第二次公開質問状の全文
2020年10月15日(木)
公営企業管理者 櫻井雅之様
命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ
共同代表 佐久間敬子
中嶋 信
宮城県上工下水一体官民連携運営事業(みやぎ型管理運営方式)に関する
第二次 公開質問状
私たち「命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ」は、宮城県が進めている「宮城県 上工下水一体官民連携運営事業(みやぎ型管理運営方式)」の導入に反対し、よりよい水道事業を創っていくため、本年6月10日に公開質問状を提出しました。
それに対して、同7月22日に県より回答されました。
私たちが公開質問状を提出したのは、「私たちが考える問題点や疑問点を公開の上、質問し、県の回答内容を広く県民に紹介しながら、県民議論を深めることを目的」として行ったものです。
しかし、県の回答は私たちの投げかけた問題点や疑問点にまともに答えておらず、これでは到底県民議論を深めることにつなげることができません。
みやぎ型管理運営方式の県民理解が進んでいないと何度も県は表明しているにも関わらず、今回の回答内容はそれを一歩でも前進させようとする意図を全く感じさせないもので、本当に県民理解を促進しようとしているのか、強い疑念を感じさせるものでした。
また、みやぎ型管理運営方式の目的は、「3事業を一体として民間の力を最大限活用することにより、経費節減、更新費用の抑制、技術継承、技術革新等を実現し、持続可能な水道事業経営を確立する」とされていますが、今回の回答内容は、その実現可能性に一層の疑念を抱かせるものでした。
そのような経過と、9月9日に開催された「みやぎ型管理運営方式に関する事業説明会」での質疑を踏まえ、解消されない疑念を再び公開質問状として提出するものです。今回の提出目的も前回同様、県民議論を深めることにあります。その目的に沿い、県の丁寧な説明を要請するものです。また前回同様、質問状と県の回答については、県ホームページで公開することを要請致します。
恐れいりますが、本状の質問内容に対する回答は、下記あてに11月10日(火)までお願い申し上げます。
〒980-0803
佐久間法律事務所 気付
電話 022-267-2288
FAX 022-225-5704
なお、本質問状において第一次公開質問状・それに対する回答、9月9日開催の説明会は以下のように略しています。
「6.10質問」➡6月10日付「命の水を守る市民ネットワーク・みやぎの公開質問状」
「7.22回答」➡7月22日付「宮城県上工下一体官民連携運営事業(みやぎ型管理運営方式)に関する公開質問状について(回答)」
「9.9説明会」➡9月9日開催「宮城県上工水一体官民連携運営事業(みやぎ型管理運営方式)について」
質問1 国内水道のコンセッション事業・海外で進む再公営化について
(1-1)国内水道事業分野でのコンセッション事業は拡がっているのでしょうか? 宮城県の現状認識を示してください。
内閣府によれば、水道事業分野のコンセッション事業の進捗状況として、宮城県・大阪市・奈良市・浜松市・伊豆の国市・村田町の6自治体がデユーディリジェンス以上の ステップの進捗状況にあると報告されています [i]。しかし、未来投資会議構造改革徹底推進会合事務局の評価では「水道分野については、6件の数値目標の達成を認める。 ただし、6件のうち実施方針の策定完了済みという後戻りしない手続きまで完了して いる案件は1件もない」としています。
当ネットワークの各市町への聞き取りでも、宮城県・大阪市以外の市町は実質的にコンセッション事業化には進んでいません。
奈良市は議会にて実施方針案が否決され(平成28年3月)、民間委託に舵を切りました。伊豆の国市は給水人口わずか733人のエメラルドタウンの管理水道のコンセッションにすぎません。村田町はコンセッションを断念して包括民間委託への道を探っています。水道法が改正され、地方公共団体事業型の仕組みが導入された[ii]にも関わらず、その仕組みに積極的に取組もうとする自治体が増えないどころか撤退が相次いでいる 状況にあります。九州地区では中核市10市[iii]全てが「コンセッション方式」の導入 予定はないとしています[iv]。県はこうした全国の水道事業分野のコンセッション事業の進捗状況をどのように評価していますか?
