宮城県の水道民営化問題

命の水を守るため、水道の情報公開を求めていきましょう!

3・8国際婦人デー東北行動2020      命より金もうけ? そんな社会を変えましょう!  「水道民営化阻止」の声を集めましょう!

2020年3月8日、仙台市市民活動サポートセンター6階セミナ―ホールにて、 3・8国際婦人デー東北行動2020が開催され、講演<「水道民営化阻止」の声を 集めましょう>も行われました。

最初に、国際婦人デー実行委員会の谷康子さんによってアピール文が読まれました。

国際婦人デー東北行動          国際婦人デー実行委員会のアピール文より抜粋

 

命にかかわる公共インフラが、企業へ切り売りされていく先に何が起こるのか?   地方全体、市民の生活の土台をゆるがす歴史的な分岐点にいる私たち宮城県民は、  誰のための民営化なのか? 今後どういう社会を創っていきたいのか?       この原点を決して忘れてはいけないとの訴えです。

 

講演「水道民営化阻止」の声を集めましょう

講師 命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表 佐久間敬子弁護士

 

 

宮城県の水道民営化

      「水道民営化阻止」のために 佐久間敬子氏作成レジュメより

 

ご存知のように、日本全国の水道事業は大変大きな問題を抱えている。

水があまり使われなくなってしまい、水道事業がなかなか儲からなくなっている。人口が減って、節水意識が高まっているので、水道事業の収益が上がらない。一方、水道の装置はここ30~40年ぐらいで整備されてきて、古いものは40年ぐらい使っている。その設備の更新に莫大な費用がかかる。さて、どうしよう?

宮城県の場合、水道事業の収益は、現在150億あるが、20年後には10億減って 140億になってしまうだろうとのこと。そして、水道管等の補修の費用が、1960億円もかかる。さあ、困った。この費用が出せなくなるんじゃないか。

村井知事は、「この難問を取り除くためには、民間の力を借りたコンセッション方式でやるしかない」と考えた。民間に任せると、コストが247億円も削減できる。

この民営化を進めるために、昨年の12月17日の県議会で条例が改正された。本来ならば水道事業は公営企業しかできないが、これを民間ができるようにするという条例の「改悪」改定。県議会の59人の議員中、賛成が39、反対が19ということで、かなりの多数で可決された。

この民営化を進める基本になる法律はPFI法という。「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」。等が3つもあるややこしい法律で、この法律に則って宮城県の条例が改定され、民営化が実行できるようになった。

県はこの2年間で民営化を進めていくということなので、2022年の4月ころには、民間の企業が運営する上工下水道事業が始まる。今後2年間で、正式に議会がこれについて意見を述べることができるのは、1回だけ。運営権設定契約という民間に公営企業体が運営権をお任せする契約をする段階で1回しか、法律上は求められていない。

このコンセッションというのは、民間の事業のやり方。民間は、相対で様々な交渉や妥協の結果として契約に至るということが、当たり前になっている。そういう進行の過程なり道筋が、県民にも県議会にもなかなか明らかにならないため、住民の関与の度合いが著しく低い。そういう意味で、公営事業を民間に任せるのはどうかという根本の問題がある。

最終的な結論を出すときにだけは、議会が関与できる。こういうような事業な進め方について、住民に情報開示しないで、住民の意見を取らないで、重大な物事を決めるというのは、非常におかしいんじゃないか、と折に触れて言ってきた。ところが、「いや、民営化というのはそういうものなんだよ。それがコンセッションなんだよ」というのが、この事業を担当している方からの答えだった。

宮城県の上工下一体の民営化は、全国初のもの。浜松で下水道のコンセッションが始まって一年経っているが、上水道だけでなく、工業用水道、下水道3つの水道事業を全部一体として民間に任せるというのは、日本で初めて。知事はモデルケースと言う。河北新報は実験台だと報道する。さて、どちらに転ぶのか。

浜松は市長が上水道も民営化したいと試みたが、市民の理解が進まないということで凍結している。この宮城の動きを力として、浜松も凍結したものを解除して、念願の上水道のコンセッションをまた始めるのではないかと言われている。水道事業の苦境にあえいで困っている全国の自治体にも、民営化の弾みをつけることになりはしないか。

 

みやぎ型

みやぎ型

      「水道民営化阻止」のために 佐久間敬子氏作成レジュメより

 

水道事業の変革と言って、さかんにみやぎ型と言うが、公が持っている権利を民間に委譲する、運営権を民間に移譲するコンセッションのこと。村井知事は、「民営化という間違った印象を振りまくな」と言っているが、民間に運営権を丸投げするのは、まさに民営化だ。

