宮城県の水道民営化問題

命の水を守るため、水道の情報公開を求めていきましょう!

宮城の水 今・未来 宮城県がすすめる「水道民営化」を問う市民集会!! (2)        小川静治氏の報告 & 参加者アンケート結果

水道民営化「みやぎ型管理運営方式」実施方針素案から見えるもの
小川静治氏(東日本大震災復旧・復興みやぎ県民センター事務局長)

みなさんがパブリックコメントでご覧になった「みやぎ型管理運営方式」実施方針素案に、何が書かれていて、何が見えるのかを、これからお話したい。

実施方針素案とは?

     宮城県がすすめる「水道民営化」を問う市民集会 資料17ページ

この図は、みやぎ型管理運営方式はどういう手続きをとっていくのかをまとめたもので、11月の県議会で、実施方針条例の議決を行うということになっている。

現在の状況は、本格的な検討をする入り口の段階にあるのだが、この11月に議決をされると、実際上は、市民・県民に詳細な内容は示されることなく、まさに粛々と、実施方針条例が実現されていく可能性が強い。そういう意味で多くのみなさんが警戒をして、600通のパブリックコメントを出したが、それがどういうふうに反映されるのか注目していきたい。

ただ、上図の青い四角の部分は、PFI委員会(宮城県民間資金等活用事業検討委員会)で審議される。県議会でよりも、このPFI委員会で議論される。県民には、この内容、議事録は、公開しないことになっている。従って、見えないということになる。もちろん、ポイントポイントで、「実施要綱ではこのように決めました」というようなことは当然出てくるだろうが、詳細な内容はクローズされたままになっていくと思う。

今回の実施方針素案は、「優先交渉権者の選定」まで計画内容は確定しないので、「今出せるものを出した」というもの。確定した段階では、もう修正も不可能ということで、県民はこの後も、わからないという状態が続かざるを得ない。

実施素案公表の目的

    宮城県がすすめる「水道民営化」を問う市民集会 資料18ページ

実施方針素案を公表する目的は、実施方針を発表して、事業者が応募するための「準備期間を提供する」ため、と「住民に対して周知」することが目的、と内閣府ホームページに書いてある。つまり、事業者が主で、住民は従の関係なので、県のパブリックコメントのページを見ると、事業者用のページが用意されている。

そのため素案の内容は、決してみなさん方に伝わるようなものではなかった。

県が5年かけて業者と研究してきたものを、県民にはわずか28日間で検討しなさいというのは、私はまったく無体なことだと思う。

PFI法と宮城県の姿勢

     宮城県がすすめる「水道民営化」を問う市民集会 資料18ページ

4回のシンポジウムに県民の参加者が少なかったのは、「県民に関心がないから」だ、と県の職員は仙台市の市民説明会で答えている。県民に関心がないからで、自分たちは悪くないと言うのを、みなさんはどう考えるか?

120億円のコスト削減は手品

    宮城県がすすめる「水道民営化」を問う市民集会 資料19ページ 

実施方針素案の中で、「水道用水供給2事業だけで約120億円のコスト削減ができる」と県は説明している。

県は経費の削減額見込みを積算したり、民間事業者から参考見積を取ることができないので、自分たちで削減率を設定することができなかった。

そのため、業者から聞き取り調査をして、削減額の計算を27パターン作った。県はその下限である7.4%をさらに安全率を考慮して、7%とし、現行体制で継続した場合の事業費に、それを乗算して、120億円という削減額を求めた。

削減額は個々の経費を積算したものではなく、頭からボンと7%をかけて、いくら、というふうに計算したもの。マーケットサウンディング(対話型市場調査)で業者の「まあ、これ位はいくのかな」という数字を出してもらったと県の職員が言っている。この数字は積算ではないので、県はこの根拠を言えない。

業者とのやり取りの議事録の中で、大和総研が「たとえば安い材料を見つけてきて、材料費がいくぶん安くなるとか、自治体向けの相場から民間向けの相場を適用することで安くなるとか、官民の給与格差に目を付けて人件費を安くするとか、そういうことで安くする程度なので、やめた方がいい」と言っている。

工業用水道事業・流域下水道事業は同様の試算もなく、上工下水民営化によるコスト削減額は、現在もわからない。

コスト削減は実現可能か?

    宮城県がすすめる「水道民営化」を問う市民集会 資料19ページ

コスト削減は実現可能か?

     宮城県がすすめる「水道民営化」を問う市民集会 資料20ページ

上の2つの図は、3名の県の現場経験者にヒアリングをしてまとめたもの。

浄水場では、濁度上昇時・粉末活性炭投入時は「ビーカー実験」が必須で、IT活用で省人化はできない

工業用水は、簡単なやり方なので、IT活用をしてもしなくてもあまり変わらない

下水処理場に関しては、わからないけれどもITの活用の可能性はないわけではない

つまり、県の言うITによるコスト削減効果は限定的で、多くの効果は見込めない。

「最適で最新のソフトウエア」があるのであれば、民営化しなくても公営で購入すれば良いだけだ。

個別運営費では、点検頻度を下げることでのコスト削減は可能。

ただ人件費の削減は、部分的には効果があるが、いわゆる非正規化の問題、ノウハウの蓄積がなくなるなどの問題が残る。

年契約での薬品の一括購入は現在も実施していて、削減効果は見込めない。

要は、点検頻度の削減などによってコスト削減が行われる可能性があるということ。

その結果、当然、安全性にかかわる問題が生じることが考えられる。

無理なコスト削減は安全低下につながる

    宮城県がすすめる「水道民営化」を問う市民集会 資料20ページ

 

