宮城県の水道民営化問題

命の水を守るため、水道の情報公開を求めていきましょう!

宮城県全域の水源から蛇口まで排水溝から処理施設までまるごと1社が独占・・・? 後編


 

報告2 「みやぎ型管理運営方式の先にある1社独占への道」

 ー  水道コンセッション + 水道広域連携 は何をもたらすのか?

 小川静治さん(東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センター事務局長)

 

小川静治 命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ

ただいまご紹介いただきました小川と申します。

私自身の仕事というか役割は、東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センターの事務局の仕事をしています。

来月11日に震災から10年ということで、震災の様々な活動をしている諸団体を支援する仕事、これが私の仕事なんですが、なぜ、そういう団体の人間が水道の民営化の問題について取り組んでいるかというと、村井さんが、「この水道の民営化は、創造的復興の重要な目玉なのである」というふうに言ってることです。

われわれ県民センターは、「創造的復興」、これが本当の意味での復興を妨げる、非常に害毒にあふれたものだということで、取り組みをしていくという関係からしますと、この水道の民営化の問題も、創造的復興の一環だと言われると、取り組まざるを得ないということで、現在に至っているということです。これから20分か25分ぐらいのところで、説明をしていきたいと思います。

いくつか、(南部繫樹さんのお話と)被るところがありましたので、省略するところは省略して進めさせていただきたいと思います。

先ほど開会にあたりまして、佐久間先生のほうから、「現在の位置はどこなんだ? 」ということで、いま放映されているスライドをご覧いただいて説明されておりました。

              小川静治さん報告資料より

要は、事態は、優先交渉権者の選定が終わるという段階に来ている、と。つまりかなり煮詰まった状態に、現在来ているということですね。

ただ、最大の問題はですね、この煮詰まった状態なのに、その煮詰まり具合ということについて、議員も知らされていない、県民も知らされていない。

だから、ボク、一番かわいそうだなと思うのは、変な話ですけど議員の方ですよ。

わからないまま、自分たちでちゃんと説明されてませんから、されてない中で、有権者たる県民からは、「これどうなってるんですか? 」と言われた時に、「いやあ・・」っていうふうに答えるしかないわけです、今は。「これどうなってるんでしょう? 」っていうふうに質問されても、答えることがなかなか難しい。

しかし、県議会には、「運営権の設定をこういうふうにします」という特定の業者ですね、「この運営権者にしたいです」っていう議案だけが上程されるわけです。だから、「決めてください」ってだけなんですよ。この後、県議会に付託される内容っていうのは。

これはですね、ありていに言えば、「ひと馬鹿にするな」って話なんですよ。つまり、ろくすっぽ説明をしないで、決める時だけ、「決めてください。手を挙げてください」っていう、そういう仕掛けなんです。

なぜそれが、このPFIという、コンセッション事業ということを組み込むことによって、できるのか? 普通なら、そういうことできないですよね。

なんか、県が、一つの事業をやろうとする時に、議員の人たちに説明できないような、あるいは説明しないで、なんかやるなんてことは、中にはないわけではないのかもしれないですけど(笑)、基本的にはないということですから。

そういう意味でも非常に、「現在の進め方の問題が、極めておざなりだな」と言わざるを得ないと思います。

続いてですね、市民講座、今回第4回ということで、3回までやってきたわけですけども、私自身も、この市民連続講座の準備をしたり、あるいは、終わった後いろんなやり取りをすることによってですね、「こういう見方もあるのか」ということで、さまざま学ぶ機会になっておりました。

実は、今ご覧いただいているスライドは、(市民連続講座の)前回も、同じものを見ていただいたんですね。つまり、「今日のお話の基本的な出発点というのは、そもそも、水道民営化の出発点であり、この水道法の改正ということにありましたね」ということです。
2018年12月に成立して、2019年10月に施行された水道法、改正水道法と言われてますけれども、これは5つのことがポイントなんだというふうに言われています。

