宮城県の水道民営化問題

命の水を守るため、水道の情報公開を求めていきましょう!

江成先生のなぜ? なに? 下水道講座    下水道の不思議なヒミツがいっぱい!     後編 みやぎ型管理運営方式に関する公開質問状の報告!

みやぎ型管理運営方式に関する公開質問状の報告             東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センター 事務局長 小川静治さん

 

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              公開質問状プレゼン資料より

 

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小川と申します。こちらのスライドのほうにあります東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センターの事務局長をやっております。

東日本大震災の復興センターの人間がなぜ水道の民営化の問題をやっているのかというと、そもそも水道の民営化というのは、2011年の3月に震災があって、5月に前原誠司という元民主党財務大臣と菅官房長官側用人みたいな福田隆之という人が村井知事と会って、仙台空港の民営化と水道の民営化、この2つをやれと提案したんですね。その時に、村井さんはやろうということで仙台空港の民営化に道筋をつけた。そもそも水道の民営化も含めて提案が出ていた。

その後、仙台空港の民営化の後に、水道の民営化ということを言い出したんですね。 それも、創造的復興である、と。創造的復興として、水道民営化を立てられた以上、 復興支援県民センターの立場から言えば、水道の民営化にも向かわなければいけないということになっちゃって、結局、われわれ県民センターとしても水道民営化に取り組んでいると、そんな経緯があります。

 

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             公開質問状プレゼン資料より

 

前振りはそのくらいにして、6月10日に提出しました公開質問状の件です。

3月13日に河北新報が、県議会が終わった後、コラムみたいなもので県議会を振り返ってという記事を掲載するんですね。2月の県議会では、水道の民営化議論というのは、ほとんど質疑がなかった。11月議会で条例改正が通ったということを受けて、そのような状態になったということなんですが、河北新報の記事によると、昨年11月定例会で 可決され、「ヤマを越えた」とする雰囲気が議会の中に広がった、と。

つまり議員の人たちは、まあこれは終わったことで、そういう認識ということですね。「過去の話題」だというふうに考えた人が多かったようだということが一点。

それから、「制度が難解すぎて、全体的に苦手意識を持つ議員が多い」という保守系の議員の人の生の声だということで、困っちゃうわけですよね。苦手意識を持って議員がこの問題に当たられた日にはたまったもんじゃないんですけども、しかし、そのようなことを言っている。

三番目は、前の月に選挙で県議が新しくなって、新人議員は当選直後に議決を迫られ「理解不足のまま賛成せざるを得なかった」と言われると、県民としてはふざけんなって話になるんですけども、結果的にはそういうことだったということを新聞記事で紹介されています。

この新聞記事の中では結論で、「議会の監視機能が機能していない」と指摘している。11月の条例改正後、これから情報の開示方法が限られてくるんですね。県民に対して開示される情報の数が、実に少なくなってくる。現実にいま少ないという状況があります。そういう点で言うと、議会が頑張らずして、誰が頑張るのかということを河北新報は言っている。私はその通りと思う。この記事を書いたのは、実を言うと、先ほど佐久間先生がお話になっていましたけれど、大変に(命の水を守る市民)ネットワークに共感の立場で記事を書いていただいた女性記者なんですが、いま東京なんですけど。

議会の監視能力・監視機能が本当に高まるのか? という点においては全く不安です。しかし、ご承知のとおり、新型コロナウイルスの感染拡大という問題が起きたんですね。

(命の水を守る市民)ネットワークは、櫻井企業局管理者に対して、去年の11月に「年明けても説明会ちゃんとやるんですよね」っていうふうに、やり取りの中で話をした。 櫻井さんは、「やります!」と言うんですね。サービス精神旺盛な方のようで、「どんな方法がいいでしょうかね? ご提案は?」ということまで合わせて言っていました。

ところが、新型コロナウイルスがこのような状態になりましたので、説明する機会がなくなったわけです。できないですから。一切やっていません。

もう一方で、市民の側は「もう民営化されるんでしょ」というふうな受け止めです。 議会も低調で、説明会も開くこともない。話題がそもそもなくなってしまったわけです。

その一方で、県政だよりで水道民営化の問題について特集がされました。今日お手元にその時の資料がございます。ご覧になった方も多いと思います。

 

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          公開質問状プレゼン資料より

 

miyagi-suidou.hatenablog.com

 

これらの状況を見た時に、水道民営化問題は何も終わっていないわけです。何もわからないまま、民営化することが可能になるような条例改正が行われた。じゃあ、どのような内容での民営化なのかということについては、まだ全く明らかになっていないわけですね。そういう意味では、これからがまさに本番なんだということが一点目です。

もう一つは、そうは思いたくはありませんけれども、コロナに便乗した県の説明責任の放棄、要はこれを機会として、コロナをある意味で奇禍として、あるいは便乗してということを、そうとは思いたくないですけれども、説明責任を放棄するということは許されないというふうに思います。

そういう意味で、もう一度、水道民営化問題の県民議論を深めるということで、公開質問状を提出することによって、問題をもう一度クローズアップしようということがねらいです。

 

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             公開質問状プレゼン資料より

公開質問状の内容の項目を整理すると、こういうことになります。

この内容の7番目までは、県政だよりの特集の中身とピタリと同じにしてあります。 ですから全体的に言えば、県政だよりの内容と比較対象しながら議論ができるようにと工夫したつもりです。

 

公開質問状の全文

 

2020年6月10日(水)

 

宮城県知事 村井嘉浩 様

 

命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ

共同代表  佐久間敬子

中嶋  信

 

宮城県上工下水一体官民連携運営事業(みやぎ型管理運営方式)に関する

公開質問状

 

私たち「命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ」は、現在宮城県が進めている「宮城県上工下水一体官民連携運営事業(みやぎ型管理運営方式)」の導入に反対し、よりよい水道事業を創っていくことに取り組んでいる団体です。

 

宮城県の水道事業の民営化に道をひらく条例改正案は昨年12月に成立しました。私たちはその内容、手続きともに問題があると考え、多数の賛同団体の支持を得て、県議会に前記条例改正案の継続審議を求める請願を行いましたが、不採択となり、成立をみたものです。しかし、条例改正前も現在も、私たちの疑問や不安は何ら解消されていません。私たちはこれからも県に説明を求め、その内容を広く県民にお知らせし、人権としての命の水を守り、公衆衛生上重要な水道3事業が真に県民の財産として生かされるよう行動していきます。

 

水道などのライフライン、交通や通信、警察や消防など、公共サービス事業は多彩で、しかも一層広がりを見せています。いずれも安心社会を構成する装置です。国や地方自治体による事業と誤解される場合もありますが、担い手は公共団体だけでなく、市民や営利企業なども含まれ、これらの協働が重要な意味を持ちます。そのために、公共サービス基本法(2009年公布)は基本理念を明らかにすると共に、「公共サービスに関する必要な情報及び学習の機会が国民に提供されるとともに、国民の意見が公共サービスの実施等に反映されること」(第3条)を定めています。宮城県は水道事業の構造変更に着手していますが、この事業の本旨を踏まえ、住民の意見を積極的に反映させる努力を図るべきと考えます。

また、今般の新型コロナ・パンデミックはグローバル経済の脆弱性を露わにし、その中で活動する企業の存続の危うさをも浮き彫りにしました。同時に私たちに「公衆衛生」の大切さを再認識させました。「コロナ大恐慌」の襲来さえ叫ばれる中で、県民に欠かせない公衆衛生の基軸である水道事業を本当にグローバル企業に委ねてしまってよいのか? ここで一旦立ち止まって考えるべきです。コロナ後の社会を見据え、ローカルな公営事業よりグローバルな民営のほうが持続可能だという前提そのものを再検討する必要があることを指摘しておきたいと考えます。

 

「みやぎ型管理運営方式」に参加を希望する企業の応募が本年5月1日に締め切られ、応募した3事業体が第一次資格審査を通過し、6月上旬に第二次審査が開始されるとのことです。これまで公表された県のスケジュールによれば、第二次審査では、応募企業から実現可能性を聞き取る「競争的対話」を実施し、来年1月中旬までに具体的な事業計画が固められると承知しております。

そうしたなかで、本年5・6月号の「みやぎ県政だより」では、「ここが知りたい!『みやぎ型』」として特集が組まれています(以下、「ここが知りたい!『みやぎ型』」は、「県政だより」と略)が、その内容はあまりに漠然としていて、具体的な理解を得るには程遠いものと考えます。そのような視点から、みやぎ県政だよりの内容を中心に、私たちが考える問題点や疑問点を公開の上、質問し、県の回答内容を広く県民に紹介しながら、県民議論を深めることを目的として本状を提出するものです。

 

恐れいりますが、本状の質問内容に対する回答は、下記あてに7月13日(月)までお願い申し上げます。

 

〒980-0803              

仙台市青葉区国分町1丁目8-10 大和ビル2階

佐久間法律事務所 気付

電話 022-267-2288

FAX 022-225-5704

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

質問1 20年契約による人材育成・技術継承のメリットについて  

「県政だよりQ1」では、みやぎ型管理運営方式では契約期間が20年なので「民間事業者の雇用が安定」し、「人材育成・技術継承が容易」とメリットが示されています。

県が水道事業者として最終責任を持つ体制を維持するためには、水道事業全般に精通した県職員の育成が必須です。しかし、今回の「みやぎ型」導入により、水道事業に精通した県職員人材が育成されず、最終責任を担える能力を喪失し、結果的に運営権者に事業を「丸投げ」するような運営になってしまうことを強く懸念します。

 

  • 今後の水道事業専門県職員の長期的育成方針を示してください。
  • 「要求水準書」等において運営権者が社員を雇用する場合、

1)「安定的雇用を担保する要件」をどのように求めているか

2)社員の「人材育成・技術継承」のための教育制度導入をどのように求めているか

を示してください。

 

【質問の内容説明】

 「県政だよりQ1」では、(運営権者に水道事業運営を任せても)「最終責任を持つ水道事業者は県のままで変わり」ないことが強調されています。

私たちが強く懸念していることは、20年間もの長期契約を交わすことによって、県が最終責任を持つと言っても、それは“形として”であり、“実態として”責任を持ちきれない状態になってしまうのではないか?ということです。

いままで民間委託していた浄水場などの運転管理の他に、「みやぎ型」導入に伴い、これまで個別に契約していた(県が主体となってやってきた)「機械・電気設備の改築・修繕工事、薬品などの調達」も運営権者にやってもらうというのですから、県に水道事業の専門家人材は育成されず、どんどん減少していくことになります。そうしなければ、運営権者と県とで人件費が二重になり、コスト削減にはなりません。水道事業という公共サービスを民間企業である運営権者任せにしている間に、県は水道事業運営や技術を継承する人材育成の場、つまり「OJT(On-the-Job Training)」の場を喪失してしまうのです。

専門家人材を育成できず人数も減少することにより、運営権者が適切な水道事業運営をしているかを県はモニタリングできなくなります。運営権者には運営ノウハウが蓄積されていきますが、県には蓄積されていきませんから、県は運営権者に問題点を指摘できなくなっていくことが容易に想像できます。また、運営権者が開示する経営情報の詳細を理解できる人材は現場でキャリアパスを経て育成されますが、それもできなくなります。その結果、運営権者の投資判断に対しても適切かどうかを判断する能力を県は失うことになるでしょう。

 

質問2 県が期待するコスト削減内容に、民間事業者はどのように回答したのか?

 「県政だよりQ2」で、「みやぎ型」導入により

1)IoTやAIなどの最新技術を活用した運転管理の効率化による運転コストの削減 

2)同種一括契約による機械・電気設備の更新費用の削減 

3)一括・長期契約による薬品や資材の調達コストの削減

を期待すると記載されています。

 

  • マーケットサウンディングにおいて、この3つのカテゴリィごとに、民間事業者がどのような意見を述べていたのかを、件数も含め示してください。

 

【質問の内容説明】

県は2017年に実施した第二回目のマーケットサウンディングで、民間事業者35社に「対象事業における合理化の余地」等4項目についてヒアリングを行い、その結果が「二次マーケットサウンディング概要」としてまとめられています。同概要から、水道用水供給事業を例に民間事業者は合理化の余地をどう考えているのかを当ネットワークで下の表にまとめました。

 

表1【第二次マーケットサウンディング(水道用水供給事業)でのコスト削減コメント】

県が設定した「経費削減期待率」

各企業のコメント例

 

費目

削減率

人件費(県分)

10%

「半分くらいは削減可能」

 

動力費

10%

 

削減率を回答した企業なし

修繕費

20%

薬品費

10%

「5%いけばいい方」

 

施設管理委託費

30%

人件費は「10~20%」、「20~30%」、「50%削減可能」とばらつく。

維持管理については「5~10%」、「8%程度」、「10~20%削減可能」とばらつく。

 

テレメーター費

10%

 

削減率を回答した企業なし

理経

30%

建設改良費

20%

(注:「削減率」は県がマーケットサウンディングによる期待削減率として設定したもの。(「『みやぎ型管理運営方式』導入による事業費削減目標について」29p)  表作成 「命の水」事務局

県は8費目について削減率を設定していますが、「質問2-1)~3)」に該当すると考えられる薬品費、施設管理委託費についてのコメントはありましたが、それ以外の費目については民間業者からはほとんどコメントがありませんでした。しかもこのマーケットサウンディングにおいて、コスト削減に関する具体的なコメントをした民間業者のコメント数は10件程度しかありませんでした。

質問に記した3つのカテゴリィによるコスト削減を県は期待したわけですが、私たちが「二次マーケットサウンディング概要」を読み込むなかでは、それは限定的なものでしかありませんでした。県はどのように民間業者の回答内容を読み込んだのでしょうか。

 

質問3 コスト削減額247億円の試算の前提条件について

 「県政だよりQ3」では「みやぎ型」導入効果として、コスト削減額が247億円(民間事業者分197億円)見込めると試算した、と記されています。

 この試算金額は「『みやぎ型管理運営方式』導入による事業費削減目標」(令和元年12月13日企業局)の24ページにあるように2017年度に実施した「マーケットサウンディング結果による各費目ごと(ママ)の期待削減率を反映」して算出したものとされています。

「期待削減率」は同25ページに3事業ごと、経費費目ごとに示されています。

 

  • この期待削減率設定の根拠となった、マーケットサウンディングでの民間事業者の定量的な意見はどのような内容でしたか? 3事業ごと、経費費目ごとに、示してください。

 

【質問の内容説明】

 「県政だよりQ2・3」では、現行体制(つまり県による運営)でのコスト削減には限界があるが、20年の長期契約と上工下水3事業一体化のスケールメリットでコスト削減を期待できるから水道料金の上昇幅を抑えることができる、とされています。また、コスト削減額は247億円(民間事業者分197億円)と試算し、この削減額を前提に民間事業者から事業費の提案をしてもらうから必ず削減でき、県議会での条例改正が必要なため運営権者は勝手に水道料金を上げられない、と説明されています。

 しかし、私たちが最も疑問に思うことは、247億円のコスト削減が現実的なのか?ということです。運営権者に任せることでコスト削減(247億円)ができるから、水道料金の上昇幅を抑えられるというのが県の考え方ですが、コスト削減ができなければ、水道料金の値上げ幅が拡大することになるので「みやぎ型」を導入する意味はありません。

 この「247億円という試算」は極めて根拠薄弱です。試算の前提条件として、事業別に費目の期待削減率を、マーケットサウンディングのなかで出された各企業のコメントをもとに設定し、247億円を算出したとしています。4ページ「表1」で見たように、その具体的コメントが非常に少ないなかで置かれた「前提条件」は、恣意的な「単なる期待値」だったのではないでしょうか。

 2月1日の事業説明会(大崎市)で、県と参加者との間で以下の質疑がありました。

「247億円の具体的根拠はないだろう」という質問に対し、県は「確かにそのとおりであります。民間企業のほうで聞き取りした結果をベースに試算した形がこの形でありまして。(中略)民間事業者のグループの方々が『いくらでやります』というふうに入れた数字が最後の数字になります」と答えました。ほとんど理解不能の説明ですが、247億円の具体的根拠がないことは「確かにそのとおり」と、ここだけは明快に認めています。

県は、例えば「民間企業のほうで聞き取りした結果、○○の費目では△△%の削減可能という意見が多かったので期待削減率を☓☓%とした」というような具体的説明を一度もしたことがありません。

 

質問4 現行の水質検査内容は「みやぎ型」導入によりどう変化するのか?

