宮城県の水道民営化問題

命の水を守るため、水道の情報公開を求めていきましょう!

ここが知りたい!「みやぎ型」~みやぎ県政だより 本当に重要な問題には触れない特集記事より、 県民の声を聞いてほしい!!

<ここが知りたい!「みやぎ型」>と銘打ち、みやぎ県政だより2020年5・6月号に、みやぎ型管理運営方式の特集記事が、見開き2ページで掲載されました。

みやぎ県政だより2020 5・6月号

ここが知りたい!「みやぎ型」

ここが知りたい!「みやぎ型」

www.pref.miyagi.jp

ではご一緒に、 Q&A の内容を確認していきましょう (^O^)

 Q1 これまでと何が変わるの?

 <契約期間> 4~5年間 ➡ 20年間

4~5年間の契約期間だと、民間事業者従業員の雇用が不安定になり、人材育成が困難だが、20年間の契約期間だと、民間事業者従業員の雇用が安定して、人材育成・技術継承が容易になる。

容易になったからと言って、必ずしも、民間事業者がそれを選択するとは限りません。

非正規などの不安定な従業員雇用を行うか、安い下請け業者に業務を委託したほうが 利益が上がると民間事業者が判断して実行しようとするならば、いったい誰がそれを 止められるのでしょう? 

従業員との雇用契約や下請け業者との契約は民間事業者の自由裁量であり、それを是正させる仕組みは、みやぎ型にはありません。

その結果、人材育成や技術継承がなおざりになり、水質悪化や環境問題、災害対応力の不備が生じたとしても、後の祭りで、もうどうしようもないということにもなりかねません。

<契約する事業の単位>

現在は事業ごと個別に委託しているので、スケールメリットを発揮しづらいが、みやぎ型では対象9事業を一体で契約するので、スケールメリットの効果が拡大する。

均質の素材から単一の商品を大量生産するのならば、確かに、スケールメリットで単価を下げることも可能でしょう。

けれども、そもそも水道というものは、各地域ごとに地形や気候といった非常に多様な自然環境の制約を受け、また、そこに住む人々の生活や文化を背景に営々と築かれて きた歴史に支えられています。水源の水質も場所によってすべて異なります。

そういった地域の実情を把握したうえで、24時間365日、刻々と変化する水質を 見守り、適切に調整していくためには、状況に応じて使用する薬品をきめ細やかに選択していくことも必要です。

スケールメリットを発揮するなどと言って、購入する薬品の種類を絞り、大量発注で 費用を抑えようとすることによって生じるリスクも、充分に考慮すべきです。

<発注の方法>

仕様発注 ➡ 性能発注

現行の仕様発注では、県が浄水場などの運転管理方法などを細かく指定し、民間事業者はそれに従って運転管理などを行っている。

みやぎ型では性能発注になるので、民間事業者が運転管理方法なども工夫して、新技術を導入することが可能になる。水量・水質などの基準は県が指定して、基準を満たしているか確認する。

これまでの仕様発注では、水道水を作る方法も県が細かく指定していましたが、みやぎ型では、水質基準を満たす結果になるのであれば、民間事業者が水道水の作り方を自由に変えてもよくなります。

そうすることによって、民間事業者の創意工夫や技術開発力を発揮してもらうというのです。そのような期待をしてはいけないわけではありません。

けれども、公の水道だからこそ追及されてきた公衆衛生や基本的人権を守るという使命や、現場の水道技術者たちの不断の努力によって培われてきた貴重なノウハウの伝承はどうなるのでしょうか?

宮城県の水道は、私たちの先人たちが、長い年月と膨大な税金を投じ、血と汗で築いてきた県民の大切な財産です。その大切な水道の運営権を、何ら明確な根拠のない、民間事業者への漠とした期待感だけで、手放してしまっても よいのでしょうか?

Q2 「みやぎ型」だと、どうして料金の上昇幅を抑えられるの?

 IoTやAIなどの最新技術を活用した運転管理の効率化による運転コストの削減、また、同種一括契約による機械・電気設備の更新費用の削減や、一括・長期契約による薬品や資材の調達コストの削減など、民間ならではの創意工夫と自由度の高い契約によりコスト削減を期待しています。

これらのことについて、他県の水道施設運転管理者の方から実情を伺ったことがあります。

IoTやAIなどの最新技術と言うと、タブレット端末での管理や遠隔監視システムなどが イメージされますが、 そういった技術開発費や運転管理費は、訳がわからないので民間の言い値だそうです。

機械・電気設備の更新費用も、「『何かあった時、どうするんですか? 私たちに泣きつかれても、助けませんからね』とメーカーに言われると、反論できず、不本意でも、先方の言い値で億単位の契約を結ばされてしまう。メーカーの利益率なんて8割とかザラで、汎用品ではないから、適正な価格がまず知られていない。『他にも安いメーカーあるだろう』と、お客様である公務員が探すくらいの勢いじゃないと。民業圧迫だとは言われそうですが、世論や地域住民は味方してくれると思います。民営化を進めて、 お金を削減する前に、できることは沢山あります」とのことです。

薬品や資材については、「浄水場は利益率が低いので、とにかくケチれる薬品はケチるように言われるのが目に見えてます。 そうなると、水質に影響が出てきます。また、 現場の予算が減らされて、自腹で作業手袋などを購入させられることなどによる、現場の士気の低下。そんなことでしか、利益率を上げられないのです。」とおっしゃっていました。

Q3 民間事業者が利益を求めると料金が上がるのでは?