              小川静治さん報告資料より

その5つは左側のほうに書いてある。

1つは、関係者の責務の明確化で、たとえば、「都道府県はこういうことするんですよ」「水道事業者はこういうことするんですよ」ということを、改めて明確にした。

2番目は、赤字で書いてあります。広域連携を推進するんだ、と。この後、ちょっと、ご説明しますけれども、非常に重要なポイントなので赤字にしてあるということですね。

3番目は、適切な資産管理の推進。要するに、「さまざま水道事業で抱えている財産を適切な管理をしてください」。台帳の管理から始まって。まあ、今日の話のテーマではありません。

4番目は、官民連携の推進。これは、まさに水道民営化として、宮城県でやろうとしているみやぎ型管理運営方式イコールと考えてください。

5番目は、指定給水装置工事事業者制度の改善。これは、実際的には、今日のテーマと関係ありません。

現実的には、この内容は、前回に報告したことは、私自身も「こういうことなんだな」ということで、頭の中の整理はついていたんですが、赤字の部分、つまり、広域連携の推進と官民連携の推進というもののつながり方、「これはどういう関係があるのか? 」ということについて、十分頭の中で、実は整理されていなかったということが、前回の市民講座を終わった後、会場にいらっしゃってた参加者の方とやり取りする中で、私自身が「ん?」ということで、気づいたんです。「この2つのつながりが重要なんだ」っていうことがですね。

で、右側のほうにありますけども、広域連携と、いま言ったように官民連携、これが、水道法の改正の時にも、セットになっていたんだということです。このことについて、やはり、われわれは十分留意する必要があるし、そのことを分析する必要があると強く感じたということです。

水道事業の広域化というものは、そもそも、昔からある話なんですね。

              小川静治さん報告資料より

ここに楕円がありますけれども、従来の広域化ってのは、ちょうど下に、施設の一体化というふうに記載していますけれども、従来の広域化っていうのは、いわゆる、施設の一体化ということとイコールであった、と。

同様に、2004年に厚労省が「水道ビジョン」というのを作るんですが、その時にも広域化は、当然、話の中に位置づけられていて、その時には、管理・経営・施設の共同化というふうな問題が提起されている。しかし、なかなか進まなかったわけです。こういうふうに言っても、広域化というのは各地方自治体同士で進んでいなかった。

2013年に厚労省はまた、「新水道ビジョン」というのを出す。その時にはさらに、情報の共有から始まって、災害時の相互支援、あるいは研修の共同実施というふうなところまで踏み込んでいる。というふうに、だんだんだんだん、広域化の内容が、厚労省なりに位置付けを深めていったということですね。

そういう流れの中で、2018年、先ほど言いました5つのポイントからなる水道法の改正が行われたということです。この水道法の改正の中で、先ほど、関係者の責務の明確化ということをお話しましたが、その関係者の責務の中で、都道府県の役割が大きく変わったということなんです。

つまり、市町村の要請に基づく要請前置主義、要するに、「何か都道府県がやる時には、市町村からの申請、あるいは要請、これがなければ都道府県動けません」というふうなものから、都道府県自身がトップダウンで、「自分たち、こういうふうにやろうよ」ということを市町村に対して提起する方式、それによる広域化ということに、内容を転換したわけです。

だから、今まで進まなかったのは、要請前置主義によって広域化というものを構想していたけども、それを変えた。都道府県がリーダーシップを取ってもっとやりなさい」というふうに変わったということです。

そういう意味で、 今回のみやぎ型管理運営方式とつながってくる。段々つながってくることが、わかってくると思います。

改正水道法に基づく広域連携の取り組みの推進という点では、矢印が大きく3つ入れてあります。

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              小川静治さん報告資料より

左上のほうの矢印は都道府県の責務。先ほど言った点です。つまり都道府県は、もっと言えば、宮城県は、水道事業の広域的な連携を推進するように努める、と。もっと言いますと、「宮城県、旗振りなさい」ということを、改正水道法ではっきりさせた。

