宮城県の水道民営化問題

命の水を守るため、水道の情報公開を求めていきましょう!

みずほ塾 in 仙台×水道 「イチ」から知りたい 水道民営化 みやぎ型管理運営方式ってなに?(2)

「みずほ塾 in 仙台×水道 『イチ』から知りたい水道民営化 みやぎ型管理運営方式って なに?」後半の対談です!!

 

      みずほ塾in仙台 イチから知りたい水道民営化法 後編 

 

対談 福島みずほさん  ✖  高野恵美子さん

高野恵美子さん(あいコープみやぎ副理事長)

一生活者として、一市民として、宮城県の水道のコンセッション方式という情報を得るのが遅かったというあたりからお話させていただければと思います。

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みやぎ型管理運営方式を知っている? 知らない? シール投票に対する私の印象としては、結構みんな知っているなあと思いました。みなさんのまわりの方の空気感とか日常の会話とかで、こういうお話ってなかなか出てこないんじゃないか、私のまわりで言うと、ほぼ、8割がた知らないという人が多いんじゃないかと思います。

生活協同組合の活動として、いろいろな社会情勢の問題が上がってくると、生協主体で学習会、講演会を開催したりするんですが、私たちの生協でこれを取り上げようという議論が生まれたのは2019年6月です。

独自で講演会を開催する余力が、その時なかったものですから、消費者行政の充実強化をすすめる懇談会みやぎと合同学習会を開催したのが7月でした。

内田聖子さんをお呼びしてやった学習会が9月なんですが、もうあれよあれよという間にどんどんどんどん進んで、組合員への説明、まわりの友達への説明、情報共有が追いつかないままにパブリックコメントが始まり、ホントに県の進め方は乱暴だな、と。

先ほどの報告の中でも、なぜそんなに急ぐのかというのが出てきましたが、一般の感覚として、本当に急ぎすぎだと感じています。

水が権利、人権というお話が出てきましたが、水を商品にするということに、私はとても憤りを感じています。水道は選べないし、水は売るものじゃない。水道料金は払っていますが、それは私たちが買っているというよりは、その設備を維持して、安全な水を私たちが享受できるための管理のためのお金を払っているという感覚です。そこに民間を入れて利益を生むのか? そういう考えを私は許せない。そこの大事なところが、どっかポッカリ抜けてしまっているんじゃないか。

私個人としては、民営化が絶対ダメとは思っていないんですね。たとえば民間の力を借りるにしても、もう少し丁寧にいろいろな方法、水道料金を上げなければいけないという背景を、もっともっと私たちは知るべき。

私たちが健康で、子どもたちにもきれいな水を残す、継ぐためには、私たちがどういう責任を負って、どこまでの料金を払えば、それがなりゆくのか。いろいろなバージョンを並べて、それぞれのリスクをわかって、私たちはどういうふうにしたいかを選ぶ道筋というのがあると思う。一方的に押し付けられてというのではなく、結果コンセッション方式になるとしても、住民がきちんと納得したうえで、それだけのお金を払いますとか、それだけのリスクを受ける覚悟ができるそういう説明をいただきつつ、様々な方法を提示してもらって決めていきたい、と一市民としては考えています。

海外で再公営化が沢山出ていることを県の担当者に聞いても、それはごく一部だからとか、まだまだこんなに沢山民営化している事例があるという答えをいただくが、それは数の回答だ。説明するのにリスクも合わせて言ってほしい。海外の再公営化の事例を全く調べないで進めたというのも、なんておバカさんなんだろうと思っている。

パリは長年やって、水の権利というものをやっぱり自分たちの手に戻そうというので、公営化して、市民も参加してどう考えるかという新しくシステムが生まれている。

やっぱり、もうちょっと私たち自身が、水道の蛇口をひねって安全な水が飲めるというのが当たり前ではなく、自分たちがちゃんと関わって管理運営していくという意識も持たなければいけないのではないか。

福島みずほさん(参議院議員

2000年から2014年の5年間で、35カ国で180都市が再公営化されている。(これ以外の年を入れると)286とか、本当はもっと多い。

イギリスはまだ再公営化されていないが、イギリスのスエズ社はコンセッションにした後、会計が不明瞭になって調査が入り、タックスヘイブンまでお金が流れているという問題も起きている。

