宮城県の水道民営化問題

命の水を守るため、水道の情報公開を求めていきましょう!

江成先生のなぜ? なに? 下水道講座    下水道の不思議なヒミツがいっぱい!     後編 みやぎ型管理運営方式に関する公開質問状の報告!

みやぎ型管理運営方式に関する公開質問状の報告             東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センター 事務局長 小川静治さん

 

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              公開質問状プレゼン資料より

 

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小川と申します。こちらのスライドのほうにあります東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センターの事務局長をやっております。

東日本大震災の復興センターの人間がなぜ水道の民営化の問題をやっているのかというと、そもそも水道の民営化というのは、2011年の3月に震災があって、5月に前原誠司という元民主党財務大臣と菅官房長官側用人みたいな福田隆之という人が村井知事と会って、仙台空港の民営化と水道の民営化、この2つをやれと提案したんですね。その時に、村井さんはやろうということで仙台空港の民営化に道筋をつけた。そもそも水道の民営化も含めて提案が出ていた。

その後、仙台空港の民営化の後に、水道の民営化ということを言い出したんですね。 それも、創造的復興である、と。創造的復興として、水道民営化を立てられた以上、 復興支援県民センターの立場から言えば、水道の民営化にも向かわなければいけないということになっちゃって、結局、われわれ県民センターとしても水道民営化に取り組んでいると、そんな経緯があります。

 

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             公開質問状プレゼン資料より

 

前振りはそのくらいにして、6月10日に提出しました公開質問状の件です。

3月13日に河北新報が、県議会が終わった後、コラムみたいなもので県議会を振り返ってという記事を掲載するんですね。2月の県議会では、水道の民営化議論というのは、ほとんど質疑がなかった。11月議会で条例改正が通ったということを受けて、そのような状態になったということなんですが、河北新報の記事によると、昨年11月定例会で 可決され、「ヤマを越えた」とする雰囲気が議会の中に広がった、と。

つまり議員の人たちは、まあこれは終わったことで、そういう認識ということですね。「過去の話題」だというふうに考えた人が多かったようだということが一点。

それから、「制度が難解すぎて、全体的に苦手意識を持つ議員が多い」という保守系の議員の人の生の声だということで、困っちゃうわけですよね。苦手意識を持って議員がこの問題に当たられた日にはたまったもんじゃないんですけども、しかし、そのようなことを言っている。

三番目は、前の月に選挙で県議が新しくなって、新人議員は当選直後に議決を迫られ「理解不足のまま賛成せざるを得なかった」と言われると、県民としてはふざけんなって話になるんですけども、結果的にはそういうことだったということを新聞記事で紹介されています。

この新聞記事の中では結論で、「議会の監視機能が機能していない」と指摘している。11月の条例改正後、これから情報の開示方法が限られてくるんですね。県民に対して開示される情報の数が、実に少なくなってくる。現実にいま少ないという状況があります。そういう点で言うと、議会が頑張らずして、誰が頑張るのかということを河北新報は言っている。私はその通りと思う。この記事を書いたのは、実を言うと、先ほど佐久間先生がお話になっていましたけれど、大変に(命の水を守る市民)ネットワークに共感の立場で記事を書いていただいた女性記者なんですが、いま東京なんですけど。

議会の監視能力・監視機能が本当に高まるのか? という点においては全く不安です。しかし、ご承知のとおり、新型コロナウイルスの感染拡大という問題が起きたんですね。

(命の水を守る市民)ネットワークは、櫻井企業局管理者に対して、去年の11月に「年明けても説明会ちゃんとやるんですよね」っていうふうに、やり取りの中で話をした。 櫻井さんは、「やります!」と言うんですね。サービス精神旺盛な方のようで、「どんな方法がいいでしょうかね? ご提案は?」ということまで合わせて言っていました。

ところが、新型コロナウイルスがこのような状態になりましたので、説明する機会がなくなったわけです。できないですから。一切やっていません。

もう一方で、市民の側は「もう民営化されるんでしょ」というふうな受け止めです。 議会も低調で、説明会も開くこともない。話題がそもそもなくなってしまったわけです。

その一方で、県政だよりで水道民営化の問題について特集がされました。今日お手元にその時の資料がございます。ご覧になった方も多いと思います。

 

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          公開質問状プレゼン資料より

 

miyagi-suidou.hatenablog.com

 

これらの状況を見た時に、水道民営化問題は何も終わっていないわけです。何もわからないまま、民営化することが可能になるような条例改正が行われた。じゃあ、どのような内容での民営化なのかということについては、まだ全く明らかになっていないわけですね。そういう意味では、これからがまさに本番なんだということが一点目です。

もう一つは、そうは思いたくはありませんけれども、コロナに便乗した県の説明責任の放棄、要はこれを機会として、コロナをある意味で奇禍として、あるいは便乗してということを、そうとは思いたくないですけれども、説明責任を放棄するということは許されないというふうに思います。

そういう意味で、もう一度、水道民営化問題の県民議論を深めるということで、公開質問状を提出することによって、問題をもう一度クローズアップしようということがねらいです。

 

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             公開質問状プレゼン資料より

公開質問状の内容の項目を整理すると、こういうことになります。

この内容の7番目までは、県政だよりの特集の中身とピタリと同じにしてあります。 ですから全体的に言えば、県政だよりの内容と比較対象しながら議論ができるようにと工夫したつもりです。

 

公開質問状の全文

 