左側の2番目の矢印、これは水道基盤強化計画というものを作るということ。特にこの中で、水道広域化推進プランというものを作るということ。これは、2022年、ですから来年です。来年度か、失礼、まで作りなさいということを、厚労省は言っている。

右側のほうの矢印、もう一つ赤いのがありますけれど、「広域連携等推進協議会というのをちゃんと作って、それでやりなさい」ということが、あわせて、この枠組みとして設定されたということですね。現在の動きは、この中身によって進められているということです。

で、「宮城県はどうなるか? どうなってるのか?」ってことで、ちょっと細くて見づらいと思うんですけども、ここで見てもらえばいいのは、左側の赤い囲みの部分です。

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              小川静治さん報告資料より

上から、水道事業の広域連携検討会という会が、設定される。真ん中が、水道広域化推進プラン、水道基盤強化計画作りというのが、設定されます。一番下が、上工下水一体官民連携運営というのが設定されています。

で、ひとことで言うと、この広域化の問題と上工下一体運営というのは、ぐしゃっと、セットになってるってことが、ここでわかるわけです。「つながってますよ」ってことですね。だから、矢印でそれぞれつながってます。

そういう意味で言えば、今回の広域連携というものと、水道の民営化というのは、ある意味、メダルの裏表という関係になる。だから、いわゆるみやぎ型管理運営方式の問題を議論する時に、広域連携の問題を合わせて議論していかないと、なかなか核心に迫ることはできないのかもしれないというふうに思います。

で、次が、この図は比較的見やすいですが、直近のところですね。

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              小川静治さん報告資料より

宮城県が、「広域連携の推進状況については、こういう状況になってます。令和3年 から令和5年までこういう形で進めていきます」ということで、計画をしている内容です。ここも当然のことながら、一番下に上工下水一体官民連携運営ということでセットされています。全部それがつながったものとしてなっています。

で、そのつながったものが、どういうような内容で、このあと、われわれに様々な問題が発生してくるのか? ということは、ちょっと後で触れたいと思いますけれど、ここでは、いま言った3つのというか、大きく言うと広域化の問題と、それからみやぎ型管理運営方式の問題とセットであって、そのセットも、みやぎ型管理運営方式は、令和4年度事業開始ですから。

令和4年度事業開始ということは、みやぎ型管理運営方式が具体的に動き出したというのを受けて、広域化のその後のステップに進んでいくということが、絵的によくわかるということです。

つまり、一番下の令和4年度みやぎ型管理運営方式が事業開始する時に、その上の所を見ていただくと、令和5年から水道事業広域連携検討会では、法定協議会を設立しましょう。さらに上の水道基盤強化計画では、基盤強化計画というものを策定しましょう。

だから、ベースになるのは、下なんですよね。つまり、みやぎ型管理運営方式が導入されたっていうことを前提にして、その上の問題が乗っけられていくというふうに考えていただいて結構だと思います。

じゃあ、みやぎ型事業の広域連携のシミュレーションというのは、どういうものなのかということで、これは、議員の方に情報を取っていただきました。

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              小川静治さん報告資料より

日水コンというコンサルタント会社なんですけども、そこが、宮城県に対して、「こういう形で、広域連携進めたらいいですよ」ってことで、請負金額はたしか3,800万。その後、令和2年度が2,900万ですから、6,700万のお金をかけて、「広域連携こうやって進めたらいいんではないか」っていうことを、日水コンが提案した内容です。

で、3つに分かれてまして、いまご覧いただいてるのは地域単位。

だからたとえば、一つの例、塩竃市周辺の2市3町。これを管理一体化したら19億何某、施設一体化したら92億何某、経営全体を統合したら135億何某ということで、「メリットがあります。こういう効果が発生します」というふうにまとめているわけです。地域単位で見た時にはこうなる。

