宮城県の水道民営化問題

命の水を守るため、水道の情報公開を求めていきましょう!

水道民営化で確実に狙われる宮城県!!

去年出版されて話題になった「日本が売られる」(堤未果著/幻冬舎新書 /©2018)の

第1章 日本人の資産が売られる 1 水が売られる 

の中に、次のような記述があります。

 それがなければ生きられない、命のインフラ「水道」は、同時に巨大な金塊でもある。

 ビジネスにすると、唸るように儲かるからだ。

1995年8月。当時世界銀行副総裁だったイスマイル・セラゲルディン氏はこう言った。

「20世紀は石油を奪い合う戦争だった。21世紀は水をめぐる戦争になるだろう」

 そして、その言葉は現実になる。(「日本が売られる」15~16ページ)

 

「日本の水道バーゲンセール」のお知らせ

 売りたいものがある時、お客様へのセール告知は欠かせない。

 2013年4月。当時の麻生太郎副総理は、米国ワシントンにあるシンクタンク戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International Studies)の席で、こう発言した。

 「世界中ほとんどの国では、プライベートの会社が水道を運営しておられますが、日本では自治省以外では、この水道を扱うことができません。

 しかし水道料金の回収が99.9%というようなシステムを持っている国は、日本の水道会社以外にありませんけれども、この水道はすべて国営もしくは市営、町営でできていて、こういったものを全て・・・・・・民営化します」

             (中略)

 麻生副総理は口だけでなく、行動する人間だ。

 日本政府は同じ月に、早速EU欧州連合)と経済連携協定の交渉を開始した。

 この協定には、公共事業に外資が一気に参入できる仕掛けが埋め込まれている。

 日本が持つ宝の山へのパスポートとなる日欧EPA経済連携協定)に、ヴェオリア社幹部と投資家たちが胸をときめかせたことは言うまでもない。    (「日本が売られる」26~27ページ) 

ヴェオリア社とは、フランスの多国籍水処理企業です。

同じフランスのスエズ社、イギリスのテムズ・ウォーター社と合わせて、世界の3大水メジャーと言われています。

 

宮城県の村井知事は、平成29年3月9日に開催された日経地方創生フォーラム(主催:日本経済新聞社、会場:日経ホール)で、「上工下水一体官民連携運営の検討」について基調講演をしましたが、その資料の中にも、ヴェオリア・ジャパンがオペレータとして登場しています。

ヴェオリア 「上工下水一体官民連携運営の検討(みやぎ型管理運営方式の構築に向けて)」より

 

ヴェオリア「上工下水一体官民連携運営の検討(みやぎ型管理運営方式の構築に向けて)」より

 このヴェオリア・ジャパンは、すでに、平成30年6月1日に開始した浜松市の下水道コンセッションの代表企業として運営に携わっています。

浜松市のホームページによると、浜松市は、平成29年3月にヴェオリアJFEエンジ・オリックス東急建設・須山建設グループを下水道コンセッション事業者に選定し、同グループが設立した浜松ウォーターシンフォニー株式会社と平成29年10月に下水道コンセッション契約を締結しています。

www.city.hamamatsu.shizuoka.jp

hw-symphony.jp

*コンセッション方式とは、公共施設の所有権を公的機関に残したまま、受託した民間事業者が運営を行う事業スキームを指します。(浜松ウォーターシンフォニー株式会社ホームページより)

みやぎ型管理運営方式もこのコンセッション方式の一つです。

ところが、本国フランスのパリでのヴェオリア社はどうだったかというと、

 もう限界だった。

 民営化以来、パリの水道料金は倍以上に跳ね上がり、悪くなる一方のサービスに住民の不満が止まらない。

 財政は不透明な上、水道管工事は同社傘下の子会社が受注するために競争が存在せず、費用は常に割高だ。相場より高額のリース料を市に請求しながら、水道管などの設備投資積み立てにはろくに資金が回されず、設備の老朽化がどんどん進んでゆく。

 形態は、自治体が水道の所有権を維持したまま、運営を全て民間企業に委託する「コンセッション方式」(日本政府が導入しようとしている手法だ)だが、経営や料金設定、投資の仕方など全ての決定権はヴェオリア社とスエズ社にあり、市民には何の情報も与えられなかった。

(「日本が売られる」253~254ページ)

