2022年6月4日、東北大学川内萩ホール2階会議室にて、東北大学知の創出センター・東京エレクトロン株式会社主催の「市民forum人の幸せを大切にするIoT社会のデザイン」が開催されました。
今回の記事内容
第一部 活動報告及び講演会
人間にとってのコミュニケーションとは何か 情報技術で変わることと変わらないこと 久木田水生准教授(名古屋大学大学院情報学研究科)
活力ある社会を創る適応自在AIロボット群:ムーンショットプロジェクトの目指す2050年の社会とは 平田泰久教授(東北大学大学院工学研究科)
第二部 市民との対話
提言 堀尾喜彦教授
提言についてのグループ討議
討議のまとめ
このプログラムについて、上掲のサイトでは、「唯一の正解や目覚ましい技術の開発を目指すプログラムではありません。技術の進歩によって社会や私たちの意識は変化してきたけれど、何を生み出し、何を変えずに守っていくことが社会の、私たちの幸せになるのか。流されるだけでなく、それをみんなで考える土壌をつくりたいと考えています。」と説明しています。
これを見て、台湾のデジタル担当政務委員オードリー・タンさんを敬愛している私は、ぜひ参加したいと思いました。
#オードリー・タン の活動から考える
— ひとしずく #命の水を守ろう! (@HitoSizuku18) 2022年5月23日
「#台湾 にあって日本に欠けているもの」 @gendai_biz https://t.co/apNPOYjWnI #現代ビジネス
たいせつなのは、オードリーさんの使っているデジタル技術とか個々のアイデアじゃなくて、もっと根本的な社会との関係の作り方
第一部 活動報告及び講演会
技術発展に対する人々の恐れや無関心に対応すると同時に、科学の暴走を食い止めるため、みんなで考える土壌を作る必要があるということで、アカデミアと市民の対話イベント「市民カフェ」が、すでに3回開催されています。
「新たなAIと人類の概念に関する提言」についてのディスカッション
「人の幸せを大切にするIoT社会のデザイン」第1回 市民カフェ | 活動一覧 | TFC×TEL協働プログラム
「変化するコミュニケーション――言語以外の要素を通して」についてのディスカッション
「人の幸せを大切にするIoT社会のデザイン」第2回 市民カフェ | 活動一覧 | TFC×TEL協働プログラム
「IoTを駆使した未来予測機は人に幸せをもたらすか?」についてのディスカッション
「人の幸せを大切にするIoT社会のデザイン」第3回 市民カフェ | 活動一覧 | TFC×TEL協働プログラム
特に、第3回 市民カフェで、若い人たちは情報を収集されることについては抵抗がないけれども、誰が、何の目的で収集しているのかがわからないのが怖いし、それを使って勝手に判断されるのがイヤだという話が出たそうです。
人間にとってのコミュニケーションとは何か 情報技術で変わることと変わらないこと 久木田水生准教授(名古屋大学大学院情報学研究科)
今回の司会者である直江清隆教授から、久木田先生は、哲学、倫理学、AIがご専門で、アバターを使って社会問題を解決するなど、人文系の視点から、IoTと社会について研究していらっしゃるというご紹介がありました。
コミュニケーションの2つの役割
①情報を伝達・共有する
②社会的関係を作る
歴史を振り返ってみると、新しい技術は常に批判されてきましたが、技術の発達はコミュニケーションをより活発にし、社会に豊かさをもたらしてきました。
特に、メタバースなどの仮想空間では、物理的制約がないため、性別や容姿・社会的な立場から開放されてなりたい自分になれて、他者と自由に交流したり、創造的な活動を行うことができるという期待が高まっています。
現在深刻な孤独の問題も、下記の書籍のように、技術の進歩で解決することができるのではということです。
課題としては、プライバシー、アイデンティティ、セキュリティについて、もっと様々な視点から議論していく必要があります。
これから、バーチャルリアリティーがよりリアルに近づいていくと思いますが、それと同時に、言語によるコミュニケーションが主体の Twitter などもあるといったように、多様な IoT のあり方をうまく活用できれば良いのですが、偏った世界に没入してしまう人が出てくる危険性も懸念されます。
活力ある社会を創る適応自在AIロボット群:ムーンショットプロジェクトの目指す2050年の社会とは 平田泰久教授(東北大学大学院工学研究科)