今までも、指定管理者とか業務委託とか、民間にいろいろ仕事をお願いするというのはあった。このPFIという事業も、いろんなバラエティーがあったが、今回コンセッションというのを生み出したことによって、民間にとって大きなメリットが生じた。それは、民間がリスクと厄介で高額な負担をすることなく、運営権を入手できる仕組みだ。このコンセッションの進化型、極めつけがみやぎ型

水道事業は膨大な装置産業で、これを全部民間が買い取るとなると、膨大なお金がかかるし、水道管の補修費も莫大なお金がかかる。そして、災害の時に対応しなければならないということで、業務の量が非常に増える。民間にとってはリスクが大きい。こういうリスクを引き受けないで、運営権の利益の上がるところだけを任せられる仕組みがみやぎ型である。

村井知事は、なかなかコンセッションが進んでいかない中で、民間が「負担が大きい、危険が大きい」と二の足を踏んでいるところに解決策を持ち込んで、民間の力を呼び込むということで、法律の改正を強く働きかけた。

公共インフラの民営化は、1980年代以降「大きな政府から小さな政府へ」、新自由主義の流れということで、ヨーロッパで始まった。

日本では「官から民へ」。官というのは、非常に怠惰で、非効率で、コストが高くて マンネリだ。民間は、非常にコストパフォーマンスがいい、質が高い、チャレンジ精神があふれている。こういう民間にお願いしようという流れが、小泉・竹中改革あたり から出てきた。それが今は、国内だけにとどまらず国境を越えて、多国籍企業が利益を追求するために、外国の公共インフラに乗り出してきている。「官から民へ」の「民」とは、私たちのような真面目で慎ましい市民ではない。巨大な利益を上げている大企業、しかも多国籍、これが「民」。

世界で始まっている「官から民へ」、あるいは新自由主義の流れの一つの段階として、今お話しているPFIという事業の方法が、各国の公共施設の中に取り入れられている。PFIというのは、プライベート・ファイナンス・イニシアティヴ、民間の財政を先導して公の事業をやってもらう。PPPというのは、パブリック・プライベート・パートナーシップ、公と民間が手を携えて困っている公共インフラの立て直しをするという印象がある。

この後だんだん、公共と民間の境目がわからなくなる、曖昧になるということが発生し、その結果、いろいろな不祥事が起きたため、PFIの先進国イギリスの労働党会計検査院は、「今後PFIは採用しない」と言っている。

尾林芳匡弁護士がまとめたPFIの失敗事例では、仙台松森PFI天井崩落事故や病院の経営で大失敗したり、コンテナターミナルの経営破綻など、再度公営に戻っている少なくない例が日本でもある。

 

         特定非営利活動法人AMネットのリーフレット

 

水道民営化反対         特定非営利活動法人AMネットのリーフレット

 

am-net.seesaa.net

 

PFIを反省する時代」に入った「PFI先進国」イギリス 。

2018年1月、PFI請負企業でありイギリス第2の巨大建設会社「カリリオン」が破綻。病院や学校・図書館・刑務所といった、様々な公共サービスに影響が出た。

PFI先進国のイギリスでは、すでにPFIに大きな欠陥があるとの見方が主流。「リスクは行政に、利益は民間に」と国際的に批判される。

このように先進国はすっかりこりて、PFIから転換をしているのに、宮城県は、「全国第一のモデルになるんだ」と水道事業の民営化を始めている。

国会の審議の中で、山本太郎さんが「水道の民営化は周回遅れの愚策だ」と非常に鋭く追及したが、「なんで宮城で?」という疑問がある。やはり知事の個性というのが、 かなり影響しているんだろうなと思う。水産特区という形で、水産業を一部開放して、仙台空港も民営化を成し遂げた、と知事は大変自慢している。こういう自信のもと、 水道事業の民営化もということになった。知事の今任期の最大の目玉政策は、原発も あるが、水道事業の民営化だ。

水道や下水道という公共のインフラは、果たしてどれぐらい企業が狙う価値があるのか? 

