宮城県の水道民営化問題

命の水を守るため、水道の情報公開を求めていきましょう!

2/11 佐久間敬子弁護士講演「私たちの平和: 水道民営化問題から見えてくるもの」

2022年2月11日、靖国神社国家管理反対宮城県連絡会議主催の「2・11 信教・思想・報道の自由を守る宮城県民集会」にて、命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表の 佐久間敬子弁護士が、講演「私たちの平和:水道民営化問題から見えてくるもの」を 行いました。

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※講演資料は ↓ でダウンロードできます。http://www.ne.jp/asahi/grass/roots/211miyagi/2022_resume.pdf

 

講演内容

序 2022年4月 1 日開業予定 「みやぎ型」の現在地

第一 公共事業民営化の世界的な背景・思想と流れ

1 リベラリズムから新自由主義へ

2 世界の水道事業の民営化の展開

第二 日本における公共サービスの民営化

1 第2次安倍政権の成長戦略

2 2018年12月水道法改訂

3 「周回遅れ」の誤った政策とその意味

第三 宮城の水道民営化「みやぎ型」の問題点

 手続の問題

 内容の問題

第四 解決策は人権と自治と国際連帯

1 日本人の意識改革必要

2 再公営化を目指そう !

 基本思想は人権と自治+国際連帯

3 警戒すべき動き

 スーパーシティ法(国家戦略特区)

 デジタル改革関連法

 デジタル田園都市国家構想

 

講演文字起こし

 

みなさま、こんにちは。命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表佐久間敬子でございます。今日はですね、あの大変な歴史と伝統のある「2・11 信教・思想・報道の自由を守る宮城県民集会」にお招きいただきまして、お話しする機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。心から感謝申し上げているところです。

で、今日の私の話ですけれども、「私たちの平和:水道民営化から見えてくるもの」。副題として、人件・自治の原点としての「水」。ま、こういうような形でお話をさせていただきたいと思っております。

で、あの、みなさま、あのう、レジュメを、もしお持ちでありましたら、レジュメを ご参照いただきながら、あの、お聞きいただきたいと思います。

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   「私たちの平和:水道民営化問題から見えてくるもの」講演資料より

今日の私の話は、だいたい4項目に分けてありまして、このみやぎ型という、まあ、 水道事業の民営化ですね、こういうことが始まった、あの、背景・思想、これは何か? ということで、まあ、よく言われている新自由主義的な考え方、これをご紹介して、 そして、これが水道事業に、まあ、あのう、いき渡るということの展開のご紹介をし、それから、まあ、日本における、ま、公共サービスの民営化というものの流れをちょっと見て、そして3番目にですね、宮城のこの水道民営化の問題点、みやぎ型の問題点、 これを、手続き面と内容面と両方にわたって見たいと思います。

そして、最後に、私たち、あの、4月から、この民営化による水道事業が始まるわけですけど、希望はないのか? と。決してそんなことはない、と。私たちはどこに希望を見つけたらいいのか? と。そこも、ちょっとご紹介申し上げたいと思います。

それでは、あのう、みやぎ型と呼ばれている水道事業の民営化ですけれども、ま、いろいろな言い方がなされておりまして、私たち、みやぎ型と呼んでおりますけれども、 宮城県の上工下水一体官民連携運営事業、長々しい言い方を、ま、県はしてますし、 また、みやぎ型管理運営方式ということでも呼ばれております。ま、みやぎ型コンセッション方式という言い方も、あのう、しておりますので、さまざまな言い方があるわけです。みやぎ型ということで進めたいと思います。

序 2022年4月 1 日開業予定 「みやぎ型」の現在地 

で、それでこのみやぎ型ですけれども、4月1日から始まるんですね。約1か月半後です。目前に迫ってますね。で、このみやぎ型、これが導入が決まったのは、昨年6月の宮城県議会です。運営権の、ま、設定を承認をするという議会の、ま、議決が成立したわけですね。

で、この県議会、大変重要な議会でありました。県議会が、この水道民営化を認めるか? 認めないか? これを判断する最後のチャンスだったわけですね。大変注目を致しました。全国的にも注目されました。

残念ですが、宮城県議会は、あの、与党、知事与党が多数を占めておりますので、可決成立ということになってしまいました。

ただ、この県議会ですね、大変、あの、面白いと言いますか、画期的なこともありました。で、それはですね、みなさま、あのう、レジュメをお持ちの場合、資料①をご覧 いただきたいんですが。

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   「私たちの平和:水道民営化問題から見えてくるもの」講演資料より

この資料①の下の欄にまとめてありますけれども、この6月の県議会、具体的には7月になってますけども、ここでですね、本会議では、ま、賛成多数で可決しましたが、与党のいわゆる重鎮と言われている議員さんお二人、それから野党の議員さんお一人、合計三人の方がですね、退席する、議場から退席するということで棄権をしてですね、で、後日、河北新報が報道したところによりますと、退席した理由は何か? というと、経済安全保障上の不安があるということなんです。これは、後ほどまたご紹介いたしますが、そういう形で棄権者が出たというのは、大変大きな意義があった。

そして、その前にですね、本会議で議決する前に、ま、専門員会で審議をするわけですが、これらが、建設企業委員会というところで審議されたんですね。

で、私たちはですね、「この議会では、採決を見送るべきだ」という請願を出しておりました。そして、その請願には、資料①の上の段にまとめてありますけども、なんと全国からですね、1,9449筆の賛同署名が集まりました。

そして、これは、全国42の都道府県から署名が寄せられて、しかも、海外に在住する日本人の方からも署名が集まりました。これは大変大きく、あの、取り上げられました。

こういうこともありまして、専門委員会である建設企業委員会ですね、ここがですね、民営化を認める議案と私たちの請願を採択するかどうか? これが、4対4の互角で拮抗してしまったんですね。

