2019年12月13日、宮城県議会建設企業委員会にて、「みやぎ型管理運営方式」導入に係る条例改正案である議第197号議案の審査・採決と、議第197号議案の継続審議を求める請願(12月6日に命の水を守る市民ネットワーク・みやぎが提出)の審査・採決が行われました。
建設企業委員会の冒頭で、ゆさみゆき委員と福島かずえ委員が、「議第197号議案の慎重審議を求める請願が出ているので、①請願者を参考人として呼ぶこと ②請願の趣旨から議第197号議案とセットで審議すること」を提案しました。
その場では話がまとまらず、昼休みに調整することとなったため、議第197号議案の審査は午後に行われました。
最初に、桜井公営企業管理者と水道経営課田代課長から、みやぎ型管理運営方式及び議第197号議案についての説明があり、それに対して野党系の委員が質疑を行ないました。
岸田清実委員の質疑への応答
Q1.みやぎ型と今まで宮城県で行われてきた民間委託は違うものである。
みやぎ型では、性能発注で20年間運営を委託するが、従来の民間委託は、仕様発注で4~5年毎の委託で県がコントロールしてきた。
A1.県は選定した事業者の設備更新計画を監視していくので、(契約期間が満了する20年後に)設備がぼろぼろの状態で県に引き渡されるようなことはない。
Q2.昨年の水道法改正の2つの柱は、
① 県が市町村水道の基盤強化の役割を果たす。
② 官民連携を図り、水道コンセッションも可能。
である。
町村水道では技術職員が1人もいないところもあり、更新工事もとても追いついていない。まずは、市町村間の連携を考えるべき。
A2.みやぎ型とは別に市町村連携はいつでもできるようにしている。
Q3.水道コンセッション(みやぎ型)に(参加したいと)手を挙げた市町村の関係はどうなるのか?
A3.手を上げたら参加できるオプション設定をしている。
Q4.個別に手を挙げた自治体がみやぎ型に参加することにより、その他の自治体が広域連携をする妨げになるのではないか?
A4.市町村からまずみやぎ型を進めてほしいという声があった。市町村は市町村で広域連携を進めてほしい。それぞれの事業中で、持続可能性を模索してほしい。
Q5.(水道事業に関して)県は、すべての市町村との全体的な像を考えていくべきではないか?
A5.水道供給事業としての採算をまず考えなければならない。それぞれの自治体の独立性を尊重することも重要。
Q6.市町村からの質問に対して、県はしっかり答えていないのではないか?
A6.PFI法に則って進めていく場合は、段階的に明らかになっていく。受水市町村からの自分たちの意見を入れてほしいという要望を入れた会合も開始している。
Q7.現状のモニタリングの仕組みでは、県民の関与の余地がないのではないか?
A7.運営権設定の時に示す。専門家と消費者の両方の目線を入れたものにしていく。
福島かずえ委員の質疑への応答
Q1.運営権を設定する施設に管路が入っていないのは、20年間は本格的更新をしないからと言うが、管路更新費用の平準化のイメージを説明してほしい。
A1.軟弱地盤の補強、耐震化が資料に織り込まれている。
みやぎ型管理運営方式に係る県の基本的な考え方について 令和元年11月18日 宮城県https://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/763255.pdf
「みやぎ型管理運営方式」導入による 事業費削減目標について令和元年12月13日 宮城県企業局 https://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/763255.pdf
Q2.これまでも(みやぎ型による)削減金額がたびたび変わってきている。これからも変わっていくのか?
A2.今回の数字が最終固定額であり、来年3月の(事業者の募集)時点ではこの通りでいく。
Q3.(みやぎ型の契約が終了する)21年後はどうするのか?
A3.21年後のことは検討していない。
Q4.(削減額の根拠は)マーケットサウンディングの削減率を示しているだけですよね?
A4.そうです。
Q5.金田もとる県議が(県議会一般質問で)尋ねた下水道水質についての数値はまだ出ていないのですね?
A5.はい。
Q6.運営権者のコスト削減は、人件費の削減によるものではないか?
A6.人件費ではなくAI等の効率化によるものである。
Q7.下水道に関して、上水道と同じような丁寧な説明がなかった。排水基準は緩和されるのか?