「最後の一滴まで」という外国の状況の映画があるんですが、民間企業は儲かると思って入ったが、実際は人口減少で儲からないので企業は撤退したい。話が違うというので自治体を訴えて、自治体はすさまじい金額を払わなければならなくなり、そのためには何百年もかかるので、自治体はそのお金を負けてくれという交渉をしているみたいなこともある。

民間はビジネスで入るわけで、思ったほど儲からないとか、自治体はこれだけ儲かるから来てくださいと勧誘したんだけれど、人口減少で全くもうからなくて、違約金を払わなければいけないという問題がある。

水道のコンセッションは、日本ではまだどこもやっていない。これだけ問題が生まれてて、実際やると命の水に関してすさまじい問題が起きるし、訴訟リスクもホントにあるだろう。やるべきではない。

ひぐちのりこさん(司会・仙台市議会議員)

みなさんからの質問です。

① コンセッションにより水道の管理運営権を民間に渡すことのメリットについて、県議会ではどのように取り上げてるんですか?

② コンセッション方式にするという条例案が通った後に契約内容が決まるというが、その立て付けはどう考えてもおかしい。PFI法等はそういうものだと言うが、その法律自体の問題を問う形での訴えはできないのだろうか? 司法に期待できないのはわかっているが、対抗手段はないのだろうか?

岸田清実さん(宮城県議会議員)

議会では、基本的に知事側から提案されたものについて、議案として審議をするというのが多い。みやぎ型管理運営方式についてのなんらかの議案は、今度出される条例改正案が初めてです。

議会の正式の場では、何らかの提案は今までありませんが、いろんな説明はされているので、議員側でそれを取り上げて、質問したり、議論したりということはあります。

議会で議員側から提示されているのは問題点の提示が多くて、メリットについて議会の中で議員側から出されているというのは、ほとんどないです。

ただ、9月議会で、補正予算に対する議案の賛否の討議で、自民会派からの賛成討論で、直接みやぎ型管理運営方式の議案ではないが、関連して出た時に、こんな言い方をしていました。ペットボトルとか、ミネラルウォーターとか食品にしても、民間のみなさんが供給して、みなさん買ってるんじゃないですか。民営化がおかしいというけれども、みなさん日常生活の中で民間のみなさんが供給されたものを使ってるんじゃないですか、と。

みやぎ型管理運営方式で何がメリットかというのは、知事サイドから出されているものがほとんどです。20年間でトータルで200億の削減要求と先日の河北日報にも出てましたが、コスト削減をして、水道料金の上昇を抑制する、下げるとは言わないんですね。

管路の更新と人口減少時代、節水型社会になっている。トイレは、昔1回流すと20L流れていたが、今は平均8Lだそうです。最新式は4Lです。

人口減少時代になると、100戸の集落が90戸、80戸になるかもしれない。一世帯当たりの人数はもっと減る。戸数はそんなに減っていないから、管は維持しなければならないので、収入に対して維持管理のコストは相対的に比率が高くなっていく。維持をしようとすると、非常にコストがかかってしまうというのが、これからの時代。

PFI法が去年改正になって、コンセッション方式を水道に入れるときは、まず実施方針案を条例化しなさいというのが、一つの条件になっています。実施方針案を条例化するというのは、単独の条例でもいいし、既存の条例の中に入れ込むのでもいい、と。

宮城県の場合だと、下水道を土木部から企業局に移して、上水道、工業用水道、流域下水道の3つを企業局が所管するということになっています。ですから、企業局設置条例の改正案ということで、11月25日に始まる県議会に提案されます。これがPFI法に規定されている実施方針案の条例化ということになる。

実施方針が条例化されたことに基づいて、要するに条例としての根拠を持って、今度は応募要項を来年の2月から3月にまとめて、それで募集を開始する。数グループを想定しているらしいですけれども、競争的対話と言って、県側と条件を交渉することを経て、1グループに絞り込んで、その後に運営権者を決定する議案が県議会に提案される。