そうしまして、ま、最終的には、議会の議事規則で、委員長が最後の一票を投じるというということで、委員長裁決という手続きが行われて、かろうじて、この民営化議案が可決された、と。4対5ですね。可決されたということになりました。

後ほど発表された議会事務局の報告によると、委員長裁決で議案が決まるというのは、宮城県政史上初のことということなんですね。ですから、大変これは、あの、ある意味では、画期的な歴史に残る委員会だった。

ただ私たちは、返す返すも、これだけ専門委員会で議論が分かれたということだから、できれば、この議案については継続審議をして欲しかった、と。

そして、本会議でも、この専門委員会の採決の結果はですね、重く受け止めて、何が問題か? もっと、とことん決定的に詰めて議論してほしかったというふうに思っております。

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   「私たちの平和:水道民営化問題から見えてくるもの」講演資料より

こういう結果になりまして、4月1日からいよいよ始まるわけですが、これを受注しました会社がですね、あのう、特定目的会社 、SPCというところなんですね。で、これは、この事業しかしない、特定目的の事業しかしないという会社なんですね。

ただ、実際に、水道事業の肝心なところを運営するのは、子会社、OM会社というところです。これは、後ほどご紹介しますが、フランスに本社があるヴェオリアという会社の日本法人、ヴェオリア・ジェネッツというところが株式の過半数を持って、ま、会社の支配権にする、そういう子会社が、実際を、水道事業の維持管理を担うということになりました。

宮城の水道事業の民営化ですが、全国的に注目を浴びたということですが、それはですね、あの、上工下一体の民営化事業なんですね。で、これは全国初です。全国初の水道事業のコンセッション事業と言ってます。

そして、これは人口の非常に大きいんですね。230万の宮城県の人口のうち約190万をカバーする、そういう流域の上工下水道を、民間会社が向こう20年間にわたって、一括運営をするということなんですね。

あのう、浜松というところは下水道の一部、このコンセッションをやっておりますけれども、そこは下水道の一部ですし、人口も40万ぐらいです。だから、規模としても小さいんですね。宮城の水道民営化は、巨大な事業だということですね。

それで、あのう、なぜ、みやぎ型というものを導入するのか? ということですが、バリュー・フォー・マネーということがキーワードなんですね。これは何か? っていうと、あのう、投下したお金に対して、どれだけの価値が生み出されるか? と。バリュー・フォー・マネーですね。

まあ、言い換えれば、あのう、コストパフォーマンスがどれほどか? ということになります。そして、また、みやぎ型の場合は、総事業費がどれだけ削減できるか? という形で数字が出てまいります。

県はですね、このバリュー・フォー・マネーから考えると、水道事業の問題というもの、これは、あの、全国共通の課題になります。利益が下がってきてるんですね、水道事業は。半面、多額の、まあ、更新費用と言って、管路とか浄水場とかの、ま、メンテナンスや、えー、切り替えの費用、これが来そうなんですが、これに非常に大きなお金が必要になる、と。この2つの大きな難題ですね、解決する最適解、これ以上の答えはない、と。

それから、宮城はモデルケースなるんだ、と。こう言ってるわけですね。さて、その通りになるかどうか? というのが問題です。

第一 公共事業民営化の世界的な背景・思想と流れ 

1 リベラリズムから新自由主義へ 

で、水道事業は、公共サービスの最たるものですが、これで民営化されるという世界の
流れがあるわけですね。で、これも、みなさま、あのう、ご存知のとおり、新自由主義的な考え方が背景にあります。

国家による福祉とか公共サービスを小さくする、小さな政府、そして、小さな政府がしない仕事を民間に任せる、民営化ですね。さまざまな規制を緩和をする。そして、市場に任せるというような、ま、経済政策が社会的な思想になってきてしまった、と。

で、おわかりのように、まあ、イギリスのサッチャリズムからアメリカのレーガノミクスにいって、そして、まあ、日本では中曽根構造改革という形になってまいりました。

で、日本の中曽根構造改革が、その後の小泉、安倍、菅、岸田政権に引き継がれてきているというふうに思います。で、この間、ま、国鉄の民営化、電電公社の民営化、それから郵政民営化、進んでまいりましたね。

そして、えー、こういう流れが今もって続いている。あの、国家の公共サービスを民間に任せるというような流れがですね、次第次第に国境を越えて、ま、世界を公共サービスを含めて市場化する、と。

グローバライゼーションって言っていますが、そういう動きがまことに強くなってまいったということだと思いますが、それは、まあ、アメリカで言うと、ワシントンコンセンサスというようなクリントン大統領以来の政策なんですね。

そして、あわせてですね、この民営というものに、あー、大きな力を発揮したと思いますのが、国際機関の変質ということがあると思います。

戦後、荒廃した世界を、まあ、再復興させるということで、特に途上国とか新興国ですね、これの、ま、社会的なイラフラ整備のために、いろいろな資金を提供する、と。ま、人道的な観点から資金提供してきた、と。

そういう、たとえば IMF国際通貨基金世界銀行こういうところがですね、だんだんだんだんと、ま、新自由主義的な考え方に、ま、染まってきてしまってるということがあると思います。

2 世界の水道事業の民営化の展開 

世界の水道事業の民営化ですが、ま、レジュメの3ページにまとめておきましたけれども、1980年代後半から始まっているというふうに言われています。

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   「私たちの平和:水道民営化問題から見えてくるもの」講演資料より

特に大きかったのは、まあ、1989年のイングランドウェールズの水道事業の完全民営化ですね。これは、まあ、イギリスはみなさまご存知の通り、ゆりかごから墓場までということで、福祉国家の最先端、こう言ってたわけですね。そこが、ま、英国病と言われているような社会の様々な行き詰まり、これを打開するという、そういう理由かと思いますが、完全民営化に舵を切った。

