宮城県の水道民営化問題

命の水を守るため、水道の情報公開を求めていきましょう!

6/1 公共政策のスペシャリスト岸本さとこさんが、<とことん共産党>に出演! 保育、介護などCO₂を出さない福祉分野に投資して、社会の構造そのものを脱炭素化していく! いま本当に必要なのは、公共サービスの民営化ではなく民主化だ! 

2022年6月1日、日本共産党YouTube チャンネルの「とことん共産党」に、杉並区長選立候補予定者の岸本さとこさんがゲスト出演し、公共サービスと地方自治について、小池晃日本共産党書記局長と司会の朝岡晶子さんの3人で熱いトークが行われました。

 

 

今回の記事内容

◆新自由主義と軍拡・独裁という最悪の組み合わせ

◆岸本さとこさんって、どんな人?

◆2018年水道法改正とコンセッション

◆世界の流れは再公営化=脱民営化

◆コロナ禍で、ヨーロッパでは大々的に国営化が行われた

◆競争の末に待っているのは、強い企業による寡占

◆コンセッション契約を途中でやめようとすると、巨額の賠償請求をされる

◆イギリスの(再)公営化 モメンタム(若者の草の根政治運動)と労働党の改革

◆パリの水道再公営化と民主化

◆水道民営化は詐欺だ! 公共を取り戻そう!

◆福祉に投資して、社会の構造そのものを脱炭素化していく

◆杉並区から世界を変える

 

 

 

 

新自由主義と軍拡・独裁という最悪の組み合わせ

 

参議院予算委員会質疑(2022.5.31)の動画字幕よりーーーーーーーーーーーーーーーー

小池晃書記局長「総理は、日米首脳会談で、防衛費の相当な増額を表明されました。 総理、これは対米公約ということですね? 」

岸田総理「これは決して、対米公約などというものではないと考えております。」

小池晃書記局長「約束したんでしょう? 約束じゃないとおっしゃるんですか? 」

岸田総理「約束したという言葉の響きに、何か、嫌々ながら、何か、米国に何か求められたというような意味合いを感じるので、あえて否定させていただきました。

我が国の防衛であります。それに対して、日米において考え方が一致したということであります。」

小池晃書記局長「そういうのを世間では約束というんですよ。

GDPの2%以上ということを、自民党の安全保障調査会は言っている。そうなれば、世界第3位の軍事費になる。

今、すでに中央省庁の中で、防衛相の予算は、農林水産省の2倍です。2倍以上。文部科学省より多い。2倍になれば、国土交通省を上回って、厚生労働省に次ぐ巨大組織になる。2%以上ということになれば、こういう事態になるということはお認めになりますね? 」

岸田総理「政府としては、数字的なものについては、何も明らかにしていません。」

小池晃書記局長「実際に自民党はそういう提案してるわけですよ。

自民党の選挙公約でもあるわけですよ。

そうなればこういう事態になるということは、可能性としてはお認めになりますね。」

岸田総理「いま、数字については何も申しておりません。」

小池晃書記局長「これ、財源は社会保障予算などの相当な削減か、あるいは相当な増税か、あるいは安倍元首相が言っているように、国債発行でまかなうのか、この3つの選択しかないと思いますが、これ、排除されるものがあるんですか? 」

岸田総理「具体的な内容が決まらなければ、それに見合う予算というものを申し上げることはできない。」

小池晃書記局長参議院選挙の前にそういったことも示さずに選挙やって、白紙委任が得られたと言って進めるようなことは、私は断じて許されないというふうに申し上げておきたいと思います。」

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小池晃書記局長

日本には憲法9条がある。軍事力で物事を解決しないと決めた国が、あれだけ巨大な軍事予算を持つのはあり得ない。

しかも、財源を一切示してなくて、5兆円ないし6兆円増やさないきゃいけない。社会保障予算、教育予算を削る歳出のカットか、増税するか、消費税で言えば2~3%の増税をしなきゃいけない。

安倍元首相は、国債でまかなうと言ってる。国債で軍事費をドンドンドンドン増額していく、戦費調達するというのは、戦前の日本がやった

そういった教訓で、財政法の4条と5条で、国債発行というのは基本的には禁止されて、建設国債以外は出しちゃいけないってなってる

きょう議論になってるような新自由主義を一方で進めるっていうような政治、ホントに止めなきゃいけない。

岸本さとこさん

軍拡と新自由主義の組み合わせ、一番恐ろしい組み合わせじゃないですか。

ものすごいお金が流出していくわけですよね。このコロナの今のこの時期に、私たちの生活の底上げをまさにしなきゃいけなくて、生活を守らなきゃいけない時に、最悪の組み合わせですね。

最悪の組み合わせいろいろありますけれども、新自由主義と独裁というのも、非常に親和性が高いんですよ。そこにちょっと近いような状態になってきてると思うと、ホントに空恐ろしい気がいたします。

 

◆岸本さとこさんって、どんな人?

 

朝岡晶子さん

岸本さんは、最近まで、オランダのアムステルダムにある政策研究NGOトランスナショナル研究所の研究員をされていました。

トランスナショナルって、超国家っていう意味ですかね、国家を超え、公正で民主的で持続可能な地球の構築に取り組む国際的な研究アドボカシー機関というところで研究員をされて、世界中を駆け回ってらした。

 

 

マガジン9 HPより

maga9.jp

 

水道とか公共サービスとか、脱民営化ということを、中心的なテーマにも持たれて研究されてきたんですが、2年前に出版された集英社新書「水道再び公営化!欧州水の闘いから日本が学ぶこと」を、私と小池さんも読ませていただいたんですが、大変面白かったです。

 

 

◆2018年水道法改正とコンセッション

 

小池晃書記局長

僕ビックリしたのは、本の最初のほうに、麻生太郎氏が外国でいきなり、「日本の水道を全部民営化するんだ」みたいなことを言ったっていう紹介がありますよね。あんまり日本では問題になんなかった。

岸本聡子さん

その後、2018年に水道法が変わりました。ですから、ホントはもっと知られなければいけなかった問題だと思うんですけれども、それでも、国会で少し話し合っていただけました。結局法改正は行われたんですけれども。

