2023年4月24日、命の水を守る市民ネットワークみやぎは、公開質問状に対する再度の説明を求めて、県と株式会社みずむすびマネジメントみやぎに面談を求める要望書と 声明文を提出しました。
命の水を守る市民ネットワークみやぎが提出した公開質問状に対する県の回答の詳細については、↓ の記事をご覧ください。
今回の記事内容
注)命の水を守る市民ネットワークみやぎFacebookの記事を、ブログ筆者が適宜太字やカラーを付して改行し、再掲させていただきました。
命の水を守る市民ネットワークみやぎFacebookの記事
4月24日、私たち「命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ」は宮城県庁を訪れ、村井知事宛ての「県およびみずむすびマネジメントみやぎとの懇談の要望書」と「水道事業民営化から1年に当たっての声明」を提出してきました。
当市民ネットの佐久間敬子共同代表から県企業局水道経営課の臼井徹専門監に書面を手渡し、内容をしっかりと受けとめて知事にも伝えるよう要請しました。
ひとつめの要望書は、当市民ネットが提出した公開質問状に対する県の回答が納得のいくものではなく、再度、説明をしてもらう必要があるため、県とみずむすび社に面談を求めるというものです。
説明を求める内容とは、
質問①「下水汚泥含水率の目標値取り違え」問題については、みずむすび社が事業開始前と後で説明を一転させたことへの言及がないこと。
質問②「下水道事業の赤字」問題については、「事業初期は、何故、赤字になるのか?」へのみずむすび社と県の説明がくい違っていること。
質問③「仙南仙塩広域水道の濁度上昇事故」については、現場での再発防止対策についてより詳しい説明が必要であること。
質問④みずむすび社がホームページに掲げている資料がダウンロード・印刷不可設定になっていることについて「知的財産権の保護」を理由に挙げているがそれはどの箇所か?
等についてです。
ふたつめの声明文は、宮城の水道民営化開始から1年に当たって、私たちの所感を述べ、県とみずむすび社に求める内容をまとめたもので、大きく次の5点にわたります。
①情報公開の抜本的な改善を求めます。
民営化後の最も顕著は変化は「情報公開の大幅後退」です。水道事業に関する情報が、みずむすび社の判断で非開示にできるようになっており、県民の「知る権利」が保証されていません。
②とくに重要な水道用水原価、下水道負担金の算定根拠の公開を求めます。
いずれも県民に負担を求める際の説明責任や市町村議会が責任をもって予決算を議決するために不可欠の情報です。
③濁度上昇事故を教訓に、県が事業全体に責任をもつよう求めます。
同事故から、現場の作業マニュアルが整備されていなかったこと、作業員の教育訓練が十分でなかったこと等が浮かび上がっています。県の主導で現場を総点検し、改善することを求めます
④運営権者に疑義が生じたとき、県が厳正に対処するよう求めます。
「下水汚泥含水率の目標値取り違え」について、県がみずむすび社の嘘の説明をかばい、苦しい言い訳を不問にしていることは、県民の信頼を損なうことであり、許されません。
⑤広域化を入り口にした民営化の拡大を許さず、再公営化を求めます。
今、世界では新自由主義政策を見直す動きが進んでいます。住民参加と情報公開を大切に、民営化された水道事業を再公営化する運動が展開されています。私たちもこの流れに参加し、民営化された宮城の水道事業を<公共>に戻すために共に行動しましょう。
県およびみずむすびマネジメントみやぎとの懇談の要望書
当会が2月17日に提出した「宮城県上工下水一体官民連携運営事業(みやぎ型管理運営方式)の運営状況に関する公開質問状」に対して、3月31日付で回答をいただきましたことに、御礼を申し上げます。
回答を検討したのですが、以下のような理由で、㈱みずむすびマネジメントみやぎ(以下、MMM社と記述)と懇談する機会をもつ必要があると判断しました。
まず下水道事業に赤字に関する質問への回答です。
MMM社と貴職の回答のどちらが正しいのか、確認が必要になっています。全体事業計画書および中期事業計画を閲覧しても、要領を得ないところがあり、MMM社との面談が不可欠になっていると思料するものです。
次に、下水汚泥含水率に関する質問への回答です。
質問は、この経過に関する説明を求めたものですが、貴職の回答にはそれが欠落しています。回答を得るためには、MMM社との面談が必要になっていると思料するものです。