そして、先ほどご紹介しました世界銀行、えー、1992年ですね、「世界開発報告: 開発と環境」という報告書を出していますが、そこで、「水は商品だ」と、経済財だというような規定をした、と。

そして同じ年に、国際会議が開かれてます。「水と環境に関する国際会議」ダブリン原則というものが、ここで発表されて、ま、水は経済財だというような、あのう、原則がここで打ち立てられて、こういうことを踏まえて、ま、中南米から始まった様々な国でですね、水道事業の民営化というものが波及していって、これが例外ではないんです。アメリカ、先進国、すべて、ま、民営化というものに晒されてしまったということなんですね。

特に、あのう、まあ、あのう、最近の事例として注目されているのが、2010年の欧州の債務危機、この時にですね、南ヨーロッパギリシャとかアイルランドとかの国々がですね、経済的に立ち行かないということで、国際機関から資金援助を受ける、こういう時に、IMF欧州委員会欧州中央銀行、これの3者が、「融資はするけれども、社会の構造を変えなさい。財政を立て直しなさい」。で、その要求の一つが、水道の民営化ということだったんですね。

で、この3者のことをトロイカ体制と、まあ、呼んでるわけですね。で、こういうことで、ま、公共事業の最たるものである水道事業を民営化の波が襲っていったということになります。

で、まあ、あのう、水というものは、高名な宇沢弘文先生が定義しているところでは、社会的共通資本のね、ま、最たるもの、最後の聖域だという言い方をしています。水は代替性がありません。エネルギーとか交通とかは、他の手段がいくつかありますが、水は水以外ない。唯一無二です。

そして、水は洗って飲めないんですね。これは非常に言い得て妙というふうに思いますけれども、沖縄に伝わっている昔からの、ま、言い習わしですね。

で、沖縄は、米軍基地によって被害を受けてます。米軍基地から有害物質を含む排水ですね、戦闘機等を洗った汚れた水が、河川に流れ込んで、最近問題になってますね。

ということで、沖縄の方々は、何とかこれをね、えー、止めてほしい、と。日本の法律では認められていないわけですね。しかしながら、みなさんご存知の地位協定は厚い壁があって、アメリカ軍は治外法権的な扱い受けてますから、まあ、野放図に有害物質を含む水を流しているんですね。水は洗って飲めないんですね。

それから、まあ、自然独占というふうに言われてますが、これは何か? というと、水道事業というのは非常に巨大な装置が必要になって、民間が容易に入り込めるものではないんですね。

ですから、まあ、公共事業として運営されてきたわけですが、仮に民間がこれを運営すると、競争関係が成り立たない。独占関係になる。そうすると、サービスが低下するし、値上げというのも当然ながら出てくるということで、水道事業ってね、非常に公共
サービスの中でも大切なのもだという位置付けがあった。

第二 日本における公共サービスの民営化 

 1 第2次安倍政権の成長戦略 

さて、日本の公共サービスの民営化ということですが、ま、最近の政策で言いますと、第二次安倍政権の成長戦略というのに入ってるんです。

2015年6月に、あの、骨太の方針というのが閣議決定されまして、この中で、公的分野の産業化ということで、ま、公共サービスというのを、ま、民間に開放する、と。で、ここで民間が成長する、と。そういうような方針が語られてしまいました。

で、これは、まあ、民間に成長する分野がなくなって、公共サービスのほうに、その市場を求めるというような脈絡だと思うんですね。

ただ、すでにですね、この公共サービスの民営化というのは、すでに始まっておりまして、えー、1999年ですね、PFIというのが制定されてます。これは、プライベート・ファイナンス・イニシアティブというもので、今回、あのう、水道事業の民営化も
これに入るんですね。

プライベート(民間、私的な)ファイナンス、まあ、資産、投資、これがイニシアティブを取るというような考え方ですね。これらはPPPというような公共サービスの運営の 1類型と言われています。

PPPっていうのは何か? っていうと、パブリックとプライベートがパートナーシップを組む。公と民間が連携して公共サービスを運営していく。で、これが少し進んで、プライベートがむしろ主導するというのがPFIになるんですね。

で、このPFI法っていうのは、 何回か改訂されておりますが、特に注目すべきなのが、2011年にですね、公共施設の運営権方式というのが設定されているんですね。あのう、施設の所有を公共、公が持ったまま、運営権を個別にじゃなくて丸ごとですね民間に移譲すると、譲渡するという方式で、これはコンセッションというふうに言われるんですね。

コンセッションって何に? ということになりますが、まあ、あの、第二次世界大戦の前にですね、欧米の列強が清国、中国にですね、進出してきて、さまざまな特権を獲得した、と。ま、租界、租借地ですかね、植民地というものにしかれるのかも知れませんが、それがコンセッションっていうことで、まあ、利権という意味に訳されるんですね。

ですから、これが、そもそもの言葉の意味なんですが、こういう方式を認めるということです。言葉の本来の意味からしても、ま、ある意味で非常に恥ずかしい言い方になるんですね。

こういうことで、まあ、空港や医療や様々な社会サービスというのが、これまで民営化されてきました。

で、さっき申し上げたように、 PFIというものの特徴というのは、あのう、所有・経営の分離ということで、「所有は公共、公的部門が担っていますよ、と。相変わらず。経営だけ民間に移譲するんですよ、と。ですから、民営化ではありませんよ」というのを、盛んに言ってきましたが、運営権の丸ごと譲渡、売却ですね、まさに民営化にほかならないというふうに、あの、思ってますし、実は、これは、非常に民間にとっては、まあ、いい話なんですね。

何でかってというと、所有するということは所有にともなう膨大なコストがかかりますが、それを回避して、そして、運営という、まあ、美味しいところだけを民間が取る。そういう意味では、非常に民間に取ってはいい方式なんですね。これよって、民間がこれまではちょっと手が出なかった公共のサービスに参入できるというふうになったんです。

