宮城県の水道民営化問題

命の水を守るため、水道の情報公開を求めていきましょう!

10月1日に施行される改正水道法にかかわる  パブコメを提出しよう! 〆切は8月20日です!

私たちの命にかかわる水道について考え、みんなで話し合い、よりよい在り方にしていくために、あなたの意見を表明しましょう!

下記のサイトで、2019年10月1日に施行される改正水道法にかかわる意見を募集中です。郵送やFAXでの意見提出も可能で、〆切は8月20日です。

3つの案件についてそれぞれ簡単にまとめてみました。

   「水道の基盤を強化するための基本的な方針(案)」に関する御意見の募集について 

search.e-gov.go.jp

① 水道施設の維持管理・更新 

② 健全な経営の確保

③ 人材の確保・育成

によって、水道の基盤の強化を図り、以下の事項に取り組まなければならない。

① 水道施設の計画的な更新や耐震化等を進めるための適切な資産管理

② 市町村の区域を超えた広域連携

③ 民間事業者の技術力や経営に関する知識を活用できる官民連携

(「水道の基盤を強化するための基本的な方針(案) 」p1~2より要約)

というものですが、この(案)で気になる点は2つあります。

都道府県は、市町村の区域を越えた広域連携の推進役として水道事業者等の間の調整を行うとともに、その区域内の水道の基盤を強化するため、法第五条の三第一項に規定する水道基盤強化計画を策定し、これを実施するよう努めなければならない。また、認可権者として、本方針に即した取組が推進されるよう、水道事業者等に対して法に基づく指導・監督を行うよう努めなければならない。

(「水道の基盤を強化するための基本的な方針(案) 」p2)

都道府県が、広域連携の推進役になり、水道事業者等(というのは、ここでは市町村のことですね)の間の調整をし、水道基盤強化計画を策定して、水道事業者等に対して指導・監督を行うというトップダウンのやり方には、非常に違和感を感じます。

水に関する地域の実情や住民の声をきめ細やかに把握できるのは、やはり地元自治体でしょうから、都道府県に望まれるのは、トップダウンで指導・監督することではなく、むしろ、地元自治体の意見や要望を尊重し、後押しをするというボトムアップの姿勢ではないでしょうか。

水道の需要者である住民等は、将来にわたり水道を持続可能なものとするためには水道施設の維持管理及び計画的な更新等に必要な相応の財源確保が必要であることを理解した上で、水道は地域における共有財産であり、その水道の経営に自らも参画しているとの認識で水道に関わることが重要である。

(「水道の基盤を強化するための基本的な方針(案) 」p2~3)

 

水道施設の老朽化、人口減少に伴う料金収入の減少等の課題に対し、水道 事業等を将来にわたって安定的かつ持続的に運営するためには、事業の健全な経営を確保できるよう、財政的基盤の強化が必要である。 一方で、独立採算が原則である水道事業にあって、現状においても、水道料金に係る原価に更新費用が適切に見積もられていないため水道施設の維持管理及び計画的な更新に必要な財源が十分に確保できていない場合がある。 こうした中で、将来にわたり水道を持続可能なものとするためには、水道施設の維持管理及び計画的な更新等に必要な財源を、原則として水道料金により確保していくことが必要であることについて需要者である住民等の理解を得る必要がある。その上で、長期的な観点から、将来の更新需要を考慮した上で水道料金を設定することが不可欠である。

(「水道の基盤を強化するための基本的な方針(案) 」p5)

  

「水道の老朽化で更新費用がかかるのに、人口減少で料金収入が減るから、住民も水道経営に責任を持て。水道料金がそれなりに上がることを受け入れろ」と言っているのですが、そもそも、今まで水道の施設更新に必要な財源を積み立ててこられなかったのはなぜでしょう? 過去に国策でダム建設などに過大な投資をさせられてばく大な借金を作り、その返済で手いっぱいだったからではないでしょうか? であるならば、住人にそのツケを押し付けるのではなく、国が責任を持って水道の老朽化対策に資金を投入すべきです。

 「水道事業における官民連携に関する手引き(改訂案)」に関する御意見の募集について 

search.e-gov.go.jp

コンセッション方式導入にあたっての具体的な手続きやプロセスがよくわかる内容ですが、全文で103ページあります。

 コンセッション方式    (「水道事業における官民連携に関する手引き(改訂案)」p3)

 

水道事業者等である自治体側の財政負担軽減について

(3) 財政負担の軽減

水道事業者等は、地方債等の調達により水道施設の更新工事等の事業を実施しているが、コンセッション方式では、民間資金を活用して事業を実施することとなる。また、コンセッション方式では、水道事業者等は、公共施設等運営権者から運営権対価を徴収することができる。これらのことから、水道事業者等にとっては、起債額を削減できる等の効果が考えられる。また、これに伴い、事業に係る資金繰りのリスクを公共施設等運営権者に移転することができ、また、一般的に公共施設等運営権者は金融機関等から必要な資金を調達することから、対象事業の継続性・採算性に関する当該金融機関等からのモニタリング機能が加わることも期待できる。 なお、平成 30 年の PFI 法改正により、時限的に地方債の繰上償還に係る補償金の免除措置が講じられている。

(「水道事業における官民連携に関する手引き(改訂案)」p7~8)

これを整理すると、コンセッション方式では、

① 水道事業者等である自治体は、水道施設運営権者から運営権対価を得られるので、それで地方債を減らせる。

② 事業にかかる資金繰りのリスクを、水道事業者等である自治体から水道施設運営権者に移転できる。

③ 水道施設運営権者は、一般的に金融機関から資金を調達するので、その金融機関が事業の継続性・採算性をチェックすると思われる。

④ 令和3年度までの間に実施方針条例を定めること等の一定の要件の下、運営権対価で地方債を繰上償還すると補償金(借金の利子に当たるもの)の免除を受けられる。

となりますが、

②のように、自治体が地方債を減らした代わりに水道施設運営権者が金融機関から資金調達をすると、水道事業のための資金にかかる金利自体は大幅に上がりますから、コストアップの原因にならないか心配です。