法改正が行われたとしても、ここでね、いろんな方が警鐘を鳴らしたことで、水道サービスって自治体で行われてるので、自治体の中でかなり警戒感というのが強まったということは、重要だったかなと思います。

国がコンセッションというやり方で民営化を許したとしても、結局最後に決めるのは、自治体ですので、今日のテーマにもつながってくると思うんですけれども、最後の砦としての自治体、とっても大切だと思います。

小池晃書記局長

コンセッションってどういうものなのか、ちょっと説明していただければ。

岸本聡子さん

民営化って、結構テクニカルな言葉がいっぱい出てくるんですけど、ここに騙されずというか、捕らわれず、参りたいと思います。

水道って言った時に、水道管とか浄水場とか、いろんな施設があるんですね。

それで、日本で行われているのも、世界で行われているのも、コンセッションというのは、民と行政、官の協力的な関係と言いますか。

資産を全部売り払って行うのが、完全民営化です。水道の場合は、それはできません。

資産とか物は、土地とかは、自治体に残ったままで、これを、「25年から30年間、全部使って運営してください。お金集めてください。その権利として、この施設を使う料金というのを、25億円とかで売りますよ」、そういう契約関係なんですね。

小池晃書記局長

それ売っちゃうと、転売したりとか。

岸本聡子さん

できますよ。できるし、25年から30年にわたって、施設の投資も含めて、借金も含めてやっていく。もちろん、働く人たちも。

30年とかですから、民のほうにお金とモノとが移動して、意思決定も移動します。

となると、これは、資産が自治体に残っているだけで、契約期間が長いので、基本的には民営化です。

そういうのを、コンセッションという言い方で、完全民営化と区別しているということです。

小池晃書記局長

それが今、世界では逆の方向になってきてるということが、今日のテーマですね。

 

◆世界の流れは再公営化=脱民営化

 

朝岡晶子さん

このタイトルにある「再び公営化」っていうのは、再公営化っていうことですけれど、つまり、脱民営化っていうことですよね。

最初にご紹介したいのは、2000年から2019年の間の世界の事例です。

公共の力と未来 世界の脱民営化から学ぶ新しい公共サービス 30 July 2020Report より

公共の力と未来 世界の脱民営化から学ぶ新しい公共サービス 30 July 2020Report より

www.tni.org

 

小池晃書記局長

これって、ホント僕ね、岸本さんに話聞いてびっくりしたんだけど。だって、民営化が流れなんだと思ってたら、実は世界は、逆に公営化してる。

朝岡晶子さん

民営化なんて時代遅れっていうぐらい、世界と日本は逆行している。

2019年までに、さまざまな公共サービスが民営化していたのを、もう一度公営に戻した事例が1,408件もあって、ここには水道、医療、住宅、エネルギー、ごみ処理、交通などがあります。

岸本聡子さん 

この表、実はコロナの前なんです。市民団体と労働組合、世界中でつながってますので、これ、みんなで力を合わせて、データベースにしてるんですね。

というのも、こういったローカルな情報って、なかなか集めるの難しいんです。英語圏、フランス語圏、スペイン語圏は何とかできたとしても、たとえばタイで行った時とか、なかなか情報が入ってこない。

でも、知っていらっしゃるのは、働く方たちなんです。国際公務労連という国際的な労働者のネットワークがあるので、私たちはその方たちと協力して、どんどん情報集めていく。今日この数は、1,582件になっている。

私の仕事は、「ここで再公営化したよ」とかメールが来ると、「ありがと、ありがと」って言って、リサーチ始めるんですね。

それで、リサーチをして、いろんな条件があるんですけれども、これは民から官にそのマネジメントと所有権が移行した、戻ったと認められた場合には、このデータベースに足していくという、コツコツとそういう作業をしているんです。

 

◆コロナ禍で、ヨーロッパでは大々的に国営化が行われた

 

私は最近までヨーロッパにいたんですけども、コロナが起きた時に、大々的な国営化が行われたことって、日本で報じられてますかね? 

当然なんですよ。公共サービスにしても、電車とかバスとかもそうなんですが、経営が成り立たないと、倒産するってすごくたくさんありますよね。ごみの処理とか、ノルウェーとかそうなんですけど。

倒産して、「すいません」て言うのがビジネスですよね。

でも、止まっちゃいけないのが、公共サービス。倒産して、「明日からゴミが集められません」って言うのは、困るわけじゃないですか。

ですから、民間の企業が倒産した時に、すごい大変なことが起きるんです。その時に即座に入らなきゃいけないのが、自治体と労働者。でも、みんな、それをやるんですよ。だって倒産しちゃうんだから。公共サービスって言うのは、止めちゃいけないサービスなんです。

コロナで、アイルランドとか、イギリスでもスペインでも、今まで民営化した病院を、一時的ではありますが国営化しました。そうじゃないと、人とか病床とか、政策で調整できないじゃないですか。

「私たちコロナ受け入れられません」って言ったら、どうにもならないくらい、ヨーロッパは、ホントに大変だったんです。一時的に国有化することによって、政策が及ぶようになる。

国を挙げて、公共政策で、医療で命を守んなきゃいけなかったので、一時的に再国有化いたしました。

小池晃書記局長

日本なんか、逆に、コロナで医療崩壊とか言われつつも、公的病院の統廃合を進めようって言う。

岸本聡子さん

その時はビックリしました。たまげました、私ホントに。

小池晃書記局長

国有化をしちゃう。それ、ちょっとイメージが沸かない。

岸本聡子さん

それだけ、ヨーロッパっていうのは、民営化が、日本よりも、ずっとずっと進んでるんです。

朝岡晶子さん

そもそも新自由主義は、1980年代にサッチャー政権というか、イギリスから始まってっていうことですから、私たちよりずっと先に進んでいたわけですよね。

岸本聡子さん

もう、行くとこまで行っちゃってますからね、ハイ。

小池晃書記局長

だから、逆にそういった国は、コロナみたいな公衆衛生、医療の危機になると、逆に、公営化って方向に。

岸本聡子さん

イタリアもスペインもイギリスも、私の住んでいたベルギーもそうですけれども、この公衆衛生の危機というのがホントに直撃した時は、だいたい30%~40%の医療関係者が、看護師さん、保健師含めて、すでに10年間で削減されちゃってたんですよ。

