宮城県の水道民営化問題

命の水を守るため、水道の情報公開を求めていきましょう!

みずほ塾 in 仙台×水道 「イチ」から知りたい 水道民営化 みやぎ型管理運営方式ってなに?(1)

2019年11月17日、自治労会館6階にて、「みずほ塾 in 仙台×水道 『イチ』から知りたい水道民営化 みやぎ型管理運営方式ってなに?」が開催されました。 みずほ塾 in 仙台×水道

開会のあいさつ 高橋広子さん(Ⅰ女性会議宮城県本部議長)

宮城県の水道民営化のことは、去年秋に初めて聞いた。これは、憲法25条の生存権に関わる命の問題だ。何度も勉強会をやったが、聞けば聞くほどわからない。

宮城県議選の時、水道民営化について街頭シール投票を3~4回やった。みやぎ型管理運営方式の名前は知っていても、中身は知らないという人が多かった。

 

    みずほ塾 in 仙台 イチから知りたい水道民営化法 前編

 

県議会報告 岸田清実さん(宮城県議会議員)

みやぎ型管理運営方式の問題点、課題についてご報告します。

岸田清実資料1

     「安心安全な水を確保する視点から」より

皆さんの家庭の蛇口までの水道用水供給の責任を持つのは、お住まいの市町村です。

一方、県営水道の役割は、市町村の受水タンクまで水道用水を供給することです。

仙南仙塩広域水道は、一日27万5千トン供給しています。仙台市に約10万トン、それから遠い所では、富谷市、多賀城市塩釜市まで、七ヶ宿ダムの水を取って、白石市の南部山というところにある県営の浄水場で水道用水にして、2メーター10センチの大きな管で延々と運んできて、それぞれの自治体に供給しています。

仙台市民は1日30万トン水道用水を使っています。そのうち10万トンが七ヶ宿ダムから水を取った県営水道です。仙南仙塩広域水道の水です。ですから、仙台市民が一日に使う水道用水の3分の1は県営水道の水ということになります。

 

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     「安心安全な水を確保する視点から」より

 

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     「安心安全な水を確保する視点から」より

 

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     「安心安全な水を確保する視点から」より

 

9月定例県議会で私が質問したことは次の通りです。

● 20年間の運営権売却期間中に設備や施設を更新する時に、コンセッション方式はすべて丸投げ、すべてお任せになるので、例えばどういう機械を新しく入れ替えるのかなどもすべてお任せになる。本当にこれで水道の安定的な供給、安全な水はできるのか?

● 20年後は新たな運営権を設定するが、その時にしっかりと適切な選択をするためには、県職員自身に選定する能力が20年後もなければならない。ところが、日常運転に関わらなくなると、20年後新たな運営権者を選定する能力を本当に維持できるのか?

 また、災害はいつ起こるかわからない。その災害復旧は県が行うことになっている。緊急時に対応できる能力を、県職員が維持できるのか? 県は机上の研修をやると言っているが、本当にそれで能力を維持できるのか?

● 設備更新・施設更新のいろんな工事の発注は、今までは、全国的な基準に基づいて県職員が積算をして、入札にかけて落札業者を決めている。適正基準を県職員がチェックしている。

 運営権者にすべてお任せになってしまうと、どういう内容で工事の積算をするのか、どういう内容で工事を発注するのか、これもすべてお任せになってしまう。公正性、適正性、安全性が本当に担保できるのか?

● 選択性、代替性の問題もある。同じライフラインでも、例えば仙台市のガスなら、市ガス(都市ガス)、LPガスが使える。LPガスなら、どこの店から買うかも選択できる。でも水道は選択できない。選択性、代替性がない。だから、公が責任を持って供給してきた。

 

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     「安心安全な水を確保する視点から」より

ほとんどの方が、みやぎ型のことは聞いてはいるが、中身がわからない。

県の水の供給を受けている受水団体、仙南仙塩広域水道だと15自治体が受水団体を作っている。その受水団体が、仙台市がまとめ役になって、今まで3回質問を出している。内容は、上記の通りで、自治体に何も示されていない。みなさんの家庭まで水道用水を供給している各自治体の様々な疑問に、いまだに、何もほとんど答えていない。 これが現状です。

 

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     「安心安全な水を確保する視点から」より

 