今度の条例化ということと、運営権者が決定される段階で県議会に提案されるという、議会としては2つの関与がある。

契約書を結ぶ段階で議会が関与するかは定だかでないが、浜松の下水道のコンセッションを見ると、まず浜松市と運営権者の間で協定を結ぶ。それに基づいて、運営権者の選定議案が市議会に提案されたと聞いていますので、契約書案は少なくとも成案としてまとめられて、その上で議会に運営権者選定の議案が出されるという手続きになると思います。

運営権対価、コンセッションになっていくら浮くかというヴァリュー・フォー・マネーに基づいて浮く金を、一時金で受け取ってもいいし、年度毎に分割方式で受け取ってもいいということになっているので、どういう方式でいくら提示されるかということになる。

浜松市の場合だと、一時金として最初に80億もらった。20年間の金利分を差し引いて初年にもらうので、今回宮城県は、最初にもらうともらう額が少なくなるので、分割して、差し引く金利分をなるべく減らして、運営権対価の最大化をしようという。最初は10億円受取って、あとは毎年毎年運営権対価を受け取っていこうとしている。そういう支払方法とか、総額いくらとか、それを提示してもらって、それで一番有利なところに決める。

福島みずほさん

企業だから、実質利潤があるようにするわけで、私が民間業者だったら、できるだけ、お金がかからないようにする。めんどくさいメンテナンスとかはやらない。災害が起きたら、「すいません。これ、激甚災害指定で国がやってください」みたいな形で。水道料金はもらいたいが、そして払った分の元は取るが、後はあんまりやりたくない、となりませんか?

岸田清実さん

そこが問題なんです。 水道事業を本当に継続していくためには、もちろん必要な人件費や資材費は払わなければならないが、適切に管路の更新とか、設備の更新とか、基本的なことにも投資をしなければならない。それぞれのバランスで、きちんと投資・支出をしなければならない。

今までの公営の水道は、トントンがいいわけですよ。利益が出ないことが、公営水道の場合は一番いい状態なんです。余剰金が出なくて、適切に支出がされて、トントンがいい。それが運営権者が最大の利益追求をするということになった時に、しっかりした継続のための投資、機械の更新を適切にするとか、そういうバランスについて、本当に誰が担保するのかが大きな問題。

福島みずほさん

私が民間企業だったら、20年後に更新されるかどうかわからないのに、100年単位のことは考えないです。知ったこっちゃないというか。当面の株主配当をちゃんとよくしようとか思う。宮城県も初期にお金が入ってくれればいい、とあまり先のことを考えてないような。

岸田清実さん

いま企業債ということで 、公営企業向けの貸出しをする国の外郭機関があって、企業債をそこで引き受けてもらって、お金を調達するんですね。いまは、確か0.5%とかそんなオーダーなんですけれども、特定目的会社を構成する時に、商社などが出資をする利率は3%が想定されている。企業債という公の資金の調達よりも、相当高い金利で、出資、配当が行われる。あと役員報酬が適正水準でやられているのか? 

今でも民間の企業のみなさんには委託ということで出しているので、受けた会社には役員もいるので役員報酬もちゃんと出ている。こういうものは、工事金額によって何%と決まっている。全国でそういう基準があって、積算単価があって、その中にはちゃんと適正な役員報酬の額とかが決められている。それを県職員が積み上げて、入札額というのを決める。

ところが、運営権者になれば、すべて丸投げ、お任せなので、どんな役員報酬にするかとか、株式配当のこととかすべて含めてお任せになる。県はそれを第三者機関でモニタリングすると言っているが、モニタリングをする第三者機関に、県民代表とかそういう位置付けの人は今のところ考えられていない。専門家、公認会計士などが入るんでしょうが、それがどれだけ適切に情報開示がされていくのか、それはまだ明らかになっていない。

福島みずほさん

業務委託と売却は、本質的に全然違うもの。業務委託は、ある程度こちらが運営権を持っていて委託するので、中身についても公が積み上げて監視するけれど、売却したら丸投げだから、不透明になるかもしれないし、わからない。

水質汚濁や水質についても、モニタリングをすると国会で言っているけど、できるのか。まともなモニタリングをやろうとしたら、莫大なお金がかかる。それだったら、公でやったほうがいい。