(1-2)海外での水道事業の再公営化は本当に進んでいないのでしょうか?
県は「9.9説明会」において合計6枚ものシートを使って、海外では「一方的に再公営化が進んでいる訳ではありません。」と結論づけて説明しました。その根拠資料として、❶2019年5月15日に開催された「第4回水道施設運営等事業の実施に関する検討会資料(厚労省)」と❷2015年3月発行の「新水道ビジョン推進支援に伴う調査業務報告書」を挙げています。
県は各資料から都合の良い部分だけを引用して再公営化が進んでいないことを説明しようとしていますが、県の主張を否定するデータもあります。以下に掲げる「再公営化の動きを示す三つのデータ」を踏まえ、それでも海外における再公営化の動きが「一方的に進んでいる訳ではない」となぜ言えるのかを説明してください。
【再公営化の動きを示す三つのデータ】
① 「9.9説明会」の際、県が根拠資料とした「❷」資料の「概要版7」で、1992年から2007年の官民連携水道事業の再公営化の分析では、「過去15年間に一度は民間事業者が運営していたものの、その後公営に戻った事業が約1/4あることを意味する」と指摘しています。この資料の意味するところは「そもそも15年間の官民連携水道事業のなかでは再公営化するという流れもあった」ことを示しています。
② 2020年7月に発行された「公共の力と未来」(トランスナショナル研究所発行)によれば、2000年から2019年の間で、フランスでは109の水道事業が再公営化されたと指摘しています。
③ 2020年3月発行「水道、再び公営化!」(岸本聡子:集英社新書28・29ページ)において、世界全体の水道事業の再公営化がすすんでいる調査データを発表しています(調査はトランスナショナル研究所)。それによれば、2015年が235、2017年が267、2019年が311と水道事業の再公営化が進んでいることを紹介しています(いずれも累積値)。(「➁」で紹介したフランスはこの数値の内数ですから、フランスでの再公営化が占める割合が高いことがわかります。)
このような海外での再公営化のトレンドをみれば、「一方的に再公営化が進んでいる訳ではない」とそれを軽視して、拙速にコンセッション導入を急ぐことはすべきではありません。コンセッションはいったん導入したら引き返すことが出来ない制度だからです。
質問2 「みやぎ型管理運営方式」は「水道民営化ではない」という主張について
県は「9.9説明会」の開会挨拶冒頭、「みやぎ型管理運営方式は民営化ではない」と切り出しました。こうした発言がなんども繰り返されています。6月10日に私たちが公開質問状を提出する際のやり取りの場でも、取材中の報道関係者に「水道事業は民営化ではないので注意していただきたい」と威嚇するかの様な発言までしています。
私たちはこの間、宮城県とのやり取りでは、基本的に「水道民営化」という言葉を使ってきませんでした。それは「民営化」という言葉を巡って議論しても水掛け論にしかならず、熟議を尽くすうえではあまり意味がないとの判断からでした。「民営化」という言葉は、“政治的言葉”であり、定まった定義により使われているものではありません。例えばイギリスでは、所有も民間セクターに移行されて初めて民営化が完成されたと見なされて「完全民営化」と呼ばれ、所有が全て民間セクターに委ねられていない場合を「部分民営化」と呼ぶとされているようです[v]。また西欧での民営化を15項目に分類する学者もいるようです。日本では、そのように民営化を定義して使われている訳ではなく、論者の立場でそれぞれ論じられますから、水掛け論になってしまいます。