福田隆之     コンセッションの概要と最新動向 講演資料 2014年11月19日

コンセッションの概要と最新動向 講演資料  https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000067559.pdf厚生労働省HPより)

 

2014年に厚労省で福田隆之さんという方が講演した時の資料によると、主要公営 インフラの料金収入は、水道が一番大きく2.7兆円。下水道は1.4兆円。空港や公営交通はずっと低い金額。主要公営インフラの資産規模は、水道が31.9兆円、下水道が65.5兆円で、他のものよりダントツだ。日本の上下水道は、最大の公営のインフラである。

前の県議会で共産党の遠藤いく子さんが質問して、宮城県の水道の価値は3500億円ということだった。この民営化に貢献したのが、菅官房長官の懐刀と言われたこの福田隆之補佐官だが、2018年に水道法が「改悪」される直前に辞めた。フランスに行ってヴェオリアから不穏当な接待を受けたと騒がれたため。この福田氏はPFIやPPP導入の旗振り役をしていて、以前は新日本監査法人に勤めていた。2011年5月に、村井知事、外相辞任直後の前原誠司氏とともに、仙台空港と水道事業の民営化を提案している。

 

みやぎ型に対する疑問

みやぎ型に対する疑問

      「水道民営化阻止」のために 佐久間敬子氏作成レジュメより


民間に任せるとコストが247億円削減できるというが、果たしてどういう根拠なのか? 

コスト削減の算定方法であるVFM(バリュー・フォー・マネー)のための市場調査で、関係する企業35社に、監査法人が聞き取り調査を2回したが、実証的なデータを積算して出したというものではなく、「このくらいはだいたい削減できるんじゃないかな」という期待値、そう願っているという感じのものだった。

 

各費目の削減期待値   東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センター事務局長 小川静治氏作成資料


企業からの回答は、人件費は10~20%、20~30%、50%削減とばらついていて、薬品費は5%いけばいい方、維持管理費は5~10%、8%、10~20%とばらつく。動力費・修繕費・テレメーター費・管理経費・建設改良費は、削減率を回答した企業はなかった。

水道は命の水、そして公衆衛生に関わる。昔は水が汚染されてとんでもない健康被害を起こしたし、外国では鉛被害とかもあって、命と健康に直結しているし、水産業・養殖業といった産業にも影響するので、水質の保持・維持が大切。

これを要求水準ということで県が設定することになっているが、水質について水道事業に関わっている技術者の方々が非常に心配しているのは、本当にこれまでと同じような良い水質が維持できるのだろうかということ。

今、県も市も、「この時点で、こういう薬品をこれだけ、何日おきに入れて水質を守っていく」というホントに事細かなことが決められていて、これを仕様発注と言う。ところが、みやぎ型では性能発注というのに切り替わる。性能発注というのは「結果としてこのような水質基準を満たすことができればいいよ」ということ。水を作る過程については、「こういう方法で、これだけの回数、こういうふうにしてやれ」ということは 言わない。「結果良ければ、良し」という形になる。

今は、事細かく測定の場所とか頻度とか報告をしているが、こういうことがかなりいい加減にされるのではないか。たまたま出てきた水が良ければ良しになって、実は周りを測ったら悪かった、三日後測ったらもっと悪くなったということにならないか。

設備の点検・維持というのも、非常にこまめにやっている。水道事業がどういうものかということで、何回か県と市の講義を聞いたが、こんなにも、日々丹念に、各技術者が現場に張り付いてやってるんだ、と。これも、点検の頻度を減らしたりして、一回で終わらせるということもできる。

この要求水準というものを、どれだけ確実に、詳細なものを提示して、守らせるかということが重要になるが、県はこれについては3月13日に公表する。この要求水準が どの程度のものなのかの先例は、浜松の下水道にあるが、非常に大雑把で入ってくる水の水質については3項目、浄化して出ていく水については4項目。宮城は、日本で初めてのモデルケースである浜松の例を大いに学んでいる。浜松よりもっと工夫したというのが宮城県の担当者の自慢。この浜松の要求水準よりも上回るものが出てくるかどうか? たぶん無理だろう。

それから、モニタリングというのがある。各水質や設備などの点検をちゃんとやれるか? 今回の民営化では、運営権者、県、第三者機関の三重のモニタリングをするという。果たしてそれがきちんとできるのだろうか。

県が公営企業としてやっているときは、こういう過程の情報はオープンで、刻一刻と、膨大な情報がインターネット上に開示されている。ただ、企業が関与してくることになると、企業秘密にかかわるものは開示はしないだろう。

 

情報開示ができるか? 

モニタリングがちゃんとやれるか?

削減率はホントに根拠があるのか? 

水質は守られるのか?