2010年から2020年というのは、ヨーロッパでいわゆる緊縮財政が極端に進んだ年です。

2008年から2009年ですけども、リーマンショックの後で、そして大規模な大救済で、国民のお金、EUのお金を使って、銀行を救済した。

そして、できた借金を返すために、医療、福祉、文化、介護、そういった分野、ソーシャルカットというのが、信じられないぐらいの勢いで進みました。そういうところに、コロナが襲ったんです。

 

◆競争の末に待っているのは、巨大企業による寡占

 

朝岡晶子さん

これは、先ほどの世界地図の中の内訳ですが、コロナ前のものなので、ここからさらに100ぐらい調査が進んでるわけですが。

公共の力と未来 世界の脱民営化から学ぶ新しい公共サービス 30 July 2020Report より

ここで見ると、再公営化の動きの最も多いのは、エネルギーですね。ドイツが圧倒的で300ぐらい事例がある。次に水道、それから情報通信サービスや、いまお話があった 医療・福祉、それからごみ処理とか、地域交通、教育というようなことになっていて、この中に、日本もちょっとだけ入っている。

岸本聡子さん

日本の大学ですね。私立大学として出発しても、結局、採算が合わないということになって。ま、教育って言うのは、採算合わせるものじゃないですからね、もともと。

そこは、「国が買い取りますよ」という事例があって、私もそれはちょっと面白くて、ビックリしたんですけども。決して、積極的な政策というよりも、むしろ救済です。

小池晃書記局長

エネルギーの公営化、結構多いんですね。

岸本聡子さん

これは、エネルギーが、みなさんご存知のように、とっても複雑なんです。何でかって言うと、すでに自由化しちゃってるんですね。日本も、最後のところ自由化になりましたけど。

自由化って言うと、すごく競争とか、みんな参入できて、いいこととされて、これもEUの主要な政策としてやられてまいりました。

いま何が起きてるか? もう、大倒産です。

小さい自然エネルギーを作ってる会社が、沢山できたんですよ。市民による協同組合を含め。それだけじゃなくて、沢山の企業ができて、自由競争の中で、エネルギーを供給する部分は、日本と同じで自由化になってるんです。

いまエネルギー価格がどんどん上がってますよね、この戦争で。EUの政策というのは、エネルギーに関しては自由化路線でずっときましたので、小さい会社が太刀打ちできなくなって、いま起こっているのは、寡占です。

自由化された市場の中で生き残れるのは、いわゆる石油、石炭、ガスのジャイアント、巨大企業しかないんです。結局、エクソンとかBPとかが自然エネルギーを提供していくと。

競争の末に待っているのは、基本的には強い企業による寡占なんです。それが、まさに今、世界の経済の中で起きていて、自由化、自由化で進めてまいりましたが、その果てには何があるのか? っていうことを、やっぱり考えていきたいと思います。

 

◆コンセッション契約を途中でやめようとすると、巨額の賠償請求をされる

 

朝岡晶子さん

日本で言うと、ホントに維新などは、民営化っていうのがウリなのかと思うほど、維新が出している法案って、民営化に関わるものが沢山あって、それが、いま世の中でいいものなのではないかという見方がされていて。

小池晃書記局長

ヨーロッパとか世界で民営化した周回遅れで、日本は今、全くその教訓に学ばずに。

岸本聡子さん

そうは言っても、ヨーロッパもむっちゃ責任ありますよ。だって、この政策進めてきたのは、まさにグローバルなアメリカ的な経済だとか、国連も含めて大合唱ですからね、官民パートナーシップとか。

ですので、日本、周回遅れっていうのは、そうなんですけども、脱民営化が無視できない力にはなっているんです、ホントに。あまりにも証拠がたくさんで。

民営化することによって、結局コストが上がっちゃってるんです。

倒産があって、コストが上がって、労働者の賃金がとにかく下がってますので、こうなってくると「何にもいいことないじゃん」ということになってまいります。

特に、地域経済とか、働く人にとっては何のいいこともなく、公共サービスみたいに、私たちみんなが必要なものに関しては、ハッキリ言って、「いいこと何にもない」ということが明らかになってるので、それに対抗しようっていう一部の頑張っている自治体が、もしくは国が、一所懸命(脱民営化を)やっている。

民営化するのは、ものすごい簡単。でも、1回民営化したのを戻すのって、100倍ぐらい難しいんですよ。そういう意味で再公営化したい自治体とかサービスというのは、潜在的にもっと山のようにある。

ただ、これ、契約が終わるのを待たないと、訴訟になるんですよ。

ビジネスですので、基本的に自治体が1回契約を結んでしまうと、途中でやめたいって言ったら、賠償金請求される。運が悪かったら、これ国際紛争になります。

たとえば民間委託とか5年ぐらいだったら、まだ後戻りできるんですけど、民営化とか官民連携とか、コンセッションのような形では、途中でやめたいと言ったら、何百億円も賠償請求されます。そういう件も、世界でたくさん例があります。

 

◆イギリスの(再)公営化 モメンタム(若者の草の根政治運動)と労働党の改革

 

朝岡晶子さん

新自由主義がスタートしたイギリスも、何年か前までの事例ですけども、110の再公営化と公営化の事例があるということです。

公共の力と未来 世界の脱民営化から学ぶ新しい公共サービス(抄訳版- 2020年7月) 12ページより
https://www.tni.org/files/publication-downloads/japans_summary_online_fixed_nov_2021_0.pdf

 

なぜ、イギリスでさえ、ここに踏み切れたのか? ちょっとイギリスに絞って、お話しいただきたい。サッチャー新自由主義によって相当痛めつけられたということがあったにせよ、どういう段階を経て、再公営化とか公営化に向かって行けたのか?