2020年6月10日(水)

 

宮城県知事 村井嘉浩 様

 

命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ

共同代表  佐久間敬子

中嶋  信

 

宮城県上工下水一体官民連携運営事業(みやぎ型管理運営方式)に関する

公開質問状

 

私たち「命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ」は、現在宮城県が進めている「宮城県上工下水一体官民連携運営事業(みやぎ型管理運営方式)」の導入に反対し、よりよい水道事業を創っていくことに取り組んでいる団体です。

 

宮城県の水道事業の民営化に道をひらく条例改正案は昨年12月に成立しました。私たちはその内容、手続きともに問題があると考え、多数の賛同団体の支持を得て、県議会に前記条例改正案の継続審議を求める請願を行いましたが、不採択となり、成立をみたものです。しかし、条例改正前も現在も、私たちの疑問や不安は何ら解消されていません。私たちはこれからも県に説明を求め、その内容を広く県民にお知らせし、人権としての命の水を守り、公衆衛生上重要な水道3事業が真に県民の財産として生かされるよう行動していきます。

 

水道などのライフライン、交通や通信、警察や消防など、公共サービス事業は多彩で、しかも一層広がりを見せています。いずれも安心社会を構成する装置です。国や地方自治体による事業と誤解される場合もありますが、担い手は公共団体だけでなく、市民や営利企業なども含まれ、これらの協働が重要な意味を持ちます。そのために、公共サービス基本法(2009年公布)は基本理念を明らかにすると共に、「公共サービスに関する必要な情報及び学習の機会が国民に提供されるとともに、国民の意見が公共サービスの実施等に反映されること」(第3条)を定めています。宮城県は水道事業の構造変更に着手していますが、この事業の本旨を踏まえ、住民の意見を積極的に反映させる努力を図るべきと考えます。

また、今般の新型コロナ・パンデミックはグローバル経済の脆弱性を露わにし、その中で活動する企業の存続の危うさをも浮き彫りにしました。同時に私たちに「公衆衛生」の大切さを再認識させました。「コロナ大恐慌」の襲来さえ叫ばれる中で、県民に欠かせない公衆衛生の基軸である水道事業を本当にグローバル企業に委ねてしまってよいのか? ここで一旦立ち止まって考えるべきです。コロナ後の社会を見据え、ローカルな公営事業よりグローバルな民営のほうが持続可能だという前提そのものを再検討する必要があることを指摘しておきたいと考えます。

 

「みやぎ型管理運営方式」に参加を希望する企業の応募が本年5月1日に締め切られ、応募した3事業体が第一次資格審査を通過し、6月上旬に第二次審査が開始されるとのことです。これまで公表された県のスケジュールによれば、第二次審査では、応募企業から実現可能性を聞き取る「競争的対話」を実施し、来年1月中旬までに具体的な事業計画が固められると承知しております。

そうしたなかで、本年5・6月号の「みやぎ県政だより」では、「ここが知りたい!『みやぎ型』」として特集が組まれています(以下、「ここが知りたい!『みやぎ型』」は、「県政だより」と略)が、その内容はあまりに漠然としていて、具体的な理解を得るには程遠いものと考えます。そのような視点から、みやぎ県政だよりの内容を中心に、私たちが考える問題点や疑問点を公開の上、質問し、県の回答内容を広く県民に紹介しながら、県民議論を深めることを目的として本状を提出するものです。

 

恐れいりますが、本状の質問内容に対する回答は、下記あてに7月13日(月)までお願い申し上げます。

 

〒980-0803              

仙台市青葉区国分町1丁目8-10 大和ビル2階

佐久間法律事務所 気付

電話 022-267-2288

FAX 022-225-5704

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

質問1 20年契約による人材育成・技術継承のメリットについて  

「県政だよりQ1」では、みやぎ型管理運営方式では契約期間が20年なので「民間事業者の雇用が安定」し、「人材育成・技術継承が容易」とメリットが示されています。

県が水道事業者として最終責任を持つ体制を維持するためには、水道事業全般に精通した県職員の育成が必須です。しかし、今回の「みやぎ型」導入により、水道事業に精通した県職員人材が育成されず、最終責任を担える能力を喪失し、結果的に運営権者に事業を「丸投げ」するような運営になってしまうことを強く懸念します。

 

  • 今後の水道事業専門県職員の長期的育成方針を示してください。
  • 「要求水準書」等において運営権者が社員を雇用する場合、

1)「安定的雇用を担保する要件」をどのように求めているか

2)社員の「人材育成・技術継承」のための教育制度導入をどのように求めているか

を示してください。

 

【質問の内容説明】

 「県政だよりQ1」では、(運営権者に水道事業運営を任せても)「最終責任を持つ水道事業者は県のままで変わり」ないことが強調されています。

私たちが強く懸念していることは、20年間もの長期契約を交わすことによって、県が最終責任を持つと言っても、それは“形として”であり、“実態として”責任を持ちきれない状態になってしまうのではないか?ということです。

いままで民間委託していた浄水場などの運転管理の他に、「みやぎ型」導入に伴い、これまで個別に契約していた(県が主体となってやってきた)「機械・電気設備の改築・修繕工事、薬品などの調達」も運営権者にやってもらうというのですから、県に水道事業の専門家人材は育成されず、どんどん減少していくことになります。そうしなければ、運営権者と県とで人件費が二重になり、コスト削減にはなりません。水道事業という公共サービスを民間企業である運営権者任せにしている間に、県は水道事業運営や技術を継承する人材育成の場、つまり「OJT(On-the-Job Training)」の場を喪失してしまうのです。

専門家人材を育成できず人数も減少することにより、運営権者が適切な水道事業運営をしているかを県はモニタリングできなくなります。運営権者には運営ノウハウが蓄積されていきますが、県には蓄積されていきませんから、県は運営権者に問題点を指摘できなくなっていくことが容易に想像できます。また、運営権者が開示する経営情報の詳細を理解できる人材は現場でキャリアパスを経て育成されますが、それもできなくなります。その結果、運営権者の投資判断に対しても適切かどうかを判断する能力を県は失うことになるでしょう。

 

質問2 県が期待するコスト削減内容に、民間事業者はどのように回答したのか?