2 2018年12月水道法改訂 

さて、水道事業のコンセッション方式ですが、2018年の6月の、まあ、PFI 法の改訂と
12月の水道法改訂で可能になりました。ついに、水道事業に民間がコンセッションで参入するということができるようになったんですね。民間が参入しやすいのが最大の眼目だというふうに、あのう、思います。

この水道法改訂ですが、まあ、ほかならぬ我が宮城県の村井知事がさかんに旗振りをしました。そして、国会でも参考人として賛成意見を述べてます。で、法律が改訂されて直ちに、水道事業の民営化に着手しました。すでに、もう2年ぐらい前からですね、民営化事業の準備をしております。

知事は、「とにかく民間事業者がやりやすいようにする」のが、第一の目的だということを述べています。水道法が改訂される前にですね。すでにこう述べている。そういうことで、今回の改訂が実現した。

3 「周回遅れ」の誤った政策とその意味 

さて、果たして水道事業の民営化というものは、宮城県が言ってるように、水道事業の問題を解決する最適の回答なのか? ということですが、国会ではさまざまな批判、議論が行なわれました。えーと、レジュメの4ページになると思いますが。

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   「私たちの平和:水道民営化問題から見えてくるもの」講演資料より

当時の参議院山本太郎さんが何と言ったか? 「周回遅れだ」と。「何でこの世界の流れに逆行する誤った海外で失敗した政策を、いま日本で採用するのか?」というような発言をしました。そういう質問を 麻生太郎さんにぶつけています。

それから、福島みずほ議員、この方は、「受験生が採点する立場を兼ねているのではないか? 」と。「受験生が、自分で答えを書いて、そして、教員室に行って採点する立場になっている。おかしくないか? 」ということを、国会で質問しています。究極の利益相反行為だということを言っています。

どういうことかと言うと、このPFI法を、えー、審議する中で、この推進本部の、えー、ま、制作担当の委員というものに、ヴェオリア社の社員が出向していたということがありました。

この水道事業のコンセッションですね、これは、最初から外国系の会社が受注する、と。まあ、ヴェオリアとかスエズとかですね、そういうところしかないということなので、これは初めからわかっていたわけですね。

そうすると、もうヴェオリアの社員がPFIの推進本部に出向して、いろいろ仕事をしてる、と。非常におかしいというようなことで、国会で質問しています。

それから、また、当時の官房長官の菅さんの、まあ、秘書、懐刀と言われた福田隆之さんという人がいるんですが、ま、そういう人が、その方が、どうも、フランスに行ってですね、そういう水メジャー言われてるところからリベートもらったんではないか? 
そういう疑惑が報道されました。そして、菅さんはたちどころに福田隆之氏を解任してますね。

その他、たとえば堤未果さんが、豊かで品質の良い水を、海外から追い出された外資に差し出すのか?というようなことを、ま、著作の中で言ってるんですね。

こういう質問は、あの、先ほどご紹介したような経済安全上の不安あるという議員さんたちが考えたものでもあるし、それから、こういう質問を、ちょうど宮城県議会で、 まさに与党の議員がですね、質問しているんです。

さて、「周回遅れ」の誤った政策ということですが、レジュメの4ページにありますが、すでに宮城あるいは日本が水道事業の民営化を採用する時点でですね、世界では様々な水道事業民営化の失敗事例、こんな事例がありました。

一つはですね、民営化して、たとえば料金が上がった、水質が悪化した、様々な問題が生じて、もう一度公営に戻ったということは多数ありました。

それから、戻りたいと思ったけど、様々な障害に阻まれて戻れない。だから、いったん再公営化して(筆者注:「民営化して」の言い間違いです)、マズかったら公営に戻せばいいという話は通じないんです。1回民営化したら、それはもう大変なことになるということです。

それから、先ほど バーリュー・フォー・マネーということをご紹介しました。要するに「コストパフォーマンスがいいんだ」ということですが、そうではない、と。逆だったという事例がいっぱい出てまいりました。

4ページのレジュメの3、「周回遅れ」の誤った政策とその意味というとこですが、2000年にですね、みなさんご存知かどうかわかりませんが、南アメリカボリビアというところのコチャバンバというところが水道民営化をしたんですね。

で、ここは、民営化をした途端に料金がものすごく上がった、と。それから水質が悪化したいうことで、住民が困り抜いてですね、井戸を掘ったんです。井戸を掘って、自分たちで水を汲み上げよう、と。

ところが、この民営化をする法律の中にですね、政府の許可なく井戸を掘っちゃいけないという条項があったもんだから、井戸が使えないいうことになって、水が飲めないという事態になりました。そして配水された汚い水を飲んだ住民が健康被害を受けるということがありました。

ついには暴動が起きました。警察、軍が出て治安しました。そこで負傷者が多数出た。100人ぐらいと言われています。死者10人ぐらい。政府がさすがにですね、この民営化事業を途中でやめたんですね。そういう形でもう一度公営に戻りました。

で、この時に民営化事業を請け負った会社がですね、「途中で契約を解除するんだから損害賠償を払え」ということで請求しましたけども、これも住民の方々が反対して、これを放棄させた。ま、素晴らしい成果を上げたんですね。

それから、まあ、よく言われてるのが、アトランタが、ま、契約を解除した。アメリカの150万人口の都市ですね。

それから、有名なのは、2010年のパリ。これは水道の再公営化を実現した。ここはヴェオリア社とスエズ社が運営を担っていたんですね。これは後ほどご紹介いたします。

ちょうど2010年にですね、国連の総会で、人権決議というのがありました。何か?って言うと、水、それから衛生に対する人権ですね。安全安心な水にアクセスできる権利は人権だという決議が、国連で採択された。総会ですから、画期的な決議だったんですね。

