンドンだけでも多くの人の話が聞けましたし、同じような経験が、トランスナショナル研究所の調査によれば、世界中の数百の町で、民営化はダメだと再公営化しています。世界の経験を学んで、わが国で水道民営化・コンセッションを採用しようとする地方自治体で、反対の世論を高めていきたいというのが、私の結論です。

尾林芳匡 みやぎ型管理運営方式

             尾林芳匡氏の講演レジュメより

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            尾林芳匡氏の講演レジュメより

 

このように、経済界がお金儲けしたくて、2018年の水道法の一部改正というのがやられたんですけどれも、先ほどパワポの中でも少し出てきたとおり、3ページの下にあるように、私は、いろいろな分野の民営化の問題点を批判してきましたが、病院でも、図書館でも、水道でも、保育園でも、いろんな民営化を批判してきましたけれども、水道民営化に対する批判の声は一番強いです。

法成立の2018年の前に、沢山の議会、自治体から「ウチは民営化しません」という声明が出ましたし、テレビや新聞も批判的な声をきちんと取り上げましたし。

ですから、やはり、「命の水をお金儲けに任せていいのか?」という点については、わが国でも大変批判の世論が強いと思ってます。

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            尾林芳匡氏の講演レジュメより 

 

それから4ページにいきまして、水道民営化・広域化の全国の動向については、今日も売ってる本でもあちこち紹介をしてありますので、今日はちょっと割愛をします。

 

 

4ページの下から、自治アウトソーシングの全体についてのレジュメが少しあります。今日は全部を説明することはできませんが、5ページからのPFIだけは、少しお話をしたいと思います。

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            尾林芳匡氏の講演レジュメより 

 

なんでPFIを少し説明するかと言うと、20年間、お金儲けのための企業に、地方自治体の設備やサービスを任せてしまうというPFI法による民営化というのは、そもそも道コンセッションというのも、このPFI法を使って行われますので、PFIで何が起きてきたのかっていうことをきちんと知っておくことが、「水道でも、同じようなことが起きる恐れがあるね」ということを理解いただくために、とても大切だと思うからであります。

5ページに真ん中にありますけれども、PFIでどんな問題が起きてきたかと言いますと、3番の事例のところの①ですが、仙台松森PFI天井崩落事故っていうのがありますね。

これは東日本大震災の一つ前の宮城県沖地震の時に、仙台市初めてのPFIで立ち上がったゴミの焼却熱で温水プールを沸かすプールが、同じ地震で、旧来型の方法で整備をしたプールの天井は一つも崩れなかったのに、PFIで作ったものだけが崩れたんですね。

泳いでいた仙台市民が、何十人も重傷を負いました。この時、仙台市が中間報告書っていうのをまとめたんです。ほかの旧来型の四角四面の温水プールは天井が崩れなくて、PFIだけは設計から企業任せにしますので、貝殻のような局面上の天井のもので、本当は内部に振れ止めが整備されてないといけないものが、手抜き工事を見抜けなかったということでした。

仙台市の中間報告書はこんなこと書いてありましたね。「この事故は、PFIだから起きた事故ではない! しかし、旧来の方法で作っていたら起きなかったであろう」(笑いが起こる)。

企業任せにすると手抜きが見抜けないというのが、水道でも起きるんじゃないかということで、大変心配なところです。

それから②ですが、福岡タラスの撤退。これは、やはり、ゴミの焼却熱で温水プールを沸かすタラソテラピーというのが、思ったように利益が上がらなかったために、企業は「や~めた」と言って、途中で撤退をしてしまって、福岡市民が3カ月も泳げない状態になりました。