しかし、県が「民営化ではない」という言説を何度も繰り返していますので、今回の公開質問のなかで取り上げるものです。
(2―1)村井知事の論法からすれば、「みやぎ型管理運営方式」のわかりやすい表現は「水道民営化」ではないですか? それでも「民営化ではない」という理由を示してください。
村井知事は「みやぎ型管理運営方式」に関して様々な場面で様々な表現で語っています。
1)2016年12月19日 第3回未来投資会議での発言
・「実は、宮城県は上水、下水だけでなくて、工業用水も一緒にして、上工下一体での民営化というものを考えてございます。」
2)2017年6月14日 内外情勢調査会での講演
・「仙台空港の民営化と同様に、もう一つの創造的な復興としてこれから取り組んでいきたいと考えているのが‥‥(上工下水)一体的に民間に運営をお任せすることです。他の自治体では行っておらず、宮城県の新たな取組として行いますので『みやぎ型管理運営方式』と命名しています。」
・「一言に『民間活力の導入』といっても様々な手法があります。例えば維持管理や運営管理、点検の時期や機械の更新時期などをこと細かく指示して民間に発注するというのも一つの方法です。仙台空港の民営化は、経営・計画から維持管理までほとんど民間に任せていますが、土地の所有権などは国がもっているので『PPP/PFIコンセッション』という位置づけです。今回、宮城県が考えている『上・工・下水一体管理連携運営』も、同じく『PPP/PFIコンセッション』に位置する民間活力の」導入になります。」
3)2018年11月29日 参院厚生労働委員会での参考人発言
・「地面から上の部分、水処理施設、こういったものについては民間にお任せするということでございます。」
・「よく言われることが、民間に任せますと官の責任が…」
4)2019年2月定例会 2月22日内藤隆司県議(当時)との質疑
・(未来投資会議で「水道民営化」という言葉を使ったことについて)「一番わかりやすい表現ということであえてこういう言い方をいたしました。」
・「狙いは民営化ということではなくて…民間の力を活用しなければならないんだということを、これを伝えるためのものであるということをお話ししたかったということで、その辺は言葉尻を捉えて県民に誤解を与えるようなことはぜひ避けていただきたいとお願い申し上げたい。」
5)2020年3月10日 河北新報取材に対して
・「水道事業の民間委託や仙台空港民営化といった創造的復興の視点を大事にした
い。」
村井知事は未来投資会議で極めてすっきりと「上工下一体で民営化を考えている」と発言していますし、そのことを追求された2月定例会でも「一番わかりやすい表現」として使ったと認めています。「みやぎ型管理運営方式」をわかりやすく言えば水道民営化だと知事自身が発言しているのです。そしてそのことは撤回も修正もされていません。
さらに内外情勢調査会での講演で、みやぎ型管理運営方式は「PPP/PFIコンセッション」に位置すると述べました。仙台空港民営化も「PPP/PFIコンセッション」なのですから、「みやぎ型管理運営方式」を仙台空港民営化と同じように「水道民営化」と呼称することになんの矛盾もありません。
これら知事の水道民営化発言について、「それでも『みやぎ型管理運営方式』は民営化ではない」という理由を説明してください。
質問3 モニタリング機能について
(3―1)「みやぎ型管理運営方式」に移行した場合、「(仮称)経営審査委員会」 以外の監査、監視、モニタリング機能をもった機関はどのように関与するのですか?