先ほど、世界銀行は、「水は商品だ。経済財だ」というふうに定義したと申し上げたけど、それに真っ向から反するような定義付けね。これは非常に大きな意味があると思います。

それから2013年ドイツのベルリン、ここは再公営化をしたんですね。ここは1,700億円の、ま、再公営化に要する、ま、株式買い戻し資金と言われてますが、お金をかけた。

その他さまざまな国で再公営化をしてます。で、アメリカの、まあ、モンタナ州のミズーラ市というとこでは、州の最高裁がですね、あのう、「市が所有するほうが、民間所有の水道事業に優る」というふうに言ってます。

そして、2017年から2018年にかけてですが、たとえばイギリス労働党、それからイギリスの会計検査院、ヨーロッパ会計検査院、すべて、「水道の民営化PFI事業というのは、結局割高だ」と。「バーリュー・フォー・マネーは、むしろ公営事業のほうが高いんだ」、そういうような報告をしています。「これ以上、PFI事業は行わない」ということを言ってるんですね。ですから、このコンセッションを左右するそもそもの目的が、ここで崩れたということになると思います。

そして、これは日本の場合には、昨年の5月、ちょうど宮城県が、この水道事業の民営化を始めようかどうか? ということで、いろいろ準備してる最中ですが、日本の会計検査院が、国営のPFI事業の検証を行っています。「不適切業務が2,367 件あった。そして、PFIのほうが1.06ないし2.85割高。」ういうことを言ってるんですね。こういうような過去の蓄積と検証結果があったわけですね。

そして、また、ちょっとご紹介したいのは、あの、ジャカルタの問題ですが、えーと、ここはですね、最高裁が民営化は無効だという判決を出したんですが、でも、法律の 制度が違うのかどうか詳細わかりませんけども、この最高裁の判決を、行政措置で覆すということができたようで、大変残念ながら、まだ再公営化が実現できていないという状況になっています。

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   「私たちの平和:水道民営化問題から見えてくるもの」講演資料より

で、PFIの、あのう、失敗というのをご紹介しておきましたけども、そういう様々な失敗を経てですね、再公営化した国が、2020年までに300件以上あるんですね。世界の37カ国で311件と、ちょっと私が調べた資料は、ちょっと古かったかもしれないので、もっと増えてるかもしれない。

それから、水道事業だけじゃなくてPFIの失敗事例というのいっぱいあるんですね。そこに、PFIの研究で第一人者の尾林芳匡弁護士の書物から採った様々な失敗事例ご紹介しておきました。

仙台の松森というのも挙がってましたね。天井が崩落した、と。えー、プールの天井らしいですね。で、これは、あのう、国土交通省が調査していましたけれども、工事に問題があったということが言われてますし、えー、注目されているのが、あの、病院のPFIですね。

最近、宮城県でも、あのう、刈田郡の病院を公設民営化するというような情報が出てますけども、ここの高知県の病院、高知市の病院ですが、民営化の第一号ということで注目されたらしいんですが、5年で、結局、再公営化された、と。赤字がたまった、と。バーリュー・フォー・マネーは、事実と違っていた。そして、汚職が発生したということで、また戻ったようですね。

で、こういうようないろいろな失敗事例、教訓がありながら、なぜ日本で、しかも宮城県で水道の民営化事業が始まるのか? ということですが、大変大きいのはやっぱり、2013年の麻生副総理、当時の、発言だと思いますね。

CSISというアメリカの、まあ、アメリ戦略国際問題研究所と、シンクタンクと言われているところですね。あの、まあ、ジャパンハンドラーと言われているアーミテージとかマイケル・グリーンとか、ジョセフ・ナイですね、そういう方々が、まあ、いろいろ政策提言をしているところですが、そこで麻生さんが発言してるんですね。

「国営、市営、町営、すべて民営化します」

で、国営水道はありませんので、誤った発言ですね。よく物事がわかっていないということですが、これは非常に大きな意味があったというふうに言われてます。

「これ以降、水メジャーは、日本に非常に熱い視線を送ってきた」というふうに、橋本淳司さんが言っています。水問題の第一人者のジャーナリストですね。

あと、まあ、宮城の場合は、震災というのがあってですね、ここから始まってます。2011年の3.11の大震災の後に、先ほどご紹介した、まあ、福田隆之という人がですね、あの、宮城を訪問して、知事と面談しています。

で、そこで、空港の民営化、水道の民営化を協議してる。一時は、震災復興から財源が必要だということで、頻繁に政府を訪問している。で、「復興財源をあげましょう。代わりに、民営化を進めてください」っていう政府の要求というのがバーターになっているというふうに思われます。

その結果として、民営化というのが、全く脈絡わかりませんが、震災復興政策として位置付けられている。ま、ショックドクトリンと言われんですね。

ハイ、そして、日本の水道事業、日本の水、どんな価値があるということですが、あのう、日本はですね、いろんな国は、あのう、私(わたくし)の水道もあるんですが、 明治以来ずっと公営水道でやってきてるんですね。

一時、明治時期に民営化の動きがありましたが、住民の反対運動と当時の元老院がですね、公共性を主張して民営化に反対した。で、結局実現しなかったというような事実があります。

ですから、非常に施設としては整備が進んでいますね。で、あの、外国で問題になってる漏水率、管路がうまく整備されないで水漏れがあるということも、日本では非常に 低いと言われています。

で、先ほどの福田隆之さんの、えー、厚労省の講演による資料によりますと、資料③というもので上げておきましたけども、日本の水道施設の資産価値は、日本の公営インフラの中でも断トツに高いということのようです。公営インフラ150~60兆円の中で、90兆円以上のものが水道・下水道の資産価値だということですね。