岸本聡子さん

マーガレット・サッチャーが、70年代から80年代にかけて、NHSという国民医療サービス以外のすべての公共サービスを、100%完全民営化してます。

鉄道、郵便、通信。水が最後だった。その時炭鉱で大きな労働騒動があったが、最後にかろうじて残ったのが、NHS、国民健康サービスです。それ以外、全部民営化ですね。

世界でも2カ国しかないけれど、イギリスとチリは、水道を完全に民営化した国です。コンセッションではなく完全民営化した。施設も含めて民間が持っている。

イギリスの鉄道、いまホントにひどくって、いくつもの会社が全然調整もないままやっているので、高すぎるという問題と、時間によって値段が5倍とか違う。マンチェスターからロンドンに行くのに、朝の時間帯は60ポンドなのに、一番混んでる時間は240ポンド。

小池晃書記局長

混んでる時が高い。ひどいじゃないですか。

岸本聡子さん

市場経済ですから。イギリス、事実上、どこの路線も大変なことになってて、乗客も、ものすごい怒ってる。完全に民営化したものを戻すのは難しいんですが、鉄道の場合は上下分離とか結構ややこしい。レールと車両が別で、ややこしいことがいっぱいあるんですよ、この民営化の過程の中で。

小池晃書記局長

水道も取水の所とメインの所と、家にそれぞれ送るのは、全部企業が違うとか。それはフランスか。

岸本聡子さん

水道の場合、比較的わかりやすいのは、地域独占サービスなんです。委託だとそうやってやることができるんですけど、電力はそうです。

でも、公共サービスってすっごいややこしいんです。ややこしいものを分断することで、結局、公共政策が及ばなくなるというのが、民営化の問題です。

いまイギリスって、保守党なんですよ。二大政党制で保守党と労働党ですけども、イギリスのEU離脱とかで大変混乱を極めた後に、ボリス・ジョンソンがさらに混乱を極めた政治をやってますけど。

そんな中でも、あの首相にして、民営化した鉄道が問題過ぎるということで、事実上、もう買い取りになってる。国が買い取らなければ成り立たない、再国営化をせざるを得ないくらい、大変な状況になってる。

残念なことに、これ、とっても消極的なやり方で、もう成り立たないから買い取ってるだけで、お金は出てくばっかりなんですよ。

再公営化の面白さというのは、これを機会に、もうお金を出さなきゃいけないのはしょうがない、売っちゃったものだから、でもこれを機会に民主化しないといけないんです。そうすれば、再公営化っていうのは、もっと面白くなってくる。

だいたい最初から、民営化しないで、民主化しなきゃいけない。だって、公共サービスっていうのは、みんなのものでしょ。

その議論を全く通り越して、いきなり民営化になっちゃうんですよ。

朝岡晶子さん

なぜ水道にこんなにお金がかかるのか? 驚いたのは、アイルランドは水道料がタダ?

岸本聡子さん

税金でやってるから、タダじゃないんですよ。水道の水を作るには、お金がかかるわけですから。

ただ、それは、日本の水道、下水道敷くのに、100年以上かかって、みんなで少しずつ、国民のお金でやってきたわけですから、これは完全に国民の財産。これが公共財です。

いま独立採算とか、そういうの大好きじゃないですか。だから小さい自治体が経営できない。それはそうですよね、頭数が全然少ないんですから。そして民営化になっちゃう。

でも、アイルランドみたいに、デンマークの医療もそうですけども、税金集めて、そのお金を再分配というか、水道システムと医療をやっていくために、税金をそのままダイレクトに使う。だから、わかりやすい。だから、無駄がない。だから、デンマークって社会保障費ない。税金だけ。利用料はない。窓口負担がない。

税金が高い、高いと言うが、だいたい50%~60%。日本が35%~45%だとすれば、デンマークこんな税金高くて大変て言う。でも、日本で医療費、国民健康保険とか、厚生年金とか、全部入れたら、50%超えるんですよ。

みんなでお金をちゃんとプールして、医療とか水とか教育、絶対必要なものは、きちんとそこで賄っていくのは、すごく自然じゃないですか。

朝岡晶子さん

イギリスのことでもう少しお聞きしたいのは、今は保守党ですけども、この本の中に出てきたジェレミー・コービンとモメンタムという草の根の政治運動というのが、非常に興味深くて。

まだ民営化というのがいいものだと思っている国、遅れを取っている日本の中で、私たちはどうしたら、もう一度公共サービスを自分たちの手に取り戻すことができるのか? ということに、非常に参考になると思いました。

モメンタムというのは、岸本さんの本によると、若者が中心となって生まれた草の根の政治運動で、労働党とは一線を画しているが、労働党の大会がある時、その隣でモメンタムがフェステバルをやってるとか。

そういう関係の中で、この若者たちは、新自由主義政策から脱却し、労働党が公約していた再公営化路線に早く切り換えないと、未来が破綻すると気づいている。そういう若者たちが、今イギリスの中で一定数いて、イギリスの再公営化の運動にも大きく関わっているというとらえ方でいいんでしょうか?

岸本聡子さん

ハイ、いいです。イギリスは二大政党制ですが、二大政党は、結局は、エリートの中道左派中道右派になっていく。

労働党は労働者の党なのに、トニー・ブレアが出てきて、第三の道と言ってから、基本的には新自由主義路線で、ほかのヨーロッパの国々の社会民主党とほとんど同じなんですけども、若い人たちは、労働党社会民主党も、自分たちを守ってくれないという、もの凄い脱力感があります。

でも、残念なことに、イギリスは二大政党制なので、とにかく、このどうしようもない労働党を改革しないといけない、と。

そこで頑張ったのが、10代、20代、30代の若い人たち。地域にモメンタムという運動を起こして、労働党を改革するために、彼らは党員になる。そうすると、党首を選ぶときに、1票を投じることができる。

当時ジェレミー・コービンと、それからジョン・マクドナルドという経済相ですけれども、この2人は労働党の中の亜流というか、非常に素晴らしい政策の持ち主だが、トニー・ブレア的な第三の道が主流だったので、いつも頑張っているけれども誰にも聞いてもらえない議員たちな感じだった。

モメンタムの若者たちは、この人たちこそ、労働党のリーダーシップであるべきだということで、みんな労働党の党員になって、2014年にジェレミー・コービンを党首に選挙で押し上げた。

 

◆パリの水道再公営化と民主化

 

小池晃書記局長

民営化より民主化っていうのがすごく大事だという話があって、フランスの水道の再公営化過程で水道の公社を作ると、その公社の決定は議員が加わってやるっていう。パリの市議会と同じような?