A7.下水道の資料はできているので、すぐに届ける。下水道法に「料金は全部もしくは一部負担させることがある」という表現があるため、別の記載になっている。今までの問合せは主に上水道に対するものだったが、下水道に関してもこれから説明していく。
Q8.下水道は上水道と同じように大切。下水道が建設された時の厳しい基準を、運営権者にも求めていくのか?
A8.そのとおりです。
Q9.下水道だけでなく上水道の説明も足りていない。市町村(自治体)だけでなく、仙台市でやったような直接住民に対しての説明会をやってから、パブコメ、条例改正という手続きではなかったか?
A9.傍聴会も考えている。
Q10.運営権者も(宮城県の水道事業を)できるようになるが、必ず運営権者がやるとはなっていないのですね?
A10.運営権者の設定がされてはじめて(今回の条例改正は)有効になっていく。
ゆさみゆき委員の質疑への応答
Q1.人件費削減は運営権者の裁量になる。コスト削減額の試算は あくまでもマーケットサウンディング。(みやぎ型への応募企業との)競争的対話で変わってくるのではないか?
A1.今回示した削減額よりも低いコストで競争してもらう。
Q2.将来の技術継承が懸念される。技術職員の人数を教えてほしい。
A2.現在、公営企業局の技術職は83名。
Q3.県の技術職員を運営権者に派遣するのか?
A3.基本的に県からの職員派遣はしないが、(運営権者から)求められれば、話し合いでする。
Q4.県から運営権者に職員が派遣されることが続くと、20年後、県の職員が枯渇するのではないか?
A4.未来永劫SPC(運営権者の特別目的会社)に職員を派遣するとはイメージしていない。
Q5.内部留保をどうするかの裁量は、運営権者側にあるのではないか?
A5.SPCの財務状況は公開してもらう。こちらがシミュレーションしたとおりにはならないが、こちらが求める削減額を示して、それ以上に削減する競争をしてもらう。
Q6.SPCの資金調達金利は2.5%とあるが、これはあくまで期待値で、固定できないのが現実。この前提が崩れるのが普通ではないのか?
A6.こちらが示す削減額を守ってもらう契約をするものである。
Q7.上水道・工業省水道・下水道の3つの水道事業をまとめて20年間運営権を売却するというこれだけ大きな変更を行うのであるから、すでにある条例の一部改正ではなく、この事業のための独自の条例を新たに作るべきなのではないか?
A7.PFI法の中で条例に付すべき部分は守っている。
Q8.PDCAサイクル(で業務改革をしていくこと)を県は今までやっていない。これをやってからでなければ、確かな水道事業の構築はあり得ないのではないか?
市町村と県の全体像をしっかり示してから、(その後に)コンセッション(を検討すべき)ではないか?
通常は、委員会に付託された議案をすべて採決した後に、請願の審議を行うのですが、今回は、ゆさみゆき委員と福島かずえ委員の提案通り、議案採決の前に「議第197号議案の慎重審議を求める請願」の審議が30分間行われました。
参考人として、請願を提出した命の水を守る市民ネットワーク・みやぎの佐久間敬子代表が急きょ呼ばれ、以下のように意見を述べました。
1.みやぎ型のような水道三事業の一大改正に対しては、充分な議論を尽くしてほしい。多数の受水者の意見を聞くべきだ。
短期間にもかかわらず、12月16日に提出予定の「慎重審議を求める請願」への賛同団体は300を超えている。平和団体、女性団体、労組、食品販売会社、オンブズマン等、多種多様な団体が提出してくれた。
多くの県民が次第に関心を深めてきているが、全体像が見えず不安に思っている。
様々な学習会でアンケートを取ると、「私たちにはよくわからない」「説明が足りない」という声が多い。9月のパブコメ結果もそうだった。
これだけ大きな制度の変革なのだから、県民に十分説明して審議すべきだ。
2.ちゃんとした科学的データ、財務データに基づいているのかが不明で、環境負荷についての検証も不足している。
官のコストと民のコストの二重コストになるし、モニタリングも三重になるのでコストがかかる。
3.水道事業が抱えている問題は全国同じなのに、別のやり方で解決しているところがいろいろある。みやぎ型以外の選択肢もあるのではないか。こういう検討をするために議会での時間が必要だ。
日本は明治以来水道は公営だった。公営で行う意味がちゃんとある。
海外の国では沢山の失敗がある。イギリス労働党は自分達が政権を取ったら(水道民営化)はやらないと宣言している。イギリス会計検査院は高上りであると検証した。
みやぎ型は、私たちには降って湧いたような話。知らない県民がいっぱいいる。
県民生活にも産業にも多大な影響がある。
現在の県の財政を見ると、あわてて決めるべき状況ではない。
(10月の県議選で当選した)新たな県議さんにも、みやぎ型を学習する時間が必要。
これまで命の水を守る市民ネットワーク・みやぎは、
① 県民への情報公開と説明不足のまま9/2からパブコメを実施するのは中止するよう要請書を宮城県に提出
② みやぎ型に関する十分な情報公開と熟議による審議を求める意見書を宮城県に提出するよう請願書を仙台市に提出
③ みやぎ型の実施方針策定に係る意見書をPFI委員会に提出
④ みやぎ型の慎重審議を求める請願を宮城県に提出
という形で問題提起してきた。
以下は、委員から参考人への質疑応答です。
福島かずえ委員
より良いコンセッションをしようとすればするほど費用がかかるのでは?