岸田清実さん

七ヶ宿ダムから引いた水を、白石の南部山というところの県営浄水場で水道用水にしているんですけれども、今もそこの日常の運転は民間会社がやっている。同じ事務室の中に県職員がいて、委託をした会社から日報とかデータが出てきて、それを県職員が毎日チェックリストしたり、立ち入り検査をする。

今度お任せになった時に、「同じようにやります」とは言っているが、自治体から「今のモニタリングと同じですか? 異なるんですか?」と質問が出ているのに、県は「今後検討します」と、何も答えていない。今のところ何もわからないんですね。

福島みずほさん

極端に言うと、水質汚濁していたり、何か問題があった時に、知らされないという可能性がある。県の方としてはもう売却してるから、返されても困るし、「まあ、うまくやってくれや」という世界になるとすれば、モニタリングなどちゃんとやらないんじゃないですか。みやぎ型がすごくわかりにくいのは、地下の管の部分は行政がやります、上が売却ですって、水道料金の分割は、分け前はどうするんですか? 一番しんどいのは水道管の補修、メンテナンスでしょう。そこで責任の押し付け合いになるとか。水道管そのものは県がやるんだったら、あんまりメリットがないじゃないですか。

岸田清実さん

県が言っているのは、全体の総経費の管路部分は7割だということで、相当大きな部分を管路の維持管理、更新が占めている。今のコンセッションは、基本的に浄水場、下水で言うと処理場を任せようということ。ただ、これは今時点。仙南仙塩広域水道の供給が始まったのは平成2年。管の法定耐用年数は40年だが、実際上は60年と言われているので、仙塩広域水道は20年後以降本格的な更新になっていき、相当大きな金額になるので、これを県が直営でやるのかというのは、結論が出ていない。

水道料金は、今のままやると運営権者に渡す分がいくらというのが出てくる。20年間でいくらになります、と。それから県がこれから担当する分について20年間でいくらで、総額が出てくる。運営権者に任せる分に県としては新聞に出たように200億円を上限にして各グループを競わせてできるだけそれを下げていく。その按分率に応じて、毎年毎年の水道料金を按分していきましょうというのが、県側の今のところの説明です。

高野恵美子さん

県はモニタリングをすると言っているのに、技術者はいなくなる。そこに一番不安を抱いている。県担当者のお話を伺った時も、ちょうどそのお話を伺った方が、県の水道事業の現場バリバリの方で、「僕は現場の担当だから、話をするのは苦手なんだけど」とおっしゃりながらコンセッション方式の説明をしてくださった。その時、私は「課長のような立場の方が、県からいなくなるわけですよね。現場の安全管理というのを、どこまで県ができるようになるんですか? 現場に行く県の人がいなかったら、話を聞くだけ、現場の知識を持っている人がいなくなる。だったら言われっぱなし。『こうだったんです』と報告を受けて『ああそうですか』となっちゃいません?」と言った。料金と安全の担保というところは、消費者としてすごく気になる。

コスト削減をしなければいけないというところで、いろいろな水道事業者の関連の方が、「内製化が見込まれるんじゃないか」と言うのをちらっとお聞きしたんですけど、もともと宮城県が目指していた水道事業の広域連携からすると、いわゆる町の水道屋さんが担っていたところが、運営権者の中での内製化になると、今までやっていた小さな水道屋さんたちが困らないか、切られてしまったり、取り込まれて今までよりも低価格で委託されたりしないかと不安に思っている。

岸田清実さん

今までは全国的な基準で、単価表のような本になっているものの中から拾って、積算を積み上げて、それで入札額になる。役所が発注するものは、無理な値引きができないような仕組みになっている。適正価格で発注することが基本になっている。それが運営権者にお任せになると発注価格も全部お任せですから、基準は運営権者の判断による。かなり厳しい経費の定義になる可能性も十分ある。体力のある所だけが入れる、小さな所はなかなか入りにくくなるという心配は当然ある。

福島みずほさん

浜松は、それが理由で、地元の水道業者が、水道民営化に大反対になった。結局、運営権者の中でやることになって、従来のものは切り捨てられてしまうんじゃないかという問題もある。