朝岡晶子さん

ミニ議会みたいになってるんですね。

小池晃書記局長

水道の脱民営化で、まさに住民の声を反映して、民主化ということとセットになって進めようというプロセスが起こっているのかなと。

岸本聡子さん

そこが面白いところで、すべてのケースが民主化につながっているわけではないんです。先ほど言ったように、民の失敗を公が尻拭いするという、消極的な再公営化も沢山ある。

残念なことに、パリは失敗した民営化を25年間も経験しましたが、これをきっかけに、21世紀の持続可能な開発目標もしっかり達成するような地域の公営の水道局を、最先端の公営企業を作っていこうという意気込みで、とにかく開いていくことよって、そこには、技術も含めていろんな知恵が集まってくる。

みんなが水道のことを考える。そして情報公開を徹底する。

情報公開を、もう義務にするんですね、議員だけじゃなくて。そうしないと、やっぱり議論というのは、なかなか生まれなくて。そういう作業をしていったのがパリ。

最初っから民主化すればいいんですよ。民営化っていう遠回りをして、20年かけてまたもう一回取り戻さなきゃいけない大変な作業とお金と労力、これ戻すの大変なんですよ。働いてる人たちとか、情報システムだとか、それを民から公に移すのって、ものすごいお金かかるんです。

でもせっかくやるんだったら、民主化しようというのが、パリの例なんですけどね。

 

◆水道民営化は詐欺だ! 公共を取り戻そう!

 

小池晃書記局長

民営化やっていろんな弊害が起こる。水道なら、料金がどんどん上がったり、安全性が損なわれる。でも、うまくいかなくなって行き詰ったから、だから脱民営化だっていうだけじゃなくて、その過程の中で民主化っていうプロセスも一緒になって、住民が参加して作っていくことによってっていう。

岸本聡子さん

だって、それが一番安いじゃないですか。

小池晃書記局長

そうですよね。そういうことやるんだったら、最初から民主化ということを。

だから、脱民営化っていうより、公共化っていうか、公共を取り戻す、パブリックを取り戻すっていう、そういう今の流れなんだと。

だったら、最初からもっとパブリックという方向で行けばいいじゃないかと。

岸本聡子さん

民営化って、結局、利益を上げなきゃいけない。水とか 医療って、利益を上げるのが目的じゃないですよね。

小池晃書記局長

上げちゃいけない世界ですね、ハッキリ言って。

岸本聡子さん

利益を上げて、それが投資家の人たちとか金融資本に流れたり、投機になってたりね、あとはすごく高いお給料をもらうエグゼクティブみたいな人達が海外にいるみたいな状態で、株主への配当とか、余計なことがいっぱいついてきて、儲け出さなきゃいけないんですから。

小池晃書記局長

「水道民営化は詐欺だ」っておっしゃってますね。

岸本聡子さん

イギリスの場合は特にね。イギリスは完全民営化しちゃったから。そうなると、企業は何を節約するかと言ったら、労働者のお金です。あとは、これはものすごい重要なことなんですけど、投資しないんですよ。

水道のサービスというのは、100年、200年先を考えなきゃいけないんですね。そして、いま気候変動ですよ。これだけ、台風とか集中豪雨とか、もう水道のマネジメントって、ものすごい高い技術と長期的な視点と、水源から海まで非常に多岐にわたるいろんな専門家が必要な分野なんです。

そこが企業がやろうとすると、一番最初に削るのが専門家。そして、労働者の賃金を削る。利益を上げなきゃいけないから。

イギリスで大変問題なのは、とにかく汚水を処理できる量というのが、これも5年10年でちゃんと投資をし続けていって、それからEUの規制がどんどん厳しくなっていますので、それに対応するような投資をしていかなきゃいけないんだけども、これは10個ある企業、全部同じで、どれだけ投資を遅らせるかっていう競争をするんですよ。

この中で、洪水とかすごかったんですよ、イギリス。

これは、水の運営と完全に関わってます。処理できる水の量が、普通だったら50%ぐらいを使って、あと50%余裕あるぐらい、そのぐらい投資をしないといけない。

とにかくギリギリのところまでそれをやらなくて、90%までいつも使ってて、10%増えたらもう洪水になっちゃうわけです。これがイギリスの水の運営です。

これは、その企業が悪いんじゃなくて、利益を上げようとしたら、そうするしかない。ですから、この気候危機の時代に、水のようなホントに多岐にわたる分野を、1つの 企業にお任せすること自体が、危険すぎる。

朝岡晶子さん

国民に安全な水を提供するということよりも、まず利益優先になっていったら、今の ようなお話になるんですよね。

小池晃書記局長

民営化よりも民主化って言うのは、結構 Twitter でも、反応としては。

朝岡晶子さん

民主化には、有権者民度の向上が必要ですかね。民主化って難解じゃないって、あるけど。

小池晃書記局長

でも、日本はそうは言っても、水道の民営化は、一部自治体で動きはあるけれども、 宮城県なんかも含めてね、麻生太郎氏がかつて言ったような、そういう流れにはなっていない。

岸本聡子さん

ならないと思いますし、日本が作ってきた水道の歴史、世界に誇る公営水道ですよ。 世界で一番と、私思ってます。

この水の質も、やり方も、いろんな問題あるとはいえ、99%に近い人たちが水道接続をしていて、日本も災害国で、災害がいつあってもおかしくない時に、公だから、県境を越えて、水道の労働者たちが駆けつけるっていう状態ができてるんですよね。

こういう公営水道を作ってきた日本をホントに誇りに思う。国民の財産だと私は思ってますし、そこで働く人たちは、私たくさん水道労働者の人たちと一緒に働いてきましたけれども、この人たちの命に関わることでしょ、災害が起きたら。

自分の家族を差し置いて、現場に駆け付ける労働者、これ、非正規の人に頼めますか? 非正規の方に、ホントに命を懸けて水道の災害の現場に行けって言えないですよね? これが、公務なんですよ。これがすごく大切だと思います。

小池晃書記局長

今ちょっと(チャット欄に)質問が。指定管理者制度っていうのは、どうなんですか? っていうのが来てますけれども。指定管理者制度とコンセッションというのは、また、違うわけですよね?

