宮城県の水道民営化問題

命の水を守るため、水道の情報公開を求めていきましょう!

命の水を守る市民ネットワーク・みやぎが    「みやぎ型管理運営方式」に係る要請書を   宮城県に提出!!

 

2019年8月27日、命の水を守る市民ネットワーク・みやぎは、「『みやぎ型管理運営方式』の実施方針素案について」に係る要請書を宮城県に提出しました。 

「みやぎ型管理運営方式」に係る要請書

 「水道民営化(みやぎ型)導入に係るスケジュールを全面的に見直し、情報公開と説明の徹底、議会での熟議を。9/2から開始予定のパブコメは中止を」という命の水を守る市民ネットワーク・みやぎの要請に対し、県側の櫻井雅之公営企業管理者からの回答は、「説明を尽くしてきたがまだまだ足りていない。なお努力したい」としながらも、「予定どおりのスケジュールで進めたい」というものでした。

命の水を守る市民ネットワーク・みやぎが、みやぎ型管理運営方式を導入した場合としない場合の収支比較シミュレーションさえ出ていないことを指摘すると、県側はこれを認めました。県民へ判断材料を提供できていない中、スケジュールありきで、パブコメ募集が強引に始められようとしていることが明らかになったのです。

以下に、「『みやぎ型管理運営方式』の実施方針素案について」に係る要請書の本文を掲載します。

           要請の趣旨

1 「みやぎ型管理運営方式」導入に係るスケジュールを全面的に見直し、まずは情報公開・県民理解を徹底し、同時に受水市町村とその議会、県議会での熟議を尽くすことを最優先とすること。

2 9月2日開始予定のパブリックコメントは中止すること。

3 「みやぎ型管理運営方式」導入の前提となる「公営企業の設置等に関する条例」改正案(議決)の11月県議会上程の方針を撤回すること。

を要請します。

 なお、本要請書に対する回答は9月1日までにお願い申し上げます。

 <初 め に>

  8月21日、宮城県議会建設企業委員会において、「『みやぎ型管理運営方式』の実施方針素案について」文書(以下、「実施方針素案」と略)が報告されました。

 同時に9月2日に実施方針素案をホームページ上に公表し、パブリックコメントを同月30日まで行うこと、さらに関係市町村への意見照会、10月中にPFI検討委員会審議、11月議会での「公営企業設置等に関する条例」改正案を提案・議決後、「実施方針の策定及び公表」を行うことも明らかにされました。

  私たち「命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ」は去る6月29日に開催された「命の水を守る全国のつどいin宮城」において結成されました。

 そして同つどいで「宮城県が市民を置き去りにして、強引かつ性急に水道事業コンセッションを推し進めようとしていることに反対」すること、「広く市民の声を聞き『市民参加』を求める中で、将来にわたって持続可能な水道事業のあり方をともに考える、オープンな場を作ること」を求めるアピールを採択しました。

 このアピールの立場から、現在「みやぎ型管理運営方式」導入に向け、宮城県が進めようとしているやり方(スケジュール設定)に次の二つの理由から強く反対し、上記の要請をするものです。

 <要請の理由(反対する理由)(1)情報公開が全く不十分であること>

 この間、宮城県は「みやぎ型管理運営方式」導入に向けて、2016年2月に「みやぎ型管理運営方式」(素案)を策定し、「上水・工水・下水一体型管理運営検討懇話会」を3回にわたり開催しました。この懇話会は「非公開」で、議事録も公開されていません。

 その後17年2月から「上工下水一体官民連携運営検討会」が4回開催されました。この検討会については県ホームページに配布資料も公開されていますが、検討会参加者は、有識者、民間事業者、行政関係者だけで延べ775人であり、県民は参加対象ではありませんでした。

 つまり、「みやぎ型管理運営方式」の検討内容は少なくとも2年間、県民が全く知らないところで議論が進められてきたのです。県民に対して宮城県がこの問題について情報を提示したのは、実質的には18年7月の「みやぎ県政だより」で11行、同年12月の河北新報「創造的な復興へ 宮城県政策紹介シリーズ③」においてだけでした。

 宮城県は18年7月から4回にわたり「宮城県上工下水一体官民連携運営事業シンポジウム」を開催し、延べ約1000人が参加しましたが、参加者の大半は「関係者」であり、一般県民の参加は1~2割程度でした。4回のシンポジウムで説明を聞き、質問できた県民は100~200人程度に過ぎないのです。

 このように「みやぎ型管理運営方式」についての情報公開が全く不十分なまま、その内容を大半の県民は知らずに今日に至っています。このような状況があるため、本年2月に開催された第一回PFI検討委員会において西村修委員(当時)が次のように発言しています。 

 西村修委員発言(議事録9・10P)

 「徹底した情報公開と合意形成をぜひお願いしたいとおもっています。」

 「用水関係事業については関係市町村との関係が重要ですので、どのくらい理解されているのか、納得されているのかも大事です。」

 「・・・県民の方々が水道料金を支払っている。県民の方々が支払った水道料金でもって運営されているのですから、決して市町村による理解だけでは十分ではないということだけは理解してすすめていただきたい。その上で、合意形成は非常に大事です。20年というのは非常に長いので、徹底につぐ徹底をお願いしたい。」

 これらの意見に対し、宮城県は「シンポジウムを開催しておりまして、(中略)ただ、それで十分かと言われると、仰るとおり、まだ十分ではありません。なかなか理解が進んでいないところもあります」と、情報公開が「十分」ではなく、理解が進んでいないことを認めています。