MMM社の情報公開に関する質問の回答についてです。
濁度上昇事故に関する質問についての回答です。
以上
水道事業民営化から1年に当たっての声明
以下は「水道事業民営化から1年に当たっての声明」の全文です。
2023(令和5)年4月24日
水道事業民営化から1年に当たっての声明
命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ
共同代表 佐久間敬子 中嶋信
全国初のコンセッション方式により宮城県の上水道、工業用水道、流域下水道の9事業が民営化されてから、1年が経過しました。
情報公開の抜本的な改善を求めます。
民営化後の最も顕著な変化は、情報公開の大幅後退です。
事業に関わる情報は、運営権を取得した㈱みずむすびマネジメントみやぎ(MMM社)が「企業経営上の正当な利益を害するおそれがある」とすれば非開示になり、県民の「知る権利」は保障されなくなりました。事業の運営状況を評価・分析するために、宮城県企業局経営審査委員会が設置されましたが、そこに提出される資料は限定的なものになっています。経営審査委員会の会議では、MMM社の要請で、毎回のように一部が非公開にされています。本当に非公開にしなければならない企業ノウハウなのか、非公開にした判断が妥当だったのかについて、事後の検証はされておらず、経営審査委員会の姿勢も問われています。
宮城県とMMM社に対して、情報公開の抜本的改善、水道用水の原価の公表、「20年間でコスト削減337億円」という公約の進捗状況を示すよう求めます。
また、経営審査委員会に対して、県民・県議会が入手できない事業情報の取得につとめ、情報・資料・審査の内容を最大限に公開するよう求めるものです。
MMM社は、各種計画文書14文書を作成することになっていますが、これまで作成され公開されているのは情報公開規定と3種の事業計画書だけです。MMM社はホームページで資料を公開はしていますが、全体事業計画書、中期事業計画書、年間事業計画書の大半がダウンロードも印刷もできない設定のPDF資料で、県民が検証しにくいようにされています。経営審査委員会から要請されて、MMM社は全体事業計画に関わるエクセル資料を公開しましたが、PDF資料の公開性も改善するよう求めます。宮城県も、県民の「知る権利」を保障する立場に立ち、改善を求めるべきです。
経費削減計画によれば、MMM社は20年間で約92億円の純利益を生みだす予定で、その約半分は維持管理業務を委託されている㈱みずむすびサービスみやぎ(MSM社)が取得すると説明されています。しかしMSM社は県と直接の契約関係がないため、その財務数値等はほとんど開示されていません。純利益の原資は、県民と事業所が負担する水道・下水道料金です。上工下水道は非常に公共性が高い事業であり、1月25日の経営審査委員会で表明された「MSM社の財務数値を自主的に公表」する措置を確実に実行すること、さらに拡大することを求めます。
とくに重要な水道用水原価、下水道負担金の算定根拠の公表を求めます。
仙南仙塩広域水道と大崎広域水道は、今年9月までに県と受水25市町村との間で合意を交わし、2024年度から新しい料金体系に移行する予定です。2つの用水提供事業の料金は全国トップレベルで、関係市町村は受水料金の引き下げを求めています。また、年間契約水量の80%分に相当する料金を、年間給水量がそれに満たない場合でも県に支払う「責任水量制」がとられていますが、市町村はその見直しも求めています。これまでは事業別にそれぞれの用水の原価が公表され、市町村の受水料金は原価にもとづいて算定されてきました。民営化後も、受水料金が妥当かどうかを判断するために不可欠であり、用水の原価を公表することが当然です。
同様に、流域下水道事業についても、市町村負担金の算定根拠が示されないと、各市町村長は住民に責任ある説明ができなくなり、各議会は責任ある議決ができません。住民の負担や各市町村の予決算に関わる重要な情報なので、改築費、修繕費、動力費などの下水道負担金の算定根拠を、これまで通り明示するよう求めるものです。
濁度上昇事故を教訓に、県が事業全体に責任をもつよう求めます。
仙南仙塩広域水道事業で2022年12月9日、濁りのある水が市町村に提供されるという濁度上昇事故が発生しました。5段階の要求水準書違反のうち、レベル3に該当する重大事故でした。