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     「安心安全な水を確保する視点から」より

水道法は去年の秋改正され、今年の10月1日に法律が施行された。

そして、11月に県条例を改正しようとしている。

「何で今やらなけらばならないのか?」と県議会で質問した。

答えは、「水道法改正から最短コースで実施を目指す」だった。

自治体や県民の理解は関係ないんですね。

 

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     「安心安全な水を確保する視点から」より

コンセッションやる時に、国はインセンティブ、誘導策を出している。

企業債という公営企業の借金を繰り上げ償還した時に、今までは、例えば、10年の企業債を5年で返すとすると、6年目から10年目までの利子を一緒に返さなければならないので、繰り上げ償還しても何の得にもならなかった。

今回メリットとして、ある年度中に手続きをすれば、繰り上げ償還した時に、そこから先の利子は免除するということにした。それは、2018年度から2022年度中に条例改正をすればいいというもの。

メリットを享受するには、別にこの11月にやる必要はない。2022年度中に、今度やろうとしている条例改正をすれば該当になる。だから、今やる必要というのは、一刻も早くやりたいという以外は何もない。

 

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     「安心安全な水を確保する視点から」より

 

水道法改正のポイントは、主に2つ。

① 市町村水道を県がサポートして、市町村水道の基盤強化のために県がしっかり計画を作りなさい。

② コンセッション方式を導入できます。

 

いま宮城県は、市町村水道の支援は、ほとんど進んでいない。

一方で、県水道をコンセッション化するということだけが進んでいる。

「手を挙げたところは、県のコンセッションに入っていいですよ」と村井知事は言っているが、広域連携をしようとする時に、ある特定の自治体だけが県のコンセッションと連携していたら、他の市町村との連携は置き去りにされ、むしろ広域連携を阻害することになる。

本当は県が、広域連携、広域化にしっかり取り組んで、その進行具合に合わせて、県営水道をどうしていくのかを考えていくのが、そもそもの順番ではないのか。

皆さんの家庭の蛇口に水を届けている市町村水道を大事にするのが、県の役割ではないのか。

そこを置き去りにして、県営水道だけ、しかも、県民や自治体の理解なしに、コンセッションに突き進んでいくというのは、あまりにも乱暴だと思う。今度の県議会では、このことをしっかり取り上げていきます。

 

国会報告 福島みずほさん(参議院議員

先日、NHKのニュースで「宮城県が(みやぎ型の)条例案の発表」というのが出ていて、岸田県会議員に聞いたら、11月25日から始まる県議会でこのことが議論になるというので、今日のこのみずほ塾が次の大きなステップになるように、(みやぎ型を)止められるように、英語の民間試験が止まったように、みんなの声で止まるようにと思っています。

私は災害が起こればどこにでも行きます。

1990年代に比べて、水道に従事する公務員は3分の1減って、水道法改正の前にも国会で何度も質問してきたんですが、技術の継承が困難になっているという問題があります。

東日本大震災の時、福島はひどい状態だったんですが、まさに水道のOBGが、地面の上からトントントンとやってどこが破壊されているかとか、いろんなことに関してOBGも全部集めてやったりした。企業に任せてその資料がどうなるのか。20年経って再公営化しますと言った時に、本当にどうなるのか。

宮城県は残念ながら災害も多い所です。ですから絶対に水道の民営化をやっちゃいけない。まさにこれを一緒に戦っていきたいと思っています。

東日本大震災の時に、いま全水道の委員長である二階堂さんが、車を運転してモノを福島に運んでくれたって、いわきの水道の人たちがすごく喜んでいました。岩手にも全国から水道の公務員が行った。だから熊本で地震があった時は、岩手から重機を船で運んで熊本の応援に入った。私はいろんな現地に入っているので、本当にみんなが「あの時はお世話になった」と、全国でどこかで災害が起きると、応援に駆け付ける。本当に力を合わせて頑張ってる。これがある所だけ民営化するとどうなるのか。

 

宮城県の中のことはみなさんのほうがうんと詳しいですが、私は「みるみる国会審議がわかる!」という話をいたします。

水道は、厚生労働省の中の一つの課だけでやってるんですよ。私は水資源庁とか作っていいくらい日本の中で重要な問題だと思うんですが、一つの課だけでやってるんです。基本的に自治事務ですから。