 「県政だよりQ2」で、「みやぎ型」導入により

1)IoTやAIなどの最新技術を活用した運転管理の効率化による運転コストの削減 

2)同種一括契約による機械・電気設備の更新費用の削減 

3)一括・長期契約による薬品や資材の調達コストの削減

を期待すると記載されています。

 

  • マーケットサウンディングにおいて、この3つのカテゴリィごとに、民間事業者がどのような意見を述べていたのかを、件数も含め示してください。

 

【質問の内容説明】

県は2017年に実施した第二回目のマーケットサウンディングで、民間事業者35社に「対象事業における合理化の余地」等4項目についてヒアリングを行い、その結果が「二次マーケットサウンディング概要」としてまとめられています。同概要から、水道用水供給事業を例に民間事業者は合理化の余地をどう考えているのかを当ネットワークで下の表にまとめました。

 

表1【第二次マーケットサウンディング(水道用水供給事業)でのコスト削減コメント】

県が設定した「経費削減期待率」

各企業のコメント例

 

費目

削減率

人件費(県分)

10%

「半分くらいは削減可能」

 

動力費

10%

 

削減率を回答した企業なし

修繕費

20%

薬品費

10%

「5%いけばいい方」

 

施設管理委託費

30%

人件費は「10~20%」、「20~30%」、「50%削減可能」とばらつく。

維持管理については「5~10%」、「8%程度」、「10~20%削減可能」とばらつく。

 

テレメーター費

10%

 

削減率を回答した企業なし

理経

30%

建設改良費

20%

(注:「削減率」は県がマーケットサウンディングによる期待削減率として設定したもの。(「『みやぎ型管理運営方式』導入による事業費削減目標について」29p)  表作成 「命の水」事務局

県は8費目について削減率を設定していますが、「質問2-1)~3)」に該当すると考えられる薬品費、施設管理委託費についてのコメントはありましたが、それ以外の費目については民間業者からはほとんどコメントがありませんでした。しかもこのマーケットサウンディングにおいて、コスト削減に関する具体的なコメントをした民間業者のコメント数は10件程度しかありませんでした。

質問に記した3つのカテゴリィによるコスト削減を県は期待したわけですが、私たちが「二次マーケットサウンディング概要」を読み込むなかでは、それは限定的なものでしかありませんでした。県はどのように民間業者の回答内容を読み込んだのでしょうか。

 

質問3 コスト削減額247億円の試算の前提条件について

 「県政だよりQ3」では「みやぎ型」導入効果として、コスト削減額が247億円(民間事業者分197億円)見込めると試算した、と記されています。

 この試算金額は「『みやぎ型管理運営方式』導入による事業費削減目標」(令和元年12月13日企業局)の24ページにあるように2017年度に実施した「マーケットサウンディング結果による各費目ごと(ママ)の期待削減率を反映」して算出したものとされています。

「期待削減率」は同25ページに3事業ごと、経費費目ごとに示されています。

 

  • この期待削減率設定の根拠となった、マーケットサウンディングでの民間事業者の定量的な意見はどのような内容でしたか? 3事業ごと、経費費目ごとに、示してください。

 

【質問の内容説明】

 「県政だよりQ2・3」では、現行体制(つまり県による運営)でのコスト削減には限界があるが、20年の長期契約と上工下水3事業一体化のスケールメリットでコスト削減を期待できるから水道料金の上昇幅を抑えることができる、とされています。また、コスト削減額は247億円(民間事業者分197億円)と試算し、この削減額を前提に民間事業者から事業費の提案をしてもらうから必ず削減でき、県議会での条例改正が必要なため運営権者は勝手に水道料金を上げられない、と説明されています。

 しかし、私たちが最も疑問に思うことは、247億円のコスト削減が現実的なのか?ということです。運営権者に任せることでコスト削減(247億円)ができるから、水道料金の上昇幅を抑えられるというのが県の考え方ですが、コスト削減ができなければ、水道料金の値上げ幅が拡大することになるので「みやぎ型」を導入する意味はありません。

 この「247億円という試算」は極めて根拠薄弱です。試算の前提条件として、事業別に費目の期待削減率を、マーケットサウンディングのなかで出された各企業のコメントをもとに設定し、247億円を算出したとしています。4ページ「表1」で見たように、その具体的コメントが非常に少ないなかで置かれた「前提条件」は、恣意的な「単なる期待値」だったのではないでしょうか。

 2月1日の事業説明会(大崎市)で、県と参加者との間で以下の質疑がありました。

「247億円の具体的根拠はないだろう」という質問に対し、県は「確かにそのとおりであります。民間企業のほうで聞き取りした結果をベースに試算した形がこの形でありまして。(中略)民間事業者のグループの方々が『いくらでやります』というふうに入れた数字が最後の数字になります」と答えました。ほとんど理解不能の説明ですが、247億円の具体的根拠がないことは「確かにそのとおり」と、ここだけは明快に認めています。

県は、例えば「民間企業のほうで聞き取りした結果、○○の費目では△△%の削減可能という意見が多かったので期待削減率を☓☓%とした」というような具体的説明を一度もしたことがありません。

 

質問4 現行の水質検査内容は「みやぎ型」導入によりどう変化するのか?