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              小川静治さん報告資料より

それを圏域単位、たとえばこの図のとおり、仙南地域であれば、川崎町から岩沼市から下の部分ですね、市町村、これが、先に見たように、「一体化だとか経営統合すると、こういう規模になります」というふうにシミュレーションしてます。

 

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              小川静治さん報告資料より

次が、圏域単位、つまり大崎圏、仙南圏というふうに大きく括って、そこをさらに垂直統合、圏域を全部一緒にしたうえで、「その上にある宮城県の用水供給事業と、実際に各自治体の市町村が行う水道事業、これをくっつけちゃいましょう、垂直でやっちゃいましょう」、だから、ダムの取水から蛇口まで、全部ワンセットで事業をまとめてしまうやり方をしたらどうなりますか? っていうことで、当然ながら、金額大きいわけです。

垂直統合すると、194億円、たとえば仙南であればですよ。単純な経営統合であれば、116億円だけども、それを、「垂直統合、県の水道とくっつけることによって、もっとメリットが出ます」というふうに日水コンは提案してる。そういうことは、県も、全部公表しています。

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              小川静治さん報告資料より

現在、各地区での取り組みということで、これも直近の宮城県の、えーとー、環境なんとか部のところで調べた内容ですけれども、塩釜地区と黒川地区で、それぞれ勉強会が現在行われているということで、様々なシミュレーションというようなことを現在進めているようです。

ただちょっと注意しなきゃいけないのは、広域連携を私はダメだと言っているわけではないんです。連携は必要なんです。

というのは、たとえば、様々な事業でつながることがあり得て、直近1月21日ですか、22日の新聞に発表されたと思うんですが、仙台市の国見浄水場塩釜市浄水場の共同化をやるという記事が報告されました。

「お互い古くなったので、それぞれ一緒にしちゃいましょう。2つバラバラに持ってるのは無駄だから、一緒にしちゃいましょう」っていうような取り組みが、すでに、発表されています。実際上、2~3年後に動き出すことになりますけども、こういうこと自体は、大いにあり得ることなんです。

そういう意味では、この塩釜地区だとか黒川地区で、現在みなさんで研究していることは、そのことはそのこととして尊重されるべきだと思います。

ただ、先ほど来お話している株式会社日水コンは、宮城県の水道事業のあり方についてこういうふうに言っています。

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              小川静治さん報告資料より

 「既存の用水供給事業」、これは今、宮城県が用水供給事業としてやっているものですね。それと、「みやぎ型管理運営方式を活用しながら」。

これは、活用しながらというのは、コンセッション方式を導入して、「市町村水道事業体同士の水平連携を進めつつ」、要するに、近隣でいろいろ一緒に、広域で事業をやるようなことを、連携をすすめさせて、「将来的には用水供給事業との垂直連携も視野に入れた『発展的広域連携』の実現を目指していくことが現実的である」。

つまり、先ほど3つのパターンで紹介した垂直連携、宮城県の用水供給事業とね。これの実現を目指せって言ってるんです。

だから、「宮城県の用水供給事業は、市町村の水道用水供給事業と一緒にしちゃいなさい。それが一番効果が出ます。広域連携っていうのは、そういうことを目指してやりなさい」というふうに日水コンは言ってるんですね。

このことはホームページにも公表されていますから、こう見ると、「宮城県のいわゆるみやぎ型管理運営方式の狙いどころというのは、ここら辺なんだな」っていうことが、普通判断がつきます。

で、先ほど南部さんのほうからご説明がありました要求水準書、今度の一番新しい要求水準書に、なんて書いてあるかってことなんですね。生の資料そのままです。

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              小川静治さん報告資料より

先ほど、ちょっとご紹介あった任意事業。任意事業というのは、水道の様々な宮城県が行っている用水供給事業の中で、直接的でない、たとえば、「同じ敷地の中でこんな事業やりたい」とか「任意事業としてやりたい」。それは、県が「オッケーよ」って言えばできる、そういう事業です。それは赤線の部分です。

