宮城県の水道民営化問題

命の水を守るため、水道の情報公開を求めていきましょう!

水道のことって何から考えたらよいかわからない?まずは、岩波ブックレット「水道民営化で水はどうなるのか」を読もう!

宮城県の水道を「みやぎ型管理運営方式」にするので意見を募集します!

と、いきなり言われても、ふだん水道のことをあまり意識していなかった方は、何をどう考えて意見を言ったらよいのか、当惑してしまいますよね。

そんなあなたには、岩波ブックレット「水道民営化で水はどうなるのか」(橋本淳司著©2019)がおすすめです。580円+税とお手頃価格で、私たちの水道の未来を考える際のポイントがつかめます。

 

私たちは、子や孫よりも自分たちの暮らしを優先しがちであり、このままでは未来へ負の遺産を残してしまいそうです。そうならないためにも将来世代の声に耳を傾ける必要があります。「四〇年後の市民になって意見を述べてください」という問いかけには、そうした意味があります。

(「水道民営化で水はどうなるのか」p70)

 

いま考える時間を惜しんで、事実関係の確認が不十分なまま拙速に事を進め、将来世代に禍根を残さないか?

何よりも大切なのは、この考え方です。

2018年の水道法改正をめぐる報道も、次のような次元にとどまっていました。

「水道事業の官民連携手法 (コンセッション)は安全か否か」という具体的な話はしても、「どのような社会をつくっていくのか」という大きな方向性については議論されませんでした。

 大きな方向性とは「小さな政府をつくろう・公から民への流れを加速しよう」という政策をよりいっそう推進すべきと考えるか、そうした動きに歯止めをかけたほうがよいと考えるかです。

(「水道民営化で水はどうなるのか」p12)

 

みやぎ型管理運営方式では、上水道、工業用水道、下水道という三つの水道事業の運営に関して、最低でも20年という長い期間従わなければならない契約を結ぶのです。

なのに、みやぎ型管理運営方式についての議論どころか、それがどんなものなのかこれから学ぶという県民が多い中、一か月にも満たない期間で意見を募集して、それで県民の意見を反映したことにして、さっさと契約を結んでしまうなどということを、本当にやってもいいのでしょうか? 

その結果、どんな未来がもたらされるのか、私たちは具体的にイメージできますか?

すでに私たちが直面している地球温暖化にともなう酷暑や風水害の激増、森林伐採による土砂災害の頻発に、みやぎ型管理運営方式でちゃんと対応していけるのでしょうか?

私はすごく不安です。不安で不安でしようがないからこのブログを始めたのです。

水ジャーナリストの橋本淳司さんは言います。

水道の持続性を責任をもって考える人が、それぞれの地域で増えていくこと。地道な方法ですが、これが問題解決の何よりの近道なのです。

(「水道民営化で水はどうなるのか」p13)

今このブログを読んでくださっている皆さん、ぜひ一緒に考える仲間になってください。本当に多くの人の知恵とアイデアが必要です。私たちの命を支える水道のことなのに、何かの専門家でなければ、議論に参加することもできないなんて、そんなやり方は間違っています。

 

みやぎ型管理運営方式は、PFIの一手法である水道コンセッションですから、下記のような事情もあります。

 PFI事業を民間企業一社で行うことは一般的ではありません。複数企業が共同してPFI事業を行います。この企業のグループを「コンソーシアム」といい、ヘッドとなる特別目的会社(SPC)をつくって公共と事業契約を結びます。特別目的会社は契約、資金調達、リスク管理などを行い、具体的な建設、維持管理、運営などはコンソーシアム参加企業に委託します。

 特別目的会社には多額の資金が必要です。コンソーシアム参加企業からすべての資金調達するのが難しいこともあります。その場合、株主からの調達と並行して、「プロジェクトファイナンス」(ある特定の事業から上がる予想収益を基礎としてローンを組む金融事業)で調達します。

 プロジェクトファイナンスでは、金融会社が融資先のプロジェクトに入り、共同作業を行います。事業計画そのものが担保となり、収益が上がることが高い確率で保障されているような事業への融資が行われます。これがあとから述べるように、黒字で給水人口の多い水道事業はコンセッションが実施できるが、すでに赤字で規模の小さい事業では実施できないと考える理由です。

(「水道民営化で水はどうなるのか」p15)

まさしく、みやぎ型管理運営方式は、人口規模のある地域のみを対象にしていて、人口過疎地域は対象からはずしています。水道を持続可能にするために導入するのであれば、過疎地への手当てを真っ先にするべきなのに、運営会社の儲けのほうが優先されているのです。

 

PFI事業に固有に発生する費用についても確認しておきましょう。

 まず、企業にかかる費用には以下があります。 

 ①調査費用ー事業の調査、官民対話(競争的対話)を行ったのちに応札・応募しますが、この時コンサルタント報酬が発生します。

 ②契約・手続き費用ー落札後、公共と「基本協定書」、「PFI事業契約書」、参加企業間の「基本契約書」、金融機関と「塩金調達に関する契約書」などを締結します。この時コンサルタント・弁護士報酬が発生します。

 ③資金調達の金利特別目的会社が金融機関から調達する資金は、公債と比較して金利が高くなります。公債とプロジェクトファイナンスとの信用力の差によるものです。

 ④役員報酬特別目的会社の取締役等へ役員報酬、株主に配当金を支払います。

 これらはPFI事業の収入(公共から支払われる対価、利用者から支払われる利用料金)で賄われますから、サービス対価や利用料金の増加の要因になります。

 次に公共側にかかる費用です。

 ①調査費用ー事業の調査、官民対話(競争的対話)を行ったのちに事業者の募集・入札を行いますが、この時コンサルタント報酬が発生します。

 ②契約・手続き費用ー参加企業と「基本協定書」、「PFI事業契約書」、金融機関と「直接協定/ダイレクト・アグリーメント」などを締結します。この時コンサルタント・弁護士報酬が発生します。

 ③モニタリング費用ー事業の実施状況について適切な監督(モニタリング)を行う必要があります。内部でモニタリングできない場合、専門家に委託します。

 このようにPFIには固有のコスト増加要因があり、きちんと把握しないとかえって効率が悪くなります。

(「水道民営化で水はどうなるのか」p16~17)

公営のままのほうが、こういった費用を支払わずにすむ分を、水道料金の値上がり抑制や施設の更新費用に当てられるのでは? という素朴な疑問もわいてきますよね。

いずれにしても、県が提示している採算性が上がるという根拠が、信頼に足るものなのかどうか、具体的な数値を出して検討することが必須なのですが、その点がいまだに曖昧なままです。