下水道の水質検査・試験については、「要求水準書」77ページでは「現行検査・試験」を「参考に運営権設定対象の状況を考慮し適正に定めること」を運営権者に求めています。つまり、現行検査・試験内容をそのまま踏襲することは求めていません。

運営権者の判断で現在の水質管理体制が変更された結果、水質が悪化するのではないかという疑念は拭えません。

 

  • 「みやぎ型」導入により、現行の上水、下水各事業の検査項目・試験項目内容がどう変化するか、頻度も含め示してください。
  • 企業局は「管理年報は民営化後も作成する」と県議会で説明していますが、「管理年報」が現行と同じ内容・データ構成となるのかは不明です。内容・データ構成がどうなるのか、また作成主体はどこになるのかも含めて示してください。

 

【質問の内容説明】

「みやぎ型」導入に関して、県民が持っている大きな不安の一つが、水質が悪化するのではないか、という点です。「県政だよりQ4」では「現行の水質を満たすことを民間事業者の義務とする」ので現行水質は維持されると説明されています。

コンセッション方式において、性能発注を前提とする場合、各種点検を日常で実施するかどうかは運営権者の裁量であるというのが一般的な理解です。「みやぎ型」においても、水質検査・試験を含む日常点検については、運営権者が法令等を逸脱しない範囲で頻度や具体的な実施方法を定めて実施することが想定されますので、現在の水質管理体制が運営権者の判断で変更され、結果的に水質が悪化するのではないか?という疑念は拭えません。

 

質問5 災害時対応について

「県政だよりQ5」では自然災害が発生した場合、「県が主体となり民間機関と連携し、迅速に対応します」とされています。

  • 東日本大震災のような通常予見不可能な災害が発生した場合、インフラ復旧に必要な資金、人員、技術を運営権者が動員しきれないケースが想定できます。その場合を想定した危機管理体制をどのように設計していますか?
  • 復旧費用が運営権者の合理的な経営努力を以てカバーすることができない時は、水道事業者が原則としてリスクを負担することになると想定できます。その場合、「水道事業者と運営権者の間の分担を可能な限り明確化、具体化しておくべき」と「水道事業における官民連携に関する手引き(改訂版・2019年9月)19ページ」にありますが、この点に関する明確化と具体化がどのようになされているか示してください。

 

 

 

質問6 海外での再公営化の教訓に対する方策について

 「県政だよりQ6」において海外の再公営化の事例を教訓として、事業計画の妥当性の確認・モニタリング体制の強化・料金改定方法の明確化の三点を挙げ、「方策を講じ」たとしています。

 

  • こうして県が教訓化した「3つの方策」は、どの国・地域の事例に基づき方策化したのか、またそれら地域の教訓内容を具体的に示してください。
  • 厚労省主催「第4回水道施設運営等事業の実施に関する検討会」(2019年5月15日)

では、海外での水道事業再公営化の事例が紹介され、再公営化の原因となった問題が6課題あげられています。

1)水道料金の高騰等 2)要求水準書が不明・資産評価の不備 3)水道施設の管理運営レベルの低下(水質の悪化等) 4)約束された設備投資の不履行 5)民間業者に対する監査・モニタリング体制の不備 6)違約金の支払い(訴訟等を含む)の6点です。

特に多くの地域で発生したのは、水道料金の高騰等(14地域)と、水道施設の管理運営レベルの低下(7地域)という二つの問題だったことが紹介されています。県では「水道料金の高騰等」、「水道施設の管理運営レベルの低下(水質の悪化等)」について、どのように教訓を得て、どのような方策を講じましたか。

  • 県の説明では、再公営化についてフランスの事例を取り上げていますが、ドイツにおける事例をどう教訓化していますか?

 

【質問の内容説明】

「県政だよりQ6」で、海外では「一部で再公営化」の事例があると述べたうえで、再公営化した事例の教訓から「方策を講じ」たと説明しています。また2月1日の事業説明会(大崎市)でも「(再公営化は)主流ではない」とも説明しています。

この説明は、厚労省が主催した「第4回水道施設運営等事業の実施に関する検討会」の資料に基づいています。フランスでは「再公営化した事業とコンセッション等に移行した事業が同数」というデータや、1998年から4年間で再公営化がわずかだったというデータを引用して、「(再公営化は)主流ではない」と県は結論づけています。

しかし、同検討会資料には、ドイツの例では2008年から2012年までの4年間で、全事業体に占める公営事業体数の割合は56%から65%へと9ポイント上昇していることを示すデータもありますが、それを県は紹介していません[i]。これは資料の取り扱い方法として意図的です。フランスの事例を取り上げるならば、ドイツの事例との比較において評価をする必要があります。