「儲けが少ないからやめる」っていうふうに言われた時に、どんな事態になるのかっていうのは、命の水でも大変心配なことであります。

③が北九州市ひびきコンテナターミナルで、これは経営破綻をしまして、北九州市が、40億円お金を出して買い戻しました。

住民の声で「儲け過ぎはいけないぞ」と言って、情報公開をして、儲けをさせないようにしていくと、今度は企業の側の経営破綻のリスクっていうのが出てきます。

まさに、「進むも地獄、去るも地獄」みたいな世界になってきまして、結局、経営破綻した時には、行政がまた、お金を追加して出さなければいけないという事例であります。

④の名古屋港イタリア村も破綻。

それから⑤の高知病院PFIというのは、経費が安くならなかったので、県議会、市議会で議決をして、契約解除をしました。

⑥の滋賀県近江八幡医療センターも契約解除。

⑦は野洲市の小学校、幼稚園の維持管理で、PFIをやめたら5億円も経費が安くなった。

それから⑧は、北海道、岩見沢生涯学習センターで、PFI事業者が多額の政治献金をしていた。

⑨は都立病院PFIの契約書ですが、全部下請け丸投げですし、この契約書を細かく読んでみると、5ページのレジュメの下から2行目ですけれども、「医薬品を変更して、追加的な費用が発生したら、東京都が負担する」って書いてあるんですね(「なんだそれ」というざわめきが起こる)。

つまり景気が変わったり、技術が変わったりして、経費が高くなるような時には、発注をした東京都の側が、民間企業に対して、追加でお金を払うという契約になっているんです。

東京都の病院PFIの契約書を始めて批判したのは、私がやりましたけれども、実は後でも言いますけど、宮城県の水道コンセッションの実施契約書の中にも、そっくり同じような条項が入っているんです。

「経費が増えるような事態があった時には、全部県が追加してお金出します」(「アホ」という声が上がる)というのが。絶対、民間企業は損をしないということになっています。

ですので、PFIについてのこうした様々な先行事例を知っておくことは、水道コンセッションで起きるであろうことを予測するうえで、とても参考になると私は思っています。

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            尾林芳匡氏の講演レジュメより 

 

6ページに進みますが、PFI法は、次々と法改正をされてきましたが、各地の住民のみなさんは、黙って唯々諾々とPFIを受け入れてきたわけではなく、6ページの下のほうの 6番に、愛知県西尾市のことを紹介しています。

愛知県西尾市は、20年にわたって、特定の企業に公共施設の管理を全部任せて、いつ、どこの設備を、立て直すか? 修繕するか? まで全部任せるという契約をしてしまいました。

ところが、「おかしいじゃないか」ということで、議会でも、超党派の議員の人たちが反対に回り、住民運動が起きて、とうとう、その次の市長選挙で、PFI推進派の市長は、落選をしてしまったんです。

で、その時にですね、ま、手前味噌ですけれども、私が、西尾市に、ちょうど、今日のような学習会に出向いていきまして、今日と同じように、PFI法はこんなに問題だという話をしました。

そしたら、議員バッチを付けているですね、明らかに市議会議員の方が、すっくと手を挙げて、何党の方か知りませんけれど、質問をしてくださったんです。

「企業に、20年間、公共施設を任せてはいけないってことは、尾林弁護士の話を聞いてよくわかりました。じゃ、企業に任せたらいけないなら、誰がやったらいいですか? 」って言うんですね(のけぞって笑う)。

私はね、「公共施設の、いつ、どこを直し、どこは修繕し、どこは新設、どこは統廃合するか? ってそういう問題は、住民の人たちの意見をよく聞いて、地方議会で、議員さん、あなたたちが議論して決めることでしょ」って言ったんです(笑いが起こる)。

そしたら、質問した市議会議員の人は、「あ! そうでした!」ということでしたね(会場から哄笑)。

何が言いたいかって言うと、PFI補助金が下りてくるとか、コンセッションで補助金が下りてくるとかっていう議論始めると、お金が下りてくるってことばっかりに目が行って、住民の声を聞いて、地方議会の中でしっかりと議論をして、いろんな人たちの利害を調整して、地方議員の人たちが決めていくんだという当たり前の地方自治の根本を、地方議員の人たちも忘れてしまうんですね。

ぜひ、宮城県議会のいまコンセッション推進のために奔走しているような人たちには、20年間、水道について地方自治を停止してしまうことになって、早く目を覚まして、 いくらお金が入ったとしても、20年間、地方自治体のものではなくなってしまうことに等しい、企業の好き勝手されるようなことに、ホントに賛成していいのか? ということを、今からでも、賛成派の人たちには考え直していただきたいと、私は、この西尾市の経験からも、大変思います。

ホントにPFIとか、コンセッションというのは、わずかなお金が下りてくるということで、地方議会の当たり前の職責を議員さんが忘れてしまうような、集団催眠状態になってるところが、あちこちにあります。