「県内市町村および一部事務組合が事業主体である水道事業、下水道事業並びに水道事業及び下水道事業に類似事業にかかわる業務を受託することができる。」

難しく書いてますが、早い話が、市町村で「業務委託お願いします」と言われた時に、それを運営権者は受けて、「受託することができますよ」っていうふうに言ってるわけです。まあ、県の承認は当然ですけれども。

「市町村が、自ら実施する水道事業及び下水道事業に書かわる業務の受託について運営権者に協議を求めた場合、運営権者は協議に応じること。」

ご丁寧に、そこまで言うわけです。つまり、「市町村がなんか言ってきたら、ちゃんと答えなさいよ」というふうに言ってるわけです、運営権者に。だから、「断っちゃダメよ」って言ってるわけです。

ここまでくると、先ほどの日水コンの提言とこういう要求水準書の内容を見ると、宮城県が考えている将来における水道事業、末恐ろしくなるわけです。

「何を考えてるのか? 」ということになれば、いま最初に言ったように、「トータルに用水事業と市町村の水道事業を、全部一体化してしまう」というふうなことを狙っていると思わざるを得ない。

それは、すでに今までも、いろんな形で出てきていて、これは日本政策投資銀行がまとめたものなんですけれども、

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              小川静治さん報告資料より

コアになるA市、たとえば、たとえばですよ、そうではないけれど、宮城県で言えば、仙台市が広域的な官民水道事業体ということで、民間と最初に手をつないだ。そうしたら、だんだん、B町、C村、D市、E町というふうに受けるところが、だんだんだんだん増えてくる、増やしていくというふうに拡大することによって、実質的に広域化しようというのが、政策投資銀行が、「海外の例から見た時に、こういうパターンって大いにありですね」っていうふうに、関係業者に提案したものなんです。

実際上、今の宮城県の状態というのは、ここに書いてある、まあ内容は若干変わりますけど、本質は何も変わらないということで、ご理解いただけるのではないかと思います。

時間がまいりましたので、この後、パパっとまとめちゃいますが、2枚のスライドは、こういう公公連携というイメージの取り組みもあるんだということ。

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              小川静治さん報告資料より

 

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              小川静治さん報告資料より

それから、岩手の中部水道企業団という取り組み。詳しくは、今日ちょっとご説明できないんですけれども、いわゆる連携のあり方として、いま宮城県が進めようとしているものとは違う在り方があるんだということは、ちょっと紹介だけしておきます。

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              小川静治さん報告資料より

結論ですが、みやぎ型管理運営方式いわゆる水道民営化は、広域連携とセットだ、と。

2番目に、民営化で運営権を手にした企業、これは、積極的に各自治体の水道事業等の受託を進めるだろう。

宮城県の上工下水の事業は、最初から、「197億削減しろ」って言われてますから。 これは、運営権者にとってはつらいわけです。そうすると逆に、各市町村の水道事業を受託するということになれば、その低い利益率をカバーできるということになります。積極的に営業をかけるということになると思います。

現在、検討されている広域連携は、運営権を手にした企業にとって、競争相手のいない格好の交渉の受け皿づくりと言えるだろうと思います。間違いなくそうだと思います。

そもそも、「197億円の削減、絶対できます」って宮城県は言うんですけど、私が10年後生きてるかどうかなんて、誰も証明できないわけです。それと同じで、20年後、197億削減できるかどうかなんて証明は、そんなことは不可能なんですよ。

それを「絶対できる」と言うのは、「約束させるからだ」って。約束させるということは、手縛るということですから、手足縛ることですから、他の手を考えるしかないわけです。そうなると、こういうふうになる。

先ほど言った、競争相手のいない格好の交渉の受け皿づくりにつながって、「各自治体に一所懸命営業かけるということになるでしょう」ということです。

一方、小規模水道事業者の側からすれば、運営権を手にした企業のサポート、これ受けられますから、「全部やりますから!」と営業かけるわけですね。そうすると、事業を委託できるので、手間とコストの削減になると錯覚するわけです、各自治体は。