2017年以降に再公営化された世界の水道事業の調査結果を、政策シンクタンクNGO「トランスナショナル研究所」の岸本聡子氏が「水道、再び公営化!」[ii]で明らかにしています。それによれば、世界各国で再公営化された水道事業体数は、2015年235事例、2017年267事例、2019年311事例と、再公営化の数が年々増加しています。それを主流と評価するかどうかは議論があるでしょう。しかし、海外において、確実に再公営化がすすんでいることだけは、定量的な事実です。

 

 

質問7 民間事業者の情報公開について

現在、上工下水道事業の管理状況は、毎年度「年報」で細かく情報開示されています。

たとえば下水道事業では水質試験は8種類の試験を行っています(中南部下水道事務所)。このことにより放流水水質が所定水準以下に保たれ、県民の安全・安心を担保しています。

 

①「みやぎ型」導入後も現在実施している試験は継続し、そして現在の開示レベルを保持することが必要だと思いますが、「みやぎ型」導入に際し、水質検査・試験について民間業者に義務付ける要求水準内容を示してください。 

公共サービス基本法第3条は「国民の意見が公共サービスの実施等に反映されること」を「国民の権利」と規定しています。県は民間事業者にこの点を担保するよう要求したかどうか、要求した場合はその内容を示してください。

 

 

質問8 新型コロナウイルス対策の渦中でなぜ導入を急ぐのか?

 今、県民を挙げて新型コロナウイルス対策に当たるべき渦中であるにもかかわらず、「県政だより」で「みやぎ型管理運営方式」について特集すること自体、適切性に欠けます。

県は「みやぎ型管理運営方式」導入は、ほぼ当初予定どおり2022年4月から導入としていますが、県自身が何度も繰り返し認めているように「県民理解がすすんでいない」状況の解決を優先すべきではないでしょうか。コロナ禍でそれが進められないというのであれば、導入時期の予定を延期してでも県民議論を尽くすべきです。

公共サービスの目的は「国民が安心して暮らすことのできる社会の実現に寄与する」ことです。その実現には、地方公共団体だけでなく、住民の参加が不可欠です。

 

  • コロナ禍のなかでは、県民が「説明会を開催してほしい」と要望することも自粛せざるを得ない状況にあります。今後の県民への説明と合意形成についてどのように考えているか、示してください。

 

【質問の内容説明】

 「みやぎ型管理運営方式」という名のPFI(プライベイト・ファイナンス・イニシアティブ)は、公共施設等の設計、建設、維持管理及び運営に、民間の資金とノウハウを活用し、公共サービスの提供を民間主導で行うことで、効率的かつ効果的な公共サービスの提供を図るという考え方に基づくものです。PFIは「小さな政府」や「民営化」等、行財政改革の流れの一つとして捉えられます[iii]。今回のコロナ禍は、1992年から我が国に導入されたこの「公共サービスの民営化の流れ」に対して、強烈な警鐘を鳴らしました。

構造改革」、「行財政改革」、「民間活力の導入」の名のもとに、公共インフラである「保健・医療サービス」に競争原理が持ち込まれ、事業の効率性が優先されて経費削減がすすめられた結果、1989年には848カ所あった保健所が、2020年には469カ所に激減[iv]し、感染の水際対策を担う保健所が疲弊してPCR検査さえままならない事態が生じました。

コロナ禍は、図らずも「公衆衛生の重要性(ひいては安全な水への万人のアクセス権の重要性)を再認識させる」[v]ものとなったのです。

人口減少で事業経営の悪化が懸念される水道事業という公共サービスを、今後どうしていくべきか、事業の効率性だけに目を奪われるのではなく、公衆衛生や人権としての命の水をどう守っていくかという根本のところから、広く県民の議論を積み上げて判断をしないと、とんでもない失敗を犯しかねません。

県はこうした視点を持ちながら、コロナ禍を踏まえて、「みやぎ型管理運営方式」導入をいたずらに急がず、県民議論を尽くす対応方針をきちんと示すべきです。

 

質問9 下水道事業について

 

①下水道の運転管理の効率化について、水道経営管理室の田代専門監が「現在はオペレーションシステムが浄水場,処理場ごとにバラバラです。これを統一することが考えられます」と平成30年度第1回宮城県民間資金等活用事業検討委員会で発言していますが、構想している統一オペレーションシステムの具体的な内容を示してください。

 

➁下水道事業の経費費目ごとの削減内容についてお聞きします。

  • 直接業務費が下水4事業合わせて50億円(20年間)、委託費が45億円(同)削減される試算がなされています。この削減根拠を示してください。
  • 動力費(電気代)を削減すれば、長時間のエアレーションはできなくなり、排水の水質悪化は避けられないと思われますが、削減可能とした根拠を示してください。
  • 薬品費については一括購入という手法で削減することには限度があると思われますが、これだけの金額の削減が可能とした理由について、示してください。また、薬品の購入の時期が現在と民営化後でどのように変化するのか、次亜塩素酸ソーダ以外の薬品についてはとくに丁寧に示してください。

 

 

以上

 

[i] 同検討会資料では、アメリカでも2013年から2018年までの5年間で公営事業体数の割合は53%から54%へとほとんど変化がないことも紹介している。

[ii] 集英社新書2020年3月発行・P27~28

[iii] 日本PFI・PPP協会ホームページ 「PFI・PPPとは」

[iv]国保健所長会HP(2020年4月24日掲載)

[v] 白井聡 2020年4月11日 毎日新聞

 