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   「私たちの平和:水道民営化問題から見えてくるもの」講演資料より

そして、日本は非常に豊かな水がありまして、品質がいい。蛇口から出るのをそのまま飲めるという国は、大学の先生がいろいろ調べたところ、世界10カ国ぐらいで、しかも非常に品質がいい。世界遺産級だということを言っています。大変貴重な水なんですね。

で、こういうような、水としても貴重で品質がいい、製造施設も資産価値が高いこういうものを、水メジャーと呼ばれている外国の企業は、非常に垂涎の的と言いますか、狙ってるわけですね。

ヨーロッパやアメリカ、中南米で様々な問題を引き起こして、そこから市場を失ってる
わけですね。新たな市場を探している、と。そういう意味では、日本は非常にいい市場だということになります。

で、ヴェオリアスエズ、巨大な、あの、水メジャーだったんですが、昨年、ヴェオリアスエズを合併して1社になってる。フランスではですね。で、買収価格が3兆4、000億ということですから、巨大な、あのう、企業が生まれたということになります。

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   「私たちの平和:水道民営化問題から見えてくるもの」講演資料より

第三 宮城の水道民営化「みやぎ型」の問題点 

手続の問題

で、宮城の水道民営化ですが、先ほどご紹介した、まあ、6月県議会の問題点、2つに分けて考えたいと思いますが、私たちはですね、あの、請願を目指しましたが、何が問題か? というと、この、宮城の水道民営化と、大変重大な私たちの命、健康、公衆衛生、産業に関わる重大な水道事業が、どう変わるのか? ということについて、全然、県民理解が進んでいないと言われる。

それは、県の説明が不十分だということですね。いくら、説明をしてくれというふうに申し入れをしても、肝心なことを言わないんですね。県民理解が進んでいないと言われます。

それから、議会に出された、まあ、法案、条例案ですか、これで枠組みが、大枠は決まってるのかもしれないが、細部がわからない。肝心なところがわからない。これで、議会に、「審議して、賛否を述べろ」というのが、いかにも無理ではないか。この2つの点で、私たちは請願を出して反対しました。

で、これは、あの、資料④に上げてるところですが、えっと、みやぎ型はですね、県知事が、もう、水道法が改訂される前から、着々と準備をしてたというふうにさっき申し上げましたが、この資料④の上を見ていただくと、すでに2016年ぐらいから準備してる、と。しかも、非公開の方式でやっているということがおわかりになる。

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   「私たちの平和:水道民営化問題から見えてくるもの」講演資料より

そして、資料④の下のところにありますが、どういうような方々がこの非公開の懇話会というものに参加したか? ということですね。

民間事業者、それから、まさに、この事業に最大の関心を持っている水関係の水ing 、ウォーターエージェンシー、ヴェオリア・ジャパン。こういうところが入ってるんですね。

そして、議会の審議に足るだけの議案が出てないというのは、資料⑤でおわかりになると思いますが、県議会が判断する材料として出されたものは、一部、そして、まあ、 のり弁状態、黒塗りですね。

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   「私たちの平和:水道民営化問題から見えてくるもの」講演資料より

こういう形で議会、議員さんに「判断しろ」ということを言うわけです。

しかも、資料⑤の下の欄にありますけども、重要な民営化事業の事業計画書の14の文書、これの1つしか作成されていない。残りのものはまだこれから作る、と。こういう段階で、「議案を審議をしろ」ということですね。いかにもおかしいんではないか? ということですね。

私たちは、「このように議会の審議権を、まあ、ある意味で無視する議案の提出の仕方はおかしい。だから、今議会では採決するな。そして、いったん出した議案を撤回しろ」という、ちょっと大胆なね、提案までいたしました。

議会で野党の議員さん達が一所懸命頑張ってくださったわけですが、ある意味で大きな問題について十分な審議がされないままに可決される、と。大変残念に思ってます。

知事は、公選で選ばれる県民の代表でもありますけれども、議会の議員さんも、同じく私たち県民が直接選ぶわけですね。ですから、議会は知事と議員さんの二元代表制で運営されている。

執行部が提案した議案を、議会は、また違った観点で、県民の代表という観点で、十分に審議すべきだ。それが、ほとんどなされなかった、と。そして、まあ、ある意味では知事の政策をそのままを受け入れたというのは、大変残念な1年でもあったわけですね。

内容の問題

さて、内容の問題ですが、あの、諸外国の民営化された水道事業、どんな問題が出てきたか? だいたい共通の問題点なんです。それは何かというと、料金が上がらないどころか、むしろ上がっちゃうんですね。そして、水質が悪化する、と。

それから、いざという場合に、まあ、公の事業であれば、何事を置いても、真っ先に、災害時、非常時の対応をするんですが、ま、民営化の事業は採算がありますので、そういうのがなかなかできない、しない、と。

そして、20年間もですね、民間に水道事業の運営権を全部もお任せしちゃうということになると、県に必要な専門職員の技術が、あったものがなくなっちゃう、と。20年間で専門職員が退職したり、他の部署に異動したりですね、技術力がなくなる。

そうなると、何が問題か? 民営事業のさまざまな情報なりをチェックする監視機能、モニタリング機能がなかなか発揮できないということになります。

そして、民営化された会社が契約を守らなかった場合に、果たして、それに対して、まあ、公の事業としてすぐに対応できるか? ということですね。こういうことが各地で問題になりました。みやぎ型の場合も、全くそういう問題が、共通の問題があるというふうに思います。

それから、ちょっとこれは専門的な話になるかもしれませんが、あの、みやぎ型で、私たちが非常に大きな問題として取り上げたのは、競争的対話ということと、新OM会社ということですね。

競争的対話は、あの、私たちの facebook にも、いろいろと問題点、指摘しておりますので、後で見ていただきたいと思いますが、何か? っていうとですね、今回の民営化事業に3者が応募しました。