下水道の水質検査・試験については、「要求水準書」77ページでは「現行検査・試験」を「参考に運営権設定対象の状況を考慮し適正に定めること」を運営権者に求めています。つまり、現行検査・試験内容をそのまま踏襲することは求めていません。

運営権者の判断で現在の水質管理体制が変更された結果、水質が悪化するのではないかという疑念は拭えません。

 

  • 「みやぎ型」導入により、現行の上水、下水各事業の検査項目・試験項目内容がどう変化するか、頻度も含め示してください。
  • 企業局は「管理年報は民営化後も作成する」と県議会で説明していますが、「管理年報」が現行と同じ内容・データ構成となるのかは不明です。内容・データ構成がどうなるのか、また作成主体はどこになるのかも含めて示してください。

 

【質問の内容説明】

「みやぎ型」導入に関して、県民が持っている大きな不安の一つが、水質が悪化するのではないか、という点です。「県政だよりQ4」では「現行の水質を満たすことを民間事業者の義務とする」ので現行水質は維持されると説明されています。

コンセッション方式において、性能発注を前提とする場合、各種点検を日常で実施するかどうかは運営権者の裁量であるというのが一般的な理解です。「みやぎ型」においても、水質検査・試験を含む日常点検については、運営権者が法令等を逸脱しない範囲で頻度や具体的な実施方法を定めて実施することが想定されますので、現在の水質管理体制が運営権者の判断で変更され、結果的に水質が悪化するのではないか?という疑念は拭えません。

 

質問5 災害時対応について

「県政だよりQ5」では自然災害が発生した場合、「県が主体となり民間機関と連携し、迅速に対応します」とされています。

  • 東日本大震災のような通常予見不可能な災害が発生した場合、インフラ復旧に必要な資金、人員、技術を運営権者が動員しきれないケースが想定できます。その場合を想定した危機管理体制をどのように設計していますか?
  • 復旧費用が運営権者の合理的な経営努力を以てカバーすることができない時は、水道事業者が原則としてリスクを負担することになると想定できます。その場合、「水道事業者と運営権者の間の分担を可能な限り明確化、具体化しておくべき」と「水道事業における官民連携に関する手引き(改訂版・2019年9月)19ページ」にありますが、この点に関する明確化と具体化がどのようになされているか示してください。

 

 

 

質問6 海外での再公営化の教訓に対する方策について

 「県政だよりQ6」において海外の再公営化の事例を教訓として、事業計画の妥当性の確認・モニタリング体制の強化・料金改定方法の明確化の三点を挙げ、「方策を講じ」たとしています。

 

  • こうして県が教訓化した「3つの方策」は、どの国・地域の事例に基づき方策化したのか、またそれら地域の教訓内容を具体的に示してください。
  • 厚労省主催「第4回水道施設運営等事業の実施に関する検討会」(2019年5月15日)

では、海外での水道事業再公営化の事例が紹介され、再公営化の原因となった問題が6課題あげられています。

1)水道料金の高騰等 2)要求水準書が不明・資産評価の不備 3)水道施設の管理運営レベルの低下(水質の悪化等) 4)約束された設備投資の不履行 5)民間業者に対する監査・モニタリング体制の不備 6)違約金の支払い(訴訟等を含む)の6点です。

特に多くの地域で発生したのは、水道料金の高騰等(14地域)と、水道施設の管理運営レベルの低下(7地域)という二つの問題だったことが紹介されています。県では「水道料金の高騰等」、「水道施設の管理運営レベルの低下(水質の悪化等)」について、どのように教訓を得て、どのような方策を講じましたか。

  • 県の説明では、再公営化についてフランスの事例を取り上げていますが、ドイツにおける事例をどう教訓化していますか?

 

【質問の内容説明】

「県政だよりQ6」で、海外では「一部で再公営化」の事例があると述べたうえで、再公営化した事例の教訓から「方策を講じ」たと説明しています。また2月1日の事業説明会(大崎市)でも「(再公営化は)主流ではない」とも説明しています。

この説明は、厚労省が主催した「第4回水道施設運営等事業の実施に関する検討会」の資料に基づいています。フランスでは「再公営化した事業とコンセッション等に移行した事業が同数」というデータや、1998年から4年間で再公営化がわずかだったというデータを引用して、「(再公営化は)主流ではない」と県は結論づけています。

しかし、同検討会資料には、ドイツの例では2008年から2012年までの4年間で、全事業体に占める公営事業体数の割合は56%から65%へと9ポイント上昇していることを示すデータもありますが、それを県は紹介していません[i]。これは資料の取り扱い方法として意図的です。フランスの事例を取り上げるならば、ドイツの事例との比較において評価をする必要があります。

2017年以降に再公営化された世界の水道事業の調査結果を、政策シンクタンクNGO「トランスナショナル研究所」の岸本聡子氏が「水道、再び公営化!」[ii]で明らかにしています。それによれば、世界各国で再公営化された水道事業体数は、2015年235事例、2017年267事例、2019年311事例と、再公営化の数が年々増加しています。それを主流と評価するかどうかは議論があるでしょう。しかし、海外において、確実に再公営化がすすんでいることだけは、定量的な事実です。

 

 

質問7 民間事業者の情報公開について

現在、上工下水道事業の管理状況は、毎年度「年報」で細かく情報開示されています。

たとえば下水道事業では水質試験は8種類の試験を行っています(中南部下水道事務所)。このことにより放流水水質が所定水準以下に保たれ、県民の安全・安心を担保しています。

 

①「みやぎ型」導入後も現在実施している試験は継続し、そして現在の開示レベルを保持することが必要だと思いますが、「みやぎ型」導入に際し、水質検査・試験について民間業者に義務付ける要求水準内容を示してください。 

公共サービス基本法第3条は「国民の意見が公共サービスの実施等に反映されること」を「国民の権利」と規定しています。県は民間事業者にこの点を担保するよう要求したかどうか、要求した場合はその内容を示してください。

 

 

質問8 新型コロナウイルス対策の渦中でなぜ導入を急ぐのか?

 今、県民を挙げて新型コロナウイルス対策に当たるべき渦中であるにもかかわらず、「県政だより」で「みやぎ型管理運営方式」について特集すること自体、適切性に欠けます。

県は「みやぎ型管理運営方式」導入は、ほぼ当初予定どおり2022年4月から導入としていますが、県自身が何度も繰り返し認めているように「県民理解がすすんでいない」状況の解決を優先すべきではないでしょうか。コロナ禍でそれが進められないというのであれば、導入時期の予定を延期してでも県民議論を尽くすべきです。

公共サービスの目的は「国民が安心して暮らすことのできる社会の実現に寄与する」ことです。その実現には、地方公共団体だけでなく、住民の参加が不可欠です。

 

  • コロナ禍のなかでは、県民が「説明会を開催してほしい」と要望することも自粛せざるを得ない状況にあります。今後の県民への説明と合意形成についてどのように考えているか、示してください。

 

【質問の内容説明】

 「みやぎ型管理運営方式」という名のPFI(プライベイト・ファイナンス・イニシアティブ)は、公共施設等の設計、建設、維持管理及び運営に、民間の資金とノウハウを活用し、公共サービスの提供を民間主導で行うことで、効率的かつ効果的な公共サービスの提供を図るという考え方に基づくものです。PFIは「小さな政府」や「民営化」等、行財政改革の流れの一つとして捉えられます[iii]。今回のコロナ禍は、1992年から我が国に導入されたこの「公共サービスの民営化の流れ」に対して、強烈な警鐘を鳴らしました。

構造改革」、「行財政改革」、「民間活力の導入」の名のもとに、公共インフラである「保健・医療サービス」に競争原理が持ち込まれ、事業の効率性が優先されて経費削減がすすめられた結果、1989年には848カ所あった保健所が、2020年には469カ所に激減[iv]し、感染の水際対策を担う保健所が疲弊してPCR検査さえままならない事態が生じました。

コロナ禍は、図らずも「公衆衛生の重要性(ひいては安全な水への万人のアクセス権の重要性)を再認識させる」[v]ものとなったのです。

人口減少で事業経営の悪化が懸念される水道事業という公共サービスを、今後どうしていくべきか、事業の効率性だけに目を奪われるのではなく、公衆衛生や人権としての命の水をどう守っていくかという根本のところから、広く県民の議論を積み上げて判断をしないと、とんでもない失敗を犯しかねません。

県はこうした視点を持ちながら、コロナ禍を踏まえて、「みやぎ型管理運営方式」導入をいたずらに急がず、県民議論を尽くす対応方針をきちんと示すべきです。

 

質問9 下水道事業について

 

①下水道の運転管理の効率化について、水道経営管理室の田代専門監が「現在はオペレーションシステムが浄水場,処理場ごとにバラバラです。これを統一することが考えられます」と平成30年度第1回宮城県民間資金等活用事業検討委員会で発言していますが、構想している統一オペレーションシステムの具体的な内容を示してください。

 

➁下水道事業の経費費目ごとの削減内容についてお聞きします。

  • 直接業務費が下水4事業合わせて50億円(20年間)、委託費が45億円(同)削減される試算がなされています。この削減根拠を示してください。
  • 動力費(電気代)を削減すれば、長時間のエアレーションはできなくなり、排水の水質悪化は避けられないと思われますが、削減可能とした根拠を示してください。
  • 薬品費については一括購入という手法で削減することには限度があると思われますが、これだけの金額の削減が可能とした理由について、示してください。また、薬品の購入の時期が現在と民営化後でどのように変化するのか、次亜塩素酸ソーダ以外の薬品についてはとくに丁寧に示してください。

 

 

以上

 

[i] 同検討会資料では、アメリカでも2013年から2018年までの5年間で公営事業体数の割合は53%から54%へとほとんど変化がないことも紹介している。

[ii] 集英社新書2020年3月発行・P27~28

[iii] 日本PFI・PPP協会ホームページ 「PFI・PPPとは」

[iv]国保健所長会HP(2020年4月24日掲載)

[v] 白井聡 2020年4月11日 毎日新聞

 

この公開質問状を出すにあたっては、われわれは別に下水処理場で仕事をしたことがあるわけでもありませんし、そういう意味で専門家のアドバイスというものが不可欠でした。県の自治体の下水道だとか環境行政に長らく関与した幹部の方と検討を行って、 この質問状の中身について間違いないかどうか確かめながら作ったというものです。

質問1については、先ほど江成先生のほうからもありましたけれども、BODの測定の 方法について、検査に5日間かけるだとか、色だとかにおいだとか、いろんなところで品質を保つために仕事をやっている人たち、この人によって現在の公共性、あるいは検査の内容について支えられているというふうに、実際に管理した方と話すなかでもすごく強調されていました。

そういう意味で 人材育成というのを県が放棄してしまって、民営化してしまって、「ハイ、おまかせですよ!」というふうになったときに、「20年後この宮城県の下水道と上水道はどうなっていくんだ?」というふうなことを考えた時に、人材問題が極めて大きいということで、質問1にそれを入れました。

質問の2と3は、実は一緒のことです。つまり、「水道の民営化をやることによって247億円の経費が削減できるはずである。そういうふうに見込みます」ということを県は まとめたわけです。「247億円の根拠は何なんだ?」ということを、この間、いろんな説明会で県は追及された。

県はその時、何と答えたか? 

「根拠ないと言われれば、根拠ありません」と答えた。(笑)

根拠ないって、県当局は言うんですね。

 

 

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             公開質問状プレゼン資料より

実際に、「なぜ247億円という数字を出したんですか?」と言ったら、それに対しては「それは民間業者に聞き取りをやった。聞き取りをやった中から、いろんな形で数字を聞き取ってまとめました」と。

公開質問状の4ページに一つの例で入れてありますけれども、水道用水供給事業においては、人件費の10%から始まって動力費10%とか、「いろんな削減をこれくらいできるはずです」という数字を置いてあるんですね。

ところがこの数字は、根拠がないってことなんです。「これは、マーケットサウンディングということで、民間業者の方々から聞き取りました」というふうに言ってるんですけれども、我々が分析をしていくと、このマーケットサウンディングというのは、実は公開されているんですね。公開されているのを探しているんですけれど、いくつか出てくる数がものすごく少ないんです。

これぐらい削減できますよと書いてある民間事業者の声というのは非常に少なくて、 もう少し正確に言うと、県が「どれぐらい削減できると思いますか?」と民間業者に聞くんですね。それに対して「これくらいのことで、これくらい削減できると思います」と書いている人たちもいるんです。ところがその中には、ほとんど数字が入っていないんです。「これくらいはできるんじゃないか、10%か、20%かなあ」とか「8%、5%いけばいいほうだ」という具合の感じのレベルの表現しかしていません。「そういう状況の中で、どうして247億円という数字を県は置けたんですか?」と質問して、根拠を示せと言いました。

質問4は、水質検査の問題です。これは、江成先生のほうからご説明があったように、江成先生のお話をですね、公開質問状を出す1か月前に聞いていれば、またちょっと違った質問になったかなという感じもしましたけれども、県は「現在やっている検査あるいは試験の内容をそのまま踏襲してください」っていうふうには求めていないってことなんです。

「結果オーライで法律を守ってくれれば、極端な言い方をすれば、どのようなやり方をしてもオッケーです」というのが、要求水準書の基本的な中身です。非常に極端な言い方をしていますけれども、本質はそういうことです。

それに対して「本当にどのような形に変化するのか?」と問えば、おそらく、「競争的対話をやらないかぎり、はっきりわからないので答えられません」というふうに答えてくると思いますが、「市民の側はそのことが気になってるんだよ」ということをきつく言っておこうと思い加えておきました。

質問5は、先ほどご質問された方もいらっしゃいましたけども、緊急時の対応ですね。本当に大丈夫なのか?! 大丈夫じゃないと思います。

7ページにありますけれども、「水道事業者と運営権者の間の分担を可能な限り明確化、具体化しておくべき」ということを「水道事業における官民連携に関する手引き」という文書に書いてある。これをちゃんとしなきゃダメだよというふうになっているんです。ですから、たとえば、今後の議会を通じて、こういうことがどうなってるのか? ということを、県は県民に説明していく必要がある。そのことを追求する必要があるということで、ここに入れました。

 

 

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             公開質問状プレゼン資料より

 

海外の再公営化に関する教訓については、この絵の左側は県の説明なんです。右側にありますのは、厚生労働省の会議の場で提供されたネタ資料です。

左側の絵と右側の絵は同じでしょ。ピタリと同じなんです。ネタ資料から県はコピペしてるんです。この部分だけを切り取りソフトを使って切って貼り付けて、こういうふうに説明している。

なんか偉そうに、県政だよりでは「分析して検討してですね、教訓を学んでこういうふうにしました」、なんてことはなくて、実際上はコピペでこういうふうに説明してる、と。

挙句の果ては、左側のほうでは海外の事例は2つしか挙げてないんですけど、右側の厚生労働省の資料では5か国、アメリカ、ドイツの例も全部入れてあるんです。ドイツの例なんかは特にそうですけれども、民営化を推進しようとする人たちにとっては都合の悪いデータなんです。再公営化が進んでいるということを示しているデータとか、それは、宮城県はコピペしないんです。ズルいわけです。そういうようなやり方で、本質的な今の世界全体の動きがどういうふうになっているのか、正確に県民に伝えないというのは正しくないと思います。

8ページに入れておきましたけれども、さらに今年、岸本聡子さんが「水道、再び公営化!」という新書を出しました。その新書によれば、2015年から2019年の直近の動きで言えば、再公営化した数は、2015年は235、2017年は267、2019年は311と増えている。これは、岸本さんが所属する研究所がまとめたものです。客観的な事実ということで、これに対しては、当然のことながら宮城県は何も触れていないわけです。それを示せということです。

質問7の情報公開は、見ていただければということで、時間の関係で省略させていただきます。

質問8は、新型コロナウイルスの中で何で急ぐんだ?ということです。これについては、非常に多くの方々が疑問に思っているところだと思います。

 

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            公開質問状プレゼン資料より

 

最後に、質問9の下水道事業。この表の下水道4事業のところで、削減額がいろんな意味でものすごく多いんです。たとえば、動力費が20年間で16億円、委託費で45億円削減するとか、その内容についてはきちんと示してくださいということです。

それから、動力費を削減するということになれば、動力費を使うエアレーション全体のレベルが低下する可能性がある。これは江成先生のご説明のとおり、水質に対して決定的な影響を与えるということになるということで、動力費の問題を入れてあります。

そのほか薬品等についても、「なぜこんな膨大な金額が削減すると考えているのか?」ということについて質問をしました。

全体的に言えば、公開質問状の第一弾、つまり一回目ということで、弾はちょっと取ってあるものがいくつかあって、まだ準備しています。県からどういった反応が出てくるかを見たうえで、2の手3の手を打っていきたいというふうに考えています。以上です。

 

県議会の状況の報告 福島かずえ 宮城県議会議員

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どうも皆さんお疲れ様です。

今議会は、無所属の会の渡辺忠悦さんという県議さんと私が、本会議で下水道・上水道の民営化問題について取り上げました。また、委員会では社民党の岸田さんも取り上げて、野党系の議員はそれなりに今、取り上げてやっております。

私は今回、コロナの危機の中で、これまでは、人・モノ・金すべてグローバルに動かすことでコスト削減を図ろうというのが、一つの価値として重要視されていましたけれども、人も物も動かせないというのがこのコロナの状況ですから、たとえば今委託しています事業者、水ingですとかウォーターエージェンシーさん、何かあったら応援職員をあちこちからかき集めるということで、危機管理とかいろんな体制の時にはコストを減らしてきてるんですね。

それがコロナ危機で、要するに県の境を越えて人の移動はできない状況になったときには、とにかく県内で、生活圏域で技術をきちんと持った人が運営していかなくちゃいけないという新しい局面に入ったということで、企業局は17日間試行してみたんですね。もしコロナで人がこれなくなったらどうするみたいなことで。そうすると、最低限のことはできるけれども、定期的なポンプとかの点検であるとか、それから大雨の時、地震の時の危機対応ができないという課題があるということも明らかにいたしました。