この公開質問状を出すにあたっては、われわれは別に下水処理場で仕事をしたことがあるわけでもありませんし、そういう意味で専門家のアドバイスというものが不可欠でした。県の自治体の下水道だとか環境行政に長らく関与した幹部の方と検討を行って、 この質問状の中身について間違いないかどうか確かめながら作ったというものです。

質問1については、先ほど江成先生のほうからもありましたけれども、BODの測定の 方法について、検査に5日間かけるだとか、色だとかにおいだとか、いろんなところで品質を保つために仕事をやっている人たち、この人によって現在の公共性、あるいは検査の内容について支えられているというふうに、実際に管理した方と話すなかでもすごく強調されていました。

そういう意味で 人材育成というのを県が放棄してしまって、民営化してしまって、「ハイ、おまかせですよ!」というふうになったときに、「20年後この宮城県の下水道と上水道はどうなっていくんだ?」というふうなことを考えた時に、人材問題が極めて大きいということで、質問1にそれを入れました。

質問の2と3は、実は一緒のことです。つまり、「水道の民営化をやることによって247億円の経費が削減できるはずである。そういうふうに見込みます」ということを県は まとめたわけです。「247億円の根拠は何なんだ?」ということを、この間、いろんな説明会で県は追及された。

県はその時、何と答えたか? 

「根拠ないと言われれば、根拠ありません」と答えた。(笑)

根拠ないって、県当局は言うんですね。

 

 

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             公開質問状プレゼン資料より

実際に、「なぜ247億円という数字を出したんですか?」と言ったら、それに対しては「それは民間業者に聞き取りをやった。聞き取りをやった中から、いろんな形で数字を聞き取ってまとめました」と。

公開質問状の4ページに一つの例で入れてありますけれども、水道用水供給事業においては、人件費の10%から始まって動力費10%とか、「いろんな削減をこれくらいできるはずです」という数字を置いてあるんですね。

ところがこの数字は、根拠がないってことなんです。「これは、マーケットサウンディングということで、民間業者の方々から聞き取りました」というふうに言ってるんですけれども、我々が分析をしていくと、このマーケットサウンディングというのは、実は公開されているんですね。公開されているのを探しているんですけれど、いくつか出てくる数がものすごく少ないんです。

これぐらい削減できますよと書いてある民間事業者の声というのは非常に少なくて、 もう少し正確に言うと、県が「どれぐらい削減できると思いますか?」と民間業者に聞くんですね。それに対して「これくらいのことで、これくらい削減できると思います」と書いている人たちもいるんです。ところがその中には、ほとんど数字が入っていないんです。「これくらいはできるんじゃないか、10%か、20%かなあ」とか「8%、5%いけばいいほうだ」という具合の感じのレベルの表現しかしていません。「そういう状況の中で、どうして247億円という数字を県は置けたんですか?」と質問して、根拠を示せと言いました。

質問4は、水質検査の問題です。これは、江成先生のほうからご説明があったように、江成先生のお話をですね、公開質問状を出す1か月前に聞いていれば、またちょっと違った質問になったかなという感じもしましたけれども、県は「現在やっている検査あるいは試験の内容をそのまま踏襲してください」っていうふうには求めていないってことなんです。

「結果オーライで法律を守ってくれれば、極端な言い方をすれば、どのようなやり方をしてもオッケーです」というのが、要求水準書の基本的な中身です。非常に極端な言い方をしていますけれども、本質はそういうことです。

それに対して「本当にどのような形に変化するのか?」と問えば、おそらく、「競争的対話をやらないかぎり、はっきりわからないので答えられません」というふうに答えてくると思いますが、「市民の側はそのことが気になってるんだよ」ということをきつく言っておこうと思い加えておきました。

質問5は、先ほどご質問された方もいらっしゃいましたけども、緊急時の対応ですね。本当に大丈夫なのか?! 大丈夫じゃないと思います。

7ページにありますけれども、「水道事業者と運営権者の間の分担を可能な限り明確化、具体化しておくべき」ということを「水道事業における官民連携に関する手引き」という文書に書いてある。これをちゃんとしなきゃダメだよというふうになっているんです。ですから、たとえば、今後の議会を通じて、こういうことがどうなってるのか? ということを、県は県民に説明していく必要がある。そのことを追求する必要があるということで、ここに入れました。

 

 

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             公開質問状プレゼン資料より

 

海外の再公営化に関する教訓については、この絵の左側は県の説明なんです。右側にありますのは、厚生労働省の会議の場で提供されたネタ資料です。

左側の絵と右側の絵は同じでしょ。ピタリと同じなんです。ネタ資料から県はコピペしてるんです。この部分だけを切り取りソフトを使って切って貼り付けて、こういうふうに説明している。

なんか偉そうに、県政だよりでは「分析して検討してですね、教訓を学んでこういうふうにしました」、なんてことはなくて、実際上はコピペでこういうふうに説明してる、と。

挙句の果ては、左側のほうでは海外の事例は2つしか挙げてないんですけど、右側の厚生労働省の資料では5か国、アメリカ、ドイツの例も全部入れてあるんです。ドイツの例なんかは特にそうですけれども、民営化を推進しようとする人たちにとっては都合の悪いデータなんです。再公営化が進んでいるということを示しているデータとか、それは、宮城県はコピペしないんです。ズルいわけです。そういうようなやり方で、本質的な今の世界全体の動きがどういうふうになっているのか、正確に県民に伝えないというのは正しくないと思います。