実質的な民営化で、事業が委託事業者の言いなりになるということは、火を見るよりも明らかなのに、そういうふうに錯覚してしまう。まあ、それだけ追い詰められているってこともあるんですね、自治体は。

まあ、たとえば、ここに絵を持ってきましたが(と広報誌のようなものを掲げ)、宮城県の村田町という町は、「広域連携に期待してます」と言ってるわけです。「自分たちだけでは民間に委託できなかったので、期待してます」というふうに言っています。

そういう意味で言えば、先ほど念のために言いましたが、広域連携自体が悪いわけではないです。最悪なのは、圏域単位の垂直連携です。

宮城県が主導して、用水供給事業と市町村の水道事業を ドッキングしてしまうということは、宮城県の水道事業は、まるごと1社独占で運営されることになってしまうわけです。

運営権者は1社ですから。運営権者が、3社とか4社あるわけじゃないんです。1社しかない。1社がまるごと、宮城県の上工下水運営を受託したところが、同じように、市町村の水道事業を様々な形で受託しようというふうな動きになるというのが、はっきりしていることです。それ以外の運営の方法というのが、現実的にはないからです。

そういう意味では、きわめてタチの悪い構想になってしまうということです。

われわれは、そういう点で、この3月の運営権者の決定、6月の議会に向けて、どういう(運動の)組み立てをしていくのか? やはり最大は、われわれが思っている問題点をどれだけ多くの人に広げられるか? ということに尽きるかと思いますけれども。

そういう意味で、今日のこのまとめが、間違いなというふうに私は思いますけれども、みなさんで大いに議論していただきながら、深めていただければなっていうふうに思います。私のほうからは以上です。

 

会場の参加者からの報告

 

多賀城市議会議員

多賀城市議会です。

お二人の報告を聞いて、ホントにもう吃驚した。許せない。そんな思いもしています。日本の社会は契約社会であるにもかかわらず、契約を途中で変えるなどと言う。それを県民にも知らせないなどと言う。「ホントにけしからん」という思いで、いま話を聞きました。

小川さんの話にもありましたが、広域連携というところで、資料20ページの県内各地域での取り組み状況というのがあります。

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              小川静治さん報告資料より

多賀城は塩釜地区に入るわけですが、多賀城の議会全員協議会で、県からの説明がありました。去年一昨年ですね。去年の1月だったかな。1月か(に)説明がありました。

全員協議会では、30分程度の中で、「みやぎ方式というのは、とてもいいことなんだ。イケイケドンドン」という話で、議員のお互いのやり取りというのは、ほんの数分程度で、とにかく、「これからやります」というそういう話でございました。

今日ここで聞いたような話は、全くないわけでありまして、「ホントにけしからん」というふうに思っております。

私たちは、きょう小川さんの話にもありましたが、岩手中部水道企業団を視察してきました。岩手中部水道企業団は、「みやぎ方式のようなことは、絶対しません」という話をしています。

「みやぎ方式をやったら、プロパーがいなくなる」と、「20年も行政が水道に関わらなかったら、水に強い職員はいなくなります」と、「それでホントに、市民県民にとっていいものになるでしょうか? 私たちはそうしません」というふうに、はっきり言っていました。

筆者注:プロパーとは、企業が直接採用した社員や、新卒で入社した社員、生え抜きの社員などのことです。

岩手企業団は、「広域行政の中で、様々な施設の統廃合をする中でプロパーを作って、そうして自分たちでやっている」と。こういうことでもありました。

「そういう意味では宮城県を教訓にしています」。教訓というのは、いい意味での教訓ではなくて、悪い意味での教訓。「宮城のようにはやらないよ。私たちは」。そういうことをはっきり言っていました。