無視(軽視)されているコスト・リスク

① モニタリングコスト

モニタリングコスト

    宮城県がすすめる「水道民営化」を問う市民集会 資料21ページ

県のセルフモニタリングは、現場の問題点を発見でき、解決策を起案し、その実行を管理する能力を有する職員でなければ、形だけのものになる。モニタリング人材の育成と確保が必要になるが、その計画はない。

三者機関構成者は、水道の専門家であったとしても「水道経営の」専門家ではない。日本では上工下水道事業をトータルに経営した経験者はいない。水道管の説明がもっぱらできる人とか、水道の社会的な問題を説明できる人はいても、水道経営の専門家はいない。そこにいくら委託しても、モニタリングの機能は発揮しない。

② 人材育成の軽視

人材育成の軽視

    宮城県がすすめる「水道民営化」を問う市民集会 資料21ページ

県の水道事業従事者経験年数は平均4.5年、下水道事業従事者は平均3.9年でしかない。

そもそも3~5年で移動する職員構成で、技術継承自体が不可能。研修等の座学だけでは効果はない。

職員研修予算は10年で145万円しか計画されていない。15年度はわずか3万6千円。

圧倒的に足りない下水道人材

    宮城県がすすめる「水道民営化」を問う市民集会 資料22ページ

経験が少なく、技術もない職員で、経験豊富な事業者に対して、県独自のモニタリングがどうしてできるのか?

③ 社会的コスト発生のリスク

社会的リスク発生リスク

    宮城県がすすめる「水道民営化」を問う市民集会 資料22ページ

社会的コストとは、環境破壊やサービス低下のこと。

現在は、水質汚濁防止法国交省基準より厳しい「計画値」で管理されているので、それらの基準を大幅に下回る環境負荷が少ない水質で管理されている。

が、「要求水準書」において、現行の「計画値」による管理ではなく、「国交省基準」などを採用した場合、放流水の環境負荷が増加するリスクがある。

④ 県の財政負担の増加リスク

県の財政負担の増加リスク

    宮城県がすすめる「水道民営化」を問う市民集会 資料23ページ

⑤ 危機管理の脆弱化リスク

危機管理の脆弱化リスク

    宮城県がすすめる「水道民営化」を問う市民集会 資料23ページ

大規模な自然災害等で被害を受けた場合、実施方針素案28ページには、「その内容を運営権者は県・関係市町村等に通知・連絡」し、「適切な初動対応を行う」。緊急対応が必要な場合、運営権者自らの判断により臨機の措置を取る」と書いてある。

つまり、民間業者がやってくださいということ。

こういう状況で起こる問題として、去年、関西国際空港でパニックになったような事態に陥るということがある。この時、国と民間企業は、対応の押し付け合いになった。

管路の事故、自然災害時に、公営であれば即時に「給水車を出そう」と言えるが、民間企業にはそれはできないだろう。

⑥ 情報開示の後退リスク

情報開示の後退リスク

    宮城県がすすめる「水道民営化」を問う市民集会 資料24ページ 

現在は、上水・下水の各事業所単位で、毎年「年報」が作成され、「業務委託」をどの会社にいくらで委託しているか、薬品は何をどれくらいの量使用しているか、工事はどこにいくらで発注したかなどが、細かく記録され、情報公開されている。

民間業者が、このように情報開示するはずがない。特に、コスト削減に関するノウハウや役員報酬は、企業秘密にされ、相当制限された内容しか公開されないだろう。

白紙委任を迫られる受水市町村

    宮城県がすすめる「水道民営化」を問う市民集会 資料24ページ

宮城県の用水供給事業から受水している17市町村からすると、県に白紙委任するしかないというのが、今の実態。

17市町村が県に2回質問したことに対して、仙台市の市民説明会で、仙台市は、今の時点で「県の回答に納得していない」と答えている。一昨日の仙台市議会でも、同様の答弁をしていた。

現状不明確なことが沢山ある中で、自らが市民・町民に説明することもできず、県議会で条例が可決されれば、17市町村は、それに従うしかない。

これは県だけではなく、市も悪い。ちゃんと情報開示させるまでは、「進めるな」という話にすればよいのに、そこまでは言わない。

喫緊の課題はダウンサイジング

    宮城県がすすめる「水道民営化」を問う市民集会 資料25ページ

これから給水量が減って水道の収入が下がっていくのだから、損益分岐点を下げるしかない。固定費を下げる議論をちゃんとやって、それをどういう手法でやるのか、民営化なのか、公公連携なのか、広域化なのかを考える。

現在迫られているのは、大きく作り過ぎたインフラをどう縮めていくのかである。これを、県民的議論の中で決めていかなければならない。

その手段としての民営化とかを先に出してはいけない。手段を先に議論するのではなくて、今の本質的な問題であるダウンサイジングを全県的にどうやってやっていくのかを検討することが求められている。

宮城県が水道民営化を急ぐ理由

   宮城県がすすめる「水道民営化」を問う市民集会 資料25ページ

急いで後に残ること

    宮城県がすすめる「水道民営化」を問う市民集会 資料26ページ

水道民営化はドラえもんの秘密道具

    宮城県がすすめる「水道民営化」を問う市民集会 資料26ページ
水道民営化は、ドラえもんの “ひみつ道具” のようなもの。のび太君の身に降りかかった災難を、一時的に解決するかもしれないが、道具を不適切に使い続けた結果、最後にはしっぺ返しを受ける。水道民営化の本質はそのようなものだと思う。

宮城県がすすめる「水道民営化」を問う市民集会の参加者アンケート結果

本当に多くの方々が、切実な思いをアンケートに綴っています。

是非じっくりお読みください。

 

参加者アンケート

 

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