 民間事業者の募集にあたっては、(中略)20年間の事業費の上限額を設定しており、応募者には、利益を含めた上で上限額以下での事業費を 提案してもらいます。

 また、料金は、対象市町村と調整した上で、県議会での条例改正が必要であり、民間事業者が勝手に料金を上げることはできない仕組みです。

2018年12月に改正された水道法には、「料金が、能率的な経営の下における適正な原価に照らし、健全な経営を確保することができる公正妥当なものであること」(第一四条第二項の一)という条文があります。

民間水道事業者が健全な経営が確保できないと主張すれば、自治体はその値上げ申請を拒否できるだけの明確な論拠を示さない限り、この条文を根拠に値上げに応じざるを得なくなります。 (岸本聡子著「水道、再び公営化!欧州・水の闘いから日本が学ぶこと」p166~167)

miyagi-suidou.hatenablog.com

 みやぎ型では経営審査委員会(仮称)が設置され、運営権を得た民間事業者の経営状況をモニタリングする予定ですが、海外では、イギリスのオフワット(OFWAT:Office of Water Services)など同様の規制機関が効果的に機能しなかったため、再公営化を選択する事例が後を絶ちません。

にもかかわらず、そういった海外の失敗例の轍を踏まないように、経営審査委員会(仮称)を組織するうえでこのような手立てを検討したというようなアナウンスは、現在に至っても全くありません。

「経営審査委員会の設置及び運営に係る条例は,本事業等に係る運営権の設定時を目途に公布・施行することを想定しています。」と、

3月13日に公表された実施契約書(案)の45ページの欄外に書かれているだけです。https://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/780551.pdf

Q4 水質はどうなるの?

 対象市町村に送られる水は、水道法に定められた水質基準より厳しい 現行の水質を満たすことを民間事業者の義務とします。県は、水道法に 基づく水質検査を行うなど、しっかりとモニタリングし、安全性を確認します。   

 下水処理後の放流水についても、現行の水質を維持します。 

東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センター事務局長の小川静治さんは、次のようにおっしゃっています。

県が『みやぎ型になっても、今までやっていることをそのままやってください』と運営権を得た民間事業者に言うのならまだいいんですが、そこは言わないわけですよね。『県の従来のやり方を参考にしてください』的なことしか言わない。それで本当に水質が守れるのかな?という思いは強いです」

同じような不安を感じている県民は少なくないのではないでしょうか。

Q5 災害対応はどうなるの?

 自然災害などが発生した場合は、県は委託業者や市町村など関係機関と連携して対応してきました。「みやぎ型」開始後も、県が主体となり、民間事業者を含めた関係機関と連携し、迅速に対応します。 

今までは、浄水のプロセスを県が細かく指示する仕様発注だったため、災害時にも、 どこでどんな問題が発生し、どう対処すればよいのか、県が把握している情報で迅速な判断ができましたが、みやぎ型で性能発注になると、浄水のプロセスは民間事業者の 自由裁量になりますから、県が情報を把握するには時間がかかってしまいます。

もしも、東日本大震災時の東京電力のように、運営権を得た民間事業者が、責任を問われるのを回避しようと情報を隠蔽したりしたら、対応が非常に困難になってしまいます。

Q6 海外では公営に戻した事例があるって聞いたけど?

 海外では一部で再公営化の事例もあります。「みやぎ型」では、それらの事例を教訓とし、事業計画の妥当性の確認、モニタリング体制の強化、料金の改定方法の明確化などの方策を講じています。

県が教訓としたという海外の事例を、詳細に知らされた県民はどれだけいるのでしょう? ほとんど皆無に近いのではないでしょうか。教訓を得て方策を講じましたと言われても、それでは根拠を示していないのとおんなじことです。

Q7 民間事業者の情報は公表されるの?

 民間事業者が公表すべき情報はあらかじめ県が定めます。民間事業者は、事業計画書や財務諸表、運転管理・水質管理に関する報告書などを定期的に公表しなければなりません。県が行ったモニタリングの結果も定期的に公表します。 

最も問題なのは、県が事業を行っている現在においても、一般の県民はこれらの情報にアクセスするのが困難だということです。 上記の情報を確認できるポータルサイトや 冊子が存在しているのかどうか私自身も知りません。明らかに広報不足だと思います。多くの人が容易に情報にアクセスできる仕組みがないままでは、公表したということにはなりません。

Q8 応募の条件は?

