2022年8月25日の【まったり民主主義を始めようカフェ】のお題は、「思い出の絵本、童話」でした。
今回の民カフェの後、21時から開催されるイベント「まほうの国のえほん館 in VR妖精郷」を盛り上げようということで、子どもの頃に読んだ絵本や童話について語り合いました。
当日の録画がとっても素敵に編集されています (^O^)/
今回の記事の目次
「まったり民主主義を始めようカフェ」、民カフェは、結論を急がないで、いろんな人たちとじっくり意見交換をしたり、みんなで新たなアイデアを模索していく場です。
自分とは異なる意見の人を論破したり、批判するのではなく、他の人から学んだり、 ヒントを得たりということを楽しんでいただければと思います。
今回の対話の要約
望みのものを、自分はすでに持っている!
オズの魔法使いや青い鳥のように、「自分が望むものはここにはない!」といって他を探して歩いた結果、実は自分はすでにそれを持っていたというお話が示すのは、ある角度からしか見ていなかったことを、別の角度から見てみると、同じものも違って見えるということ。
育った家に不満を持ち、外の世界に出て行くことによって、親族以外の人との関係性を築き、よその人に助けてもらいながら、いろいろな困難を乗り越えて、社会性が育っていくプロセスを、子どもに疑似体験させるというのもある。
オズの魔法使いの主人公ドロシーは、「脳を望むかかし」「心を望むブリキのきこり」「勇気を望むライオン」という友達に出会い、他者のいろんなコンプレックスや辛さに触れて共感していく。読者である子どもにも、他者の悩みを思いやる気持ちが生じたり、同じコンプレックスを持つ子どもなら、「自分だけが悩んでいるのではないんだ」と慰められるのでは。
子どもは怖いお話が好き
昔話や童話には、怖い話や残酷な話も多い。妖怪や幽霊が出てきたり、悪いことをした登場人物や動物が、過酷すぎる仕打ちに遭うという結末だったり。
かわいらしいピーターラビットのおはなしでも、ピーターたち兄弟のお父さんは、畑に入って美味しいにんじんを食べているところをマグレガーさんにつかまりパイにされている。
子どもの怖いもの見たさの欲求を満たしながら、悪いことをするとこんなふうに罰せられるという教訓を与えているが、虚構の世界のお話というオブラートに包むことによって、残酷な現実に直接触れて心的外傷を負うことを防いでいるのではないか。
本当は怖いグリム童話
NHKの「ダークサイドミステリー」という番組では、童話「ヘンゼルとグレーテル」の恐ろしい現実の可能性について取り上げていた。
貧しい両親が育児を放棄して、山に追いやられたヘンゼルとグレーテルの幼い兄弟は、同じように親族や社会から捨てられて、山奥で一人ひっそりと生き長らえていた老女と出会う。
飢えに苦しんだ子ども達は、老女に何をしたのか?
童話では、魔女が子ども達を食べようとしたので、子ども達が正当防衛で老女を殺したことになっているが、本当は、子ども達のほうが老女の持つ食料を奪おうとして、老女を殺害したのではないか?