岸本聡子さん

ホントにここが、ややこしくて申し訳ないとこなんですが、もうちょっと、じゃあ、ローカルな話に。水道とか鉄道とか電気っていうのは、これはインフラを含むんですね。ですから、ややこしいんです。

ただ、もうちょっと身近なサービス、たとえば公園の管理をどうするかとか、ゴミもそうですね。それから、公共施設ってたくさんあるじゃないですか、指定管理者制度ってそういう所に主に使われている。図書館だとか。

これは、基本的には、直営でやってると、硬直的だったり、高い。

直営でやってれば、公務員として雇わなければいけないので、指定管理という契約状態を結んで、こういったサービスを民間にお願いして、そこで労働者を雇っていただいてやるっていうのが、民間委託指定管理なんですけど、どちらかというと、割りと小さい自治体レベルで使われている制度です。

小池晃書記局長

水道みたいな巨大な事業では、それはできないですよね。

岸本聡子さん

それは、たとえば、料金回収とか、部分的に使うという民間委託はありますけれども、資産を含むような話というのは、ないんですね。ただ、自治体のことを考えると、この指定管理とか、民間委託というのが、メインなんですよ。

で、これをどうしていくか? っていうのは、これは白か黒かの問題、話ではなくて、ホントにちょっと丁寧な議論が必要なんですけども、まさに私も、水道みたいなインフラから、もうちょっと福祉とか区民施設だとか、そういったものに多く目を向けていくようになったんですが。

そういう中で、すべて民間委託は全部ダメだと言ってると、なかなか難しい部分もあるので、やっぱりこれは、いま検証すべきと言いたいと思います。ま、30年も40年もこういうことをやってきて、どうなってるのか? ホントに。

で、地域にもたくさんの良心的なNPOだとか、社会福祉法人だとか、企業いっぱいあるんですね。

さっき言ったように、問題なのは、民間委託も指定管理もそうなんですけども、結局、競争なんですよ。競争で入札で勝たなきゃいけない。こうなると、誰が強いですか? っていうことなんですよね。

朝岡晶子さん

だから、水道のは、フランスの大きな水道の会社が、日本にも入り込もうとしてる問題があったりということは、ちょっと読みましたけれども。

 

◆福祉に投資して、社会の構造そのものを脱炭素化していく

 

朝岡晶子さん

最後にちょっとだけご紹介したいのは、今までお話ししてきたような再公営化の目指すものということがここに示されていて、「地域資産を生みだす地元の力を育てる」とか「質の高いサービスのための公共投資を増やす」とか「住民が支払う料金の低減」とかっていうふうにあって、これ、細かく見ていただきたいんですが。

公共の力と未来 世界の脱民営化から学ぶ新しい公共サービス(抄訳版- 2020年7月) 13ページより
https://www.tni.org/files/publication-downloads/japans_summary_online_fixed_nov_2021_0.pdf

実は、今まで紹介してきた資料は、公共の力と未来っていうきれいな冊子なんですが、これ、岸本さんがやってらして、関わってこられたトランスナショナル研究所と日本のPARCが共同して冊子を作ってます。ネットで無料でダウンロードができるということで、ぜひご覧いただければ。

公共の力と未来 世界の脱民営化から学ぶ新しい公共サービス(抄訳版- 2020年7月) 1ページより
https://www.tni.org/files/publication-downloads/japans_summary_online_fixed_nov_2021_0.pdf

www.parc-jp.org

 

www.tni.org

 

小池晃書記局長

こういう研究、こういう調査をやっている所は、ここしかないわけですよね、世界で。

岸本聡子さん

うーん、じゃないほうがいいですよね(笑)。この調査をやっているのは、と言っても、これ、みんなでやってるんですよ。先ほど言ったようにネットワークですからね。

なので、国際シンクタンクの仕事というのは、いろいろな情報を世界各地から集めて、検証をして、そして1つのグローバルなストーリーというかね、証拠にして出していくっていうことなんです。

1つ1つ地域で起きている問題っていうのは、それ自体が大切なんですけれども、ここに何が共通点であるのかっていうことを分析していかなきゃいけない。

そして結果的には、「あれ? なんかコスト削減のためにやった民営化っていうのが、全然結果が出てないよね」っていうようなことを、たくさん集めることによって、そういうことが導き出せる。これを言葉にして、力にしていくのが、国際的なシンクタンクの仕事だと思っていますので。

小池晃書記局長

検証されずに、民営化すれば、何か効率化して、税金の節約ができて、何でも良くなるかのような、サービスが向上するかのような、全くそういう検証なしに進んでいるっていうのが、日本だよね。

岸本聡子さん

だからホントに、OECDとか、ちゃんとやってほしいんですよ。世界銀行とか、もう、責任ありますよ。その政策をガンガン世界で推進してきたわけですから。WTOでもいいですけどね。もう、とにかく、もの凄いお金のある国際機関にやっていただきたい調査なんです。

それをみんなやってくれないので、私たちみたいな弱小な国際シンクタンクがやらざるを得ないというのが、実情です。

小池晃書記局長

そういう目で、この日本の中の現状を、世界の流れと対比して、岸本さんなんか、感じておられる。ま、日本でも新自由主義、特にアベノミクスという中で、そういったことやってきたわけですよね。どんな問題点があるっていうふうに見えてらっしゃいます?