OB職員とかいろんな人を数を集めたら、全県で上水道それから下水道の処理場・浄水施設全部で38人だけは何とかかき集めているけれども、それで本当にできるのかというと、今日も鹿児島とか熊本では雨が降って、こうなった時の水質をどういうふうに守っていくかということは、先ほど江成先生が言ったように、技術をきちんとルーティンで稼働している技術者の経験によって守らなくちゃいけないことが守れなくなるということが、今まで以上に厳しい条件で求められているわけですから、民営化なんていうことで、競争的対話とかするヒマがあったら、今の現状の中での脆弱な体制を、どういうふうに強化して人材を育成していくのかということに、全力を注ぐべきだというような話はしたんですけれども、まあ言ってる意味はわかるようですが、民営化は着々としていくということでした。

小川さんの資料の3ページには、県の事業の削減率がありますけれども、人件費を10%、15億減らすというのが入ってますから、ここはホントに逆行なので、こういったことをきちんと問題にしていきたいと思います。

それから、公開質問状の質問4の水質検査では、現状と同等の検査をするということは言うんですけれども、今日も来てらっしゃる方から聞いてて、「ダメだ」と。「仕様発注だったら今の状況でいいんだけど、性能発注だから、いま以上に間隔を短くした検査をきちんとしないと、相手任せになっちゃうから、そこのところをもっと詰める質問をしてください」ということも言われまして、7月も臨時議会がありますし、委員会の時間を使って、できるだけ問題点を私たちも追及していきたいと思いますし、みなさんのほうからも、いろいろ県のほうに声を挙げていただきたいと思います。

県は説明動画を2つ作りまして、今ホームページでアップしていますので、それもチェックしていただけたらと思います。

 

会場の参加者の発言

Dさん

ちょっと補足なんですが、先ほどの小川さんの話と福島議員の。ちょっと皆さんがた、勘違いされてるんじゃないかなと思う。水道局は悪意を持って話をしているとは思いませんけれども、私は土木関係の仕事をしてまして、仕様発注と性能発注というのは、 土木学会ではもう10年も20年も前から、仕様から性能というようなことでやってきてます。これはなぜかというと、ISOという国際基準がありまして、それに合わせるには日本型の仕様では駄目なので、性能発注にするというのが世界的な流れなんですね。

そういう流れの中でのこれだと思うんですけれど。まあ、それはそれで認めたとしてもですね、性能発注と言った時に、その性能というのは何ですか? 土木構造物では性能というのはそのものズバリですけども、水道であれば、特に飲み水ですから、365日24時間、いつの時点でも性能が満たされなきゃいけないわけです。そうすると、宮城県がどれだけの覚悟を持って性能発注にするのか、全然話になんないんですね。

性能発注にするという覚悟を持っているのであれば、365日24時間、全面的に性能を チェックしなきゃいけない。それをね、法律は3か月に1回とか、1か月に1回でいいとなってると、水道法でね。もちろん毎日見るのはあります。濁りとか見た目の感じとか。そういうのは毎日見たって、発がん性物質とかは3か月に1回、水道法の51項目の検査基準に照らしまして。

だから県はね、皆さんがたもそう思ってるかもしれないけれど、水道というのは、ふつうの水道法の検査項目で見てる性能じゃないんです。瞬間々々の日々24時間365日の 性能だから、それを保証しなきゃいけない、チェックしてかなきゃいけない。

それを、県はやらないと言ったんですね。自分たちで性能発注にすると言っていながら、性能のチェックをしないっていうわけですね。そんな矛盾した話はないんですね。質問状の第2弾、第3弾がありますので、そこを徹底追及しないといけない。

それをやれば、この制度は崩れると思ってるんです。なぜかというと、できないんですよ、24時間365日チェックは。できませんから崩れちゃうんです。別の方法でやらなくちゃいけないんですけども、それは日本の製造業でやっているJISで決まっている抜き取り検査、要はサンプル調査ですね。それをやらない限り、性能発注の性能を保証できないということです。

そこをね、県に対しても私から質問に行って訴えていますけど、彼らはモニタリングでやると言ってかわすんです。モニタリングというのは、ただ眺めてるだけなんですよ、浄水場の運転状況を。モニタリングで水質わかるわけないです。土木工事は私の分野なんで、国土交通省であれば、監督官という人がいるわけです。その人たちがモニタリングしているわけです。水道局も同じですね、監督がいてモニタリングする、実行状況見てますから。

モニタリングじゃなくて検査すべきなんで、検査というのはモニタリングと言わないでインスペクションと言いますよ。皆さんがたも騙されているという感じあるかと思うんですけども、モニタリングというのは検査じゃないですから。検査はインスペクションです。それを混同しないでほしいんです。県は意図的にモニタリングでやるというふうにごまかしてます。県民に対してごまかしてるんです。モニタリングじゃダメなんです。

多々良さん(司会)

ありがとうございます。重要な問題提起だったと思います。

今日の江成先生の講演と命の水を守る市民ネットワークからの報告を概観するだけでも、充分問題点がまだまだみやぎ型にはあるんですよね。

コロナの状況の中で、半年ぐらいブランクがありましたけれども、今日を皮切りにまた私たちのネットワークとしても、県民に対していろんな問題提起をして、県とも議論していきたいなと思っています。この問題は決して終わっていない、これからなんだと考えていますので、引き続きみなさんと一緒に考えていきたいというふうに思っています。

 

閉会の挨拶 命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ 中嶋信 共同代表

なんか大変、緊迫した講座でありまして(笑)、ホントに中身が濃くて、これは1回 開いた以上は続けなきゃいけないなと思います。今回お付き合いいただきまして、本当にありがとうございました。これから私どももちょっと、ネットワークの中でですね、十分に総括して、もっと住民に求められるような連続講座を考えていきたいと思います。今後ともどうぞよろしくお付き合いください。

今日は、江成先生からかなり技術的な問題を含めて専門的なお話を伺いました。なぜ私たちがこのような講座を設けようとしたかですけれども、今の県政に対して、批判だけではなくて、地方自治のあり方はこれでいいのかという一つの危機感を持ってるんですね。たとえば、住民の意見を大元として、住民の福祉のために運営されるのが地方公共団体ですけども、最近の地方公共団体はそういう姿勢がすごく薄れております。

どうしてなのか? いくつかありますが、一つは安倍政権の政治にあると思います。 とにかく効率的な制度を進めたいということですね。ですから、かなり民主主義が踏みにじられております。

もう一つは、公共の仕事に対する民間企業の支配というものが、これがすごい規模で起こっているわけですね。財界要求がどんどん入り込んできていて、このような中で、地方公共団体の政策決定や推進体制がかなり変化している。

「地方公務員、頑張れよ」というふうに思っているかもしれない。だけれども、ホントになかなか働きづらくなってきてるわけですね。こういう時こそ、「議会、頑張れよ」と思うんですけれども、関係者がいらっしゃる中で詳しく言いませんけれども、実際には寂しい議論なんです。ホント私もこの前、大崎市議会を傍聴してがっくりして帰って熱を出しましたけれども、深刻な議論、科学的な議論をしておりません。このような状況では、ホントにまともな人は公共団体の仕事はできない。だとすれば、それを乗り越えるような力が必要で、それはまさに主権者としての住民、この力だろうと思うんですね。ここを立て直さないと、今の危機的な政治状況というのは変えられないと思っているわけです。

ですから、たまたま水道事業で始めましたけれども、もう少しスタンスを広げてですね、問答を今しなきゃいけないのかというようなことが議論できるような講座を、第2回でやっていきたいと思います。今回の講座、第1回と勝手につけちゃったんで、少し反省してますけども(笑)、やった以上は続けてまいります。

今回は江成先生から随分懇切にお聞かせいただきました。ありがとうございました。

これからも専門的な力をどんどん組み込んで、現場の職員たちの意見も反映するような形で続けてまいりますので、どうぞ今後ともよろしくお願いします。今日はありがとうございました。

 

江成先生のなぜ? なに? 下水道講座    下水道の不思議なヒミツがいっぱい!     前編 「下水道システムと下水処理の仕組み」

2020年7月4日、宮城県民会館4階にて、「宮城県の水道民営化問題を考える市民連続講座第1回 江成先生のなぜ? なに? 下水道講座 下水道の不思議なヒミツがいっぱい!」が、命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ主催で行われました。

宮城県の水道民営化問題 下水道講座

 

開会の挨拶 命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ 佐久間敬子 共同代表

昨年12月17日の県議会で、公営でやっていた水道事業を、民間がやれるという条例の 改正案が成立してしまいました。私たち命の水を守る市民ネットワーク・みやぎは、「拙速な決議は止めて、せめて継続審議を」という325筆の団体さんの署名を2週間で 集め、県に請願を行いましたが、残念ながら、これは顧みられることはなく、条例の 改正が成立してしまったという経過です。

この請願運動の中で、私たちが大変力強く思ったのは、賛同してくださった方々が多種多様な団体であるということです。特に、生産現場におられる方や小売業者の方、それから歯医者さんですね。こういう方々がかなり大勢賛同しておられたということで、 私たちの運動のすそ野は広いんだなということを実感いたしました。

そいういう中で県はスケジュールに沿って、もうまさにこのコロナ禍を顧みず突っ走っております。

お配りした資料の中に私たちの運動の経過を書いてありますので、後ほどご覧になっていただければと思いますが、この条例が改正された以降の運動をどういうふうにするかということで、みんなで意見交換をしました。その時には、県が説明責任を果たしていないということは、県が重々知っていることなので、今後も各地で県が出向いて行って説明させること、それから、今回の水道事業のコンセッションという方式ですけれども、県から水を買っている市町村は25ありますが、この受水市町村の議会、あるいは 水道マン、住民のみなさん、なかなかここがわかっていないんではないか、こういう 受水市町村でも議論を活発にしてもらいたいということで、2つの方針が決まったんですが、コロナの問題でこれがなかなか実行できないということになってきました。

私たちはこの間もいろいろ勉強しているうちに、これまでは上水道に関心があったのですが、やはり下水が大切じゃないかと思いいたりました。下水の数値が悪くなった場合に、これが排水される流域の環境がどうなるのか? 特に漁業者はどうなるのか? というようなことに気が付き、コロナの問題もあって公衆衛生の重要さも改めて実感しました。

下水のことを勉強したいと思っている中で、今日講師にお願いしました江成先生をご紹介いただきまして、事務局でZoomでの学習会をしました。大変良いお話で、これを みなさんと共有したいなと思いまして、本日はこのリアルの学習会ということで設定 いたしました。

江成先生は、東北工業大学名誉教授、水質環境工学がご専門で、現在、宮城県環境審議会の水質専門委員というまさにエキスパートでいらっしゃる。先生のお仕事の前半は 活性汚泥法というものの研究を、それからその後は、環境情報工学というちょっと私にはよくわからないのですが、廃水処理の問題を研究されたということです。先生には 教え子が沢山いらっしゃって、宮城県の現場で働いていらっしゃる方もいます。

先生は流域環境をやっておられて、市内の川の水質調査をやって、1ミリの川は創造事業、1ミリの川で一つの形が出来上がっているということです。

一番感銘を受けましたのは、先生のモットーです。 ”Think globally, act locally”  世界的な視野で物事を考えて、その成果は私たちが住む地域社会の中で実践するということだと思いまして、私たちが漠然と言葉にはできないんですが考えていたことが、この モットーにあらわれているのではないかと。

それからもう一つ。私たちは6月10日に県に公開質問状を出しました今回は、私たちの事務局の小川さんからその解説をいたします。

この際には、公開質問状の内容を説明して、県の担当者とデスカッションをしましたが、面白いことが2つありました。

1つは、県の担当者は「民営化」という言葉を極度に嫌っています。私たちは、少なくとも県といろいろ話をするときには、「民営化」という言葉を使っていません。まあ、こういう学習会を開いたりしますし、新聞は「民営化」ですね。朝日新聞なんかは、「水道は民間に売却する」と言っていますから。それに対して県の担当者は非常に抵抗感があるということですから、これをどういうふうに使っていくかということですね。そして、実に意外なことに、県の担当者は、「これは民営化じゃないんだ。これまでの業務委託とか、指定管理者制度のちょっと広げたもの」と言います。それで小川さんが、「そのコンセッションというものを、知事の今期の政策の1丁目1番地で、全国に 先駆けて実行しようとなぜ言うのか?」と反論しましたら、「そこはもうちょっと変えたい」と言いました。奇異に思いました。

それから、2つ目は、民間が失敗したらどうするんだ? ということですね。それに ついて、「契約をして縛るから絶対大丈夫だ」という契約神話、これに県は縛られている。TPPとかPFIとか民間に業務委託をして失敗した事例はいくらでもあるんです。企業は倒産する。日本でも、北九州とか福岡でそういう事例がありまして、結果的には市・県が、県民のお金=税金を使って買い戻すわけです。 イギリスでは、カリリオンという非常に大きな会社が学校や刑務所なんかの運営を任されていた。そこが2008年1月に 倒産した。借入金は、国が210億円の税金を使って事後処理をしている。これを機に、イギリスの特に労働党ですが、コンセッション・PPPは全然意義がない、むしろ割高だということで、再公営化の動きに大きく舵を切っている。こういう状況ですので、さっきの江成先生の ”Think globally, act locally”「世界的に物事を見て、それを私たちの大切な地域社会で生かす」ということが、一つの参考になるかと思います。

このみやぎ型管理運営方式というのは、知事がホントにすごい思い入れで進めているんですね。その知事がどういう発想、体質の人なのかということがよくわかるエピソードが一つあります。いま公立高校のクーラー設置の問題が県で議論になっていますが、 知事は、「財政的な問題でエアコンの設置は難しい」と。宮城県は非常に成績が悪いんですね。調べたら、宮城はワースト3位。そして河北新報の記者の方、私たちが公開質問状を出した時に知り合いになった方ですけども、「知事は民間への水道事業の運営権売却など新しい事業に次々と手をかけるけれども、教育には全く関心がない」と。教育だけではないですね。「県民の生活に直結することについて関心がないのではというふうにちょっと思いました。

以上ちょっと長くなりましたが、今日はそういう意味で下水道の講座を学習して、それから公開質問状で私たちが県に問い詰めていることをよくご理解いただいて、7月13日までに文書で回答があるようにしていますので。回答についてはこちらでアクションを取っていくと考えています。今日はどうぞよろしくお願いします。  

 

下水道システムと下水処理の仕組み 江成敬次郎 東北工業大学名誉教授 

 

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f:id:MRP01:20200708205831j:plain            「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 

下水とは、現在の法律上の定義は、生活もしくは事業(耕作の事業を除く=農業廃水は下水に含めていない。)に起因し、もしくは付随する廃水(以下「汚水」という。)または雨水。

つまり、汚水と雨水を総称して下水という。総称という言葉はなかなか便利で、汚水だけを下水ということもあるし、雨水だけを下水ということもあるし、それが一緒になったものを下水という場合もある。

下水道とは、下水を排除するために設けられる排水管、排水渠(きょ)、その他の排水施設(かんがい排水施設を除く。)と、これに接続して下水を処理するために設けられる処理施設(し尿浄化槽を除く。)、それに付随する施設の総体をいう。

 

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        「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 


古墳時代に、雨水を排除する、つまり自分の住居のまわりに雨水がたまるといろいろと生活上の不便さが出てくるので、雨落溝(あまおちみぞ)というものが設置されて、古墳時代の住居の跡から確認されている。

藤原京平城京の時代には、街づくりの一環として道路側溝が存在していた。

平安時代になると、高野山に水洗便所が設置されていたということが明らかになっている。

安土桃山時代「太閤下水」は、大阪の市内に今も一部が残っていて、現在でも下水道として使われている。それぞれの屋敷の裏に井戸が掘られていて、そこにそれぞれの家庭からの排水や雨水が流れるようになっていて、近くの河川に流すという仕組みの背割下水(せわりげすい)ともいわれるものが作られていた。

  

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        「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 

 

 

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        「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 

近代的下水道とは、法的にその目的が定められて、それに基づいて建設された下水道

明治32(1899)年、旧下水道法(現在の下水道法の一つ前の下水道法)が制定され、この法律の基づいて行われた事業が近代的下水道。

この旧下水道法の目的は、土地を清潔に保つことつまり、下水の排除を良好に保つことによって、雨水による浸水を防止、停滞した汚水による不衛生状態を改善する(ペスト、コレラなどの伝染病発生の防止)、そして都市の美観を損なう居住条件の悪化を防ぐことだった。

 

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        「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 

当時は水系の伝染病ということで、最初は水道の建設が行われ、その後、下水道が作られた。これは日本だけではなく、この前にヨーロッパでもこういう状況があり、それをきっかけにヨーロッパでも下水道建設が広がった。

水系伝染病の発生・蔓延に加えて、明治20年代に主要都市への人口移動が活発になり、それを受けて環境整備法が必要だということで、明治33(1900)年に汚物掃除法と下水道法が制定された。

 

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        「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 

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       「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 

 

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         「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 

当初は下水を排除するために下水道が作られたが、下水の処理が全く顧みられなかったというわけではない。

はじめは、処理をしないで放流先に出して、放流先の浄化能力によって水がきれいになることを期待していたが、放流先の水質が悪化した。ヨーロッパでも基本的には同じような状況でスタートしたが、ロンドン市街の下水をテムズ川に流したところ川水の汚れがひどくなり、議会にもそのひどい悪臭が入ってきてとても審議ができない状況になった。