平田先生のお話で最初にご紹介されたCOGYは、事故やパーキンソン病、脳梗塞などで歩行困難になった人が、どちらかの足を少しでも動かせれば、速足程度までのスピードで移動できるという車いすです。
あきらめない人の車いすと銘打っているように、自分の足で車いすを楽に動かせるようになると、「足の運動になって筋力低下を防ぐことができる」「諦めていたやりたかったことが、できるようになるかも」などという前向きな気持ちが生じて、よりいろんなことに取り組んでいきたいと思えるようになります。
「自分にもできる!」という「自己効力感」が、人々の生活を変え、幸福感を大きく高めるという事例です。
リビング空間とラボを密着させた「青葉山リビングラボ」は、介護ロボットの開発・実証・普及のプラットフォームです。
平田先生は、いつでも、誰でも、安心してロボットを使える社会を目指して、プロジェクト「活力ある社会を創る適応自在AIロボット群」を率いています。
様々な場所に設置され、いつでも、だれでも利用でき、個々のユーザに合わせて形状や機能が変化し適切なサービスを提供する適応自在AIロボット群を開発します。2050 年までに、人とロボットとの共生により、すべての人が参画できる活力ある社会の創成を目指します。
(中略)
01.人・ロボット共進化AI研究開発
「できるかも」「やってみよう」という気持ち(自己効力感)がどのように変化するのか、そのメカニズムを解明するとともに、自己効力感を向上させるための適切な目標設定とAIロボット群のふるまい生成を行います。02.適応自在AIロボット研究開発
形状・形態をユーザの体格や障がい、身体能力などに合わせて最適化する適応自在AIロボットを開発します。ヒトの状態を検出して必要十分なアシストを提供することで、アシストと自立の境界をなくし、ユーザの主体的な活動を促します。03.共進化AIロボット群社会実装
安全評価基準や、ELSI(Ethical, Legal and Social Implications)に基づくロボット設計・共有データ管理指針を策定・標準化し、実証実験を通じたシステムインテグレーションを行うことで、研究開発したAIロボット群が社会に受け容れられる仕組みを作っていきます。
人の主体性を引き出し、人が自ら幸せを築いていくために、人に寄り添い状況に合わせて自在にアシストするロボット群が、人と一緒に進化していく社会を作っていくという研究は、人口が激減する日本においては、必須の社会インフラとなっていくと、筆者も思いました。
第二部 市民との対話
提言 堀尾喜彦教授
学びや相互理解、創造・創発、批判・批評が行われるような場は、物理的な空間や機会を設定するだけではなく、そういうものが生まれるような環境やつながりというものをデザインしていく必要がある。
提言についてのグループ討議
オンラインと対面でのミーティングについて、それぞれ次の4つのケースで、メリットとデメリットを考える。
①学校や職場の場合
②恋人などごく親しい関係の場合
③7~8人の仲間内の場合
④コンサート等の大人数の場合
討議のまとめ
コミュニケーションでも、自己効力感が重要で、IoTでそれを高めることができるのでは。
インタラクティブ感がないほうが良いコミュニケーションもある。
TwitterなどSNSで自己効力感が下がることもあるので、複数の場を持つことでバランスを取ることも必要。
オンラインでは表情が読み取りにくいが、それが良い時も悪い時もある。
技術革新で、オンラインでも、よりリアルに表情などを伝えられるようになるだろう。
アバターで、より違う世界の人と広く繋がれる。
地域を越えて関わりを持てる。
距離感や親しさの度合いによって、服装や雑音に気を使わなければならない。
オーラや触覚、アイコンタクトなども伝わるようなアバターができればいいな。
オンラインだと参加してる感がない、リアル感がない、空気が共有できない。
使いたくない人には、IoT 技術を強制しなくてもすむ仕組みも必要。
VR等で臨場感を追求していければ。
久木田先生のコメント
場を共有することの価値は非常に大きい。関係に対するコミットの表明にもなる。
オーラというその人が持っている空気や雰囲気は、まだ科学的に明らかにされていない。
何がリアルか? リアリティとは難しい問題。
平田先生のコメント
コミュニケーションの場を使い分けるため、ツールの組み合わせが大切だが、多忙になりすぎるのが難点。
いろんな人と交流したいけど、プライバシーが気になる時は、アバターで自由にコミュニケーションできる。