でも、住民の運動と協力して、立派にストップをかけて決着を出したのは、市長選挙で推進派の人を落選させたということです。ぜひ、宮城県でも期待しております(「任せてください」という声が上がる)。

さて、私がこのように、今から12年ほど前、2009年に、「PFI神話の崩壊」という本を出したり、「水道民営化・広域化を考える」という本を出したりして、PFIやコンセッションや水道民営化をひたすら批判をする先頭に立ってきましたが、実は、私の最初の本から12年遅れて、国の会計検査院が、ごく最近動き出したんです。7ページの真ん中をご覧ください。

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            尾林芳匡氏の講演レジュメより 

 

5月14日に、NHK東京新聞朝日新聞が一斉に、日経も書きましたね。

一斉に各紙が報道したんですけれども、会計検査院が何を指摘したのか? と言いますと、これ、イギリスの会計検査院じゃないですよ、日本の、わが国の政府がこれだけですね、「PFIコンセッション推進だ、推進だ」と騒いでる最中に、会計検査院が何を言ったかと言いますと、「契約に沿った適正なサービスは到底提供されていないケースが、26の事業で2,300件あった」と。

つまり、お金の使い道として、あるいは経費が高くなっているということも、会計検査院によって指摘をされました。

これは、会計検査院はもちろん、内閣から独立した政府機関ですけれども、大変勇気のある、おそらく、国の会計検査院が、このような指摘をすれば、地方自治体のPFI事業についても、同じような問題があるのではないかということで、各地方議会でも一斉に、国の会計検査院が指摘したのと同じような問題がないかを、地方議会ごとに点検をする必要があるという議論が巻き起こるでしょう。

まさに宮城県がですね、コンセッションに踏み出そうかというこのタイミングで、会計検査院が最後の良識ある声を発したということですので、ぜひ、宮城県議会のみなさんには、「国の会計検査院がこう言っているほど、PFI事業というのは、不適切な事例や契約債務の不履行や経費がかかりすぎていて、コスト削減になっていないという事態があるということを、どう受け止めているのか? 」という議論を、ぜひ、やっていただいて、国の機関がこう言っているんでは、宮城県としても、もう一度考え直さざるを得ない」と、そういうふうになったらいいのではないかと思ってます。

私からすると、12年前にこうした問題を指摘し始めてからですね、12年かかって、政府機関がようやく尾林弁護士についてきた(笑い)と、こういう感じです(拍手)。

さて、コンセッション契約書というのを、7ページの下から読んで、どんなことがわかるかということに進みます。

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             尾林芳匡氏の講演レジュメより 

 

これで最後になりますけど、8ページに行きますが、まず、コンセッション契約書というのは、だいたい100ページぐらいあって、膨大で、県の担当職員というのは、中身を全部は把握していません。

ですから、批判的な立場でこれを議論する人っていうのは、ほとんどいない状態で、担当する企業の言いなりの契約書が作られるっていうことになっています。

ここに詳しく紹介した浜松市の契約では、8ページの(2)事業の質の担保ですけれども、(3)の少し上のところに、誰が、水の事業をきちんとやってるかどうかを監督、モニタリングするのか? ということでは、浜松の契約書の57条、セルフモニタリングが原則ですと書いてあるんですね(笑い)。「自分で点検します」と

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            尾林芳匡氏の講演レジュメより 

 

さて、最後ですが、9ページ。私も先日、超党派県議会議員の方に招かれて、上下水道、工業用水コンセッションの宮城県の実施契約書を読ませていただきました。

浜松とほとんど同じでした。9ページの下にありますように、これまでは、議会が直接当局に質問したり、資料を求めたりできていたものが、当局の委託先は、担当企業SPCまでであって、当局とコンセッション企業との間の契約については情報公開されます。

しかし、実際の工事担当業者との契約は、SPC、つまり、担当するコンセッション企業が好き勝手に決めますので、浜松の例でも、それまでの浜松市内の水道工事業者の発注をやめにして、東京の子会社に発注するようになったという例があると聞いています。

ここに競争入札というのはありませんから、子会社に高値発注ができる、利益がもたらされるということであります。

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            尾林芳匡氏の講演レジュメより

 