そこで沈殿処理が行われるようになった。水の中の比較的大きなもの、重たいものを沈殿させて、その上澄みを流すという沈殿除去が最初に行われた。

しかし、それだけでは浄化が足りないということで、ヨーロッパでいろいろな実験的が試みられ、汚水に空気を送り込む(曝気する)ことによって汚れ(有機物、今の指標であるBODというもの)が減少する結果を得た。この曝気をすることによってできた汚泥(微生物の塊)をもう一度循環して使用すると、効率が良くなるという実験結果も出たので、その考え方を取り入れて1917年に実プラントが建設された。

 

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       「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 

これは現代の下水処理の基本的なフロー 。下水は左から入ってきて、沈砂池に入って、それから最初沈殿池に入り、水中の浮遊性物質の沈殿除去が行われ、次の生物反応層(エアレーションダクト=曝気槽ともいう)水の汚れであるBODを除去・分解をして、ここで活躍した活性汚泥と呼ばれる微生物は、最終沈殿池で沈殿分離する。生物反応槽で汚れを除去するために働いている微生物は、そのまま自然水系に入ってしまうと、いろんな活動をして水の汚れにつながるので分離する必要がある。最後に、上澄みを塩素処分して放流する。

昭和の初めぐらいになると、戦争の時代に入ってしまい、下水道事業は、ほとんど進展していない。

 

 

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       「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より 

 

 

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       「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 

 

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        「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 

昭和30年代はまだトイレの水洗化が進んでおらず、1本のパイプで汚水と雨水を排除するほうが工事費が安上がりだった。

雨が少ない時は汚水だけが流れて排除される。下水処理という考え方は、まだ主要にはなっていなかった。基本的には河川のほうに排除する。河川では量が適当な状況なら、河川の栄養になって、それで河川の生物が育つということもあった。

 

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        「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 

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        「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 

今でも基本的には写真のシステムが使われている。これはレンガ下水道と言って非常に立派なもので、見学コースになっている。市の下水道課にお願いすると見学させてもらえる。

 

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        「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より 

 

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        「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 

1967年、公害対策基本法の改正で、下水道の目的として公共用水域の水質保全ということが加えられた。公共用水域というのは、河川湖沼海域。

 

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       「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 

最初の汚水と雨水が同じ管渠を流れる合流式下水道は、雨が少ない時は汚水だけが流れるが、雨水が大量になるとそのまま河川に流すというやり方だった。

1970年の下水道法改正で、汚水管と雨水管を別々に設置する排除方式に原則なった。

しかし、すでに合流式下水道が整備された地域では、財政的に排除方式にするのが難しく、仙台も含めて全国の大都市で古くから下水道が整備された地域では、河川の汚れの問題が大きくならないようにいろんな工夫をして、現在でも合流式下水道のままになっている。

また、下水道は当初、公共下水道都市下水路(基本的に雨水だけを対象にしたもの)ということでスタートしたが、これに流域下水道がプラスされた。

 

 

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       「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 

地域のいろんな事業によって、公共下水道と都市下水路、流域下水道の3つを使い分けている。すでに合流式下水道が設置されているところを作り直すことはなかなかできないので、基本的には流域下水道を新たに設置する。

昭和40年ごろまでは、大都市以外に下水道事業が進展しているところはなかった。そのため、生活排水や事業所の廃水がそのまま河川に流されて、川の汚れが非常に大きくなったという経緯がある。その川の汚れを改善するために流域下水道というものが位置付けられた。

従来のような公共下水道だと、たとえば、ある町では下水道の処理をして流したけれども、上流の別の町ではそれができないということになると、河川全体の浄化がなかなか効率的に進まないので、流域全体で下水道事業を進めていこうという考え方で設けられた。

 

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        「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 

もともと下水道は市町村単位で設置されていたが、流域下水道はいくつかの市町村に関わって下水道が設置されるということで都道府県が管理をすることになった。

ただし、幹線管路と処理施設が流域下水道につながるそれぞれの市町村の下水道は、流域関連公共下水道ということでそれぞれの市町村が管理をする

 

 

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       「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 

宮城県には、仙塩流域下水道、阿武隈川下流流域下水道、吉田川流域 下水道、鳴瀬川流域下水道、北上川下流流域下水道、北上川下流東部流域下水道、迫川流域下水道の7つの流域下水道がある。

流域下水道の目的=下水道の目的+公共用水域の水質保全

 

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       「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より 

 

 

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        「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 

昭和42年に公害対策基本法が制定されて、公共用水域に環境基準が定められた。この環境基準とは、河川の主要な地点に環境基準点を設定して、そこの水質を定めたもの。 その水質がきちんと守られているかどうかチェックすることになっている。

排水基準は河川などに排水を流す場合に水質の規制をされるもの。

環境基準や排水基準のチェックは、環境大臣都道府県知事にゆだねられている。

 

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        「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 

公共用水域の水質保全都道府県の責任であり、基本的には都道府県の環境部局がこの仕事を担っている。そのために生まれた流域下水道も、都道府県の管理である。

こういうことから、問題になっている民営化で、単に処理場の維持管理ということだけではなくて、公共用水域の水質管理を 県が担っていて、この責任を持っていることとの関連で、どうできるのかという視点も必要。

 

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       「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 

1912年の汚水を曝気する(空気を送り込む)ことによって汚れ(有機物、BOD)が減少するという実験化結果を受けて、現在の活性汚泥法が生まれた。

日本で最初に下水処理が行われた散水ろ床法活性汚泥法と同じ原理のもの。

処理の主体は、微生物集団=細菌(バクテリア)+原生動物

好気性細菌が有機物(水の汚れ)を食べるときに酸素を消費する。微生物の中には、逆に酸素があると生きていけない嫌気性微生物といものがいて、これはお酒の醸造などで活躍する。

微生物(細菌+原生動物等)+有機物+O CO2 + 微生物 + 微生物

水を処理すると必ず汚泥ができる。この汚泥を処理して初めて水が浄化されたということになる。

 

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       「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 

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        「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 

水の汚れにはいろんなものがある。濁り、色、有害物質、温度も汚れの一種。

ただ下水処理で主に対象にしているのは、水の中の有機物と窒素、りん(栄養塩類)

水の中の有機物がなぜ汚れになるのか? 

有機物が一般の河川や湖沼に入ると、そこにいる微生物によって分解されるが、その時に酸素を消費する。水の中に酸素が溶け込む速度と水の中の酸素が消費される速度がアンバランスになってくると、水の中の酸素がだんだん少なくなり、水域が嫌気化して、水の中の嫌気性生物有機物の嫌気性分解をすることによって悪臭が発生する。さらに、好気性生物つまり魚などが生きられなくなる。これが水の汚れということ。

窒素、りんは、植物性プランクトンなどの栄養になるので、赤潮などが発生する。そして、植物性プランクトンは生き物なのでいずれ死んで有機物になり、有機物が大量に水の中に存在するということで、有機物による汚れがひどくなる。

 

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       「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 

下水処理の主な対象物質とその指標

浮遊物質(土砂などの無機物質、有機物質) → SS Suspended Solid 浮遊物質(乾燥物質量)

有機物 → BOD Biochemical Oxygen Demand 生物化学的酸素要求量=水中の有機物を微生物が分解したときに消費した酸素量 

この数値を測るには、水を5日間20℃で置いておいて中の酸素がどのくらい減ったかを測定する。これが水の汚れの代表的な指標で、下水処理場などでも、水の処理の状況の度合いを測定したり、水質が規制されている放流基準は全部BODが使われている。

しかし、測定するのに20℃で5日間かかってその間に水は流れっぱなしになるので、5日後に結果がわかっても、後の祭りということになる。そういう難しさもあり、現場ではそれに代わるいろんな工夫が行われている。

 

 

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        「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 

最初に、沈砂池で土砂など比較的重たいものだけを沈殿させ、最初沈殿池では水よりも比重が大きい比較的軽いものを沈殿除去して、SS=主に濁りの部分を取り除く。そこで取り切れなかった汚れは曝気槽というところで8時間ぐらい反応を受けて有機物が分解されて、処理水と微生物を分離させるために最終沈殿池に入り、微生物同士が凝集しながら沈殿するということが行われる。

 

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       「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 

約1時間、最終沈殿池で沈殿させると、汚泥と上澄みとに分離される。

 

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       「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 

現在、平均的なところでは、流入下水のBODは200~300mg/Lだが、処理水のBODは5~10mg/Lまで浄化できる。

下水道法で定められている下水処理場の放流水の基準は、BOD15mg/L。

新しい水質汚濁である富栄養化(窒素、リン)は、嫌気好気活性汚泥法で除去する。 比較的大きな処理場では、現在ほとんどこの方式を採用している。

 

 

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        「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 

 

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        「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 

 

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        「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 

 

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       「下水道システムと下水処理の仕組み」講演資料より

 

処理水のBOD数値が出てくるのは5日後なので、BODの数値だけを頼りにしていたのでは維持管理ができない。それに代わる基準としては短時間に出てくる値のCODや、現場の人たちは色やにおいで把握できるとよく言っている。

 

会場からの質問

富谷市のAさん

上水道の管理よりも下水道の管理の方が本当に難しそうだなイメージを受けたんですけれども、汚泥を戻すというやり方でどのくらいの量を戻すのか、それからBODは5日間かかり、CODは短時間だけれども、色やにおいで状態がなんかおかしいよといった時に、たとえばどんなふうな工夫を現場ではされているのかというようなことを教えていただきたい。

江成先生

私もあまり現場に出ていることはなくて、現場の状況をよく知っているというわけではないんですけれども、基本的に活性汚泥法で操作できる因子というのは、いまお話になった汚泥を返送する、どのくらい返送するかは返送率という言葉で言いますが、つまり、最終沈殿池で沈殿した汚泥をどのくらい曝気槽に戻すかその戻し仕方を返送率というんですけれども、そういうものでコントロールするということをやっています。

あと、空気量を調整するということもやります。空気量というのは、酸素を供給するということと曝気槽の中の液体を拡散させるということがあります。

あとホントに現場の人に聞きますと、「色とかにおいとか、そういうものでそれなりにわかるようになるんですよ」ということを言うんですね。

実はバクテリアと原生動物で構成されているということを言いましたけれども、基本的には、そういう何種類かの微生物の混合微生物集団といっているんですけれども、それの生態系なんですね。曝気槽の中っていうのは。

生態系をコントロールするっていうのはやっぱり非常に大変ということがあります。 これはやっぱり現場の経験というものがかなり大きく影響されるだろうなとは感じています。

Bさん

今度の民営化で県から移譲するような管路は除くとされる。そうすると、県が管理している幹線管路は対象から外れるんだ、県が引き続き管理するんだ、そこをちょっと聞かせてほしい。それが第一点。

もう一つは七北田川の河口に浄水場ありましたね。震災の時に壊れてしまいましたね。そのために浄水機能がなくなりましたね。その時に湾岸に出ていった未処理の水がどれくらい汚れていたのかということを継続したデータというのはあるものなんでしょうか。

というのは、どういうことかというと、仮りに天災とかが起こったときに、これの管理は誰がやるのか、そしたら民間がやることに一応なっているのに、困った時は県がやるのだとそういうふうに表記してあるんですね。で、その間の工事の期間はどれぐらいですむのか何の契約もないんです。それを民間に責任を持ってすぐに修復させるシステムをどうやって構築したらいいのか、そのあたりを含めて、できたらBODの値がどんなものであるのかわかれば教えてほしいということです。

江成先生

えーとー、いまお話の七北田川の浄水場と言いました? 蒲生の下水処理場ですね。あれは仙台市の公共下水道の処理場です。あそこはホントに津波で大被害を受けて、あの時は沈殿処理と塩素滅菌だけで流したんだろうと思いますね。ですから、入ってきたBODと出ていったBODはそれほど変わらないですよ。沈殿ではだいたいまあ1割か2割ぐらいしか取れないですから。たぶん、あのデータ自体はとってるんだろうと思いますけれども、すみません、私、数値までは認識していないのでわかりませんけれども、幸いにと言いますかね、蒲生については放流しているすぐに流されるんですよね。内湾でないものですから。そういう点ではあまり大きな問題にならなかったというのが現実にあって、まあ、以前は処理場の事故というのはそれなりにあって、その時にも水質の問題が生じたということはないわけではなかったんですけれども、ほかの東京なんかですと東京湾に流されるとあそこは周囲が汚れるとかですね、河川の中流あたりで流れるとその河川の汚れがひどくなるというようなそういう現象は、仙台の場合は幸いにもあまり起きないと。地理的ないい条件があるんですね。仙塩(処理場)はすぐ海ですから、しかも割りと入り組んだところにありますから、そういう点ではちょっと心配がありますね。仙塩も津波でけっこうやられたんですね。

管路の話、すいません、私、あまりその辺のことはよくわからないんですけど、(司会の多々良さんに)わかりますか?

多々良さん

小川さん、答える準備はありますか? はい、ありそうですね。

小川さん

さきほど先生が図解で示されましたけど、まさに県が管理するものとして太い線で示されていたのは、基本的に県が全部所有し県が管理するいう意味で言えば、民間の管理では基本的にはないというふうになっています。

市民連合のCさん

先生のお話を聞いて、特に水の汚れという側面から見ると、大変歴史的な状況の中で生まれてくる側面というのが非常に大きいんだなと感じました。特に、私は医師ですが、BODということを久しぶりに伺って大変懐かしくまたリアルに感じることができました。

そのうえで質問なんですけど、私の友人に京都大学の名誉教授で有機フッ素化合物の血中濃度を見ている小泉という研究者がおります。彼が去年のNHKクローズアップ現代で紹介されたんですけれども、大阪の寺の井戸の水の中の濃度と、それから、最近では沖縄の宜野湾市米軍基地の周辺の住民の血中濃度が非常に高い。いずれもそれは、米軍基地の場合は洗浄に使ったものが体の中に入っているというふうなことでしたし、寺の水はおそらく大阪を中心としたダイキン工業とかああいうようなフッ素化合物を作っているところからの廃水が原因なんじゃないかというふうに考えているんですけど、そうすると、飲み水の汚染の問題と廃水の汚染つまり下水の汚染の問題というのは、これからはたぶんおそらくリンクしていくというふうに思うんですよね。つまり、下水は下水、上水は上水というような区分はおそらくなかなか化合物によっては難しくなっていくというふうに思います。有機フッ素化合物の特徴というのは、ずーっと壊れないままそこにあるというのが有機フッ素化合物の特徴ですので、そうするといくら輩出してたとえば海に流れても、またそれはいずれ汚染物質として入ってくると。そういった意味では循環の中でずーっとその化合物がとどまっていると。それがたぶんおそらく現在のテクノロジーの状況だろうと思うんです。そうすると、県が言ってるように、9事業を一体のものとしてやることについては私自身は賛成なんですけれども、しかしながら、こういう水の管理を、水の管理だけっていうのでは、たぶんおそらく決定的にダメで、たとえば治水の問題とか、それからいま言ったようなどんな企業があるいは米軍基地とか自衛隊基地が水源の近くに存在する、営業を許しているというような地域の経済政策から含めて一体のものとして考えないといけないんじゃないかというふうにいま思っているんですけど、先生はこの辺どういうふうに、私の考えが正しければ正しいと言ってください(笑)それは違うぞというのなら違うと言っていただければ助かるんですけど。

江成先生

先ほど水の汚れということで簡単にお話をさせていただいたんですけれども、実はこの問題、非常に幅広くしかも複雑な問題なんですね。

我々の生活の中にもいろんな技術が入ってきて、それを我々使ってるわけですよね。 それは基本的には全部下水に入ってまいります。つまり、一つの例としては薬なんかもそうです。化粧品もそうですし、日常生活の中で使われている有機物のいろんなもの、有機物だけでなく無機物もあるんですけれども、そういうものが全部下水に入ってくる。で、微生物を使った活性汚泥法を使った下水処理でそういうものを分解の対象にしているかというと、基本的にはそれは対象にできません。分解されるものもあるかもしれませんし、微生物にくっついて沈殿除去されるものもあるかもしれない。しかし、あくまでも対象にしているのはBODという微生物の分解可能な有機物というものを対象にしているというふうに言わざるを得ない。それ以外のものは、基本的には放流水の所では薄められて出ていく。

で、おっしゃるように海に出ていってそれが大きな循環が形成されていく中でどうなるかということについては、いまの下水の処理技術としてはほとんどノータッチと言わざるを得ないというふうに私も思っている。で、それを考えていく、あるいは解決をしていくということのためには、こういう下水処理の分野だけではなくて、もっと大きな視点からの議論なり対策というものが必要だろうというふうに思っています。

ただ、もう一つ飲み水との関係で言いますと、我々の排泄物というのは人間の体を通して出ていくものですね。ですから別の言い方をすると、人間から出てきたものというのはいろんな情報を持っているんだというふうに言えますね。いま吐く息からがんを見つけるという技術的な検討もされている。

下水に関係しての話題では、昨日か今日かの新聞で見たんですけども、東北大でコロナウィルスを下水からチェックするという、そういう具合に生物の排泄物というのは生物の中の状態を反映しているというふうなことは原理的に正しいと思いますけれども、そういうふうなものに発展していく可能性はあるだろうというふうに思います。で、そういったことも含めていろんな私たちが使っている物質の作用あるいは状態というようなものを検討していくというのは、申し訳ありませんが、将来の課題かなあというふうに思っている段階です。

命の水を守る市民ネットワーク・みやぎの街頭宣伝のチラシ&参加スピーカーの言葉です。

2020年6月21日、命の水を守る市民ネットワーク・みやぎは、新型コロナの禍中にあるにもかかわらず県が2022年4月の事業開始を目指す「みやぎ型管理運営方式」に対し、疑問と懸念を訴えるチラシを仙台市の一番町平和ビル前で配り、街頭宣伝を行いました。