下図は、「『上工下水一体官民連携運営事業』(みやぎ型運営方式)の是非を問うシンポジウム」の資料19ページの情報より作成した宮城県の例です。

金利比較

コンセッション方式では、自治体や第三者機関のモニタリングも義務付けられるのですが、③の金融機関によるモニタリング機能にも期待すると、逆に互いに相手頼みになって責任感が薄くなり、危険な兆候を見逃してしまう可能性もあると思います。

④にあるように令和3年度までと期限を短く切って優遇すると、そのメリット・デメリットを十分に検討する時間がないまま、住民の意見に耳を傾ける余裕もなく事を進める圧力となってしまいます。

 

◆料金改定と契約解除について

法令変更、料金改定の議会での否決等により、当初予定されていた業務の継続履行が困難となり、契約解除に至る場合は、基本的には水道事業者等側の事由による契約解除と同様の対応となる。

(「水道事業における官民連携に関する手引き(改訂案)」p28)

 

PFI法第29条第1項第2号に基づく公共施設等運営権の取り消しに伴う契約解除の場合、水道事業者等は水道施設運営権者にPFI 法第 30 条の規定に基づいた損失補償を支払う必要がある(なお、PFI 法第 30 条において、公共施設等運営権者に対する補償は、PFI 法第 29 条第 1 項第 2 号の規定に基づく公共施設等運営権の取消し若しくはその行使の停止又は水道事業者等の責めに帰すべき事由による公共施設等運営権の消滅による場合に限ることとされている)。

(「水道事業における官民連携に関する手引き(改訂案)」p58)

 

料金改定が議会で否決され、業務が継続困難になり、契約解除になると、水道事業者等である自治体側のせいとされ、水道施設運営権者に損失補償をしなければならないというのは、腑に落ちません。

水道施設運営権者が言い値の料金で改定しなければ業務が継続できないと主張したら、議会は否決できなくなってしまいます。その主張は本当に事実に基づくものなのかどうか、検証する手立てが確保されていなければ、不当な要求も受け入れざるを得なくなります。

 

地方公共団体と公共施設等運営権者との間での公共施設等運営権実施契約締結

公共施設等運営権の設定及び登録の後、PFI 法第 22 条(公共施設等運営権実施契約)の規定に基づき、地方公共団体と水道施設運営権者は、公共施設等運営権実施契約を締結し、遅滞なく公表しなければならない。当該実施契約には、地方公共団体が定める実施方針に加えて、水道施設運営権者が自ら示した提案書の内容を踏まえたものとする。  

(「水道事業における官民連携に関する手引き(改訂案)」p82)

コンセッション方式(地方公共団体事業型)の導入・実施手順(案)   (「水道事業における官民連携に関する手引き(改訂案)」p67)

太赤線の囲みの部分(当ブログ筆者による)「地方公共団体と公共施設等運営権者との間で公共施設等運営権実施契約締結、及び公表(PFI 第 22 条)」についてですが、契約を締結してから公表するのでは、住民が契約内容をチェックし、問題がある場合にはストップをかけるということができません。

たとえば、浜松市の下水道コンセッションの契約書には、次のような条項があります。

(反対運動及び訴訟等)

第 50 条 運営権設定対象施設の存在自体に対する近隣住民の反対運動や訴訟等により、事業期間の変更、本事業の中断・延期及び運営権設定対象施設の物理的破損等が発生した場合であって、かかる事象に起因して運営権者に増加費用又は損害が発生した場合、市は、 当該増加費用又は損害について補償するものとする。

浜松市公共下水道終末処理場(西遠処理区)運営事業公共施設等運営権実施契約書

https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/g-sisetu/gesui/seien/documents/jisshikeiyakusho_20171030.pdf

近隣住民の反対運動や訴訟で下水道運営権者に損害が生じた場合は、市がそれを補償するというのです。近隣の住民の反対運動が起きるような下水道運営権者の問題は棚上げにされて、下水道運営権者の損害のみが市民の税金で補償されるという事態が想定され、肯定されているのだとしたら、本当にひどい話ですよね。

 「水道施設運営権の設定に係る許可に関するガイドライン(案)」に関する御意見の募集について

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ガイドラインは、この許可に関する審査についての基本的な考え方を示すため、水道施設運営権の設定に係る許可に際しての留意事項や、申請書の審査上の基本事項等を取りまとめた。

(「水道の基盤を強化するための基本的な方針(案)」p4)

こちらでは、より実務的に事業のチェックポイントが解説されています。

◆外部有識者等によるモニタリングについて

水道事業者等によるモニタリングの一部として、外部有識者等によるモニタリングを実施する場合は、予定する外部有識者等の人数や組織の名称及びそれぞれが持つ能力や資格要件が記載されていること。外部有識者等の任期や常勤・非常勤の別についても記載されていること。(「水道施設運営権の設定に係る許可に関するガイドライン(案)」p28) 

この外部有識者によるモニタリングのほかに、住民の声を吸い上げる仕組みが必要です。この(案)では、それについて触れられていません。

参照サイト

パブリックコメント制度(意見公募手続制度)について

www.e-gov.go.jp

お盆休みには、お墓参りに行ってご先祖様と対話をし、そのご先祖様たちが営々と築き上げてくれた水道を、より良いものにして、未来の世代に手渡すことを考える。そんな時間も持ちたいですよね。