 また、この宮城県答弁に対し、同委員会増田委員長は「これまでにシンポジウムが数回開かれていたという情報が残念ながらうまく伝わってきていなかったのでうまくやっていただきたい。(中略)どういう形で先ほどあった県民全体の合意を形成していくかが重要な課題です。」と述べています。

  しかし、宮城県がこのPFI検討委員会の指摘後、「(情報公開・合意形成の)徹底につぐ徹底」が実行された形跡は有りません。

 <要請の理由(反対する理由)(2)県民合意と受水市町村・県議会での熟議が尽くされていないこと>

 宮城県は、この間の4回のシンポジウムにおいて、「県民合意・受水市町村・議会との合意形成をどう進めるか?」という点は全く説明していません。実施方針素案にも、合意形成に関する方針記述は全くなく、ただ宮城県が「やりたいこと」と「そのやり方」を記載しているだけです。

 9月2日から行うとする実施方針素案に関するパブリックコメントは、この間、その内容をまともに県民に知らせずに、宮城県が4年かけて検討した極めて専門的な内容について突然意見を求めるというものです。県民の理解が不十分なまま、通過儀礼的にパブリックコメントを実施するのでは、その意味がないと言わざるを得ません。

 前期の第一回PFI検討委員会で西村委員は「・・・本来は、コンセッションを考える以前の問題で、・・・県民の方々に理解して頂いたうえで、コンセッションとはこんないいものだと説明していただければいいと思いますが・・・」と述べ、改めて「・・・情報公開、合意形成のために県民の方が理解可能なレベルでしっかりと情報を提供して頂きたい」(議事録16P)と宮城県への要望を重ねて述べています。この要望のとおり、パブリックコメントの前に宮城県がやるべきは、県民に解りやすい情報を開示し、理解を促進し、説明責任を果たすことではないでしょうか。

 また受水市町村と、一応は協議されていることが建設企業委員会で説明されていますが、肝心の受水市町村から市町村民に「みやぎ型管理運営方式」の内容について説明されているという話は寡聞にして聞いたことがありません。

 「県内最大の給水人口を抱える仙台市郡和子市長も(12月4日の)定例記者会見で『県は料金高騰を抑えられると説明している。どうしてそうなるのか、はっきり聞きたい』と述べ、県に説明を求める姿勢を示し」ています(河北新報18年12月7日)。また、市民団体「アクアロードみやぎ」が仙台市議選立候補者におこなったアンケートでは回答者(38人)の71%が「(県の水道事業民間委託は)必要ない」と回答したことが紹介されています(河北新報8月21日)。仙台市議会において、「みやぎ型管理運営方式」の内容については議論にもなっていません。これらの事実は、県と受水市町村との熟議、受水市町村内での熟議が尽くされていないことの一端を示すものです。

 一方、県議会での熟議は尽くされているでしょうか?8月21日の建設企業委員会では実施方針素案は「報告事項」として内容説明はされず、議員の質問に答えるだけでした。これにはさすがに質疑の冒頭、出席議員からおかしいとの意見が出されました。9月定例会でもこの案件を同様の取り扱いにするのであれば、県議会で丁寧な説明がされることなく、結局「みやぎ型管理運営方式」の内容を県民はわからないままです。

 本来、水道事業を公営で継続した場合と、「みやぎ型管理運営方式」で運営した場合の経営収支シミュレーション比較が必要です。その結果、「みやぎ型管理運営方式」のほうが県民にとり優位性があるのであれば、内容をこう考えたのでこの方法でよいか議論してほしい、というプロセスが当たり前の手順です。しかし、それもせず、丁寧な説明を回避するような現在のやり方では、宮城県は本質議論から逃げているといわれても仕方がありません。

 宮城県は9月定例会後の11月定例会で「みやぎ型管理運営方式」導入の前提になる「公営協業の設置等に関する条例」改正案を提案するとしています。改正案が議決されると「実施方針の策定及び公表」が行われるとされています。しかし、両定例会の間に宮城県議会議員選挙が行われます。この県議選で選出された新人議員は当選後、実施方針素案を十分吟味する間もなく、11月定例会で議決に参加しなければなりません。これで本当に県民の意見を反映することになるでしょうか。

 宮城県が「みやぎ型管理運営方式」について十分な合意形成をはかろうとするのなら、実施方針素案をきちんと県議会議論の俎上に載せ、十分な議論を担保すべきです。熟議のないままの見切り発車は将来に禍根を残すことになるでしょう。

 以上の考えから、私たちは冒頭記載の通りの要請をするものです。

                                    以上

 

 宮城県民の理解も同意も得ずに、勝手に宮城県民の水道運営権を売り飛ばすな!!

ということです。

この要請書には、宮城県がいかに秘密裏に、みやぎ型管理運営方式導入へのプロセスを進めてきたかが、時系列を追って詳細に述べられています。

また、実施方針素案パブコメ直前のこの期に及んでも、宮城県が「やりたいこと」と「そのやり方」を一方的に提示するだけで、県と受水市町村との熟議、県議会での熟議や県民全体の合意を形成する姿勢が全くないという、民主主義の根幹を揺るがす事態に至っていることにも言及しています。

宮城県民のみなさんは、ぜひこの経緯をご確認いただき、宮城県のやり方に異議を表明しましょう。