で、3者と県が競争的対話っていう、ちょっと意味がよくわからない、そういうことをやるんですね。何か? っていうことですが、あの、大変複雑で込み入った事業なんです、この水道民営化。そこで、応募した企業との意思の不合致、意思の齟齬、それを、ま、解消するために、「こういうような発注内容だよ」ということを確認するという作業だと思うんですね。

それは内閣府ガイドラインで言ってることだと思いますが、ところが、これを超えて
契約条件が県に不利益になる、要するに、民間が、まあ、プラスになるように変わってしまったということなんですね。これは非常におかしいんではないか? と。この競争的対話の枠組みを超えてるんじゃないんか? というような問題点を指定しました。

それから、あの、この事業は、えーと、SPC という会社が受注するんですが、さっき申し上げたように、子会社を作る。OM会社。何か? っていうと、オペレーションと メンテナンスをする、OM会社ですね。で、これは、SPC という会社の100%子会社ですね。

で、これが、あのう、ヴェオリア・ジェネッツというところが51%の株式を持っている会社であったということがわかったのです。資料⑥にあります。

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   「私たちの平和:水道民営化問題から見えてくるもの」講演資料より

そして、これがわかった経過というのがですね、県議会で議論をしている最中に、野党の議員さんたちが、この新OM会社の株式比率がどうなってるのか? ということを県に問い合わせをした。県は、知らなかったようです。県が、あわてて新OM会社に問い合わせをしたら、資料⑥のような内容だ、と。

要するに、外資系の会社が、株式の51%ですから、支配権を持ってるということは、後から、この議案の審議の最中にわかったという、大変驚くべき事実がわかったんですね。

この新OM会社と県は、直接契約関係ありませんので、様々な要求も直接はできない。SPC という会社を通じて出させるというしかない、と。非常に、県にとっては、まあ、
隔靴掻痒ような仕組みになってる。

そして、この新OM会社がですね、20年が経った後に、 SPC は解散してなくなるわけですが、存続して、そして、この事業を引き継ぐような仕組みになっている。

そうすると、20年経過後に、私たちが、仮に、この機会に再公営化しようと思っても、なかなかできないということがあるかもしれません。大変うまい仕組みが、みやぎ型では導入されている。

そして、また、これは、あの、県営水道だけですね、今回。ところが、「これを市町村水道にも全部広げよう」と、そういうようなことを、知事が記者会見で発言してます。

「これは、20年経ってからのことだ」というお断りはありますが、宮城県の全体の事業を、この時代遅れの誤った民営化事業に進めていこう、宮城県の水道事業が 1社独占になっちゃうという危険性があります。

ハイ、そして、中身の問題として、あの、コスト削減ということで考えてみますと、VFM、要するにコストが削減できるんだということが、最大の民営化のメリットですね。

でも、これは別に契約に入ってません。契約条項ではありませんから、コスト削減できなかったと言っても、契約違反にはならないということですね。

逆に、大変膨大なコスト削減を見込んでます。約10%のコスト削減されます。そして、人件費32%、管路の更新費、水道管とかさまざまな設備の更新費を43%浮かせる。浮かせて、まあ、修繕によってなんとか寿命を延ばすということを言ってます。

この半面、20年間で民間会社が得る利益は92億。運営権者が受け取るお金の5.8%です。これだけ膨大な利益を上げられるんです。むしろ、こういうお金を、公営のままで、水道料金の値上げ幅を圧縮したり、管路の更新費用に使うべきではないか? というふうに思います。

それから、宮城の水道の価値ですけども、あのう、3事業の価値は2,909億と、あの、県は答えています。もし、宮城の全体の水道事業を施設まで買い取る場合には、このお金が必要です。今回の対象施設は、918億。

これに対してですね、20年間運営権を設定する対価、ま、運営権を売却する対価ですね、これは20年間で10億円。ですから、民間にとっては、10億の資金を用意して、宮城の水道事業を、今後20年間運営権を丸ごと買い取れるという話です。大変うま味のある話です。少ない資本で、事業の本体部分である運営権を取得できる、と。ま、非常にうま味のある投資ではないか。

そして、また、宮城の水道事業ですね、内部留保というのがあって、233億あるそうです。宮城の水道事業、あのう、現在、黒字です。20年間も黒字です。ただ、黒字幅が下がっていくということを、県は言っている。だから、今のうちからコンセッション導入しよう、と。そして、水道の料金が徐々に上がっていくものを、少し下げようということを言っているんですね。

第四 解決策は人権と自治と国際連帯

時間がちょっと迫ってまいりまして、申し訳ございませんが、駆け足で、あの、申し上げますと、それでは、私たちには未来はないのか? ということですが、そうではないです。

解決策は人権と自治と国際連帯ということですが、まあ、結局、水道事業っていうのはですね、根拠は憲法にあるわけです。憲法25条1項と2項ですね。

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   「私たちの平和:水道民営化問題から見えてくるもの」講演資料より

特に2項が、この水道事業というものの、えー、国が責任としてすべきだということを定めている。社会福祉社会保障、公衆衛生の向上・増進に努める義務が、憲法上国に課されている。それは、ベアテさんが書いてくれたんですね。1項は、日本人の学者の鈴木義男さんたちが入れた生存権の規定。

これを受けて、水道法では、あのう、清浄にして低廉な水の供給を図る、公衆衛生の向上、生活環境の改善に寄与するという目的をもって、水道法は定められている。

で、国は、そのために技術的・財政的支援を行うし、地方公共団体は、その区域の、まあ、自然的条件とか産業構造とかによって、適切な地域に合った水道事業を供給するというふうに、こう、役割が定まっている。