現在の公営水道事業は、当然にも宮城県の内部統制システムのなかに組み込まれています。本庁、地方機関の合計6事業所が実施所属数と承知しています。同時に包括外部監査の対象事業でもあります。
以下の点について説明してください。
① 「みやぎ型管理運営方式」へ移行した場合、本庁は別として、移管した9事業はこれら内部統制システム・外部包括監査等のシステムから除外されるのか否かについて。
② 「(仮称)経営審査委員会」の役割は、水道水質検査にかかる県と運営権者の役割監視と水質保持の第三者的監視とともに「経営に関する事項・経営上の課題等」を審査すると説明されています。運営権者の内部統制・監査役機能と、「(仮称)経営審査委員会」との機能的な関係性について、説明してください。
質問4 水質検査・試験体制について
(4―1)下水道水質検査における「県の役割」・「運営権者の役割」を説明してください。
「9.9説明会」資料、8-2で「水道水質検査のモニタリング体制」について説明がされています。しかし「下水道」についての説明はありません。下水道事業が「みやぎ型管理運営方式」に移行した場合、下水道水質検査における「県の役割」と「運営権者の役割」を区分して説明してください。
(4―2)「6.10質問」で回答されていない事項を回答してください。
「6.10質問」では、「質問9 下水道事業について」として、「➁下水道事業の経費費目ごとの削減内容についてお聞きします」と3項目についての削減根拠を質問しましたが、「質問3で回答したとおりです」との回答でした。
「質問3」はマーケットサウンディングでの民間事業者の意見はどのような内容だったかを聞いたものです。「質問9」はマーケットサウンディング後、宮城県はどう考えたか?という質問ですから、「質問3で答えたとおりです。」では回答になっていませんので、再回答してください。
【「6.10質問」で以下が未回答】
➁下水道事業の経費費目ごとの削減内容についてお聞きします。
1)直接業務費が下水4事業合わせて50億円(20年間)、委託費が45億円(同)削減される試算がなされています。この削減根拠を示してください。
2)動力費(電気代)を削減すれば、長時間のエアレーションはできなくなり、排水の水質悪化は避けられないと思われますが、削減可能とした根拠を示してください。
3)薬品費については一括購入という手法で削減することには限度があると思われますが、これだけの金額の削減が可能とした理由について、示してください。また、薬品の購入の時期が現在と民営化後でどのように変化するのか、次亜塩素酸ソーダ以外の薬品についてはとくに丁寧に示してください。
(4―3)なぜ「現行水質検査・試験体制の維持」を求めないのか?理由を示してください。
「6.10質問」の質問4で、「みやぎ型導入による検査項目・試験項目内容」について質問しました。回答は「上水については県が公表している水質検査計画、下水については現行の県が管理している水質管理基準を参考にする」こととして、上水・下水ともに水質は現行と同等、または水質管理は現行と同等以上とすることを求めているので、水質及びその管理体制が低下することはない」と回答されています。
性能発注であるがゆえに、「参考に」「同等以上の」などの言葉を使っていますが、県が水質及びその管理体制を低下させないことを堅持しようとするのなら、「水質維持のため、現行水質管理体制を最低限の水準として維持する」ことを要求水準ととして設定すればよいだけです。現状のやり方が維持されるということにより、県民の「安心」が担保されます。
それを、「参考にする」とか「現行と同等以上」などという曖昧な言葉を使うが故に、県民は、「みやぎ型管理運営方式」で民間事業者に運営をまかせれば、現在の水質検査・試験体制をわからないうちに、わからない様に変えてしまうのではないか?と不安をもつのです。例えば下水であれば、「現行の放流水の測定頻度及び分析項目の変更を認めない」と県のスタンスを明確にすることが必要なのです。
なぜそのように「現行水質検査・試験体制の維持」を求めないのか。その理由を説明してください。
(4-4)下水道処理施設の有資格者配置の計画を示してください。
下水道処理施設の運転には有資格者を置くことが下水道法22条に規定されています。「みやぎ型管理運営方式」導入の場合であっても、水道事業者は県ですから、有資格者の配置がされます。県と運営権者での有資格者配置の考え方を説明してください。
質問5 コスト削減の根拠について
(5―1)「197億円のコスト削減は契約に盛り込むから間違いなく実現する」のであれば、契約の内容をどのようにするのか説明してください。