にもかかわらず、「水道の民営化・広域化を考える」初版(尾林芳匡・渡辺卓也編著/自治体研究社/©2018)の

2 宮城県 水道事業へのコンセッション導入の問題点 内藤隆

では、次のようなことが述べられています。

3 「企業の利益を損なう」として業者選定過程が

  「非開示」に

 宮城県におけるコンセッション導入の具体的な内容に入る前にどうしても触れておきたいことがあります。

 県企業局は2017年4月、水道事業へのコンセッション導入にあたって、「導入可能性調査」「デューディリジェンス調査」について、プロポーザル方式で業者選定を実施しました。私は、その業者選定過程に至るいっさいの行政文書の開示を求めて、宮城県情報公開条例に基づいて開示請求をおこないました。

 開示された文書は、合計45文書497枚に及ぶものですが、そのうちの3割を超える約160枚が、全部真っ黒に塗りつぶされていました。いわゆる「ノリ弁」状態です。プロポーザルに参加した企業名に加え、選定された業者も含めた技術提案の部分はすべてが「非開示」となっていたのです。

 非開示の理由は「企業の利益を損なう」というものでした。私は、技術提案部分のすべてが「企業利益を損なう」というのは「納得できない」と主張したところ、企業局管理者の答弁は驚くべきもので、「文書のすべてについて『企業利益を損なう』か、どうかを判断するには非常な手間がかかり大変であるため非開示とした」というのです。

 これは、情報公開できる部分も含めて非公開にしたということで、情報公開制度そのものを根本から否定するものに他なりません。

 私はこの問題こそが、コンセッション方式の神髄なのだと思います。民間企業の利益を守ることが最優先で、県民の利益は後回しになっているのではないかと危惧されます。これでは、県民にとっての命の水の安全と安心、安定供給が本当にもたらされるのか、甚だ心もとないと言わなければなりません。

 県は、みやぎ型管理運営方式の特徴を「民間事業者に過大な負担を負わせることなく事業運営への参画を促す官民協働運営のスキーム」と位置づけています。2017年2月におこなわれた第1回「検討会」で村井嘉浩知事は、「民間がやりやすいようにスピード感をもって」取り組むことを強調しました。また、同じ「検討会」で内閣府大臣補佐官の福田隆之氏は「行政が企業のために何をできるかを考えるべき」と話しました。行政を企業の利益のために活用するという「民間事業者ファースト」の姿勢を隠そうともせず、そのことに後ろめたさや罪悪感を少しも覚えていないことに驚かされます。

 情報公開の例もそうですが、「企業の利益を損なわず」「企業の利益を守る」ことが最優先で、そのために「県民の利益が損なわれる恐れがある」とは全く考えていないようです。

(「水道の民営化・広域化を考える」53~55ページ)

宮城県は、パリの事例から何も学んでいないのですね。

「企業の利益を損なう」から県民には情報を開示しない、「民間事業者に過大な負担を負わせ」ない、「民間がやりやすいようにスピード感をもって」取り組む、とは!!

まったく、宮城県ほど、水メジャーにとって都合の良い所はないでしょう。

また、宮城県は、「みやぎ型管理運営方式に関する要請書」(食緑水を創る宮城県民会議・自治労宮城県本部・全水道宮城県支部が2018年11月16日に村井知事に提出)に応えた「要請に対する県の対応方針について(通知)」の中で、「『みやぎ型管理運営方式』において、運営権者が行う維持管理業務等の契約は、民間事業者間の契約行為であり、役員報酬や株主配当等を必ずしも把握する必要はないと考えております」と言っています。(「『上工下水一体官民連携運営事業』(みやぎ型運営方式)の是非を問うシンポジウム」の資料14ページより)

注)原文の黒字を当ブログ筆者が赤字に変えました。

水道料金は電気料金と同じく総括原価方式で計算されます。

総括原価には役員報酬や株主配当も含まれます。これらが高額になっても、必要経費が増えたとして、水道料金を上げることが可能になるのです。

県が運営権者の役員報酬や株主配当を把握する気がないのであれば、県は、運営権者の言い値の水道料金が本当に妥当なものなのかどうか検討もできないということになります。

それでも県は、民営化すると水道料金の上げ幅が小さくなると主張しています。

なぜなのでしょうか。次回はその点について確認していきます。

 

宮城県のホームページからダウンロードできる引用資料

上工下水一体官民連携運営の検討(みやぎ型管理運営方式の構築に向けて)

http://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/618966.pdf