ですから、最終的には、国がですね、まあ、憲法25条2項、水道法 1条の目的に沿って、技術的・財政的支援を行わなくちゃいけない。水道事業の様々な問題を抱えていると困っている自治体に、究極は、国が支援をしなくちゃいけないんですね。そういうことで水道事業は考えられるべきであって、困ったからと言って、民間に任せるというのは、本末転倒であると思います。

で、こういう公共事業の在り方に対して、あのう、民営化事業の契約書の中に、住民運動敵視条項という、非常に驚くべき条項が入っています。これは、契約書の61条ですけれども、ま、反対運動とかですね、訴訟とかがあって、民営化事業が遅れたり、民間会社が損失を被った場合は、「県が責任を負いますよ」ということですね。恐るべき条項が入っています。

 1 日本人の意識改革必要 

で、今後の展望ということですけども、やはり、私たち、あのう、日本人は大変豊かな、そして、安全な水を持ってた。そして、今まであまり、水がなくて困ったというがことがなかったですね。消費者意識を持ってたと思います。こう、蛇口をひねれば、ぱあっと美味しい水が出てくる、と。

そうではない、と。やっぱり、「私たちが水のオーナーなんだよ」という意識を、やっぱり持つ。意識を転換する必要がある、と。特に、世界では水を巡って様々な覇権争いがあるという状況もあります。水は私たちの命、公衆衛生を守る大切なもの。そして、私たちがこれを守って維持していくというふうに意識を転換する、と。

2 再公営化を目指そう !

 基本思想は人権と自治+国際連帯

で、民営化に反対する先に、何があるかって言うと、再公営化を目指すということなんですね。

それで、再公営化っていうのは何か? というと、まあ、岸本智子さんっていうこの 問題の第一人者ですね、民間企業によって失敗したと、そういうような公共サービスを、もう1回、公の管理にもどす地方政治の過程なんだっていうことです。水の担い手・守り手は、私たち地域住民しかありません。そして、これは人権だということも、国連で言ってますね。

で、最後のページにパリの例をご紹介しておきました。

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   「私たちの平和:水道民営化問題から見えてくるもの」講演資料より

あのう、花の都パリと言われているところですが、2010年に、えー、再公営化を実現しています。大変有名な話なんですね。ここはですね、265%、公営化(筆者注:「民営化」の言い間違いです)して水道料金が上がったんですね。

で、これに対して、えー、市長さんが立候補して、「なんとか再公営化します」というふうに宣言して、そして、その準備をしていく。その市長さんが任期満了で、再度立候補して当選した。そして2010年に、再公営化を実現した、と。

で、ここは途中解約じゃないんです。解約すると漠然な損害賠償が発生するということで、2010年まで期間を待って、期間満了時に再公営化をやめたんですね。

そして、これはですね、あの、非常に苦労をした。当然です。それは何か? っていうと、システムが、民間のシステムとパリ市のシステムが違ってる。これを切り替える、その作業が大変だった。

で、これは、大変幸いなことに、以前、前に再公営化していたフランスの町が協力してくれて、システムの再構築にいろんな助言をしてくれた。それから、専門技術者の確保が大変です。これも何とか乗り越えて、8カ月ぐらいの準備期間で再公営化を実現した。

そして、オー・ド・パリという公営企業体が発足して、2010年から再公営化ですね。 早速、料金が下がりました。で、料金を下げるだけでなくて、社会正義・環境保全体というのも標語になっています。国連から賞を受賞しています。

そして、水を守る運動がそれにとらわれないで、地産地消とかですね、循環型経済、 持続可能な社会、生物多様性、そういうことに繋がっているということなんですね。

で、ここに、水オブザーバトリーと言って、市民の水を監視する、そういう人が入っていろいろ意見を言う。そういうことで、地域社会の水を守る運動が、地域社会の様々な資源を守る運動に繋がっている。それが、市民の自治自意識の高まりになって、社会のあり方を変えていくというふうに非常にいい循環になっています。私たちも、これを目指したいと思っています。

私たち、命の水を守る市民ネットワーク・みやぎはですね、12月3日にですね、えーと、再公営化を求めようという、その声明を発表しています。

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 3 警戒すべき動き

スーパーシティ法(国家戦略特区)

デジタル改革関連法

デジタル田園都市国家構想

で、こういう私たちの、あのう、自治を求める運動という場面に立って、ちょっと私が心配してますのは、いま進んでるデジタル化の問題ですね。そこに、ちょっと上げときました。

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   「私たちの平和:水道民営化問題から見えてくるもの」講演資料より

時間がありませんので、みなさん、これ、レジュメを見ていただければと思うんですけども、こういうデジタルというものの利便性というものが、私たちの、まあ、個人情報やら、自己情報コントロール権やら、地方自治やらですね、そういうものに対する脅威になってきているんではないかということです。

特に、ま、スーパーシティというのは、仙台市も取り入れてやってるようですけども、まあ、あの、内田聖子さんなんかがですね、ショックドクトリンというようなことを言ってらっしゃいます。

ホントに、あの、危ない動きで、これをちゃんと監視するのが私たち市民以外にはないと思いますので、みんなさまも、その、自治というものについて考える場合に、こういうものについても、ちょっと目を向けていただければありがたいと思います。

駆け足で、すいません。短い時間で、もう、盛りだくさんの話をしてしまいましたが、あのう、足りない点は、レジュメを見て、私たちにfacebook もご覧いただければと思います。今日は本当にありがとうございました。

www.facebook.com

あの、私たち水ネット、これからも頑張ってまいりますので、みなさまも、どうぞ注意してね、見ていただいて、できましたら私たちの輪にね、加わっていただきたいと思います。今日は誠にありがとうございました。

 

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   「私たちの平和:水道民営化問題から見えてくるもの」講演資料より

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   「私たちの平和:水道民営化問題から見えてくるもの」講演資料より