そういう意味では、「岩手中部水道企業団の視察を、関係者の方が、ぜひ一度は話を聞いてみたらいいな」というふうになるところでございます。これから多賀城の議会も、この問題を取り上げていきたいなと思っています。以上です。

かんま進県議会議員

県議会の無所属の会のかんま進でございます。

補足があれば、福島さんにお話をしていただきたいと思いますけど、早ければ6月にということで、それぞれ各会派が、自民党公明党以外は、それぞれ今までも、問題提起というか質疑してきたのでありますが、それをやっぱり連携してね、やっぱり追及していかないといけないので、12月に、共産党からは福島さん、県民の声からはゆささん、それと社民党からは岸田さん、それで、私どもの無所属の会はたった2人でありますが、事務局で登米の渡辺忠悦さんがなっていただいて、私も世話人ということで、そういったことで、第1回のコンセッションの勉強会を立ち上げてですね、1月に南部さんを招いて勉強会しました。

また、来週は、県議会の初日にですね、きょう講演いただいた小川さんにも来ていただいて勉強会をやってですね、やはり、バラバラにやっていくよりも連携をしてですね、攻めていかないといけないということで、また、先ほど申し上げましたみなさんの話にありましたように、県議会だけ、市議会だけ、各市町村議会だけでなくてですね、県民との連携をしていかなくては、なかなか厳しいだろうというふうに思ってますので、 そういった動きをしていることをご報告させていただきたいと思います。

何か、福島さん、あれば。そういったことで、みなさん、お力添えをよろしくお願い いたします。

多々良哲さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ 事務局)
そういったわけで、県議会の中でも、超党派のですね、党派を超えて、コンセッション勉強会が設立して行われているということであります。ぜひ、連携していきたいと思います。
それではですね、ちょっと今後のスケジュールだけ確認させていただいて、最後、閉会の挨拶にいきたいと思うんですけれども、すでに講演者の方々のお話の中にも出てきておりましたけれども、この後の予定としては、大きな節目は、1つ目は、3月の中旬ごろというふうにアナウンスされているのですが、優先交渉権者の発表、公表がされるだろうというふうに思われます。そうですね(と会場の県議さんに確認)。

つまりは、話の中で、3社、3社、3つのグループと出てきてますね。今のところ、応募してるのが、3つの企業グループが、みやぎ型に応募してるわけです。それが1つに絞られる、「この1社です」ということが発表されるのが、3月の中旬です。

もう、あと1カ月もない。(会場の福島議員から「下旬になるかも」との声)あ、下旬になるかもなんですか? あ、そうなんですか? だそうです。ということですから、1カ月ぐらいで企業名が発表されると、事実上、もう、「そこと契約しますよ」ということが発表されるのと等しいんですね。
で、その後、6月の県議会の定例会で、その運営権設定という議案が出される。つまりは、「この1社に絞ったこの民間企業と契約しますよ」ということを、議会が承認する、それが議会に諮らるということで、あと数か月と言いますか、6月までに、おそらくですね、そのみやぎ型の手続きが終了していってしまうという状況にあるわけです。

これはですね、本当に、私たちは大いに注目して、この数カ月の間に、 運動の力を集中して、声を上げていかなければならないと思っています。

で、私たちは、方針の枠としては、その3月の優先交渉権者の発表がされた時点で、 すぐにですね、記者会見、記者レクを行って、市民の側から。

おそらくですね、間違いなく、その企業グループの中には、外資系、ま、ヴェオリアスエズかわかりませんが、それが入ってくるのは、ほぼ間違いないと思われますから。

事実上、外資が押し寄せてくることは間違いないが、それがどこまでわかりやすい形で企業名として出てくるかっていうね、ま、隠してくる可能性もありますから、ちょっとわからないところもあるんですけれども、そのことも含めて、しっかり批判をする記者会見を行いたいというふうに思っています。