「6.10質問」では、マーケットサウンディングでの民間業者の経費削減にかかる意見はどのような内容だったかを質問しました。「7.22回答」では、民間業者の意見を参考に県が「実現可能性のある数値として設定した」と私たちの質問に直接答えることを避けました。
そして「197億円以上のコスト削減をすることを条件に提案を受け、その提案内容を盛り込んだ契約をする」から、コスト削減は「間違いなく実現する」と回答しました。
197億円以上という削減額は20年間の契約期間のなかでの話しです。197億円以上コスト削減できたかどうかは20年経たなければ誰にもわかりません。20年間で197億円以上のコスト削減を、誰が、どのような方法で、認定するのかを契約のなかで明確にしなければなりません。そしてこのことを「基本協定書」に盛り込むのか、「公共施設等運営権実施契約書」に盛り込むのか、それをどのように考え、現在の競争的対話のなかで民間事業者に示しているのか、説明してください。
(5―2)どうしてみやぎ型管理運営方式に移行した直後の年から経費が削減されるのか? 説明してください。
県は、発表されている公募文書のなかで「対象9事業」ごとに「収益的収支及び総事業費の比較」をシミュレーションしています。つまり20年間の契約期間内で、公営で事業継続した場合と、「みやぎ型管理運営方式」で事業を行った場合とでどのような経費等の差異が生まれるか(コンセッション方式の事業メリットがどれくらいになるか)をまとめたものです。
それによれば、「みやぎ型管理運営方式」に移行すれば、移行したその年度から主要経費が削減されるとされています。大崎上水事業を例にすれば、人件費(県分)3%、動力費11%、修繕費15%、薬品費9%、施設管理委託費28%、テレメータ回線料12%、管理費25%削減されると計算されています。金額でいえば経費全体で1.6億円削減される計算になっています(別紙資料1)
県が「マーケットサウンディングで民間事業者等から得た意見を参考とし、県が実現可能性のある数値」としておいた結果としてこの削減率計算がされているのですから、なぜ、「みやぎ型管理運営方式」に移行した初年度からこのような多額の経費が削減されるのか、県の見解を説明してください。
(5-3)どうして20年経営シミュレーションの削減率が「目標削減率」と異なるのか? 説明してください。
すでに県に数値確認済みの「9事業全体 事業費削減試算」(別紙資料2)では、特に上水2事業、工水3事業で、県がこの間の説明会等で公表したり、公募関連文書にも掲載している「目標削減率」と、質問(5-2)で取り上げた「収益的収支及び総事業費の比較」から求めた削減率が異なります。それぞれ無視できない差であると考えますが、なぜこのように削減率が公表しているものと異なるのか説明してください。
(5-4)「みやぎ型管理運営方式」に移行した場合のダウンサイジングに関する説明をしてください。
県はみやぎ型管理運営方式導入による事業費削減を検証するに当たって、自から実施する場合の事業期間の予定事業費と、事業の一部をPFI事業として運営権者が実施する場合の事業費とを比較し、後者による事業費節減が期待できることの検証を行ったこと、この検証には、管路・設備のダウンサイジング等を見込んだ更新費用の算定を行いシミュレーショに反映させたと説明しています。
そこで以下の点について説明してください。③については資料の呈示を求めます。
① 施設の統廃合、ダウンサイジングの具体的検討内容。
② 対象となった水道施設、施設毎のコスト削減額。
③ 上記②を示すデータ。
質問6 災害対応について
(6―1)新型コロナ感染症対策シミュレーションからの教訓等について説明してください。
通常予見できないような災害が発生した場合の1つとして新型コロナ感染症への対応に関連して質問します。
県は、水道事業に携わる職員が感染した場合の水道事事業の運営についてシミュレーションをしたと聞いています。2020年6月26日の県議会一般質問の議事録によれば櫻井公営企業管理者は「新型コロナ感染を想定して試行した、この試行により得られた知見を踏まえ・・・安定的に・・・事業を運営できる体制の充実を図った…」と答弁しています。
以下の点について説明してください。
① このシミュレーションの内容について、期間、人員=県側・委託業者側、実施した業務の内容、実施業務の絞り込みの有無、絞り込んだとすればその理由とそれにより得られた知見の内容。
② さらに知見に基づき実施した対応策、今後予定される対応策、競争的対話の中で生かす方策。
質問7 コンセッション以外の選択肢の検討について
(7―1)コンセッション以外の選択肢として岩手県中部企業団の事例を検討しましたか?