 

水道 再公営化 海外事例

      「水道民営化阻止」のために 佐久間敬子氏作成レジュメより

 

海外では、民間に任せてから事業を再公営化したという事例は、2017年段階で32カ国267件ある。料金が上がったり、水質が悪化したりという問題があってのこと。

「一回民間でやってみて、ダメだったら、元に戻したらいいんじゃないの」という意見もあるが、それは難しい。民間企業との契約の中で途中解約時の違約金の定めがあったり、違約金の支払いができないということがある。外国資本が乗り出してきて、たとえば、コンセッションを認める法律をまた元に戻して公営でしかやれなくした場合に、「コンセッションができると思ってはるばる海外から出てきた投資家の利益を損なうものだ。本来ならば獲得できたはずである利益を賠償しろ」というISDS条項が、多国間の貿易協定にあり、そういうことにもなりかねない。

そして、20年経つと、水道の技術を知識と体験で身をもって知っている技術者がいなくなる。いざという場合に、素人で右往左往することになり、再公営化がとても難しくなってしまう。

 

命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ

      「水道民営化阻止」のために 佐久間敬子氏作成レジュメより

 

私たち命の水を守る市民ネットワーク・みやぎが、水道民営化の問題点として訴えてきたこと。

1.料金高騰

いろんな所で料金が上がっているという実例がある。公営でも上がるかもしれないが、民間だから安くなるという保証はどこにもない。パリは265%水道料金が上がった。

2.水質悪化ー要求水準、モニタリングの実効性に疑問

水質がすごく悪化した例が外国にはある。ピッツバーグの鉛汚染など。

3.災害対応

災害対応がうまくできるか? 日本はここ2~3年災害大国になった。

この前の台風19号でも、河北新報の連載記事によると、水道技術者が寝ないでずっと現場に張り付いて、水を被った設備を変に動かすとショートして火事のもとになるので、そういう知識や経験を活かして、何とかあまり長い時間をかけないで復旧にこぎつけた。それは公営企業だからできる話。これから一層災害が増えてきた場合、果たして民間の人たちが公営と同じように必死になってやってくれるか? 

自治体間の協力もある。3.11の時も、各地の水道の担当部署の人が来てくれて、水を供給してくれた。あんなことが民営でできるのだろうかという不安がある。

4.公共部門の現場技術の伝承不可、技術者枯渇

5.情報不開示

情報がどこまで開示されるのか?

6.民間企業の撤退・破綻のリスク

怖いのは、民間企業が破産したらどうなるのか。県は「引き継ぎをする相手をちゃんと決めておくようにと契約に入れる」と言うが、破産というのはそんな生易しい話じゃない。何も後始末ができないから破産しちゃうわけで、机上の話はやめてほしい。

7.命の水・公衆衛生にかかる水道事業は公共で

世界の中でこれだけ豊かな水があって、蛇口をひねれば水が飲めるというのは世界に10か国ぐらいしかない。日本はそういう貴重な水の国だが、地形も水道管を取り巻く環境もそれぞれ地域によってそ個々バラバラで、一つの方式で決められるというわけではない。その水道に依拠する地域の住民が、地域の特殊性をよくわかって、水道事業をどうしていくかということを考えないといけない。

水道のことを考えるということは、自治を考えること。

日本は、明治の時代からずっと、水道は公営企業でやってきた。一時、明治の時代に、民間に任せたらどうかという意見も出たが、当時の議会は「駄目だ」「水は公衆衛生に関わる問題で、民間に任せるようなものではない」と言って止めさせた。そういう貴重な伝統が日本にはある。

8.地域、流域の住民が関与して持続可能な水道事業に

宮城の水は非常に豊富できれいであると言われている。そういう私たちの地域財産を、もう一度勉強し直して、水道事業を考えていく必要がある。

9.公共サービス基本法、国連の「水は人権」宣言(2010・7)を学ぶ

www.shugiin.go.jp

水と人権 – 国際法学会 "JSIL" Japanese Society of International Law

 

命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ

命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ

      「水道民営化阻止」のために 佐久間敬子氏作成レジュメより

 

昨年12月17日に民営化を許す条例の改定ができてしまったが、私たちは、議会に「拙速な審議はやめて継続審議にしてほしい」という要請を出して、これに対する賛同者316筆を得た。いろんな人から賛同していただき、特に生産現場にいる業者さん、歯医者さんが賛同してくださった。

私が建設企業委員会で参考人として意見を述べた時、自民党の委員から「これは民営化を許すという条例ではない。それでもあなたは反対するんですか?」と聞かれた。

自民党は)「コンセッションありき、民営化ありき」できているのに、そういう質問をしてきたので、「そうです。コンセッションありきではなく、もっと幅広く水道事業の問題点を考えるというスタンスであっていいんじゃないですか」と答えた。