そして、その後、これはみなさん、メモっておいてほしいんですけども、手帳に書いてほしいんですけども、4月3日土曜日午後に、この同じ仙台弁護士会館の4階会議室で、水ジャーナリストの橋本淳司さんの講演会を行うこととしております。

道コンセッション、水道民営化に批判的な立場で、いろいろ多角的な発言、提言をしておられる橋本淳司さんの講演を行って、優先交渉権者、つまり事実上そこと契約するという名前が発表された時点で、その段階で、私たちはどうするんだ? ということをね、もう1回集まってみんなで議論する場を、4月3日に持ちたいと思っていますから、これをみなさんの手帳に書いておいてください。

というスケジュールを確認いたしまして、最後、締めは、当ネットワークの共同代表のお一人であります中嶋信さんから、閉会の挨拶をいただきたいと思います。よろしく お願いします。

 

閉会の挨拶 中嶋信 共同代表(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)

 

中嶋信 命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ

はい、中嶋です。

どうもお付き合いいただきまして、ありがとうございます。なんか、いろいろと厳しい状況の中で、集会開くのは大変つらいんですけども、たくさんご参加いただきまして、まずはお礼申し上げたいと思いますね。

しかも、大変面倒な問題でありますけども、お二人の方にお願いして、解明していただいたんですが、もっとわかんなくなったかもしれませんが(会場から笑い)、ただ問題の大きな構図はわかったなということで、これから急いでいろんな勉強会を継続していきたいなというふうに思ってます。

やはり時間的に大変難しい状況の中で、巨大な問題を整理するわけですから、なかなか難しかったんで、この後も補講を行いたいと考えてますので、ぜひお付き合いいただきたいですね。

法律の問題というのは、ちょっと難しいんですけども、いまのお二人のお話で、むしろ行政の乱暴なあり方が明らかになったなという気がしますし、これを、質さなきゃいけないってことも見えてきたなというふうに思いますね。

私は、いちおう地方自治に関わって勉強しておりましたので、2点だけ申し上げたいと思いますが、1つは、今回のこの改訂の作業というのは、地方自治法に違反しています。

地方自治法の第二条にですね、地方自治体はこんなことしなくちゃいけない、ま、結論からいきますと、「住民の福祉の増進のために頑張んなさい」と書いてあるんですね。その中で、たとえば第二条の14項だったと思うんですけど、「住民の福祉の増進は当然なんだけども、安くやりなさい」と書いてあるんです。

基本自治法 第二条

elaws.e-gov.go.jp

ところが今回の手続きは、説明にあったように、「持ってけ泥棒」って感じなんですね。言いなりになってる。これは、地方自治体の基本的な責務に反します。だから質さなければいけないと私は思うんです。

もう1つ。公共サービスというのはどうあるべきかってことについては、公共サービス基本法という法律があります。比較的新しい法律で、2009年にできました。

まだ、理念法であってですね、具体化するためにどうするかってところが、まだできてないんですけども、その中に、大事な項目がありまして、公共サービス基本法の第三条ってのを、ぜひインターネットで検索していただきたいんですけども、「国民の意見をきちんと反映してやんなきゃいけない」と書いてあります。

公共サービス基本法

elaws.e-gov.go.jp

主権者である国民に対してはですね、 「ちゃんと情報を提供して、もちろん意見も踏まえて、そして、適正なものを作んなきゃいけない」というふうに書いてあるんです。

ということは、少なくともこの2つの法律に違反しておりますので、これは質さなきゃいけない。じゃあ誰が質すのか? もちろん、議会で頑張っていただきたいと思うんですけども、それを支える住民の運動を 大きくしていくしかないだろうと思いますね。

今回はぎゅうぎゅう詰めで、大変つらい思いをいたしましたけれども、全体問題が解明されましたから、この後、引き続いてですね、細かい部品の勉強会を、続いて提案していきたいと思いますので、是非ともよろしくお付き合いいただきたいと思います。

講師のお二人には、本当にありがとうございました。