水道の議論は、そもそも水道基盤整備に向けてということで議論していた。それに後から、ボコッと産業競争力会議から水道の民営化が入ってくるというひどい状況になったわけです。

私たちは水道の基盤整備には大賛成なんですね。だけど、水道の民営化はダメでしょ。

 

◆コンセッション方式とは

コンセッションとは何か? 所有権は自治体が保有するが、管理・運営権は民間に売却する方式です。水道は売り飛ばしちゃいけないというところがポイントだと思います。

 

◆ 国会審議の中で、特に問題になった点

1.私は参議院厚生労働委員会なので、ガンガンやりあったのですが、官邸主導で産業会議で出てきた。竹中平蔵さんから出てきたんですよ。ダメでしょ。私なんか聞いただけで駄目な感じがしますが(笑)

2.厚労省は外国の例などの調査をしていない。 

3. 水メジャーとの癒着。PPP/PFIの推進室が内閣府にあるが、ヴェオリア・ジャパン社のPPP担当者が出向しているんですよ。一番利害を持ってる人間が内閣府に行っていて、この年に(去年)、内閣委員会でPPP強化法というのが通るんです。

これは何かというと、「自治体はまず、PPPでやるか公的にやるかについては、PPPでやれるかどうかをまずやりなさい」というもの。

この強化法を決めるときにも、このヴェオリア・ジャパン社のPPP担当者がいるわけですよ。全部ビデオを見たら、大臣の後ろに控えているんですよ。ダメじゃんというか、もうグルじゃんというか。企業が内閣府に出向して、公務員の顔をして、こういうものを推進している。一番ビジネスで儲かる人間が、内閣府に入って、PPP評価をやっているというのは、本当にひどい。

実はこの担当官は、外国に行って調査をする時に、パリで再公営化した市長とかに会っていない。むしろ水メジャーとばかり会っていて、「なんじゃこりゃ癒着じゃないか」「工程表を出せ」と言っているうちに、その人間は他のほうに行ってしまった。

 

◆民営化の問題点

1.民間が資金調達を金融市場から行うと金利が高くつく。

自治体が資金調達する場合は公債発行が可能であり、これにより低金利での資金調達をすることが可能である。

2.管理運営権に抵当権の設定が可能、抵当権が実行されたらどうなるのか? 

法的にはものすごくいろいろわからないことがある、というか考えていない。

3.民営化でコストは安くなるのか? 

役員報酬、株主配当、コンサルタント費用、公認会計士、弁護士などいろんな人たちにお金を払わなければならない。

4.現場の労働者の賃金が低く抑えられる傾向にある。労働者の定着率が低くなれば、技術の継承などに問題が生ずる。

民間で安くなるというのは、給料を安くするわけで、技術の継承どうなるんですか?

5.水道料金が高くなるのではないか? 

(1)政府答弁

  「地方自治体は、あらかじめ条例などで施設整備を含む業務の範囲、民間事業者に求める水道施設の管理運営レベル、料金などの枠組みを定める。」

(2)村井県知事(2019年11月29日 厚労委員会の参考人質疑)

  「料金については5年ごとに県議会の議決を受けて決定をするので、民間が自由に料金を上げることはできません。」

(3)管理運営のための値上げを要求されれば、実際は事業者の言いなりになるしかない。料金の値上げを議会はのまざるを得なくなる。

村井知事は、なぜかさっぱりわからないが、日本で初めてやりたい。

6.民間企業が経営し運営するので、管理運営方法が不透明になる。

経営状態や方針についての確認、チェックができない。

議会の関与が直接できなくなると、主権者である市民の関与、チェックもできなくなる危険がある。 

たとえば、東京オリンピックのボランティアの募集は、竹中さんが会長であるパソナがやる。「じゃあパソナはいくらで契約しているんですか? いくら儲かるんですか?」「民間ですから明らかにはできません」と言う。こういうことは多い。