事故は、設備の定期点検中に作業員が事前の養生作業を誤ったというミスにより発生したものです。ミスを生んだ原因として、施設等の維持管理を担当している㈱みずむすびサービスみやぎ(MSM社)が受託業者との間で十分な確認作業をしていなかったことなどが報告されており、同社が作業手順マニュアルを明確にし、管理体制を改善することが求められています。また、県は事業管理者でありながら、以前からマニュアルを作成していませんでした。
民営化後は、設備はMMM社が、管路は県が、それぞれ管理するようになりましたが、水はつながっています。災害時や事故発生時に両者の連携が確実に機能することが求められます。事故を教訓にして、県が主導して種々の作業手順マニュアルを総点検し、改善するよう求めます。
本年4月8日、今度は大崎広域水道で濁度上昇事故が発生しました。
今後の事故を防ぐために、県が上工下水道事業全体のマネジメントに責任を負うようにすることを、強く求めるものです。
運営権者に疑義が生じたとき、県が厳正に対処するよう求めます。
民営化の初年度に、鳴瀬川流域下水道(鹿島台浄化センター)で脱水汚泥含水率の管理目標値を達成できず、吉田川流域下水道(大和浄水センター)では超過達成するという、不可解なことが起こりました。
事業計画書が提出された2021年、脱水汚泥含水率の管理目標値の記述に対し、下水道に詳しい人々から「下水の処理方式と設備から判断して、MMM社が両事業を取り違えて記述しているとしか考えられない」という指摘がありました。当会は、脱水汚泥含水率の過去3年度の平均実績が、鹿島台浄化センターと大和浄化センターでまったく違うことを指摘し、県に確認を求めました。両者を取り違えたと考えれば、この疑問は解消されるからです。
県からは、取り違えを否定し、鹿島台浄化センターの管理目標値は「処理方式や設備構成から判断し設定」したものだという説明がありました。しかも「投入汚泥濃度、薬品(凝集剤)添加条件、脱水機の運転条件などを最適化することにより…実績値より向上の余地があると判断している」と、目標達成に自信を示すものでした。以上のように事業開始時点から目標達成可能という事だったので、これは実際の現場の状況を把握していなければできない回答で、私たちは結果を注視することにしました。
しかし、こういう経過にもかかわらず、管理目標値は達成されませんでした。
1月25日の経営審査委員会でMMM社は、管理目標値の設定は「提案段階では詳細な運転条件が不明だったため、いくつかの仮定・想定を置いて」行ったものだと、従前の説明を一転させて、弁解しました。そして2年目(2023年度)の計画で、結果的に鹿島台と大和の管理目標値を入れ替えました。これでは、事業計画書の記述で事業を取り違えていたのではないかという疑念は、深まるばかりです。
計画初年度からの目標未達成という今回の事態は、計画全体の信頼性に疑念を抱かせるものです。
県は、汚泥含水率が管理目標値から外れた理由について、MMM社の弁解をそのまま繰り返しています。これは、民営化前の説明を無かったかのようにして、経過を不問にするものです。こんな官民連携では、県民の信頼を失うだけです。
今後、民営化された上工下水道事業に関わって疑義が生じたときは、県が厳正に対処するよう求めるものです。
広域化を入り口にした民営化の拡大を許さず、再公営化を求めます。
当会は、「水は人権」と訴え、「命の水を利益追求の対象にしていいのか」と問いかけてきました。
コンセッション方式の民営化について、料金の高騰、水質の悪化、技術者の枯渇、地域経済への悪影響を招き、事故や災害時の対応に問題を生じ、自治と情報公開を後退させる最悪の民営化になると指摘してきました。わずか1年で、それが現実のものになりつつあります。その拡大を許してはなりません。
ところが、市町村営の水道事業において、市町村の枠を越えて「管理の一体化」「施設の共同化等」「経営の一体化」をめざす水道広域化計画が進められています。下水道でも、広域化・共同化が計画されています。広域化が進めば、市町村議会は事業に関与できなくなり、首長の判断で民営化を一気に進めることが可能になります。「広域化を入り口にした民営化を警戒しよう」と、呼びかけるものです。
水環境の悪化や地球温暖化が叫ばれ、水循環基本法の理念に立ち返った対応が求められています。
いま世界では、新自由主義政策を見直す動きが進んでいます。水道事業の分野でも、住民参加と情報公開を大切にして民営化された水道事業を住民の手に取り戻すことが運動として展開されています。
当会もこの流れに参加し、民営化された9事業を公営=公共の戻すために行動します。みなさんの結集を呼びかけるものです。
以上