災害の時は自治体が負いますという意味は、経済的な意味なのか、メンテナンスも含めて自治体がやるのか、その辺もわからない。

浜松の契約書も、不可抗力の時は自治体がとなっている。国会の答弁でも「災害が起こったときどうするんだ?」というと、「自治体がおりますから大丈夫です」と答えるんですが、自治体が経済的に負うのもおかしいし、メンテナンスやいろんなことも、どこでも災害現場はめちゃくちゃになってるわけだし、水道の供給も必要。一体、災害の時を民間業者がどうするかは、よくわからない。

岸田清実さん

災害復旧の時は県が担当します、と。設備そのものの所有権は県にあるので、公的施設の災害復旧なので、国に申請して災害復旧費用は出る。それと同じような扱いで、復旧費用の申請をする。国は査定をして、「この割合でこの金額で補助します」と公的施設の災害復旧の仕組みで、運営権は売却するけれども、所有権そのものは県に残るので、県営施設の災害復旧という位置付けで、県がやると説明している。

問題は、リスクの大きなところは自治体が担って、日常のリスクのないところは運営権者に任せるということです。利益が出やすいところは運営権者に任せるけれども、非常に突発的に費用がかかるところは、自治体が負う。

福島みずほさん

災害現場で水道管が破裂したり壊れたりということがあった時、メンテナンスが不十分で日常が悪いからこうなっているのか、被害が大きかったからなのか、正直言ってわからない。私が民間企業だったら、「これはちゃんとやってたんだけども、災害が大きいために起きました。ハイ、県持ってください」となって、つまり、水道料金はできるだけもらいたいけども、災害になった時の被害は、ハイ自治体となると、通常のメンテナンスもサボるんじゃないか。

及川敬義さん(全水道宮城県支部執行委員長)

ここまでお話を聞いて、みやぎ型は果たして県民のためなのか? 市民のためなのか? 全く市民のためではないと、理解せざるを得ないのかなあと思っているところです。

このみやぎ型が発表された時は、最初、宮城県知事が国に一所懸命働きかけて、水道法改正される前だったので、水道法にコンセッションの選択肢を入れるということを、県知事がお願いして入れたと言っていたんですが、段々市民運動が広がってきて、宮城県のシンポジウム第1回、第2回のあたりでは、それを自慢げに県知事は言っていたんですけれども、それがだんだん鳴りを潜めて、そのことをもう一言も発しなくなったというような状態にあります。 

福島さん、岸田さんに、ちょっと。私もずっと疑問に思っているのは、果たして、このみやぎ型というのを、何のために県知事は入れようとしているのか? これまでの議論の中では、まあ一番最初に目立ちたいというか、そういうところ。でも、ホントにただそれだけなのかな? という疑問も出てくるところです。

岸田さんがさっきおっしゃっていた一昨日の河北新報では、このまま県の職員が継続して水道事業を続ければ、20年間で3千3百何億円だか、それくらいかかると。それが民間に任せれば、そこから247億円だったかと思うんですけども、それくらいの経費削減を見込めると。

そもそも、県が続けた場合ということ自体が、たぶん、県職員が何の創意工夫もなく続けた場合と民間がやった場合の比較になってくるのかな、と。 これは絶対、コンセッション導入されてもですね、必ず、失敗したとは言わないでしょう。絶対に、それはそうだと思います。県民の方はそこまで知らないでしょうから。確かに、水道の財政は全国どこでも厳しいものがあるので、水道料金が値上げになったとしても、「県が運営していればこれまでよりもさらに値上げになったでしょう」「コンセッションやったおかげでこれくらい下がりました」「値上げ幅がこれ位に抑えられました」というような、値上げするための一つの理由なのかな、とも思えるところがあるんです。

福島さん、岸田さん、何のために宮城県知事が、というのを憶測でもかまわないので、ちょっと思うところを教えていただければ 。

ひぐちのりこさん

会場からも、「村井知事がここまで水道に執着するのは、一番にやったという名誉以外に何かうま味があるからだと思いますが、それは何なのでしょうか?」「FTAが通ると、水道の再公営化ができなくなるというのは本当でしょうか?」という質問がありますが、いかがでしょうか?