 ①日本法人であること

 ②代表企業は資本金50億円以上であること

 ③一定規模以上の浄水場下水処理場の運転管理業務を3年以上継続して行った実績があること

などを応募の条件とします。

①日本法人であることについては、令和2年2月定例会で大内真理議員が一般質問を行いました。この質疑応答は、多くの県民が吟味すべき内容だったと思いますので、以下にご紹介します。

大内真理県議

条例でいくら縛っても駄目。

国際的に投資家と国家の紛争手続きを定めたのがISD条項で、これ自体が後から追加される可能性が排除されない中で、このことに配慮して海外資本を、SPCの合同会社の中から省くということに何ら支障はないはず。

県民のみなさんの不安の声にこたえるために、海外資本・水メジャーを省くと約束してください。

櫻井公営企業管理者

先ほども答弁した通り、ISD条項いうのは、基本的に投資家の利益を保護するための条項だと理解している。当然今のEPAの中には入っていないが、今後入らないという保証はないと、これも理解している。

しかし、これまでの事例にある通り、ISD条項を適用した中でも政府側が勝った事例がある。それはしっかりとした契約の中でどういう判断をしていくのか、そういったところがまずは求められている。

繰り返しになるが、これについては、海外メジャーも含めて開かれた門戸にしながら、民間の知恵をいただきながら進めていきたい。

大内真理県議

しっかり条例で定めても、あとからISD条項を傘にして、提訴される可能性がある。実際に実例もある。

SPCから外してください。これぐらいも約束できないのか?

櫻井公営企業管理者

基本的には海外企業も含めて、募集要項上は日本法人格を有するものとなっているが、その部分については現在も考えを変えるつもりはない。

Q9 民間事業者を選ぶとき、評価はどうするの?

 法律や会計のほか、水道・下水道に関する専門家などで構成される委員会が、実施体制や災害時の対応、事業費などの項目について評価を行います。その中で、1項目でも現行体制未満だと判断される項目がある場合、その民間事業者は「失格」となります。

この委員会のメンバーは、

3月13日に公表された募集要項https://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/780539.pdf

の34~35ページに表示されています。

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民間事業者を選定するための評価基準については、

優先交渉権者選定基準 https://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/780541.pdf

に詳細が記載されています。
200点満点で、提案項目ごとに委員の得点の平均点を算出して、平均点を合計した ものを、委員会の得点結果とするとのことです。

これについては、お知り合いの宮城県民の方から、次のようなご意見を伺ったことがあります。

「それぞれの委員には専門分野があり、今回評価する11項目の全てに見識と実務経験を有する委員は存在しない全委員が各項目を評価した得点を一律の重みで評価することは、各分野の専門家であるそれぞれ委員の専門的項目についての評価価値内容を生かせない結果になるのではないか?

評価11項目ごとに、配点に重みをつけ『合計点を200点』としていることは評価できるが、その配点理由が不明。とくに、『SDGs』に関する取り組み評価記載がないことは行政機関として不適切。

さらに、各項目で『評価基準』が示されているが、各項目で記載内容にレベル差があるとともに、県が最終的な評価主体者であるにもかかわらず、『県民、利用者及び行政責任者』が求める要求基準を十分満たす評価基準の記述になっているとは言い難い。」

Q10 「みやぎ型」はいつ始まるの?

 3月に民間事業者の募集を開始しました。これから約1年かけて事業を運営してもらう民間事業者を選定します。

 令和3年6月または9月議会において、民間事業者に浄水場などを運営する権利を設定する議案を提案する予定です。可決された場合は、令和4年4月から「みやぎ型」を開始します。

f:id:MRP01:20200506162615j:plain  募集要項28ページ https://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/780539.pdf

ここにも書いてあるとおり、このスケジュールはあくまでも予定です。

県議会で民間事業者に水道事業を運営する権利を設定する議案が可決されない限り、みやぎ型は開始できません。

去年の12月に、「民営化もできるよ」という議決が県議会でされましたが、民営化をしなくちゃいけないと法律で決められたわけではありません。

公営のままでもいいんです。

みなさんはどうお考えでしょう? 

ぜひ周りの方々とお話して、地元の県議さんとも意見交換をなさってください。

そして、多くの人に伝えたい思いがあるのなら、新聞・テレビに電話・FAX・メールを送り、SNSでもどんどん発信していきましょう!

もちろん、担当部署である宮城県の水道経営課にも電話・FAX・メールをして、県民として堂々と意見表明をしましょう!

宮城県水道経営問合せ

www.pref.miyagi.jp

メールフォームから送信するときは、タイトルに「みやぎ型管理運営方式への意見(もしくは質問)について」と記入するのをお忘れなく! 返信が遅くなるそうです (^_^;)