県は「9.9説明会」の資料4-2で「施設の統廃合や管路のダウンサイジング等により効率化を図っても料金上昇は避けられない見通し」だと述べています。
岩手中部水道企業団は、公営の事業団でコンセッションとは違う方法で全国の水道事事業が共通に抱える問題に取り組んでいると聞いています。2014年4月にスタートし、4年間で約76億円の投資を削減したと報告されています。年間料金収入46億円と比較しても大きな成果を挙げていると思います。また、人事異動で部署が変わると専門性が蓄積されないことから、「水道のプロ」を育てる意味から職員は専門職員で構成されています(「日本の水道をどうする!?」内田聖子編著・発行コモンズ)。他方、これは成功した1例で、広域化は地域の実情によっては適切な選択肢ではないこともあると言われています。
以下の点について説明してください。
① 県は岩手中部企業団の事例を検討しましたか。検討した結果、どのような評価になりましたか。検討しなかった場合、その理由は何ですか。
② 岩手中部企業団とは別にコンセッション以外の方法を採用している水道事業の実例を検討しましたか。したのであれば、どんな運営方式、あるいはどのような先行事例を検討しましたか。これらを採用せずコンセッションを選択した理由は、何ですか。
③ 上記①②を検討していないのであれば、それは何故ですか。
質問8 事業終了時の対応について
(8―1)コンセッション事業に移行し、その事業が終了した時の対応を説明してください。
公共施設等運営権実施契約書第78条によれば本契約期間は基本20年で終了し、「いかなる理由によっても」運営権設定の日から25年を経過する日を超えることは出来ないと規定されています。
以下の点について説明してください。
① 最大25年経過後の新たな事業者の公募方法を示して下さい 初回と同様の競争的対話等の手順を踏むのですか。
② 契約終了後でも水道事業の中断は許されません。事業の中断という事態が発生しないように、県はどのような対応策を考えていますか。
③ 上記79条(1)によれば運営権者は180日前までの間に引き継ぎの準備をします。県は20年~25年もの長期に亘って運営権全部を移譲していました。わずか半年の期間で水道事業の安全・安心な運営を始めるための準備をする方法を具体的に示して下さい。特に、既に県にはいなくなっていると考える専門職の確保をどう考えますか。
④ 上記84条では運営権者が破産した場合、事業を放棄した場合について規定されています。このような場合、替わりの運営権者を見つけるか、それが出来ない場合は、県が自から事業を実施することになりますが、隙間なく事業を継続する体制をどのように作りますか。
以上
[i] 2020年4月9日 未来投資会議構造改革徹底推進会合 内閣府提出資料
[ii] 2019年5月15日 水道施設運営等の事業の実施に関する検討会(厚労省)における資料 『水道事業における官民連携に関する手引き(改定案)』
[iii] 長崎市・佐賀市・北九州市・熊本市・福岡市・大分市・鹿児島市等(西日本新聞)
[v] 神戸大学MBA https://mba.kobe-u.ac.jp/business_keyword/8007/
記者レク
小川さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)
どうもお忙しいところありがとうございます。命の水を守る市民ネットワーク・みやぎとして二回目の公開質問状を、いま提出してきたところです。お手元に公開質問状の内容を添付させていただきました。
第一回目の質問をして、1ページにその内容についての評価を記載しています。この間、宮城県にはずっと、「県民と水道の問題についてちゃんと議論しましょうよ」と いうことを言ってきていて、宮城県自体も県民の理解が進んでいるわけでもないと認めているんですが、コロナの問題もあってきちっとした議論ができないでいるというのが今の状況です。
なので質問状をわれわれのほうから提出することによって、何が問題になっているのかということを、できるだけシャープに県民の中で考えることができるようにしたいと いうのが第一次の公開質問状の内容でした。