佐久間敬子代表
ちゃんとしたデータに基づいてやるならコストがかかるのは当たり前。
他国では水争いがあるが、日本は水が余って経営が大変。
しかし、水に代わるものはないので、公的使命は格段のものがある。国連でも、「水は人権」と言っている。水は商売の対象ではない。命、健康、産業を守っていくかけがえのないもの。最後まで公共セクターが守っていくべき。後世にどういう責任を尽くせるのか。
岸田清実委員
どんな場面で情報提供が足りないと感じるか?
佐久間敬子代表
圧倒的多数の人が、みやぎ型が生活にどう影響するかわかっていない。
県のホームページや出前講座に触れることができる人は限られている。189万人の県民はわからないままに決まってしまう。業者に対するほど県民には説明していない。
佐藤仁一委員
継続審議してほしいという署名団体の一番不安に思っていることは何か?
佐久間敬子代表
ここで決めてしまって後悔しないか、もっと良い解決策があったのにとならないか。
20年後の水道事業はどうなっているのか。
岩手中部水道企業団のやり方を検討すべき。
私たちだけが良ければよいのではなく、後世の人のことも考えなければならない。
佐藤仁一委員
県の企業局、食と暮らしの安全推進課 、市町村といった行政間の調整がちゃんとなされているのか?
佐久間敬子代表
いろんな部局に関わる問題なので、そこが全部一緒になって考えないとうまくいかないのでは。
高橋宗也副委員長
今議会では実施方針を示すだけで、実際には令和3年に運営権者を決定することになるので、今(みやぎ型を)決めることにはならない。それでも反対か?
佐久間敬子代表
(他の選択肢を検討しないまま)先に進めてからやめるのは、膨大な無駄になる。
コンセッションを可能にすること自体も必要ないのではないか。
ゆさみゆき委員
どこもやっていないことを宮城県でやるのは大変だという声があるが?
佐久間敬子代表
モデルケースになって自慢だと言うが、モデルケースは先が見通せないということだ。
この後、「議第197号議案の採決は、賛否だけでなく継続審議を含めた3択にすべき」と、福島かずえ委員から動議が出されましたが、賛成少数で否決され、議第197号議案の採決は、委員長を除く9人のうち、与党会派である「自民党・県民会議」と公明党県議団の5人が賛成し、野党会派である「みやぎ県民の声」と共産党県議団、社民党県議団の4人が反対して、賛成多数で可決されました。
ただし、ゆさみゆき委員が、委員長報告に関して意見を述べることができる「少数意見の留保」を発議して、認められたため、ゆさみゆき委員、福島かずえ委員、岸田清実委員、佐藤仁一委員の議案反対の意思が、個別に議事録に明記されることになりました。
議第197号議案の継続審議を求めた請願は、賛成少数で不採択となりました。
みやぎ型を導入可能にする条例改正案は、残念ながら、17日の宮城県議会本会議で、自民、公明など与党会派の賛成多数で可決される見通しです。
明日は、午後1時にみんなで最終討論を傍聴に行って、 この歴史的瞬間を見届け、事の重大さを周囲の人たちに 全力で広めましょう!!
条例改正案が可決されても、運営権設定提案・ 議決は、 令和3年6月か9月議会になります。
それまでに考え直す世論を盛り上げていきましょう!!