水道民営化反対 宮城

水道民営化反対 宮城

命の水を守る市民ネットワーク・みやぎのメンバーによる街頭宣伝

 

みやぎ型管理運営方式多々良哲さん

私たちは命の水を守る市民ネットワーク・みやぎです。いま宮城県が全国に先駆けて推し進めようとしている水道事業の民営化、いわゆるみやぎ型管理運営方式について様々な疑問や懸念を持って活動をしている市民グループです。

3月4月5月6月と私たち市民はコロナ感染拡大の中で大変な思いをして暮らしてきました。その中で宮城県は、県民が外出の自粛や休業要請で大変な思いをしている中で、 実は、水道民営化=みやぎ型管理運営方式に向けて、着々といろいろな手続きを進めています。

3月には水道事業の運営権を売り渡す民間企業の募集要項を発表して募集を始めました。そして、民間企業(の募集を)5月には閉め切って、これからいよいよ、その審査をするという段階に来ています。コロナ感染拡大の中で、県民の目がなかなか水道民営化の問題に向かない中でも、県は着々と水道民営化に向けた手続きを進めているのです。

もちろん、コロナ感染拡大の中で、県民に対する説明は十分に行われていません。

3月4月5月6月、県による説明会は一カ所も開かれていません。もちろん、コロナ感染拡大の中で説明会を開くことは無理なわけで、あるいは県の担当者を招いての出前講座・説明会も開催することができませんでした。

県民に対する説明が極めておざなりな中で、しかし手続きだけが県民の目から見えないところで着々と進められている、いま水道民営化はそういうことになっています。

私たちは先日、宮城県に対して公開質問状を提出して、このままみやぎ型管理運営方式=水道民営化を推し進めていいのかという疑問を投げかけました。

水道民営化に対する疑問はいくつかありますけれども、私たちが公開質問状の中で投げかけた質問の1点目は、県の水道事業の専門家人材が維持していけるのか? 減少してしまうのではないか? という大きな問題です。

宮城県が水道事業者として責任を維持するためには、水道事業全般に精通した県職員の育成が必要です。しかし、みやぎ型管理運営方式では、県が今まで行ってきた機械・電気設備の改築・改修工事や薬品の発注・調達なども全部民間企業に任せることになってしまいます。そうすれば、県に水道事業の専門家人材が育成されず、どんどん減少することになってしまいます。

県はみやぎ型管理運営方式=水道民営化によってコスト削減を目指しています。水道事業を民間企業に委ねるのであれば、むしろ県の人材を縮小しなければ、減らさなければ、かえって二重コストになってしまいます。その結果、水道事業に精通した県職員の人材は育成されず、民間企業に水道事業をいわば丸投げすることになってしまうのではないでしょうか? 私たちはこのことを強く懸念しています。

2つ目の水道民営化に対する疑問は、水質が維持されるのか? という問題です。

水道事業の運営権を買い取る民間企業に対する要求水準書の中では、今と同じ水質検査をやらなければならないということは掲げられていません。民間企業に委ねれば、民間企業の判断で現在の水質管理体制が変更され、水質が悪化してしまうのではないか? 私たちの大切な海や川、自然環境が汚されてしまうのではないか? この懸念を拭えないわけです。この点からも私たちは水道事業の民営化に大きな懸念を抱いています。

そして3つ目、最大の懸念は、このコロナ禍、コロナ・パンデミック、私たちはこの事態を体験したわけで、それでも民間企業に本当に私たちの命の水、私たちの公衆衛生にとって最も大切な水道事業を、グローバル企業、民間会社にゆだねてしまっていいんだろうか? という根本的な疑問です。

今回のコロナ・パンデミックによって、宮城県の県民の公衆衛生、保健衛生にとって、最も大切である水の大切さを、私たちは改めてこれを実感しました。きれいな水に県民誰もがアクセスできることの大切さ、貴重さを、私たちは今回のコロナ感染拡大によってよくわかりました。手を洗うにも、うがいをするにも、まず必要なのはきれいな水です。この水道事業を民間企業にゆだねてしまっていいんでしょうか? 

一方で、コロナ感染拡大によって、私たちはグローバル経済の危うさというものもよくわかりました。私たちが絶対につぶれないと思っているような大きなグローバル企業だって、経営破綻、経営の困難に陥ることがあるんだということです。水道事業をグローバルな企業・グローバルな民間企業にゆだねることのほうが、むしろ危ういんじゃないでしょうか? 地元の公営企業・ローカルな公営企業でしっかりと水道事業をやっていくことのほうが、むしろ持続性があり安心なんじゃないでしょうか? このことの疑問を 私たちは水道民営化について思っています。

みなさん、私たちは命の水を守る市民ネットワーク・みやぎです。宮城県が全国に先駆けて推し進めようとしている水道民営化=みやぎ型管理運営方式について、いくつもの疑問や懸念を抱いています。

このコロナ感染拡大、まだまだ第2波・第3波が心配される中で、このまま宮城県の水道民営化を推し進めていいんでしょうか? 宮城県の水道事業をどうしていくか、ここで1回立ち止まって県民みんなでゆっくりじっくり考えてみるべきではないでしょうか? 私たちはそのことを訴えています。

ぜひ今私たちの仲間が配っているチラシを受け取ってご覧ください。みやぎ型管理運営方式=水道民営化についての疑問点や懸念点が書かれています。みなさんも問題意識を共有して、一緒に、「みやぎ型管理運営方式=水道民営化をこのまま推し進めていいのか?」「このコロナ感染拡大の中でいったん立ち止まって、県民みんなで考えてみるべきではないか?」この声を一緒にあげてほしいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 

  

佐久間敬子弁護士佐久間敬子弁護士

ご通行中の市民のみなさん、こんにちは。私たちは、命の水を守る市民ネットワーク・みやぎです。

みなさんも私たちも、このコロナという新しい不運の中で、大変不自由で苦しい生活を押し付けられましたし、まだそういう状況におられる方が沢山おられます。私たちも、みなさんと同様です。

いま私たちが訴えている「命の水を守る」。これは私たちの命・健康にかかわる問題だと思っております。そういうようなことから、今日からこの公の道路でみなさんに私たちが作ったチラシを配布する。そして私たちが考えていることをお聞きいただいて、共に、「この水道民営化、問題がいっぱいあるんじゃないの?」「こんなに安易に進めていいの?」このような疑問を、みなさんと一緒に共有していただきたいと思います。

今みなさんにお配りしているチラシに、私たちが考えている宮城県が進めている水道民営化の大きな問題点、大きな不安が書いてありますので、どうぞみなさんお手に取ってみてください。

宮城県は、昨年の12月、条例を変えて、今まで公営企業体が公共のサービスとして私たち県民に提供してきた水の事業、水道事業、上水事業、工業用水道、下水道事業、この3つの事業を一体で民間に運営を全部任せることができるように条例を変えました。

そして、こういう事業を「やりましょう」という事業者を募集して、3社が応募しました。その3社の中から1社を選んで、来年その企業と運営権の設定契約というものを結んで、再来年の4月からはこの水道3事業を民間に全面的に委託するというスケジュールで進んでまいります。

このスケジュールは、この世界的なパンデミックであるコロナのもとでも粛々と進んでいます。県は、県民に対する説明が十分ではないということがよくわかっていて、「これからは県民に対する説明会をやりましょう。出前講座やりましょう」と、昨年の条例が成立した時に言っておりましたけれども、このコロナの中でそういうことは一切取り止めになって、他方スケジュールは着々と進められている。

私たちは先日、県の水道事業のコンセッション方式というものに対して、9項目の質問状を公開で出しました報道機関も取り上げてくれて、新聞にも載りました。みなさんの中でも、これを目にされた方もいらっしゃると思います。

私たちが問題に思っていること9項目ありますが、その中の大きなことは、いま配布しているこのチラシの裏側に書いてありますように、水道事業を民間に運営権を全部丸投げしちゃうということになった場合に、県に、この水道事業が上手く進んでいるか、水質は守られているか、水は安全に供給されているか、こいうことをチェックする専門の職員がいなくなるのではないかということです。

水道の問題、私たちごく当たり前に考えていましたけれども、これを守ってきた県の職員のみなさん、大変な専門家です。そして、単に知識として専門家であるだけではなくて、個々の浄水場とか、そういうところの事情をよくわかった方々です。現場の状況をよくわかって、何事かがあった場合も即対応できる、そういう知識と経験を備えた職員の方々が、私たちの大切な水事業を守ってきてくださるわけです。

こういう仕事が民間に全部まかされたら、技術者がだんだんといなくなってしまいますね。また、優秀な技術者を養成するという必要がなくなります。民間の技術者がやる以上、県にそういう技術者を抱え込む、養成するのは、無駄なことになりますので、民間にお任せする以上、県にはそういう優秀な職員はいなくなる。優秀な知識・技能がだんだん少なくなっていく。それが当たり前のことになるのです。

私たちは3.11で大災害を経験しました。昨年の台風19号でも、水道事業は大きな被害を受けました。そして、この世界的に大恐慌を巻き起こしている新型コロナの問題で、水事業も大きな影響を受けています。

3.11の時、宮城県の水道・下水道を守ったのは、県のあるいは仙台市の優秀な職員、そして全国から応援に駆けつけてくれた全国の水道の技術者です。こういうことが、民間にお願いした場合に果たしてできるのでしょうか? 

採算度外視の公共事業・公営事業であるからこそ、大災害の時に損得を抜きにして全国から大勢の自治体の職員が駆けつけてくれました。こういうことで私たちの水道は守られていたわけです。これが民間に任された場合どうなるか? 大変不安があります。

そして今、このコロナの中でうがいをしたり手を洗ったり、水に対する私たちの意識・要求は高まっています。そして公衆衛生がいかに大切か、このコロナの蔓延を防いでいる一つの要因は、私たちの公衆衛生のレベルの高さにあるのではないかとも言われています。

こういうような中で、この水道3事業を民間にすべてお任せする、これには大変大きな不安、それから疑問を持たざるを得ません。民間に任された場合の水の水質、それから清潔さのレベル、それらは果たして今までと同じように維持されるか? これも大きな不安材料です。

いま宮城県、そして宮城県から水を買っている仙台市、大変懇切丁寧な水質検査を行っています。検査の回数もいろいろ多いんです。しかしながら、これからは間にお願いするとなった場合に、こういうような頻繁で非常に丁寧な水質のチェックができるかどうか?それはわかりません。

みなさんに供給される水の水質が結果的に変わらなければそれでいいという話で、きれいな清浄な安心な水を作るいろいろな過程で、どういうチェックが必要か、どういう 薬品が使われるか、それは運営企業に任される。従って、水が私たちに供給される過程については、私たちは、これまでの県が行ってきたような丁寧でそして頻繁な検査はなくなるのではないかと不安に思っています。

宮城県が民間に水道事業の運営を任せるその大きな理由の一つが経費の削減です。このまま公共事業体でやっていった場合よりも民間にお願いしたほうが247億円の経費の削減ができるという試算をしているわけです。

ただその試算も、具体的なデータがあってのことではありません。このぐらいの削減ができるのではないかなという期待値で出てるだけで、具体的なデータを突き合わせて積み上げて作った数字ではない。

そして今、新しいコロナという状況のもとで、世界の大きな企業が非常に苦しい経営を強いられています。労働者を解雇したり、工場を閉鎖したり、これまでのような利益を上げるということが果たしてこのパンデミックの中でできるのか非常に不安です。

宮城県の水道事業のコンセッション、これは当然、このコロナの前に考えたものですから、コロナという時代をこれからどうやって私たちは生きていくかと、そういうような大きな状況の変化を踏まえていません。果たして民間企業に私たちの命の水、健康にとって大切な公衆衛生にとって大切な水道3事業をお任せするというのが、果たして宮城県が考えていたような予測の元に成り立つのか大きな問題です。

民間企業は非常に不安定になっています。そういう中でこの企業に今後20年間、私たちの命の水、生活にとって必須の命の水、健康にとって大切な水、それから産業にとっても大切な水、漁業にとっても大切な水、これを民間に任せていいんだろうか、大変大きな不安と疑問を持たざるを得ません。

むしろ私たちの公共の資産として、公共事業で県民の参加のもとでこれを守っていく、発展させていく、これが、これからの新しい社会のあり方ではないかなと思います。

みなさん、いま宮城県が進めている水道3事業の民間移譲、コンセッション方式、これは大変大きな問題があります。私たちは県に対して9項目の公開質問状を出しております。その中のいくつかを今日のチラシに書いてあります。

このまま進んでいくと、2022年の4月には、私たちの大切な水道3事業が民間に全面的に運営権が譲渡されるということになります。なんでそんなことを今する必要があるのか、もっと時間をかけて県民の理解を得て ほしい。私たちの疑問に丁寧に答えてほしい。それが一切実行されていません!

どうぞ私たちがお配りするチラシを見ていただいて、この水道事業のコンセッションという民営化、民間が運営するという点では民営化に間違いないと思いますが、多くの問題がある。その旨を皆さんと共有して、これから県に対して「私たちの疑問にちゃんと答える、そんなに急いでこのコンセッション方式を実行する必要はない」という声を挙げていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

いま私たち命の水を守る市民ネットワーク・みやぎが、宮城県が進めている水道事業のコンセッション方式と言われる民営化の方式に大きな問題がある、異論があるということでチラシをまとめました。チラシに書いてありますので、どうぞみなさん、お手に取って読んでください。そして、いろいろわからないことが出てきたという場合にはどうぞ、私たちの命の水を守る市民ネットワーク・みやぎのほうにご質問を挙げてください。よろしくお願いいたします。

 

中嶋廉
中嶋廉さん

お買い物のみなさん、こんにちは。私たちは命の水を守る市民ネットワーク・みやぎのメンバーです。

宮城県が計画している水道の民営化は百害あって一利なしです。今日はそのことを知っていただくチラシをお配りしています。ぜひご覧ください。

みなさん、いま宮城県が計画している水道の民営化というのは、民間企業が絶対に損をしない、必ず利益を出すことができる仕組みを作って、その民間企業に県の水道の運営権を売却しようとするもので、究極の民営化だと言われています。

PFI法という法律に基づく民営化の一種ですけれども、県の職員は民営化ではないということを一生懸命言いたがるんですけれども、インターネットで検索してください。 コンセッション方式という新手の民営化。必ず民間企業は利益を出す、絶対に損をしない。しわ寄せは県と私たち県民に押し付けられます。ですから、必ず民間企業が利益を出すんです。どの解説の文書でも、民営化の一種だということがきちんと書かれています。それなのに県の職員は、一生懸命「民営化じゃない、民営化じゃない」と言って言い訳をしています。この言い訳を付けること自体が、県民のみなさんの利益にならないという中身を自白しているようなものだと私たちは考えています。

百害あって一利なしの水道民営化をやめさせましょう。みなさん、この宮城県の水道民営化計画は、民間企業の、民間企業による、民間企業のための、民営化なんです。審議会で、県の職員は、挨拶をして司会進行役をやるだけ。計画の中身の説明をするのは全部、 日本総研という民間のシンクタンクの社員です。県議会の議員が控室に(県の)職員を呼びだしてあれこれ質問すると、(職員は)答えられないで「後から調べて回答します」と言って、やっぱり日本総研の社員に相談してから回答してくる。何から何まで左右しているのは民間の企業。これでは、まともな政治家とは、とても言えないと思います。

私たちが腹が立つのは、嘘があまりにも多すぎるということです。経費を247億円削減できるということを県の職員は一生懸命言ってるんですけれども、それは民間の企業が作った資料です。「根拠を説明してください」と言うと、まともな説明ができないです。こんなひどい中身は認めるわけにはいきません。

みなさん、イギリスの政府は、PFIという民間委託を、「全く国民のためにならない」と言って、「全部やめます」ということを決めました。

パリ、ベルリン、あちこちのヨーロッパの街で、公共でやっていた水道を民営化したために、とんでもない水道の質が悪化したり、値上げ値上げの連続になったりして、あわてて元の公共の運営に戻すということをやっています。

全世界でやったら失敗する、住民が被害を受けるということがわかっているのに、なぜ日本で今頃、時代遅れの水道の民営化をやらなくちゃいけないんでしょうか。安倍さんがその政治を進めてるんです。安倍さんのお友達が関わっているヴェオリア・ジャパンというフランス生まれの会社が、宮城県の水道をものにする本命でないかということが言われています。こういうお友達政治はもうたくさんです。水道は私たちの命を支えるもの、下水道は大事な宮城県を維持していくために大事なものです。

水道の料金の値上げ、下水道の排出が悪くなって養殖漁業に悪影響が及ぶんではないかということも心配されています。百害あって一利なしの水道民営化にストップをかけましょう。今日、私共が作ったチラシをお配りしております。どうぞご覧いただきたいと思います。

この水道民営化は、決まるのは来年の夏ごろです。県が 民間業者を選んで、その業者に契約をしようとするんですが、それに県議会で待ったをかければ、みごとに水道の 民営化はストップをかけることができます。百害あって一利なしの水道の民営化。これにストップをかけるために力を合わせましょう。