7.災害の場合の問題

(1)問題が生じた場合(災害や老朽化による施設の崩壊、損傷、不具合など)、その責任の所在が不明確となる。

(2)政府答弁「PFI法に基づく実施方針及び、実施契約で決める。」

(3)政府答弁「災害時の対応につきましては、地方自治体が事業の最終的な責任を負った上で進める」

水道料金は事業体がもらうんですよ。で、管理運営権は買ったんですよ。だけど、ご安心ください。災害の時は自治体が責任を負います。これはおかしいですよね。

(4)台風の影響で、関西空港が被害を受けたケースでは、復旧費用は事業体が負担。

国土交通省に聞くと、「国・自治体は一切、復旧費用の負担はしていないが、唯一、今まで民間からお金を借りていたのを、財政投融資に切り替えて金利が安くなるようにしました」と答えた。

同じコンセッションでも、空港の場合は、災害の時の復旧費用は、事業体が負う。

でも水道の場合は、災害の時自治体が負うのは、「変でしょ」と思う。

(5)住民の反対運動による損害の補償について

浜松市の公共下水道終末処理場運営事業に関する契約書

<50条>対象施設に対して金利住民の反対運動や訴訟等により、事業の中断や延期、破損等が発生した場合で、運営会社に増加費用や損害が発生すれば市がその費用や損害を補償するものとする。

ちなみに、契約書は最後に作るんです。手続きは、まず条例でコンセッションをするかどうかを決める。その後、選定作業に入って、この企業にすると決めて、その後、その企業と契約書を作るわけですよね。相手がいないのに、契約書は作りません。でも弁護士の立場からすると、契約書の中身も見ないで、コンセッションすると決めるのは恐くないですか? 私、契約書を見るまで安心できないと思うんですが。コンセッションやりますよと決めたら、後どうなるのかという問題がある。

(6)コンセッション方式になった場合、民間企業は他の地域の災害の応援に行くのか。

8.PFI方式の運営を終了する際、その契約を終了・破棄するときの問題点がクリアになっていない。経営破綻等による再公営化もあり得る。

9.2000年から2014年の間に世界35カ国180都市で再公営化が行われた。

2010年パリ市はヴェオリア社・スエズ社に訴えられたが勝訴して再公営化した。

2014年ベルリン市は、ヴェオリア社に1660億円を支払い(株を買い戻したため)再公営化した。

再公営化しようとしたけれども、自治体ですでに専門性が失われていて再公営化が困難だった事例はどれくらいあるか、再公営化しようとしたけれども訴訟にあって、そして訴訟にあったがために大変な状況になった事例が何件あるか、という国会での質問に政府は把握していない、と答弁した。

 

宮城県

宮城県で日本で初めての水道の民営化を許してはいけない。他への影響もあり得る。

(1)期間は20年間だが、更新されるだろう。更新をする時の条件の変化が問題。

更新する時には、相手企業に高く吹っかけられる可能性がある。

更新しない場合、自治体に力が残っているのか? 公務員ももういなくなっている。

20年経ってどうなるのかということは、どこも誰も答えられていない。

(2)20年の期間内に契約解除をする場合の訴訟リスク

問題が途中で起きた時に、「契約やめます」と言っても、契約書は誰も見ていない。その契約書の中にこうすると書いてあるかもしれないし、こうすると書いてなければ問題だし、その時に宮城県は、莫大な違約金を取られる可能性がある。

また、問題が起きて再公営化したいと思っても、再公営化してホントにちゃんとやれるのかという問題も起きて、はっきり言うと、にっちもさっちもできなくなると思う。

このコンセッションというのは、結局、自治体の責任放棄なんですよ。やれない、お金かかる、コスト削減、で売っちゃう責任放棄。あとは知らんぷり。

でも20年後に誰が責任取るんですか? 

未来永劫ですよね。100年単位の話なんだから。

誰が100年、200年責任取るんですか? という話で、コンセッションしてはいけないものの最大は水なんです。水を止められたら、生きていけないわけですから。

(3)地面から下、管路(維持管理を含む)は県が、水処理設備は民間。

管路の維持管理に最もコストがかかる。なぜ、水処理設備だけ民間に売却するのか?

岸田県会議員と話をしたら、将来は管路もやるんじゃないかという予測もある。

 

◆これから

1.反対の県議会議員を増やそう。

2.保守層へも働きかけよう。

水道の民営化法が審議中に新潟県議会は反対の意見書を提出、福井県議会は慎重審議を求める意見書を提出。

3.女性たちへ広げよう。

横浜でカジノ反対! 林市長リコール! とやっているのは、主に女性なんです。