さらには、老女の家にあった家財や備蓄品を子ども達が実家に持ち帰ると、現金な両親は喜んで子ども達を迎え入れ、老女を殺して奪ったもので家族は幸せに暮らしたという恐ろしい話なのでは。
魔女はハッグという種族の妖精という設定も付属した。子どもが、「ハッグが出た!」と吹聴した可能性も。人間じゃないから、やっつけてもいいという設定が後から付いたのかも。妖精や魔法が実在すると信じられていた時代だし。
捨てられた子ども達と捨てられた老女といった社会的弱者同士が、自らの生存を賭けて争い、生き延びたのは子ども達のほうだったという救いのないお話になってしまう。
昔話は、本当にあったことを伝えている
宮城県の昔話の語り部を訪ね歩いて、語られた膨大な昔話を記録してまとめ、「みやぎ民話の会」を設立した小野和子さんという方がいる。
NHKの「こころの時代~宗教・人生~」という番組が、この方を取り上げた「“ほんとう”を探して」(初回放送日: 2022年2月13日)の中で、泣く泣く猿と結婚させられた嫁の話をしていた。
人間の嫁をもらった猿は大喜びだったが、嫁はなんとかして猿から逃げようと、川に魚を捕りに行こうと猿を誘って舟から突き落とし、自分は岸に逃げてしまう。
強い流れに飲み込まれた猿は、「俺はお前と暮らして幸せだったから、今死んでも悔いはないが、お前を一人残していくことだけが心配だ」と叫びながら流されていく。
嫁は猿に向かって、「なあに言ってるんだ、この馬鹿ザルが!」と叫んで助けなかったため、猿は溺死してしまう。
「なんて酷い話だ」と思うが、こんな嫁の話が語り継がれてきたのは、実際に山奥に嫁がされた女性達のつらい思いが込められているのではという。
ある老女は、いくつも山を越えて嫁に来て、嫁ぎ先で苦労し、寂しくてつらくて何度も逃げて実家に帰ろうとしたが、途中で渡らなければならない川のところで、いつもハタと足が止まってしまったそうだ。
自分が実家に逃げ帰ったら、母親は困るだろう。弟や妹の縁談にも差し障りがあるかもしれない。そう思って、河原でひとしきり泣いた後は、すごすご嫁ぎ先に戻っていった。
こういった無数の実話が、昔話として語り継がれてきた例は多いのではという。
この番組の後半では、小野さんが東日本大震災の被災地を訪れて、被災者の方々の話を聞き、こういった話も、いつか昔話として語り継がれていくのではないかと結んでいる。
東日本大震災から11年が経ち、被災者が語った無数の実話が、すでに演劇や小説という形で、人々に伝えられている。そのうちのいくつかが、後世には、昔話として子ども達に語り継がれているかもしれない。
先祖は異類婚だという言い伝え
宮城県や岩手県の三陸沿岸に伝わる昔話では、ワシにさらわれた娘が遠い島に落とされてしまうが、たまたま現れた大きな鮭が、その娘を背中に乗せて川を遡り、娘の実家まで送り届けてくれた後、人間の姿になって娘に求婚したので、2人は結婚した。
その子孫は、今も、「鮭を食べてはならない」というタブーがある一族だというお話。
遠野市在住の方の近所には、実際にそういう一族がいて、鮭を食べないという決まりを守っている。同様の言い伝えで、鮭ではなく、ウナギを食べない家もある。
末っ子がハッピーエンドになるのは、古代の習俗のせい?
3人兄弟で一番下の子が、一番賢いとか、一番正直とか、尊重されるべき存在だという設定になっている民話が多い。
末っ子がいい目を見るのは、一番若くて長生きできる子に相続させるという古代の末子相続の名残かも。
子ども向けのお話の中にも、民俗学的な背景や地方ごとに異なる文化が反映されていることが結構あるので、意外な発見や自分たちとは異なる発想を得られることもある。
切なく泣ける名作
ちょっとしたボタンの掛け違いや誤解で、悲しい結末になってしまう「ごんぎつね」。
孤独や本当の友情を考えさせられる「ないたあかおに」。
昔話や神話は、今も生きている
昔話や神話は、今でもすごく生きているし、調べて読みたい分野。
映画「スターウォーズ」シリーズも、 ↑ を参考にして、神話から作られている。
昔話や神話をアレンジして作られたゲームやアニメ、映画は膨大にある。
長い口伝の歴史の中で、昔話や神話は、それぞれの時代にフィットするようにバージョンアップされてきたとも言える。
岩手の民話では、桃太郎は毒団子で鬼を退治している。
だんだん伝わり方が変わっていって、怖いお話も怖くないお話になったりする。
グリム童話も、もともとはすごく残酷な話が多かったのが、だんだんソフトに書き直されていった。
アンデルセンの創作童話も、きれいなオチになっている。
ディズニーの功績は大きい。子どもに夢を見せるというテーゼを、ドーンと打ち出したのは、ディズニーが初めてかも。グリム童話を、夢バージョンにしたのがディズニー。
文明や民族ごとにある神話は、それが人々に信じられていた時代が、圧倒的に長かったので、普遍的に人類の心をつかむものになっている。