この条例が通ったからと言って、コンセッションが決まったわけではないんだというのは、与党もよくわかっている。

 

今後の水道民営化反対運動

      「水道民営化阻止」のために 佐久間敬子氏作成レジュメより

 注)「宮城県の水道民営化問題」は、フェイスブックではなく、はてなブログです。

私たちは、今後2年間で実現する民営化について、いろんな節目節目で意見を述べて、みなさんに行動提起をし、お願いしていく。

当面は、3月13日に公表される募集要項について分析し、意見を言っていく。

県の水道事業というのは、県の35市町村の中の25に水を卸売りしているので、市町村は消費者。この消費者である市町村を受水市町村と言うが、何も知らされていない。県からきちんとした説明を受けていない。

市町村の方から様々な質問書が出ているが、それについても、「後からね~」と言って県は答えていない。各受水市町村ごとに、首長さんや議会でこの問題をよく議論して、住民を交えて、不安なこと、わからないことを徹底的に県に説明させることが必要。

 

県は「コンセッションしかない」ということで突っ走ってきているが、お隣の岩手では違った方法で問題を解決している。岩手中部水道企業団というところで、水道の領域を広げる広域化と、高度経済成長期にダムや浄水場を散々作って過大になった水道設備を除去するダウンサイジングを実現して、統合から4年間で約76億円の投資を削減している。(参考:岩手中部水道企業団の年間料金収入は46億円)これは公営である。

私たち県民の最大の防波堤は、この問題で大変活躍している内田聖子さんが「地域主権自治」で述べているように、水の問題に取り組むということは、

① 自治を取り戻す

② 公共性を再評価し拡充する

③ 限られた公共財(コモンズ)としての水を大切にし、分かち合う

ということだ。

私たちが地域の主権者たる住民として、私たちの水を守っていく、そういう地域主権の確立と自治を守る場だと内田さんはおっしゃっている。

 

会場からの質問

「民営化に決まったことになったんじゃないですか? 新聞やテレビを見ると。民営化になることになったんじゃないですか?」

 

佐久間弁護士の答え

「現実はそういうことになってるんでしょうが、法律と現実は、またギャップがある。法律は『民営化もできるよ』ということで、公営のままでもいいんです。

さっきも申し上げましたが、『これで民営化するわけではないのに、反対ですか?』と、条例案の審議の席で言われたんですけど、理屈はそうです。ただ、(自民党は)民営化ありきで進めるので、二枚舌ですね。

私たちはこれで今後2年間で民営化を進めていくと思ってますが、ただし、民営化をしなくちゃいけないと法律で決められたわけではないです。そこが私たちがこれから頑張っていく最大の拠り所になるということです。

現実の力を、どうやってもう一度押し戻していくかといことで、県民のみなさん、12月の議会では野党のみなさんがすごく頑張ってくださったので、そういう方々と力を合わせて、『まだ決まってないんだ!』というのが、こちら側の最大の謳い文句です。 だって与党のみなさんがそう言ったんですから。

民営化しなくちゃいけないと決まったわけではないので、それを押し通すということですが、ただ、民営化の意味はだんだん強まっていきますよね。様々な契約交渉に入っていくと、それを変えていくのはなかなか難しくなるかもしれませんから。今後の2年間の運動は、これは厳しいです。

一番の問題は、県民のみなさんがどこまでわかっているか。これまで私たちが盛んに言ってきたのは、『県民のみなさんにどういう説明をしたんですか? みなさん理解してますか?』ということです。県は、説明が足りないということを認めていて、説明不足を突かれるのを非常に嫌がっています。

12月17日に条例が変わったが、今年になってからも、大崎と白石で県民説明会をやっている。県は、『これからも、できるだけ県民のみなさんに安心していただくように、説明会やります。出前講座をご希望なら言ってください。どこにでも行きますから』と言ってます。皆さんも是非、『出前講座やってくれ』と言ってください。

削減額というのはホントに根拠がある話か、水質の維持がホントに守られるかどうか、民間でやった場合に、公営でやるよりも、もっともっとお金がかかる。株主の配当、 役員の報酬、公の場合はお金を借りるとき低利融資と言って安い金利で借りられるが、民間は普通の民間の金融機関から借りるわけだから、金利がそれなりに高くなる。

今まで県だけでやってきたモニタリングを、運営権者・県・第三者機関でやるお金は、どこから出るの? 民間の方がずっとコストが安くなるというのは、果たしてそうかな? と首をかしげます」

 

  

水道民営化阻止