民間企業が主で、県民の私たちにはまともな説明がされていないという民主主義に反するやり方で進められています。ヨーロッパ諸国をはじめ全世界で水道の民営化は大失敗に終わっています。水道料金の値上げだけでなく、水道にかかわる大事な情報が公開されなくなり、市民がチェックをすることもできなくなる。そういう弊害がたくさん起きています。民間企業が濡れ手で粟でぼろ儲けをする。私たちには何も知らされない。そういうひどい歪んだ政治はたくさんです。

私たちが声を挙げることで百害あって一利なしの水道民営化、民主主義に反する水道の民営化、やめさせてまいりましょう。今日チラシをお配りしています。宮城県に9項目の公開質問状を出しています。ちゃんと回答してほしいなと思っていますけれども、まともに回答したら、県民のためにはならない民営化計画だということが、上から下まで全部明らかになるはずです。

ぜひ今日お配りしているチラシをご覧いただき、ご一緒に百害あって一利なしの水道民営化にストップをかけるために力を合わせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いをいたします。

今年に入ってから、新型コロナの問題が浮かび上がってまいりましたが、これからの新型コロナのウイルスが人類と共存していくような時代に、この水道民営化は、ますます問題があるということが浮かび上がっています。感染者はその国の衛生状態や医療の状態、その国で生活している人々の健康の状態、遺伝の状態、さまざまなローカルファクターと呼ばれるもので流行がどの程度に抑えられるのかが決まります。

日本で幸い重症になる人、亡くなる人が少なかった要因の一つ、私たちが良く手を洗う、マスクを付けることを嫌がらない、日本人の清潔好きな習慣が、ものすごく大きな効果を上げたのではないかと言われています。どこの公園に行っても、無料で手を洗うことができる蛇口があります。ところが、水道の民営化が行われた都市では、公園の水道は全部撤去される、そういうことまで南米では起こっています。公衆衛生の推進と反する水道の民営化はやめさせましょう。

宮城県は加えて、下水道まで民営化しようとしています。排水をきれいにして、海が清潔・清浄な状態に保たれるようにする、養殖漁業に影響を与えないように宮城県の下水道事業は頑張ってきました。それが儲け本位の民営化が進めば、排水の品質が悪くなる、そもそも水質検査の回数を手抜きされるのではないか、こういうことが下水道の専門家から指摘をされています。

新型コロナと共存する時代、ますます公衆衛生や公共の水域の汚染防止が大事な時に、それに反する民営化をするということは、私たちは間違った方向に向かうことだと考えています。百害あって一利なしの水道・下水道の民営化にストップをかけるために力を合わせてまいりましょう。どうぞチラシをご覧ください。 

 

森田眞理さん

私たちは命の水を守る市民ネットワーク・みやぎです。

昨年から議論されてきた宮城県での水道の民営化、みやぎ型管理運営方式というコンセッション方式、これはどう見ても民営化に他なりません。

民間が水道の事業を管理した場合にはどんなことになるのか、十分な議論がされないまま採決をされてしまいました。

諸外国ではこの民営化によって、大きな水質の劣化と水道料金の2倍3倍化が行われてしまっており、そのことを反省して再び公営化が行われているという事態が起こっております。

宮城県では昨年、村井知事が手を挙げて水道民営化に走ってしまっております。十分な審議も議会で行われないまま、今3つの事業者が手を挙げて請負の事業者になろうとしています。これは拙速ではないでしょうか。

今みなさん方にお配りをしているチラシどうぞご覧になってください。裏側に書かれておりますけれども、まず心配なのは水質の悪化の問題です。これまでの宮城県の水道管理基準、水質基準が本当に民間の事業者で守られるのでしょうか? 私たちはそのことが最も心配でなりません。この水は私たちの命そのものです。毎日、人間は水2リットル、2リットル当たり使用するその水、 子どもたちの未来に、20年30年、50年、100年、残していかなければならないと思います。安心して飲める水にしていこうではありませんか。

次には、価格の高騰の問題です。諸外国でも2倍3倍になっているというふうにご紹介いたしましたけれども、どうしてなのか、何でですかということが問題です。民間の事業者になりますと、株主への配当や役員の報酬、電力でも大きな問題になったように役員の報酬がお手盛りして多い。これは料金の値上げの必然的な結果ではないでしょうか。

株式会社の利益追求によるもっと大きな問題が、情報が 公開されない、儲かっているということも隠されてしまいます。それは、フランスのパリの副市長さんが日本に来られて、このことを明確にアドバイスをしていただいております。情報公開は、いま日本の政府が隠し通しているような虚偽、偽装、疑惑、捏造、そして文書を廃棄してしまう、黒塗りにしてしまったり、水増しをしたり、そうした日本の悪しき政治習慣が民間に染みついてしまいます。情報の公開が十分に行われない、こうしたコンセッション方式という水道の民営化は、絶対に許してはならないのではないでしょうか。この宮城の水が民間に任されてしまう、こうしたことは絶対に許してはならないと思います。

その次に問題なのは、職員の技術の伝承の問題です。今、宮城県自治体の中で水道事業に精通している職員のみなさんが枯渇してしまう。民間企業に天下りをしたり、企業の言いなりになって情報をごまかしたり、そういうことになりはしないか、そういった不安や疑問がたくさん寄せられてきております。

今でさえ、宮城県の水道の価格は全国で第3番目です。普通の家庭での1か月の水道料金は、仙台では3,488円、政令指定都市の中で全国第2位の水道の料金の高さです。宮城県は全体で4,249円の水道料金の支払いを私たちは行っております。これは青森県、北海道に続いて全国第3位の高い水道を今、私たちは使用しているわけです。それがますます民間の企業に売り渡された場合にもっともっと高くなるのではないか、そうした心配や疑問が私たちの声として議会に届けなければならないと思います。

さらに大きな問題は、昨年の台風21号や3.11の地震津波被害、そして今回のコロナ感染下における水道水の安全は、本当に確保されるのでしょうか。みなさんの大きな疑問がこの点にあるのではないでしょうか。緊急事態における対応はやはり行政自体が窓口を一本化して管理、改善をし、そして老朽化した管路の修復を公共事業として水質全体の管理を行いながら進めるのが筋ではないでしょうか。

水道民営化は、20年という長い年月にわたって民間が管理することによって、競走が なくなっちゃいます。そんなことでいいんでしょうか。独占企業に任せるとどうなるか、電力会社のあの関西電力の3億円の詐欺によっても明らかになっているのではないでしょうか。私たちの命の水、大事な水を民間に売り渡してはなりません。

むしろ私たちは、今からできる自治体の広域連携、これは岩手県の広域水道事業組合が67億円の削減をして地域の人たちに喜ばれているではありませんか。今できる宮城県自治体での公共事業としての水道事業の改善、費用の削減など、知恵を絞って行うのが、宮城県の水道事業の携わっている職員の方々もいいのではないでしょうか。

人口減少や施設の老朽化の問題が叫ばれています。だからこそ、私たちは民間に命の水をまかせるのではなく、公共事業として県が一元管理をしていき、県民の声を行政自体が吸い上げていく、そして議会できちんと、各自治体と県議会が私たちの代表としての議員を送り込んで議論していただくのが筋ではないでしょうかダウンサイジングという水道事業の統廃合も、今、仙台市では行われています。進められているこうしたダウンサイジング、水道事業の統廃合も公共事業として行うことが大きな効果を生むと言われております。

みなさん、このいま配っておりますカラーで作成されたわかりやすい、子どもさん方にも喜んで見ていただけるチラシ、どうぞご覧になっていただきたいと思います。

水道事業は私たちの毎日使う水道だけではありません。下水道、工業用水、これらも一体となって売り渡されてしまうというこの水道民営化、コンセッション方式、是非とも考え直していただきたい。性急に拙速に行われている宮城県での水道の民営化、是非とも考え直していただきたいと思います。
命の水を守る市民ネットワーク・みやぎの仲間のみなさんが、ご通行のみなさんに手配りでチラシをお渡しいたしております。是非ともご覧になってください。12時半から 1時半まで(音量の)高いマイクで大変失礼をいたしております。最後の締めくくりを、多々良さん、よろしくお願いしたいと思います。

 

再び多々良哲さん

みなさん、私たちは命の水を守る市民ネットワーク・みやぎです。

いま宮城県は全国に先駆けて、全国の中で自治体としては初、上水道、工業用水、下水道、この県の水道事業を一括して、その運営権を民間企業に売却しようとしている「みやぎ型管理運営方式」に大きな疑問、懸念を持って注目しています。

今日はコロナ禍で12時半から1時半まで1時間にわたってこの問題をみなさんに訴え、 チラシを配らせていただきました。

みなさん、私たちはこの数カ月間、コロナウイルス感染拡大の中で大変な暮らしをしてきました。外出の自粛、営業の自粛、この苦しい暮らしの中で、なかなか県民の目が、水道事業、民営化問題に向かない中でも、実は県は着々と水道民営化に向けた手続きを推し進めています。3月には水道事業の運営権を売却する民間企業の募集を始め、そして5月には締め切って、これから審査に入るという段階になっています。もちろん、コロナ感染拡大の中で、この間、県民に対する説明会は一度も開かれていません。

県民に対する説明をおざなりにしたままで、コロナ感染拡大第2波、第3波が心配されている中で、このまま水道事業民営化を推し進めてしまっていいんでしょうか。

私たちはコロナ感染拡大の中で、手洗いの大切さ、うがいの大切さ、よくわかりました。これはつまり、私たち県民誰もがいつでもきれいな水にアクセスできる、水道の蛇口をひねれば安心してきれいな水が使える、このことの大切さ、よくわかったのではないでしょうか。

宮城県の水道事業、その運営権を民間企業に売り渡してしまって、私たちの水道の水質は本当に保っていけるのでしょうか? 誰でも使える水道料金の水準が保たれるんでしょうか? このことに大きな懸念を持っています。

私は、コロナウイルス感染拡大の中で、公衆衛生の大切さ、きれいな水に誰もがアクセスできることの大切さ、よくわかりました。そしてもう一方でグローバル経済の危うさというものも、よく見えてきたんではないでしょうか。グローバル企業と言われる大きな多国籍企業、勝者といえども経営危機に陥る危険性が十分にある、そのことを私たちは思い知りました。グローバル経済の中で活動している企業の存続の危うさ、このことが見えてきました。

私たち県民の命の水、水道事業を、グローバルな国際的な大企業にゆだねるほうが本当に持続可能性があるのか? むしろ、ローカルな公営事業としてやっていくほうが持続可能性があるんじゃないか? その根本的なところから、私たちは宮城県の水道事業の民営化を見直していくべきだと思います。

コロナウイルス感染拡大、コロナ・パンデミックを経験した上でも、なお水道民営化をこのまま推し進めていいのか、そういう根本的な疑問があると思います。ここで一度立ち止まって、県民みんなで宮城県の水道事業の持続可能な形、本当に私たち県民が安心してこれからも水道を使っていけるにはどうしたらよいか、宮城県の水道事業の持続可能性について、県民みんなで、ここでいったん立ち止まって議論するべき時ではないでしょうか。

このまましゃにむに水道民営化を推し進めてしまってはいけません。ぜひ村井知事はいったん立ち止まって考え直していただいて、もう一度宮城県の水道事業の持続可能性についてみんなで考える、そういう県民の討論形成の場を作ってほしいと思います。

みなさん、いま宮城県議会が開会しています。県議会の中でも、この水道事業民営化をめぐる議論を十分に交わしていただきたいと思います。そのような声を、県民みんなで村井知事に、そして宮城県議会に届けていきましょう。県民みんなでこのまま水道民営化を進めてしまっていいのかどうか議論していきましょう。是非よろしくお願いいたします。

今日の命の水を守る市民ネットワーク・みやぎの街頭宣伝、1時間にわたってこの場で(音量の)高いマイクを使わせていただきました。どうもご協力ありがとうございました。私たちが配るチラシを受け取ってくださってありがとうございました。どうかこのチラシをよく読んで、水道事業の民営化について一緒に考え、一緒に声を挙げていってほしいと思います。よろしくお願いします。今日の命の水を守る市民ネットワーク・ みやぎの街頭宣伝はこれで終わらせていただきます。どうもご協力ありがとうございました。  

命の水を守る市民ネットワーク・みやぎが、みやぎ型管理運営方式に関する公開質問状を宮城県に提出しました!! 公開質問状の全文面 & 担当県職員との意見交換会での激論を公開します!!

2020年6月10日、命の水を守る市民ネットワーク・みやぎが、宮城県上工下水一体官民連携運営事業(みやぎ型管理運営方式)に関する公開質問状を宮城県に提出しました。

 

みやぎ型に関する公開質問状提出


みやぎ型に関する公開質問状

みやぎ型に関する公開質問状

 みやぎ型に関する公開質問状

みやぎ型に関する公開質問状

 みやぎ型に関する公開質問状

みやぎ型に関する公開質問状

みやぎ型に関する公開質問状

みやぎ型に関する公開質問状

みやぎ型に関する公開質問状

 

担当県職員との意見交換会

 

小川さん (命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ事務局)

みやぎ県政だより5月号・6月号の特集記事「ここが知りたい!みやぎ型」の説明内容は、県民が求めていたものなのか、的確に答えたのか、あるいはこの間のさまざまな説明会で出された意見やパブリックコメントを踏まえて、それに応えるものなのかということを視点にしながら、私たちの考えを述べながらわからないところを公開質問状に書かせていただいた。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ事務局)

みやぎ県政だより5月号・6月号の特集記事「ここが知りたい!みやぎ型」は、極めて不十分だ。表面をなぞっただけで、県民が本当に知りたいことには答えていない。

県民が本当に知りたいのは、この公開質問状だ。これに正面からきっちり答えていただいて初めて、本当にここが知りたいという県民の質問に答えたことになる、と受け止めていただきたい。

岩崎さん(宮城県企業局技官兼次長)

ちょっと一言、言わせていただきますと、冒頭、多々良さんからありましたけど、民営化という言葉ですけども、みやぎ型管理運営方式は民営化ではありません。

企業局がなくなって、水道会社になったり、水道事業を丸投げして民間に任せるという民営化ではありません。どうも県民のみなさんは、「水道が民営化されると、会社から水を買わなければならなくなるのか。そんなのやだ。水が高くなるかもしれないし、悪くなるかもしれない」という混乱があるのではないかと思います。

これはせっかくの機会ですので、報道機関のみなさまにも、民営化ではないということで対応していただければと思います。現在も、浄水場下水処理場の運転管理は、民間事業の方々に委託をしています。

で、せっかくですから質問したいんですけども、現在のこの状況を是と考えられているのか、それとも否と考えれれているのか、そこをお聞きしたい。で、なぜ聞くかというと、もしかすると、浄水場下水処理場の運転管理を、全員公務員でやるべきだと思われているのかもしれないなと思って、確認させていただきたいと思います。現在運転管理上、委託されているわけです民間に。それはダメだと、全部公務員でやるべきだと思われているのかどうかということをお聞きしたい。

小川さん (命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ事務局)

いえいえ、一度も言ったことはないです。公務員が全部やるべきだなんてことは、一度も言ったことがないです。そんなチョイスがあるんだと、現実もそういうチョイスがされている、そのことを何か否定しているわけではない。

ただ、これから先の問題として、やろうとしている中身は反対ですよ、と。じゃあ、 どういう方法があるのかっていうことについて、議論をしない宮城県が問題なんです、と言ってるんです。将来に対する選択肢を一つだけ示して、現状の問題について考える場を、なかなか設けることをせずに、将来のことだけ一生懸命に、水道料金が上がるとか、それから管路の更新が必要なんだとかということで、ある意味、ぼくらの感覚からすると脅しですよ。脅しをして将来これしかないんだ、というふうなやりかたで議論するのはやめるべきだ、と。現状の問題も含めて、どういう方法がいいのか、そこを議論すべきなんだという立場ですよ。公務員がどうのこうのなんて、全然ぼくらのほうで考えてるわけじゃない。話は完全に誤解です。

岩崎さん(宮城県企業局技官兼次長)

ですから民営化という話になってしまうとですね、やはりそういう誤解が生じやすいですので。みやぎ型管理運営方式では、今の委託に施設の改築を含める、あるいは20年間の長い期間で運営をしていただくという、大きな違いはない、今の状況とですね。ですので、何をなんか心配されているのか、ちょっとよくわからないところがあるんですけれども、今回いただいた質問に答えていけばですね、不安の解消にもつながると思いますので、まあ、今日初めて見させていただきましたので、 この趣旨を踏まえてですね、回答させていただきたいと思っています。

中嶋さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

私は、公共サービス事業というのは、いろんなタイプがあると思っているんですよ。 すべて公営でやんなさいとか、行政が担保するんだ、というふうには考えてないです。実際の公共サービスっていうのは、たとえばバスなんか、民間会社が参加しているわけですよね。それの在り方をどうするかということを議論しているわけで、ポイントは 公共性の担保なんです。

いろんな主体があって、それぞれの考え方が違うわけですから、それの中で対立はあり得るわけです。そこのところをどうまとめるか、公共性をどのように担保するか、そこを議論しましょうということなんです。大事な問題は、公共性をどうやって整えていくのか、たとえばサービスの質をどう高めるのか、将来にわたって安定させるかという問題で、そこをの議論を本気でやるべきだと思っていますよ。その点はぜひご理解いただきたい。

岩崎さん(宮城県企業局技官兼次長)

今後は宮城県企業局が水道事業を担っていくわけですから、水道事業者は宮城県のままですので、その中の運営の一部を民間に任せるということですから、是非いろんな意見をいただいて、より良いものにしていければといいかなと思っております。