岸本聡子さん

いろいろな層から、いろんな角度からあるんですけど、私、結構、前向きな部分があって。というのは、日本って、ヨーロッパとかほど、グローバル資本に痛めつけられてないんですね。

マシというよりも、むしろ日本というのは、資源が豊かなんです。資源って石油っていう意味じゃなくて、山があって里があって海があって、湖があって川があって。もう、何ができるって、まず食料がちゃんと作れる、作ろうと思えばね。

小池晃書記局長

作ろうと思えばね。

再生可能エネルギーの潜在能力、日本は圧倒的に、地熱の潜在能力なんてすごいですよね。

岸本聡子さん

それで、やっぱり、地域コミュニティとか、私はいま杉並区に住んでるんですけども、公共財とか、コモンズとか、とにかく、資本主義の外にはみ出たお金ではない部分が、沢山あるんです、日本って。

で、それを再発見していけば、全部を取り戻す必要はなくって、きちんと価値を付けていく。

さっき、再公営化が目指すものっていうことで、地域の財産、地域の価値を高めていくっていうのがあるんですけども、これが既にかなりあるのが日本社会だと私は思っていて。

でも、これをしっかりと再発見して、壊さないようにやっていくっていうと、そうなると、そんな無理な話じゃなくって。ヘンなことしなければいいっていうこと。

小池晃書記局長

ヘンなこと、いまの政治はしちゃってるわけじゃないですか。

岸本聡子さん

すごいしてますね、ハイ。

小池晃書記局長

そっから変えてくっていうのが、こう、政治の課題なんだろうんなと思うけど、そういったことを引き出していくことが、僕ら、いま「やさしく強い経済」というのを、スローガン的には言ってて。

ある意味では、共産党の経済政策っていうのは、弱者には優しいけれども、それだと、ちょっと経済は衰退しちゃうんじゃないかというような、そういう誤解だと思うんだけど、あるわけですよ。

そうじゃないんだ、と。やっぱり地域の力を引き出す、あるいは、社会保障なんかに、もっとしっかり充実させていく、教育予算を増やしていく、農業自給率を高めていく、エネルギーも地産地消でやっていくっていう。そういったことをやることが、経済の発展にもなるんだっていうことで。

岸本聡子さん

おっしゃる通りだと思います。それを、むしろやんなかったら、国としてマズいですよね。そして、脱炭素化っていう大きな課題、2050年までにカーボンニュートラル、ものすごい目標なんですよ。

カーボンニュートラル、いろんなズルいやり方がいっぱいあって、それをやらずに真面目やれば、もう社会の大改革が必要な作業ですよね。

で、そのカーボンニュートラルをやるっていうことと、これもまたお金がかかるっていう考え方もあるんですけども、社会の構造そのものを脱炭素化していく。先ほどから、たくさん出ています。

このコロナもあって非常に注目されている分野、ケアという分野。

たとえば、保育とか介護って言うと、分断してしまうんですけども、そうではなくて、ケアサービス、これ、ごみの収集とかもそうです。

福祉政策全部そうですし、人が生まれてから亡くなるまで、ずうっと関わっているケアの分野、ここで働く人たちって、沢山いるんですね。労働集約的な産業なので。

で、ここの人たち、一番お給料もらってないじゃないですか。これは、教育もケアですからね、保育から、教育、大学も含めて、ここを社会の中心にしていきましょうよって話なんですよ。

これ、もうね、ケアの分野って、ほとんど脱炭素、炭素出さないんです。CO₂出さないでしょ。ですので、ここに社会的投資をしていくってことです。こうなると社会の構造が変わってきます。

そして、そこで働く多くの人たちの賃金の底上げができるでしょ。これは、社会に投資して、社会に戻ってくる。

小池晃書記局長

地域経済に直接つながるわけですからね。

岸本聡子さん

私は、それはとっても真っ当で自然な考え方なのだと思う。

朝岡晶子さん

大賛成です。共産党も、コロナ後、特にケアの分野についての政策を出したり、私たちも非常に関心を持って、ジェンダーの問題ともセットですし、そのことについて語ってきていて。

ご紹介したいのは、大門さんが最近出した「やさしく強い経済学」ですが、実は岸本さんの理念・概念とすごく近いなと思ったので、共産党の「やさしく強い経済学」に賛成してくださるのは、非常にうれしいなと思ったわけなんですけれども。

 

 

◆杉並区から世界を変える

 

小池晃書記局長

今の話聞いてると、ホントに世界の課題と、日本の自治体の課題っていうのはつながってる。まさに、地域の課題を解決するために、そういうグローバルな視点が必要なのかなと思って、ずっとお話聞いてたんですけども。

杉並の区制を変えるって決意されたのは、世界で見てきたこととの関係で、どんな思いで杉並の区制を変えようと?

岸本聡子さん

ホントにグローバルな経済政策が、国に降りてきて、そしてそれが自治体に降りてくる。自治体が下部組織みたいになっちゃってるケースが結構多いんですよね。

小池晃書記局長

下部組織って、そうだよねえ。もう、言いなり。もう、国に言われたことしかやらない。

岸本聡子さん

でも、本来、自治体っていうのは、憲法で定められているように、その地域のことは、地域の人が決めていくっていう憲法92条の自治権がある。

 

日本国憲法
第八章 地方自治
第九十二条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。
第九十三条 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
② 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。
第九十四条 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。
第九十五条 一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。

 

 

elaws.e-gov.go.jp

 

杉並区なんて、自治基本条例っていう、ものすごい素晴らしい杉並区の憲法っていうのがあるんです。

杉並区HPより

www.city.suginami.tokyo.jp

これを守ってたら、日本の憲法を守ってたら、ホントもっともっといい国になりますよね。そういうくらい素晴らしいものがあるんですけども、守られてない。それを一番最初に守っていないのが、政治家だったりするわけなんですけども。

とは言え、下部組織というのは、どこの自治体も、日本の国の縮小図みたいになってるんですね。自公が強い議会というのが、日本中に津々浦々ございますが、それは杉並区も同じでして。

そういう中で、小さなことに思える区民施設って話をさっきしたんですけども、杉並区ってたくさんの区民施設が、杉並区内56万人なんですが、46カ所に散らばって、小学校の地域みたいなところに、児童館と高齢者施設であるゆうゆう館ていうのが、みんなで作ってきた歴史があるんです。