8ページに入れておきましたけれども、さらに今年、岸本聡子さんが「水道、再び公営化!」という新書を出しました。その新書によれば、2015年から2019年の直近の動きで言えば、再公営化した数は、2015年は235、2017年は267、2019年は311と増えている。これは、岸本さんが所属する研究所がまとめたものです。客観的な事実ということで、これに対しては、当然のことながら宮城県は何も触れていないわけです。それを示せということです。

質問7の情報公開は、見ていただければということで、時間の関係で省略させていただきます。

質問8は、新型コロナウイルスの中で何で急ぐんだ?ということです。これについては、非常に多くの方々が疑問に思っているところだと思います。

 

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            公開質問状プレゼン資料より

 

最後に、質問9の下水道事業。この表の下水道4事業のところで、削減額がいろんな意味でものすごく多いんです。たとえば、動力費が20年間で16億円、委託費で45億円削減するとか、その内容についてはきちんと示してくださいということです。

それから、動力費を削減するということになれば、動力費を使うエアレーション全体のレベルが低下する可能性がある。これは江成先生のご説明のとおり、水質に対して決定的な影響を与えるということになるということで、動力費の問題を入れてあります。

そのほか薬品等についても、「なぜこんな膨大な金額が削減すると考えているのか?」ということについて質問をしました。

全体的に言えば、公開質問状の第一弾、つまり一回目ということで、弾はちょっと取ってあるものがいくつかあって、まだ準備しています。県からどういった反応が出てくるかを見たうえで、2の手3の手を打っていきたいというふうに考えています。以上です。

 

県議会の状況の報告 福島かずえ 宮城県議会議員

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どうも皆さんお疲れ様です。

今議会は、無所属の会の渡辺忠悦さんという県議さんと私が、本会議で下水道・上水道の民営化問題について取り上げました。また、委員会では社民党の岸田さんも取り上げて、野党系の議員はそれなりに今、取り上げてやっております。

私は今回、コロナの危機の中で、これまでは、人・モノ・金すべてグローバルに動かすことでコスト削減を図ろうというのが、一つの価値として重要視されていましたけれども、人も物も動かせないというのがこのコロナの状況ですから、たとえば今委託しています事業者、水ingですとかウォーターエージェンシーさん、何かあったら応援職員をあちこちからかき集めるということで、危機管理とかいろんな体制の時にはコストを減らしてきてるんですね。

それがコロナ危機で、要するに県の境を越えて人の移動はできない状況になったときには、とにかく県内で、生活圏域で技術をきちんと持った人が運営していかなくちゃいけないという新しい局面に入ったということで、企業局は17日間試行してみたんですね。もしコロナで人がこれなくなったらどうするみたいなことで。そうすると、最低限のことはできるけれども、定期的なポンプとかの点検であるとか、それから大雨の時、地震の時の危機対応ができないという課題があるということも明らかにいたしました。

OB職員とかいろんな人を数を集めたら、全県で上水道それから下水道の処理場・浄水施設全部で38人だけは何とかかき集めているけれども、それで本当にできるのかというと、今日も鹿児島とか熊本では雨が降って、こうなった時の水質をどういうふうに守っていくかということは、先ほど江成先生が言ったように、技術をきちんとルーティンで稼働している技術者の経験によって守らなくちゃいけないことが守れなくなるということが、今まで以上に厳しい条件で求められているわけですから、民営化なんていうことで、競争的対話とかするヒマがあったら、今の現状の中での脆弱な体制を、どういうふうに強化して人材を育成していくのかということに、全力を注ぐべきだというような話はしたんですけれども、まあ言ってる意味はわかるようですが、民営化は着々としていくということでした。

小川さんの資料の3ページには、県の事業の削減率がありますけれども、人件費を10%、15億減らすというのが入ってますから、ここはホントに逆行なので、こういったことをきちんと問題にしていきたいと思います。

それから、公開質問状の質問4の水質検査では、現状と同等の検査をするということは言うんですけれども、今日も来てらっしゃる方から聞いてて、「ダメだ」と。「仕様発注だったら今の状況でいいんだけど、性能発注だから、いま以上に間隔を短くした検査をきちんとしないと、相手任せになっちゃうから、そこのところをもっと詰める質問をしてください」ということも言われまして、7月も臨時議会がありますし、委員会の時間を使って、できるだけ問題点を私たちも追及していきたいと思いますし、みなさんのほうからも、いろいろ県のほうに声を挙げていただきたいと思います。

県は説明動画を2つ作りまして、今ホームページでアップしていますので、それもチェックしていただけたらと思います。

 

会場の参加者の発言

Dさん

ちょっと補足なんですが、先ほどの小川さんの話と福島議員の。ちょっと皆さんがた、勘違いされてるんじゃないかなと思う。水道局は悪意を持って話をしているとは思いませんけれども、私は土木関係の仕事をしてまして、仕様発注と性能発注というのは、 土木学会ではもう10年も20年も前から、仕様から性能というようなことでやってきてます。これはなぜかというと、ISOという国際基準がありまして、それに合わせるには日本型の仕様では駄目なので、性能発注にするというのが世界的な流れなんですね。

そういう流れの中でのこれだと思うんですけれど。まあ、それはそれで認めたとしてもですね、性能発注と言った時に、その性能というのは何ですか? 土木構造物では性能というのはそのものズバリですけども、水道であれば、特に飲み水ですから、365日24時間、いつの時点でも性能が満たされなきゃいけないわけです。そうすると、宮城県がどれだけの覚悟を持って性能発注にするのか、全然話になんないんですね。