佐藤さん(宮城県企業局次長)

(公開質問状の)6ページの上のほうでですね、大崎の事業説明会でのやり取りが書いてありまして、6行目、7行目ぐらいに「と答えました。ほとんど理解不能の説明ですが」云々となってるんですが、私もここを読んで、我々の説明が不十分なのかな、なかなか理解していただけなかったんだなと、今感じてたんですけども、今回の削減額の 根拠に至るところが不明確じゃないかというご指摘を先ほどらいいただいていますが、そもそも、ざっくり言うとですね、県がこの後20年やると1,600億かかると、それを200億削減して1,400億でやってもらいたい、と。その200億の根拠は何だ? という話を先ほどからずうっとこうなされているわけですけれども、ここで県の担当者は、「具体的根拠がないことは『確かにその通り』とここだけは明快に認めています。」というふうに書いてあるんですが、これ、どういうことかと言いますと、たとえば、工事で県が1,000億と予定価格というか上限の価格を出して、入札をして、100億とか200億とか減らして900億とか800億とかで入札されるわけですね。これも、基本的には同じやり方なんですね。1,600億で県は20年間やることになるけれど、民間の人たちに任せるにあたっての上限を1,400億という線を引きましたという話なんです。ではどのぐらいで線を引くかという時には、マーケットサウンディングの中で民間の方々の感触を探りながら、その線を引いてきました。で、この1,400億でもって、最終的には提案がその額になりますと言っています。ある意味入札なんですね。で、1,400億よりも下の方、ウチは1,300億でやる、ウチは1,200億でやる。価格競争がすべてではありませんけれども、その価格でもってやっていただくためにも、最初から20年間で契約をするんです。ですから何度も言ってる通り、間違いなく200億以上は削減されます。それは疑いのない事実ですというのは、そういう意味なんですね。ですから、最初はそれでスタートしても、途中で勝手に彼らが上げたり下げたりなんてことはできない仕組み。最初にもう契約で20年間縛ってしまって、もちろん物価スライド条項とかですね、そういうものは存在しますけれども、基本的には彼らに渡る額というのは、決まっちゃうんですよ20年間。ですから、 コスト削減額というところで、その点はまずご理解いただければと思います。

小川さん (命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ事務局)

だから、それが理解できないから質問するわけです。 ここに書いてある大崎市での説明の内容ね、これ事実なんですよ。 質問者は何を質問してるのかってことなんですよ。 わかります? これで。 「247億円の具体的根拠は何ですか」って聞いてるんです。「ない」って答えてるんです。そんなことないでしょう。

佐藤さん(宮城県企業局次長)

仮になかったとしても、結果的に、そうなるでしょうってことなんです。200億引いた額が上限で提案を募るわけですから、それより下の額の入札しかありえないっていうことです。

小川さん (命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ事務局)

佐藤さんのおっしゃることは、日本語としては理解してますよ。だけど、納得できないわけですよ。県民の人たちも納得できない。なんでこうなるの? と。理由はね、200億という数字を出されるから。 ではその根拠は何なの? と質問したくなるのは当たり前じゃないですか。そういうことについては説明しないで、入札やる金額はそれで縛るんで、絶対それいくんですというんですね。

佐藤さん(宮城県企業局次長)

その根拠は何かといったら、この問2の答えになるかなと思いますので。それからね、緻密な、緻密な20年間のあらゆる主張を積み上げたものじゃないと、それは根拠じゃないと言われると、それは確かに困る。ですからここでね、大崎のとこでウチの担当者が回答したことは、私が先ほど申し上げた通りの内容なのですけども、なかなか我々の説明も、説明してるつもりなんですが、ちょっと誤解があるなと思ったもんですから。

小川さん (命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ事務局)

佐藤さんの言葉を引き取って言うと、たとえばこれから先ね、まさにどういう経済状況になって、どういう状況がこの後起こるのか誰もわからない。その中で、たとえば具体的な数字を確定的にガチっと言って、その通りにいくなんて誰も思わないわけです。 そういう状況の中で247億円削減しますと言うから。20年間のこの先何が起こるかわからない、どういう経済情勢になるかわからない中で、水道事業の数字も大きく変わるでしょう。だけど、宮城県としては20年間247億円という数字出しちゃうから、こんな、これから先のことわからないのに、何で247億円も金額を削減して、先ほどおっしゃられたように200億下げて入札してもらうと、こんなロジックで20年間縛るから絶対行くんですって言うこと自体に、なんでそうなるんだろうなって。

佐藤さん(宮城県企業局次長)

繰り返しになりますけれども、そういうふうには契約でもって、20年間のたとえば彼らが1,400億でやるって言ったら、1,400億で20年間お支払いしますという、そういう契約書になるんです。ですから、どういう経済情勢になったら、将来不確定じゃないかと言われてもですね、当初の段階で契約書で、彼らに渡る額、20年間渡る額というのは決まるわけですから、そこは、そんな不確定じゃないか、ということにならないと思うんですよ。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ事務局)

いやその説明は、県民には到底通らない。県民というのは民間ですから、自分でこの市場経済の中で経済活動をやってるわけだから、私もその実感持って言うけど、それこそ今回のコロナ危機でグローバル企業がね、いかにもろいものか。グローバル経済というのがいかに脆弱なものかということを、今回のコロナ危機で思い知ったじゃないですか。その中で活動している企業の存続というのは、本当に不確かなものなんだということも、みんな実感しているわけなんです。私たちが絶対潰れるわけがないと思っている企業だって潰れるかもしれない。この後、コロナ大恐慌が来るって叫ばれてるわけじゃないですか。そういう中で20年間で247億円っていうなんかまことしやかな数字が出るから、逆に県民は何なのそれ? って思うのは当然です。むしろコロナ危機を経てなおかつこの数字、この旗を降ろさないっていうのは、どういうことなの?

佐藤さん(宮城県企業局次長)

水道事業っていうのは、今回のコロナの中でも、特措法の中でも止めてはいけない事業の一つになっているわけです。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ事務局)

そんなこと言ったって、これを受け取った運営権者が、オリックス? ヴェオリア? わかりませんけど、どういうところが今応募してきてるのか教えてほしいですけど、 潰れないなんて保証は何もないなんてことは、みんな実感しましたよ。

岩崎さん(宮城県企業局技官兼次長)

水道事業というのは、ある程度需要が見込める事業でして、たとえば空港なんて今先が見えないですね。でも水道は違うわけですね。先が見えるわけです。コロナになっても、そんなに何か影響があるわけではありませんので。その点は企業のみなさんは安心持たれてるんじゃないかなと思います。

小川さん (命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ事務局)

水道はライフラインなんだから、むしろ水道と(空港は)比較はできないわけですよ。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ事務局)

やっぱり公共事業としてやるべきだという話になってくる。

佐久間さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表)

今のお話ですが、契約で縛ると。それは必要ですよ。でも、いかに頑張っても、契約が実行できないという事態は山ほどあります。それを私たちは心配している。だから契約で縛っても、事業が失敗して、そして撤退して、引継ぎ業者が出ない。あるいは出たとしても隙間があるという時に、日々の命の水をどうやって供給するのか。この下水道から出る汚水をどうやって処理するのか。そういう心配をしてるわけなんですね。

ですから、今回のコロナという問題で、リーマンショックを超えるだけの世界の経済状況が変動してるわけですね。大きな会社が潰れるということがあるわけです。ですから、そういう意味で、今までも私たちは大いに疑問を持っていましたけども、世界がこれ、変わってるんじゃないかと、そういう認識が民間ではいっぱいあります。ですから行政なんかもですね、是非そういうことで、果たして2年3年後がわからないんですよ、なのに20年間契約で縛るから大丈夫だ、そういう考え方自体がもはや危ういんではないかと、私は思っております。

もう一点ですね、公共の管理とは何かということについて、私たちは去年の台風19号の被害を受けたし、311の被害も受けた。これは(と資料を見せる)皆さんがご担当になったお仕事で、311からいかに災害から復旧したかという記録なんですね。

その中で下水道に関してを見ますと、それこそ国を挙げて支援をしてくれたということですし、民間も協力してくれた。そして、人員も資材も投入してくれたと。そういう中で311から下水道が復旧したという記録なんですね。

これ、私本当に感銘して読んだんですけど、<はじめに>というところで、公営企業管理者の方が述べていることはね、この記録を残した趣旨は何かというと、未曾有の災害から得た教訓を風化させない、まあこれは当然ですね。そうすることで、幾星霜を経て築き上げられてきたライフラインという財産を、確実に次世代に引き渡す。こういうとらえ方です。水道事業、下水道事業、工業用水事業。

こういう教訓のもとで復興を歩んできたということで考えますと、やっぱり引き渡すものは、公共サービスとはどういうものか、どういう担い手が、そして担うことによって県民の命と暮らし・公衆衛生を守れるのか、そういうようなことをもう一回思い起こすべきではないか、というふうに思います。これはまあ、ものの考え方ですけども、これを私たちはぜひ、もう一度みなさま担当されている方々に考えていただきたいと。

それから、やっぱり今後20年間なんて誰も納得できない。それをホントに強く思うことで、みなさん(県の担当の方々は)お笑いになったけど、ホントに20年間特定の会社が存続できますか? 水質を維持して、低廉で安全な水を供給できますか? こういう疑問をみんなに強く持ってもらいたい。それから、こういうことも含めて公開質問状なんで、ご回答いただければと思います。以上でございます。

田代さん(宮城県水道経営課課長)

一点だけ、冒頭、佐久間代表のほうから文書でということで、我々も文書をご用意してご回答申し上げたいと思います。(回答期限は)7月13日というお話をされていましたけれども、我々も努力はいたしますが、もし遅れることもあるかもしれませんので。 6月に議会も始まります。その時はご了承願えればなあと。努力はいたしますが、ご了承願えればなあと思います。

小川さん (命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ事務局)

追加の質問OKですから。追加で、ここわかんないんだけどとか、この表現どういうことですかとか、全然OKですから。

多々良さん(命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ事務局)

今、田代課長おっしゃったように、7月13日に期限設定させてもらったんですけども、それに向けてできれば努力していただくということと、文書で回答いただいたうえで、今日のような意見交換の場はぜひ設けていただきたいと思います。

やはり、有益だと思うんですよね。今日も一時間でしたけども、いろんな意見交換ができて、お互いの理解が深まりますから。あるいはこうやって、報道の方々も大勢来ていただいて、県民にもこのみやぎ型に関する情報がより一層わかりやすく伝わると思いますから、是非こういう場を、回答をいただけた時点で、7月にもう一回持ちたいと思いますので、よろしくお願いします。

ここが知りたい!「みやぎ型」~みやぎ県政だより 本当に重要な問題には触れない特集記事より、 県民の声を聞いてほしい!!

<ここが知りたい!「みやぎ型」>と銘打ち、みやぎ県政だより2020年5・6月号に、みやぎ型管理運営方式の特集記事が、見開き2ページで掲載されました。

みやぎ県政だより2020 5・6月号

ここが知りたい!「みやぎ型」

ここが知りたい!「みやぎ型」

www.pref.miyagi.jp

ではご一緒に、 Q&A の内容を確認していきましょう (^O^)

 Q1 これまでと何が変わるの?

 <契約期間> 4~5年間 ➡ 20年間

4~5年間の契約期間だと、民間事業者従業員の雇用が不安定になり、人材育成が困難だが、20年間の契約期間だと、民間事業者従業員の雇用が安定して、人材育成・技術継承が容易になる。

容易になったからと言って、必ずしも、民間事業者がそれを選択するとは限りません。

非正規などの不安定な従業員雇用を行うか、安い下請け業者に業務を委託したほうが 利益が上がると民間事業者が判断して実行しようとするならば、いったい誰がそれを 止められるのでしょう? 

従業員との雇用契約や下請け業者との契約は民間事業者の自由裁量であり、それを是正させる仕組みは、みやぎ型にはありません。

その結果、人材育成や技術継承がなおざりになり、水質悪化や環境問題、災害対応力の不備が生じたとしても、後の祭りで、もうどうしようもないということにもなりかねません。

<契約する事業の単位>

現在は事業ごと個別に委託しているので、スケールメリットを発揮しづらいが、みやぎ型では対象9事業を一体で契約するので、スケールメリットの効果が拡大する。

均質の素材から単一の商品を大量生産するのならば、確かに、スケールメリットで単価を下げることも可能でしょう。

けれども、そもそも水道というものは、各地域ごとに地形や気候といった非常に多様な自然環境の制約を受け、また、そこに住む人々の生活や文化を背景に営々と築かれて きた歴史に支えられています。水源の水質も場所によってすべて異なります。

そういった地域の実情を把握したうえで、24時間365日、刻々と変化する水質を 見守り、適切に調整していくためには、状況に応じて使用する薬品をきめ細やかに選択していくことも必要です。

スケールメリットを発揮するなどと言って、購入する薬品の種類を絞り、大量発注で 費用を抑えようとすることによって生じるリスクも、充分に考慮すべきです。

<発注の方法>

仕様発注 ➡ 性能発注

現行の仕様発注では、県が浄水場などの運転管理方法などを細かく指定し、民間事業者はそれに従って運転管理などを行っている。

みやぎ型では性能発注になるので、民間事業者が運転管理方法なども工夫して、新技術を導入することが可能になる。水量・水質などの基準は県が指定して、基準を満たしているか確認する。

これまでの仕様発注では、水道水を作る方法も県が細かく指定していましたが、みやぎ型では、水質基準を満たす結果になるのであれば、民間事業者が水道水の作り方を自由に変えてもよくなります。

そうすることによって、民間事業者の創意工夫や技術開発力を発揮してもらうというのです。そのような期待をしてはいけないわけではありません。

けれども、公の水道だからこそ追及されてきた公衆衛生や基本的人権を守るという使命や、現場の水道技術者たちの不断の努力によって培われてきた貴重なノウハウの伝承はどうなるのでしょうか?

宮城県の水道は、私たちの先人たちが、長い年月と膨大な税金を投じ、血と汗で築いてきた県民の大切な財産です。その大切な水道の運営権を、何ら明確な根拠のない、民間事業者への漠とした期待感だけで、手放してしまっても よいのでしょうか?

Q2 「みやぎ型」だと、どうして料金の上昇幅を抑えられるの?

 IoTやAIなどの最新技術を活用した運転管理の効率化による運転コストの削減、また、同種一括契約による機械・電気設備の更新費用の削減や、一括・長期契約による薬品や資材の調達コストの削減など、民間ならではの創意工夫と自由度の高い契約によりコスト削減を期待しています。

これらのことについて、他県の水道施設運転管理者の方から実情を伺ったことがあります。

IoTやAIなどの最新技術と言うと、タブレット端末での管理や遠隔監視システムなどが イメージされますが、 そういった技術開発費や運転管理費は、訳がわからないので民間の言い値だそうです。

機械・電気設備の更新費用も、「『何かあった時、どうするんですか? 私たちに泣きつかれても、助けませんからね』とメーカーに言われると、反論できず、不本意でも、先方の言い値で億単位の契約を結ばされてしまう。メーカーの利益率なんて8割とかザラで、汎用品ではないから、適正な価格がまず知られていない。『他にも安いメーカーあるだろう』と、お客様である公務員が探すくらいの勢いじゃないと。民業圧迫だとは言われそうですが、世論や地域住民は味方してくれると思います。民営化を進めて、 お金を削減する前に、できることは沢山あります」とのことです。

薬品や資材については、「浄水場は利益率が低いので、とにかくケチれる薬品はケチるように言われるのが目に見えてます。 そうなると、水質に影響が出てきます。また、 現場の予算が減らされて、自腹で作業手袋などを購入させられることなどによる、現場の士気の低下。そんなことでしか、利益率を上げられないのです。」とおっしゃっていました。

Q3 民間事業者が利益を求めると料金が上がるのでは?

 民間事業者の募集にあたっては、(中略)20年間の事業費の上限額を設定しており、応募者には、利益を含めた上で上限額以下での事業費を 提案してもらいます。

 また、料金は、対象市町村と調整した上で、県議会での条例改正が必要であり、民間事業者が勝手に料金を上げることはできない仕組みです。

2018年12月に改正された水道法には、「料金が、能率的な経営の下における適正な原価に照らし、健全な経営を確保することができる公正妥当なものであること」(第一四条第二項の一)という条文があります。

民間水道事業者が健全な経営が確保できないと主張すれば、自治体はその値上げ申請を拒否できるだけの明確な論拠を示さない限り、この条文を根拠に値上げに応じざるを得なくなります。 (岸本聡子著「水道、再び公営化!欧州・水の闘いから日本が学ぶこと」p166~167)

miyagi-suidou.hatenablog.com

 みやぎ型では経営審査委員会(仮称)が設置され、運営権を得た民間事業者の経営状況をモニタリングする予定ですが、海外では、イギリスのオフワット(OFWAT:Office of Water Services)など同様の規制機関が効果的に機能しなかったため、再公営化を選択する事例が後を絶ちません。

にもかかわらず、そういった海外の失敗例の轍を踏まないように、経営審査委員会(仮称)を組織するうえでこのような手立てを検討したというようなアナウンスは、現在に至っても全くありません。

「経営審査委員会の設置及び運営に係る条例は,本事業等に係る運営権の設定時を目途に公布・施行することを想定しています。」と、

3月13日に公表された実施契約書(案)の45ページの欄外に書かれているだけです。https://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/780551.pdf

Q4 水質はどうなるの?