岸田清実さん

経費削減、コスト削減ということが言われていますが、あるいはそれによって(水道料金の)上昇抑制と言われますが、水道料金の見通しって出されていないんですね。普通そう言うんだったら、たとえば、このぐらいのコストが20年間かかって、それで水道料金はこういうふうに上がっていきます。それをコンセッションやることによって、どれぐらい水道料金が抑制されていくのか。大まかなものは出ているが、それを裏付ける県営水道あるいは下水道、工業用水道の20年間の収支見込みっていうのが出ていない。本当は水道料金の推移を裏付ける経営見通しとか、そういうものが出されてこそ裏付けられるわけですが、出されていない。

それから、当初、120億円のメリットがあると県は言ってました。今度200億以上。それも、業者の聞き取りの結果だ。自らが積算をして、根拠を示してやってるんじゃなくて、前の120億の時も、A社B社C社といろいろなケースがあって、だいたい平均するとザクッとこれぐらいだというもの。積み上げたり、根拠を示して出される金額ではない。非常にあいまいな根拠づけでしかない。仮定に仮定を重ねたことで示しているのが現状。本当にそれが根拠あるものかというのは疑問。

福島みずほさん

国会にいると迷惑という感じです(笑)。漁業法の改悪だって宮城発なわけで、頭の中がそもそも民営化がいいんだと思っているというのと、その素晴らしい民営化を第一号にやったすんばらしい首長私という感じで思っているのかもしれませんが、でもやっぱり100年単位200年単位で考えているとは、とても思えない。

カジノで儲かるというのに似ていて、業者が出して、「横浜市はこれだけ儲かる」とやるんですよ。だけど、みんなそんなの信用しない。宮城で実は失敗するんですよ、悪いけど。だから反対で止めなくちゃいけないんですけど、絶対に失敗するんですよ。ところが、よく見えないから、成功したと、水道料金の大幅値上げを止めたとか、悪いけどどっかを削るとか、とんでもないところを削りながら、コストカットに成功したとか言うんですよ。そうすると、宮城でコンセッションが成功しましたというのが全国に広がると、大阪とかちょっと止めてるとか、浜松市で止めてるとかいうのが、これはよくない影響を与えるので、まず宮城で止めたい。

高野恵美子さん

本当に命に関わる水なので、一人一人が水道料金を払い、何をしようとしているのかを一人一人がきちんと理解して、そこから議論を始めても遅くない。そうして欲しい。

生活協同組合として、ウチは食の安全の活動にすごく力を入れているので、遺伝子組み換えの表示であったり、ゲノム編集食品の流通であったり、もうホントてんてこ舞いなんです。いい加減にしてくれという感じなんですが、どの事例を見ても、国は国民を見ていないな、と。このみやぎ型管理運営方式にしても、県は県民を見ていないなというのが、何につけても感じるので、ここはホントに改革が必要ですね。

ひぐちのりこさん

ヴェオリア社とか、わゆる多国籍企業関係についても質問が来ています。

「すでに仙台市の水道検針業務をヴェオリア・ジャパン社が請け負っていることを知っていますか? 求人情報誌に、ヴェオリア・ジャパン社が載っています。そういう癒着はどうなのか。多国籍企業、製薬会社と共に国で金儲けをしている」

岸田清実さん

最初は、フランスの水メジャースエズが請け負うんじゃないかという話も流れていた。香港の浄水場とか配水網はスエズがやっている。日本には入ってなくて、みやぎ型を見つめながら、日本支社を作ったが、撤退した。

よく多国籍企業の進出で、日本の水が世界の水メジャーに押さえられる、そのスタートになってしまうんじゃないかという危惧が出されていて、それは注視していかなければならない。ただ、最近になって出されてきているのは、むしろ逆に、日本型水メジャーを作っていく、その一歩にもなるんじゃないかという話もある。

今回のみやぎ型と同様に、これから管路の更新というのは、年に数兆円の事業費の規模になっていく。それだけの市場ができるということです。今やられているのは、そういう管路の更新も含めて水道事業を民間に開放して、事業化していこうというのが、村井知事と国の進め方ですが、そういう中で日本版水メジャーを作っていく一つのスタートになるのではないかという視点もある。

福島みずほさん

じゃあ、私たちは何をしたらいいだろうか?