こういう歴史が、福祉もすごく先進的な自治体だったんですけども、それ結構、壊されちゃってまして。国がどんどん公共施設の床面積を、総務省が「減らせ、減らせ」と、減らすほど成果になるみたいな。最近、国もさすがに方針緩めてますが。

これを一番まじめに、真剣にトップランナーとしてやっているのが、いまの杉並区政です。作るのに50年かかったものを、施設の再統合とか、廃止とか、複合化とか、多機能化とか、高層化とか、そういったやり方で、どんどん再編成してる。

こういうことを見てると、ホントにもったいな過ぎて、私はこの課題を地域のみなさんから聞いた時に、ちょっと、もう黙っていられなくなっちゃったというか。

今まで自分がやってきたことを、具体的に自治体の現場で、私も政策やってきたので、ホントのところの地べたでというか、地域の中で、自分が何をできるのかっていう挑戦をしたいと思わせたのが、杉並区です。

小池晃書記局長

世界のそういう状態、実態見てるわけだから、これほど説得力のある区長になっていける人はいないなあと思うんですけど。

杉並って言うと、やっぱり、伝統的に言うと、原水禁運動の発祥地。住民自治っていう点で、杉並っていうと、そういう伝統あるんじゃないかなと思うし、原発の問題なんかでも、原発止めろデモなんか、いち早くやった所ですか。

それから、この間の総選挙の時なんかは、一気に住民のパワーが盛り上がって、石原伸晃氏を落選させてしまった。そういうパワーがすごくある街だなあと思うけど、でも、やってる区政はホントに古臭い。

岸本聡子さん

もう古臭いどころか、昭和20年代とかそういう感じ。鎖国の時代かみたいな。それぐらい行っちゃうんじゃないかみたいな、私から見るとですね。多様性の問題とかも、全然ダメです。

もともと、おっしゃる通り、いい伝統とか市民運動とか文化とか沢山あるんです。それはちゃんと残ってますので。しっかり作ってきたものはちゃんと残ってるんですけども、それをすごく攻撃的に破壊してるような状態が。

「効率化とか、多機能化とか、こういう機能をこっちに移転して」とか言われると、「ああ、そうなのかな。いいのかな」って、思わされちゃうんですよね。

なので、そこは、首長が、区長が、しっかりとしたビジョンを持たないといけないし、そして、議会をちゃんと重視する。当たり前のことですよね。当たり前の自治体の政治をやっていかないと、あまりにも残念過ぎると思って、これは一肌脱がなきゃと思ったんですね。

小池晃書記局長

ボクは、小学校、中学校は、武蔵野市なんですよ。隣のね。割と似てるところもあったりする。杉並って言うと住民運動とか、あの頃、70年代とか、公害の問題とか、すごく住民運動が盛り上がってた時じゃないですか。清掃工場の建設反対運動とか、あの頃、杉並ではありましたよね。

そういう住民自治の伝統っていうのはあるから、僕はやっぱり、岸本さんが言われたような今の世界の流れの中で、公共性を取り戻すことが、地域の活性化にもつながることになるし、やっぱり民営化より民主化、そういったことはすごく響くんじゃないかな。

岸本聡子さん

そう信じて頑張っています。

朝岡晶子さん

グローバルな目で世界の公共政策を見てこられた岸本さんならではの政策と、ケアの視点の入った子供たちからお年寄りまでみんなが暮らしやすい杉並区を作りたいっていう思いの詰まったリーフレットが、今あちこちで配られています。

私も昨日岸本さんの街宣を見に行って、いただいたんですけども、ホントに杉並のことよく細かいところまで目配りされたお話で、街行く人がみんな振り返って見ていくというかね、しかも、岸本さんのこの非常にはっきりと明確なというか、滑舌のいいお話は、是非みなさんに一度聞いてほしい。

 

岸本さとこ公式ウェブサイトより

 

岸本さとこ公式ウェブサイトより

 

www.kishimotosatoko.net

 

小池晃書記局長

共産党も推薦をさせていただくことになったんですけど、立憲民主党社民党、れいわ、新社会党緑の党生活者ネット、勢ぞろいじゃないですか。

オール杉並というか、オール野党というか、野党っていう枠組みだけじゃないよね。 オール杉並区民というか。

 

 

岸本聡子さん

私、この政治活動やってて強く思ったことは、地方自治って、あんまり、保守とか、革新、リベラル、何でもいいんですけど、あんまり関係ないなと、実は思うところあるんですね。

なんでかって言うと、自治体っていうのは、ホントに生活者を守る最前線ですので、地域の経済とか地域の雇用を作っていくとなると、これは思想的な違いってあんまりなくて、むしろ、情報を隠すとか、議会を重視しないとか、政治姿勢に対する反対っていうのが、すごく今、大きいんですね、杉並で。

そうなると、これはもう、党を超えて、みんなで、当たり前の政治を取り戻していく。これは、地方自治では、比較的ですけどもやりやすいと思うんです、当たり前の政治を取り戻していくってことがね。国政はやっぱり大変だなあと思ってまして。

そういう意味では、私は、ホントにみなさんに応援されて、この杉並の当たり前の政治は、「とにかく議会でちゃんと議論しようよ」とか、「ちゃんと答弁しようよ」という、そういうところから、始めていきたいと思っています。

小池晃書記局長

これは杉並っていうだけの問題じゃなくて、日本中でこういう動きを作っていかなきゃいけないなあっていうことを、今日話聞いてすごく思いました。

国の政治を変えていくっていうことも、もちろん大事なんだけど、地方自治体のところで公共性を取り戻す。いま地方自治体って、効率化、民営化、そればっかりじゃないですか。

特に維新なんかは、それを売り物にしてやってるわけですけども、そのことによって、どれだけ地域の住民の暮らしが痛めつけられているか。

そうじゃなくって、必要なのは、やっぱり民主化なんだ。そして、公共性をもっと強化することなんだと。そういう流れを、日本中の自治体で起こしていけば、日本は変わる。

それは世界の流れでもある。杉並から世界を変える。

民営化っていうのは、いかに害悪があるのかっていうのがよくわかりました。