で、契約書の何をどう読むか? ということについて言うと、「清浄、低廉、豊富は、守られるか?」ということと、公開・説明と住民・議会の関係です。

契約書を見ますと、膨大な契約書ですけれども、結局のところ、費用は、途中で増えているんですね、どこまでも。

100ページもの長い契約を作るということは、20年間のさまざまな問題がコントロールできる、県民の立場からすると、将来の水道料金の値上げが抑えられたり、将来にわたって県からの出費が抑えられるというような要素があれば、20年間先まで見越した契約というのは、意味があるかもしれません。

しかし、20年間ぶん利益を保障するという契約になっていても、ありとあらゆるところで、ドンドンドンドン企業に出すお金が増えていく仕組みが、契約のあちこちに入っています。

契約書は公開されていますので、ご覧いただければわかりますが、第10章リスク分担のところにを見ますと、59条には、水の分量や水質が変動した時には、県がお金出しますと書いてあるんですね(笑い)。

水が少なくなったり、あるいは、水質が汚染されるようなことがあったら、担当企業の責任できれいにしたり、水を増やしたりしてくれることは絶対なくて、追加して経費が増えれば、お金を県が払う。

それから、不可抗力による増加費用及び損害の扱い。これは、災害があった時には余分にお金がかかる。

突発的な事象による増加費用及び損害による特則も、お金がかかる。

不可抗力とか、突発的事象とか、なんでもこれにあたるじゃないですか(笑い)。

ですから、無限に、払うお金が増えていく仕組みになっています。

それぞれについて、「協議する」ということになってるんですけれども、さっきから 何度も言っているとおり、業者にとって都合のいい情報しか、公開されませんので、県は、民間事業者の言いなりに、「協議をしたうえで」、必ず言いなりにならざるを得ません。

それから、浜松の契約書で、私がさんざん批判してきた、反対運動が起きたり、訴訟が起きた時は、全部地方自治体が負担するという、住民運動敵視条項も、宮城県の契約書の中にも、しっかり入っていました。

先ほど紹介したように、ボリビアコチャバンバでは暴動が起きましたし、インドネシアでは、最高裁で委託が違法だという判決が出たりしていますので、そのように世界中で企業がダメージを被ったような例を、全部契約書の中に盛り込んで、絶対に損はしない契約書が、企業に有利なものがまとめられています。

それから、適正な業務確保のために、セルフモニタリングが基本であるということが、同じでありますし、運営権がストップされるのは、詐欺行為をやった時だとか、ごく例外的な場合を除いては、県の側に「あなた、もうやめなさい」という権利は、残っていません。

(3)の利用料金は、「県が関与するけれども、臨時に改訂することがありますよ」ということが、あらかじめ決められています。水道料金の値上げですよ。

どんな時に値上げされるかと言うと、契約水量が変わったり、動力費が変わると、つまり、「電気代が少し上がって、経費がかかるようになりました」とか、そういうたびに値上げを求められるということでありますから、まさに、企業の利益に、20年間、宮城県民は奉仕をし続けるということになります。

それから(4)情報公開は保障されません。

先ほど紹介したように、情報公開の取扱規定の中に、「競争上の地位を脅かすものは、公開しなくてすむ」ということになっていますから、下請け企業は、第三者として企業秘密は守ってあげなくてはいけないということで、おそらく、多くの情報が隠されて、企業にとって値上げし放題になるでしょう。

従いまして、10ページの最後ですが、私も今日ちょっと、コンセッションでいいのか? というタイトルで依頼を受けたことをすっかり(と笑う)。確かにそういう依頼だったんですけれども、「コンセッションでは絶対いけない」というのが、私の結論です。

県知事や県議会の選挙もありますし、あるいは、先ほど紹介した国の会計検査院も、「PFI事業はダメじゃないか」というわが国で初めてのまとまった報告を出した、まさにその瞬間に、新しいPFIに突き進むんですか? 

これはですね、宮城県民のみなさん、それから全国のみなさんが注目をしている宮城の水道の問題について、ぜひ、みなさん、最終盤ですけれども、今日の私の話を何がしか参考にしていただいて、大いに運動を盛り上げていただければ、嬉しいです。どうも、ご清聴ありがとうございました。以上でございます。