その内容について答えられないということは、議論がなかなか深められない状況になっているということだと思います。第二次の質問状を提出することによって、いま何が 問題なのかをさらにブラッシュアップして、県民のみなさんに考える機会を提起したいというのが今回の提出の動機です。11月10日までに回答してもらうように言っています。
全体の質問は、大きな項目としては8つあります。
中心的な内容は、質問4です。水質がこの民営化によってどうなるのか? という県民の不安が大変多くあるわけです。それで、水質検査と水質試験のやり方について質問を再度したということと、県はコスト削減ができるんだということを繰り返し言っていますので、質問5でこのコスト削減の根拠についてさらに具体的に聞きました。第一次の質問でこの2つの解明がはっきりしていないので、もっとはっきりさせてほしいと求めました。
そのほかに、第一次の公開質問状を出すことによって、県が、「マスコミのみなさんも注意してください。民営化ではありません」ということを繰り返し言っています。われわれとしては、そういった議論はできるだけしないつもりでいたんですが、9月9日の県の説明会においても冒頭のあいさつで、「水道の民営化ではないんだ」と言うわけです。黙っていると、そのことばかり繰り返されて、正しくない認識が広まってしまうということもあるので、質問1でなぜ現在、国内での水道コンセッションが進んでいないかということや、海外でいったん民営化したけれども再公営化するという動きがこのようにあるということ、知事が未来投資会議という公的な議論の場で民営化と言っている事実についてなど、質問2で知事が水道の民営化についてどういうことを言ってきたのかということを今回特別に取り出し、「民営化」の問題についての項目を入れました。
最も県民の方々が関心を持っているのは水質問題です。悪くなるんじゃないの?という不安です。これに対して、あまり明確に答えていないところがいっぱいある。質問4で県はなぜ「現行水質検査・試験体制の維持」を求めないのか? ということを書いてあります。
県は「現行の水準を守る」と言っているんですね。下水も上水も水質は維持すると言っている。ならば、「今やってる検査とか試験をそのままやってください」と言えばすむ話なのに、「今やってるものを参考にしろ」とか「現行と同等以上のものにしろ」とか曖昧なことを言うものだから、県民はさらに「実際どうなるの?」となる。
「今までやってることをそのままやってください」と言えば、何も県民の方々は不安に思わないです。安心が担保されることになると思うんですが、そういう言い方はしないということで、ホントになぜ、そのように言わないんですか? ということを求めています。これは県民の関心事項ですので、きちっとした答えを得て、議論ができるようにしたいというふうに思っています。
コスト削減の問題については、県は「197億円のコスト削減、契約に盛り込むから必ずできます」と繰り返し言ってるんですね。マルチ商法の説明ではないんです。マルチ 商法は「必ず儲かる」という言い方ですよね。
20年間で197億円のコスト削減というのをどうやって検証するのか?
「契約に入れるから大丈夫だ」と言われても、「検証はこういうふうにやりますから」とか「誰がこういう場面でこういうやり方でやりますから」とかはっきりと決められていない中で、納得できるものではない。たとえば、20年経過して、「やっぱり197億円の削減できませんでした」となった時に、誰が どうやって責任を取るのか?
そういう意味でも、「契約書の中に入れるから必ず削減するんだ」ということについて疑問は全然解消されてないので、「もっとはっきりしてください」と質問5のところで言っています。
幹事社 東北放送
今回の公開質問状を提出した最も大きな理由についてお聞かせいただけますか?
小川さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)
1ページの真ん中にありますが、 第一次の質問状で投げかけた問題点や疑問にまともに答えられていないということが、第二回目の提出をした理由です。
質問2のところですが、民営化ではないという県の主張について、今までは、特にみなさんとして質問に盛り込んだり県のほうに質すようなことはされていなかったという ことですか?