性能発注にするという覚悟を持っているのであれば、365日24時間、全面的に性能を チェックしなきゃいけない。それをね、法律は3か月に1回とか、1か月に1回でいいとなってると、水道法でね。もちろん毎日見るのはあります。濁りとか見た目の感じとか。そういうのは毎日見たって、発がん性物質とかは3か月に1回、水道法の51項目の検査基準に照らしまして。

だから県はね、皆さんがたもそう思ってるかもしれないけれど、水道というのは、ふつうの水道法の検査項目で見てる性能じゃないんです。瞬間々々の日々24時間365日の 性能だから、それを保証しなきゃいけない、チェックしてかなきゃいけない。

それを、県はやらないと言ったんですね。自分たちで性能発注にすると言っていながら、性能のチェックをしないっていうわけですね。そんな矛盾した話はないんですね。質問状の第2弾、第3弾がありますので、そこを徹底追及しないといけない。

それをやれば、この制度は崩れると思ってるんです。なぜかというと、できないんですよ、24時間365日チェックは。できませんから崩れちゃうんです。別の方法でやらなくちゃいけないんですけども、それは日本の製造業でやっているJISで決まっている抜き取り検査、要はサンプル調査ですね。それをやらない限り、性能発注の性能を保証できないということです。

そこをね、県に対しても私から質問に行って訴えていますけど、彼らはモニタリングでやると言ってかわすんです。モニタリングというのは、ただ眺めてるだけなんですよ、浄水場の運転状況を。モニタリングで水質わかるわけないです。土木工事は私の分野なんで、国土交通省であれば、監督官という人がいるわけです。その人たちがモニタリングしているわけです。水道局も同じですね、監督がいてモニタリングする、実行状況見てますから。

モニタリングじゃなくて検査すべきなんで、検査というのはモニタリングと言わないでインスペクションと言いますよ。皆さんがたも騙されているという感じあるかと思うんですけども、モニタリングというのは検査じゃないですから。検査はインスペクションです。それを混同しないでほしいんです。県は意図的にモニタリングでやるというふうにごまかしてます。県民に対してごまかしてるんです。モニタリングじゃダメなんです。

多々良さん(司会)

ありがとうございます。重要な問題提起だったと思います。

今日の江成先生の講演と命の水を守る市民ネットワークからの報告を概観するだけでも、充分問題点がまだまだみやぎ型にはあるんですよね。

コロナの状況の中で、半年ぐらいブランクがありましたけれども、今日を皮切りにまた私たちのネットワークとしても、県民に対していろんな問題提起をして、県とも議論していきたいなと思っています。この問題は決して終わっていない、これからなんだと考えていますので、引き続きみなさんと一緒に考えていきたいというふうに思っています。

 

閉会の挨拶 命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ 中嶋信 共同代表

なんか大変、緊迫した講座でありまして(笑)、ホントに中身が濃くて、これは1回 開いた以上は続けなきゃいけないなと思います。今回お付き合いいただきまして、本当にありがとうございました。これから私どももちょっと、ネットワークの中でですね、十分に総括して、もっと住民に求められるような連続講座を考えていきたいと思います。今後ともどうぞよろしくお付き合いください。

今日は、江成先生からかなり技術的な問題を含めて専門的なお話を伺いました。なぜ私たちがこのような講座を設けようとしたかですけれども、今の県政に対して、批判だけではなくて、地方自治のあり方はこれでいいのかという一つの危機感を持ってるんですね。たとえば、住民の意見を大元として、住民の福祉のために運営されるのが地方公共団体ですけども、最近の地方公共団体はそういう姿勢がすごく薄れております。

どうしてなのか? いくつかありますが、一つは安倍政権の政治にあると思います。 とにかく効率的な制度を進めたいということですね。ですから、かなり民主主義が踏みにじられております。

もう一つは、公共の仕事に対する民間企業の支配というものが、これがすごい規模で起こっているわけですね。財界要求がどんどん入り込んできていて、このような中で、地方公共団体の政策決定や推進体制がかなり変化している。

「地方公務員、頑張れよ」というふうに思っているかもしれない。だけれども、ホントになかなか働きづらくなってきてるわけですね。こういう時こそ、「議会、頑張れよ」と思うんですけれども、関係者がいらっしゃる中で詳しく言いませんけれども、実際には寂しい議論なんです。ホント私もこの前、大崎市議会を傍聴してがっくりして帰って熱を出しましたけれども、深刻な議論、科学的な議論をしておりません。このような状況では、ホントにまともな人は公共団体の仕事はできない。だとすれば、それを乗り越えるような力が必要で、それはまさに主権者としての住民、この力だろうと思うんですね。ここを立て直さないと、今の危機的な政治状況というのは変えられないと思っているわけです。

ですから、たまたま水道事業で始めましたけれども、もう少しスタンスを広げてですね、問答を今しなきゃいけないのかというようなことが議論できるような講座を、第2回でやっていきたいと思います。今回の講座、第1回と勝手につけちゃったんで、少し反省してますけども(笑)、やった以上は続けてまいります。

今回は江成先生から随分懇切にお聞かせいただきました。ありがとうございました。

これからも専門的な力をどんどん組み込んで、現場の職員たちの意見も反映するような形で続けてまいりますので、どうぞ今後ともよろしくお願いします。今日はありがとうございました。