警鐘乱打を鳴らし、問題点をわかりやすく、とりわけ、水とかに関心があるお母さん お父さんたちに広げる。自民公明を含めた県会議員に働きかけるのもとても大事。

浜松で水道民営化反対運動をしていた人に聞くと、自民党は賛成なんだけど、自民党の妻は「駄目よ!」と言う。

岸田清実さん

ぜひ県議会の推移を見守っていただきたい。身近な県会議員にこのことを話しかけていただいたらいいじゃないかなと思う。賛否は置いても、もっとみんなが理解できるようにしてほしい。賛成反対の判断ができるようにしてほしい。もっときちんと説明してほしい。市議会議員にでもいいと思う。

高野恵美子さん

台風の影響で県議選の投票率は低かったですが、この問題を知っている人を一人でも増やす、興味を持つ人を一人でも増やす。隣の奥さんに出会ったら、今日のお天気どうこうではなくって、「ねえねえ水道料金ってどうなるのかしら」と、ひたすらつぶやいて歩いたりもいいかなと思ったんですが。

この間パブリックコメントが630ぐらい集まって、この活動をしてくださった方たちは1,000を超えるのを目標にしていたんですが、そこには及ばなかったものの、県政に対するパブリックコメントが3桁集まるっていうのは、やはり関心がある人が増えているということなので、もっともっと関心を持つ人を広めつつ、県議会の傍聴に行きたいなと思いまして、これが審議される日程はもう決まってますか?

岸田清実さん

まず11月25日議案提案がされます。それから、条例案なので、所管の委員会に付託をされます。建設企業委員会というところが担当になります。その日程は新聞に出ます。県議会の最終日12月17日に採決ということになるのでは。

福島みずほさん

早いですね、スピードが。そこで採決させないという動きが、本当に必要ですよね

9月21日に仙台市議会議長あてに、「宮城県が進める水道事業へのみやぎ型管理運営方式導入に対し十分な情報公開と熟議による審議を求める意見書提出」の請願を、命の水を守る市民ネットワーク・みやぎが出した。

裁判はどうですか? という質問もありますが、今の段階では、裁判よりも県議会で条例をさせないというのを広げていくことですよね。

自民公明の議員さんの中には反対派はいないのですか? という記者さんの質問ですが。

岸田清実さん

積極的にどうなのかなと思っている人はいると思います。ただ、グループとしていると、なかなかそういう個別の人の発言というのは、言葉の強い人のが通りますからね。知事の出している方針にクエスチョンマークを持っているような声は、やはり小さな声なので、表になかなか出てこないのが現状だと思う。

今の県議会の59名定数のうち、33人が自民党会派ですので、県議会の構成上はなかなか苦しいんですけれども、そこを支えていただくのは、皆さん方のいろんな方への声がけだと思う。議会構成としては非常に劣勢だが、それを何とか跳ね返して、否決までは持っていけなくても、少なくとも継続にして、県に十分説明を尽くせというようなところに持って行ければ、今の議会の勢力図からいうと一番いいと思いますけれども、どうしていくかはこれからの相談になります。

福島みずほさん

みやぎ方式は、勉強すればするほど複雑になるので、今日勉強した成果を活かしつつ、やっぱり「命の水を売るな」という単純なことをできるだけ一人でも多くの人に伝え、いい地域運動ができるようにと思います。

岸田さんはじめ議員の方が議会で頑張ると同時に、自民公明の人にも私たちが働きかけていくし、市議会でも頑張ると。市民運動やPTAや道でばったり会っても、「命の水を売るなんてとんでもない。宮城県がこんなので日本で一番になったってしょうがないよ」というようなことを大いに広め、少なくとも今年、絶対議会で通らないように阻止していくというのを頑張りましょう。

ひぐちのりこさん

仙台市議会に出された「十分な情報公開と熟議による審議を求める意見書提出」の請願は、常任委員会に付託されて、継続という形で引っ張っています。仙台市議会の中も、政府与党のほうが多い勢力なんですが、どうにか頑張っているところです。