宮城県のホームページで公開されている「みやぎ型管理運営方式」について(掲載日:2018年12月21日更新)というPDFファイルの最後には、以下のように事業スケジュール(案)が提示されています。
改正水道法が成立したのは2018年12月6日ですが、それから1年も待たずに、2019年の9月議会か11月議会で実施方針条例を議決して、2021年度中には事業を開始するという駆け足ぶりです。
県議会に提案する2ケ月前に、実施方針素案ができた段階でパブリックコメントを実施する予定ということですので、宮城県民は今から5か月後の2019年の7月までに、村井知事が提案するこの「上工下水一体官民連携運営(みやぎ型管理運営方式)」について、パブリックコメントで意見を述べられるくらい精通していなけらばならないということになります。
そんなことは果たして可能でしょうか?
現段階では、「上工下水一体官民連携運営(みやぎ型管理運営方式)」という言葉を聞いても、それが具体的に何のことなのか明確に理解できている宮城県民はほとんどいないと思います。なぜなら、知る機会がほとんどなかったからです。
宮城県が平日の昼間に仙台市内でほんの数回開催した関連シンポジウムは、一度につき200名あまりしか参加できず、しかもその大多数は自治体職員などの関係者で一般県民ではありませんでした。
水道は地域独占事業ですから、交通機関や通信手段のようにダメなら途中から他に変えるということが容易にできません。しかも、水は、すべての人の命に直結する大切なものです。それを将来にわたって安全に安定的に供給できるかどうかは、どんなに念入りに検討してもしすぎるということはないでしょう。多くの宮城県民が納得して最善の選択をできるように、できるだけ多くの視点からそのメリット、デメリットを比較検討して議論すべきです。なのに、その時間が5か月間しかないなんて、とても正気の沙汰ではないですね。
なぜ、そんなに急いでいるのでしょう?
「水道事業等に係る旧資金運用部資金等の繰上償還に係る補償金の免除」(平成30年度から33年度までの間に実施方針条例を定めた場合、地方債の元金償還金以外の金銭を免除してもらえる)というインセンティブがあるからなのでは?
民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(PFI法)の一部を改正する法律(平成30年法律第60号) 概要
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000351778.pdf
法案の概要
(3)水道事業等に係る旧資金運用部資金等の繰上償還に係る補償金の免除
政府は、平成30年度から平成33年度までの間に実施方針条例を定めることなどの要件の下で、水道事業・下水道事業に係る公共施設等運営権を設定した地方公共団体に対し、当該地方公共団体に対して貸し付けられた当該事業に係る旧資金運用部資金の繰上償還を認め、その場合において、繰上償還に係る地方債の元金償還金以外の金銭(補償金)を受領しないものとする。
(注) なお、地方公共団体金融機構資金についても、同様の措置を講ずるよう政府から要請する。 (厚生労働省ホームページより引用)
水道の運営権を民間企業に売却して得たお金で、水道事業のために今まで地方公共団体が借りていた資金の繰り上げ返済ができるというのですね。
けれども、宮城県のホームページで公開されている「みやぎ型管理運営方式 Q&A」を読んでも、こういった説明はありません。もしこういったインセンティブのために宮城県が水道の民営化を急いでいるのだとしたら、それも含めて県民に詳細な情報を提供したうえで、導入すべきか否かを問うべきではないでしょうか。
いずれにしても、議論検討するための情報と時間が宮城県民には不足しています。
急かす理由も説明しないで、県民が訳がわからないうちにバタバタと決めてしまおうというのは、あまりにも不誠実なやり方です。
下の資料は、厚生労働省ホームページからのものです。
字が小さくて一見とっつきにくいですが、画面の拡大機能を使って読むことができる方は、一度じっくりお読みになることをお勧めします。
PPP/PFIを着実に推進するために、政府は10年間(平成25年度から34年度まで)に21兆円の事業規模目標を掲げていて、そのために上下水道事業におけるコンセッション事業の促進に資するインセンティブ措置を講じていることがわかります。
https://www8.cao.go.jp/pfi/pfi_jouhou/aboutpfi/aboutpfi_index.html