小川さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)
意識的にしなかったということです。 民営化ということ一つ取っても、いろんな考え方があるんですね、今この日本の中でも。たとえば、この質問状の中に入れてますけど、仙台空港は民営化で、なんで水道は民営化じゃないのか?ということ自体、県から十分な説明がされていない。
そういうことを議論すると、それだけでものすごく時間がかかっちゃって、本質的な 議論、県民が本当に知りたい議論ができないということで、われわれは意識的にしなかった。だけど、県が9月9日の説明会でも挨拶の最初に言いますから、「これはちょっと看過できないな、この際ハッキリしておこう」ということで、質問2に入れました。
共同代表のお二人から一言ずつお願いします。
佐久間共同代表(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)
今みなさんに私たちの学習会のチラシをお配りしました。これにみやぎ型は「ナンバーワンじゃなくて、ロンリーワン」というキャッチを付けています。
これは質問1にからむことなんですね。いま小川さんのほうからみやぎ型についてさまざまな疑念があり、第一回の公開質問状にもちゃんとしたお答えがなかったということを述べましたが、このみやぎ型を少し広い視野で見てみると、これはどういうような位置にあるのか? ということなんです。
質問1のところに、日本ではどうなってるか? ということで、コンセッションの対象にピックアップされた都市がいろいろありましたが、そこは全部、コンセッションは 取らないという結論を出している。宮城県では村田町というのが必ず上がってきてたんですが、ここも小川さんの調査では包括民間委託にするということです。それから、 九州の中核都市10市すべてが、コンセッション方式の導入はないと決めたという記事が、西日本新聞に上げられています。
みやぎ型は、全国初めてのモデルケースなのか実験場なのかわかりませんけど、上工下水一体というのは初めてですね。で、人口が非常に多い。県全体の人口220万の中で198万人ぐらい。非常に大きな規模で、水道事業の大転換です。これが日本の状況から見ると、まさに独りぼっちで一所懸命進んでるという状況ですね。
世界的にどうかということを考えても、再公営化というのが結構あるんですね。民営化のマイナスというものがヨーロッパではだんだんわかられてきて、水メジャーがそこでは事業ができなくなって、アジアの日本に事業展開の場所をシフトしてきていると いうことではないかな、と私は思っています。そういう海外の事情というのも、やっぱり理解しなくちゃいけない。なんでダメになって失敗して、 もう一回公共サービスに戻したのか? 宮城だけがそれの例外だということは、ふつうあり得ないですね。そういうような事例を学ぶということも、非常に重要ではないかと思っていますので、学習会ではそういうことについてみなさんにお話します。
あまり詳しい質問にはなっていませんが、今回新しく新型コロナの感染症対応を県はシミュレーションしたと、県議会の議事録にあるんですが、それはいったいどういうことをやって、その結果どういう問題点がわかって、それに対してどういう対策を考えているのか? というようなことも、新たな問題として聞きたい。
それから、コンセッション以外の選択肢、お隣の岩手では中部水道企業団というところで非常に成果を上げている。そういう実例がすぐ近くにあるのに、どうしてコンセッションを取ったのか? いろんな選択肢を検討したうえで、この結果になったのかどうかということもよくわからない。そのようなことも今回聞いてみたい。
20年もの長い事業だと、いま私たちは気を取られていますけれど、20年、最長25年、事業が終わった時に、どういう形で新たなる水道事業の供給が行われるのか?
コンセッションをまた続けるのか、それに問題があるとなった場合に県が引き継ぐんですね。その引継ぎは、20年、25年お任せしてうまくやれるんだろうか? 特に心配なのは、人材の確保です。
そういう疑問が次から次へと湧いてきた。県からまたお答えがあると思うんですが、 そのお答えを受けて、場合によっては、また質問するということも考えています。少しみやぎ型というものを全体的にとらえて、「水は人権」という国連決議が出るぐらいですから、それにふさわしい事業の運営の 中身が保証されるのかをちゃんと追求していく必要があると思っています。
中嶋共同代表(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ)
専門家にお任せしたらいいんじゃないか、しつこいんじゃないかと思われているかもしれませんが、公共サービスのあり方については、「公共サービス基本法」という法律がありまして、「どう設計するかについては、住民と事業者と十分話し合って」と書いてあるんです。
そういう場所が今までなかったから、私たちのほうから作っていこうということなんです。幸いなことに、受け手もちゃんとしっかり受け止めておられますから、十分な意思疎通をして、また補完的な会合なども持ちながら、十分に住民の意見が集約できるようなことを考えていきたい。その枠組みをいま作っているということがあります。なかなか面倒ではあるんですけれど、いい仕事にするためにはやはりお互いに力を出さないといけないと思っています。