 対象市町村に送られる水は、水道法に定められた水質基準より厳しい 現行の水質を満たすことを民間事業者の義務とします。県は、水道法に 基づく水質検査を行うなど、しっかりとモニタリングし、安全性を確認します。   

 下水処理後の放流水についても、現行の水質を維持します。 

東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センター事務局長の小川静治さんは、次のようにおっしゃっています。

県が『みやぎ型になっても、今までやっていることをそのままやってください』と運営権を得た民間事業者に言うのならまだいいんですが、そこは言わないわけですよね。『県の従来のやり方を参考にしてください』的なことしか言わない。それで本当に水質が守れるのかな?という思いは強いです」

同じような不安を感じている県民は少なくないのではないでしょうか。

Q5 災害対応はどうなるの?

 自然災害などが発生した場合は、県は委託業者や市町村など関係機関と連携して対応してきました。「みやぎ型」開始後も、県が主体となり、民間事業者を含めた関係機関と連携し、迅速に対応します。 

今までは、浄水のプロセスを県が細かく指示する仕様発注だったため、災害時にも、 どこでどんな問題が発生し、どう対処すればよいのか、県が把握している情報で迅速な判断ができましたが、みやぎ型で性能発注になると、浄水のプロセスは民間事業者の 自由裁量になりますから、県が情報を把握するには時間がかかってしまいます。

もしも、東日本大震災時の東京電力のように、運営権を得た民間事業者が、責任を問われるのを回避しようと情報を隠蔽したりしたら、対応が非常に困難になってしまいます。

Q6 海外では公営に戻した事例があるって聞いたけど?

 海外では一部で再公営化の事例もあります。「みやぎ型」では、それらの事例を教訓とし、事業計画の妥当性の確認、モニタリング体制の強化、料金の改定方法の明確化などの方策を講じています。

県が教訓としたという海外の事例を、詳細に知らされた県民はどれだけいるのでしょう? ほとんど皆無に近いのではないでしょうか。教訓を得て方策を講じましたと言われても、それでは根拠を示していないのとおんなじことです。

Q7 民間事業者の情報は公表されるの?

 民間事業者が公表すべき情報はあらかじめ県が定めます。民間事業者は、事業計画書や財務諸表、運転管理・水質管理に関する報告書などを定期的に公表しなければなりません。県が行ったモニタリングの結果も定期的に公表します。 

最も問題なのは、県が事業を行っている現在においても、一般の県民はこれらの情報にアクセスするのが困難だということです。 上記の情報を確認できるポータルサイトや 冊子が存在しているのかどうか私自身も知りません。明らかに広報不足だと思います。多くの人が容易に情報にアクセスできる仕組みがないままでは、公表したということにはなりません。

Q8 応募の条件は?

 ①日本法人であること

 ②代表企業は資本金50億円以上であること

 ③一定規模以上の浄水場下水処理場の運転管理業務を3年以上継続して行った実績があること

などを応募の条件とします。

①日本法人であることについては、令和2年2月定例会で大内真理議員が一般質問を行いました。この質疑応答は、多くの県民が吟味すべき内容だったと思いますので、以下にご紹介します。

大内真理県議

条例でいくら縛っても駄目。

国際的に投資家と国家の紛争手続きを定めたのがISD条項で、これ自体が後から追加される可能性が排除されない中で、このことに配慮して海外資本を、SPCの合同会社の中から省くということに何ら支障はないはず。

県民のみなさんの不安の声にこたえるために、海外資本・水メジャーを省くと約束してください。

櫻井公営企業管理者

先ほども答弁した通り、ISD条項いうのは、基本的に投資家の利益を保護するための条項だと理解している。当然今のEPAの中には入っていないが、今後入らないという保証はないと、これも理解している。

しかし、これまでの事例にある通り、ISD条項を適用した中でも政府側が勝った事例がある。それはしっかりとした契約の中でどういう判断をしていくのか、そういったところがまずは求められている。

繰り返しになるが、これについては、海外メジャーも含めて開かれた門戸にしながら、民間の知恵をいただきながら進めていきたい。

大内真理県議

しっかり条例で定めても、あとからISD条項を傘にして、提訴される可能性がある。実際に実例もある。

SPCから外してください。これぐらいも約束できないのか?

櫻井公営企業管理者

基本的には海外企業も含めて、募集要項上は日本法人格を有するものとなっているが、その部分については現在も考えを変えるつもりはない。

Q9 民間事業者を選ぶとき、評価はどうするの?

 法律や会計のほか、水道・下水道に関する専門家などで構成される委員会が、実施体制や災害時の対応、事業費などの項目について評価を行います。その中で、1項目でも現行体制未満だと判断される項目がある場合、その民間事業者は「失格」となります。

この委員会のメンバーは、

3月13日に公表された募集要項https://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/780539.pdf

の34~35ページに表示されています。

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民間事業者を選定するための評価基準については、

優先交渉権者選定基準 https://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/780541.pdf

に詳細が記載されています。
200点満点で、提案項目ごとに委員の得点の平均点を算出して、平均点を合計した ものを、委員会の得点結果とするとのことです。

これについては、お知り合いの宮城県民の方から、次のようなご意見を伺ったことがあります。

「それぞれの委員には専門分野があり、今回評価する11項目の全てに見識と実務経験を有する委員は存在しない全委員が各項目を評価した得点を一律の重みで評価することは、各分野の専門家であるそれぞれ委員の専門的項目についての評価価値内容を生かせない結果になるのではないか?

評価11項目ごとに、配点に重みをつけ『合計点を200点』としていることは評価できるが、その配点理由が不明。とくに、『SDGs』に関する取り組み評価記載がないことは行政機関として不適切。

さらに、各項目で『評価基準』が示されているが、各項目で記載内容にレベル差があるとともに、県が最終的な評価主体者であるにもかかわらず、『県民、利用者及び行政責任者』が求める要求基準を十分満たす評価基準の記述になっているとは言い難い。」

Q10 「みやぎ型」はいつ始まるの?

 3月に民間事業者の募集を開始しました。これから約1年かけて事業を運営してもらう民間事業者を選定します。

 令和3年6月または9月議会において、民間事業者に浄水場などを運営する権利を設定する議案を提案する予定です。可決された場合は、令和4年4月から「みやぎ型」を開始します。

f:id:MRP01:20200506162615j:plain  募集要項28ページ https://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/780539.pdf

ここにも書いてあるとおり、このスケジュールはあくまでも予定です。

県議会で民間事業者に水道事業を運営する権利を設定する議案が可決されない限り、みやぎ型は開始できません。

去年の12月に、「民営化もできるよ」という議決が県議会でされましたが、民営化をしなくちゃいけないと法律で決められたわけではありません。

公営のままでもいいんです。

みなさんはどうお考えでしょう? 

ぜひ周りの方々とお話して、地元の県議さんとも意見交換をなさってください。

そして、多くの人に伝えたい思いがあるのなら、新聞・テレビに電話・FAX・メールを送り、SNSでもどんどん発信していきましょう!

もちろん、担当部署である宮城県の水道経営課にも電話・FAX・メールをして、県民として堂々と意見表明をしましょう!

宮城県水道経営問合せ

www.pref.miyagi.jp

メールフォームから送信するときは、タイトルに「みやぎ型管理運営方式への意見(もしくは質問)について」と記入するのをお忘れなく! 返信が遅くなるそうです (^_^;)

命の水を金儲けの対象にさせないために    「水道、再び公営化! 欧州・水の闘いから日本が学ぶこと」を読む。

大崎市で行われた令和元年度「みやぎ型管理運営方式」に関する県民向け事業説明会では、古川のIさん(仮名)が次のように述べました。

(仮称)経営審査委員会には、専門家だけでなく、素人の市民ね、利用者、住民も入れるべきじゃないか。そういう審査委員会でなければいけないと思うんですが、その辺お聞きしたいと思います。

 

これに対して、緒方昭範企業局次長は 

内容がですね、あまりにも専門的な部分もございますので、どうなのかなあということは考えておりまして。まあ消費団体の方々とかですね、ある程度知識をお持ちの方々について入っていただくことも含めて、今、検討させていただいているところであります。

と答えました。 

専門的なことがわからない住民の意見など、取るに足らないということでしょうか?

けれども、水道事業に問題があった時、日常生活が脅かされたり、時には生命に関わるような事態に直面させられるかもしれない住民が、全く蚊帳の外に置かれたまま、監視やチェックが本当に機能するとはとても思えません

miyagi-suidou.hatenablog.com

3月13日に公表された宮城県上工下水一体官民連携運営事業(みやぎ型管理運営方式)募集要項等にも、(仮称)経営審査委員会のメンバーである専門家等とは、具体的にはどういう人たちで、どういう基準で、誰が選定するのか、明確な記述はありませんでした。

県は今まで、

「諸外国で失敗した水道民営化とみやぎ型管理運営方式は全くちがいます!!

なぜなら、

①運営権者によるモニタリング、

②県によるモニタリング、

③ (仮称)経営審査委員会によるモニタリング

の三段階モニタリングをするからです!!」

と、シンポジウムや出前講座、マスコミを使って喧伝してきたのにもかかわらずです。

内実が何も決まっていないのに、「モニタリングがしっかりできるから大丈夫!!」となぜ断言できるのでしょう?

そもそも、私たち宮城県民は、みやぎ型管理運営方式を 採用したほうがよいかどうかを、県から一度も尋ねられたことがありません。

もう最初から一方的に決められていて、パブコメや説明会で意見を述べても、「県民の意見は聞き置きました」「詳細は決まったら知らせます」と言われるだけで、議論や 決定のプロセスに参加させてもらえません。

 

民営化は、私たちの「水への権利」を奪うものなのだ。このままでは気兼ねなく水を使うということさえも富裕層のための「特権」になってしまうだろう。

(中略)

 欧州の水道事業は、民営化によって問題が山積している。料金の高騰によって、水を飲んだり、使ったりすることを躊躇せざるを得ない「水貧困」世帯も増加してきた。

(「水道、再び公営化! 欧州・水の闘いから日本が学ぶこと」p3~4)

 

岸本聡子

2018年の改正水道法成立後の日本では、こういった事態が決して他人ごとではなくなる、と岸本聡子さんは言います。

改正水道法にはこんな条文がある。

「料金が、能率的な経営の下における適正な原価に照らし、健全な経営を確保することができる公正妥当なものであること」(第一四条第二項の一)

 旧水道法になかった「健全な経営を確保することができる」という一文が追加されたが、このわずかな変更点にこそ、民間事業者が自治体の想定を超える料金値上げを要求できる仕掛けが潜んでいるのだ。

 「健全な経営の確保」とは自治体が要求するレベルの水供給が円滑に行われるだけでなく、運営権者が適正な利潤を確保して存続できる状態も意味するからだ。

 運営権者、すなわち民間水道事業者が健全な経営が確保できないと主張すれば、自治体はその値上げ申請を拒否できるだけの明確な論拠を示さない限り、改正水道法の第一四条第二項の一を根拠に値上げに応じざるを得なくなる。

 運営経費や設備の更新費用さえ確保できれば、利益を必要としない公的事業体と違い、民間の運営権者は株主配当や高額な役員報酬などを水道料金に上乗せしていく。(中略)

 大幅な水道料金引き上げを許す仕掛けが、改正水道法にはひっそりと埋め込まれた。

(「水道、再び公営化! 欧州・水の闘いから日本が学ぶこと」p166~167)

 

では、私たちはどうしたらよいのでしょう?

必要なのは非効率で硬直化した公営サービスでもなく、利潤をむさぼる民営サービスでもない。

(中略)

新自由主義的な企図に抵抗し、公開討論や民主的な選挙を通じて自治体に働きかけ、公共サービスのコントロール権を住民自らの手に取り戻すことである。

(「水道、再び公営化! 欧州・水の闘いから日本が学ぶこと」p180~181)

 

その具体的な事例として、フランス、イギリス、スペインなどのケースが紹介されていますが、私が最も心魅かれるのは、フランス・パリ市の水道公社「オー・ド・パリ」と「パリ水オブザバトリー」のシステムです。

 

 ▶市議が参加する「オー・ド・パリ」理事会

 ガバナンス機能を高めるために、「オー・ド・パリ」には理事会も設置された。

 理事会のメンバーは総勢二〇人。そのうちの一三人はパリ市議が占める(市議を兼ねる副市長三名をふくむ)。市議会の定数は一六三人だから、全市議の一〇パーセント弱が「オー・ド・パリ」に関与する計算だ。(中略)

  ここまでパリ市議会が「オー・ド・パリ」に政治的関与を強めるのは、民営化時代に水メジャーの経営がブラックボックスと化し、監視がほとんど機能しなかったことへの反省があるためだ。

 市議以外の理事会メンバーも重要である。労働者代表が二人、市民組織代表が三人、「オー・ド・パリ」経営幹部がふたりの計七人で、合計二〇人である。これに議決権のない科学者と参加型民主主義の専門家が加わる。

(「水道、再び公営化! 欧州・水の闘いから日本が学ぶこと」p50)

 

▶市民が意見を述べるフォーラム

 また、市民によるガバナンスを強化するため、水フォーラム「パリ水オブザバトリー(観測所)」が設立された。

 この組織はワークショップやイベント開催するだけの単なる市民フォーラムではない。「パリ水オブザバトリー」は市民参加や水利用者の関与を追及する恒久組織として、「オー・ド・パリ」の企業ガバナンスに組み込まれているのだ。パリ市民なら誰でも参加でき、その運営費用として年間一万ユーロ(約一二〇万円)ほどの予算がパリ市議会から拠出される。

 「パリ水オブザバトリー」のもっとも大切な任務は、パリ市と「オー・ド・パリ」が交わした「パフォーマンス契約」の方向性やそのあり方について、 随時意見を述べることだ。

 こうした活動を保障するため、「オー・ド・パリ」は「パリ水オブザバトリー」に対して財務、技術、水道政策などに関するすべての情報を公開しなくてはならない。また理事会メンバーのオブザバトリー総会参加(年四回)が義務づけられ、オブザバトリー代表は「オー・ド・パリ」の理事会で市民組織代表の一席として議決権をもつ。

 意思決定の権限こそないものの、パリ市の水道事業の方向性にお墨付きを与える諮問機関として、水道利用者と「オー・ド・パリ」をつなぐチャンネルとして、さらには水を通じた民主主義が実践されるベースとして、「パリ水オブザバトリー」は欠かせない存在となっている。

(「水道、再び公営化! 欧州・水の闘いから日本が学ぶこと」p51~52)

 

パリ市の人口は約220万人、宮城県の人口は約230万人です。

同程度の人口規模で、このような民主的な仕組みが既に実現されているのです。 

ワクワクしませんか?

私たちも目指しましょうよ! 

みんなに議論が開かれている社会を!

 

 年度単位、いや四半期の決算ごとの利益を追求する民間水道会社が一〇〇年先の環境を守る投資をすることはまずない。

 「オー・ド・パリ」が包括的な地域・流域の水循環管理に乗り出すことができたのは経営陣の理念もさることながら、再公営化で利益の大半を再投資に回せるようになったことが大きい。

 現在、「オー・ド・パリ」の施設投資額は年間で七五〇〇万ユーロ(約九〇億円)、そのほぼすべてを自己資金でまかなっている。持続可能な水道事業という観点からも、利益を惜しみなく再投資に回せる公営水道は理にかなっているのだ。

(「水道、再び公営化! 欧州・水の闘いから日本が学ぶこと」p56)

 

 


 

3・8国際婦人デー東北行動2020      命より金もうけ? そんな社会を変えましょう!  「水道民営化阻止」の声を集めましょう!

2020年3月8日、仙台市市民活動サポートセンター6階セミナ―ホールにて、 3・8国際婦人デー東北行動2020が開催され、講演<「水道民営化阻止」の声を 集めましょう>も行われました。

最初に、国際婦人デー実行委員会の谷康子さんによってアピール文が読まれました。

国際婦人デー東北行動          国際婦人デー実行委員会のアピール文より抜粋

 

命にかかわる公共インフラが、企業へ切り売りされていく先に何が起こるのか?   地方全体、市民の生活の土台をゆるがす歴史的な分岐点にいる私たち宮城県民は、  誰のための民営化なのか? 今後どういう社会を創っていきたいのか?       この原点を決して忘れてはいけないとの訴えです。

 

講演「水道民営化阻止」の声を集めましょう

講師 命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ共同代表 佐久間敬子弁護士

 

 

宮城県の水道民営化

      「水道民営化阻止」のために 佐久間敬子氏作成レジュメより

 

ご存知のように、日本全国の水道事業は大変大きな問題を抱えている。

水があまり使われなくなってしまい、水道事業がなかなか儲からなくなっている。人口が減って、節水意識が高まっているので、水道事業の収益が上がらない。一方、水道の装置はここ30~40年ぐらいで整備されてきて、古いものは40年ぐらい使っている。その設備の更新に莫大な費用がかかる。さて、どうしよう?

宮城県の場合、水道事業の収益は、現在150億あるが、20年後には10億減って 140億になってしまうだろうとのこと。そして、水道管等の補修の費用が、1960億円もかかる。さあ、困った。この費用が出せなくなるんじゃないか。

村井知事は、「この難問を取り除くためには、民間の力を借りたコンセッション方式でやるしかない」と考えた。民間に任せると、コストが247億円も削減できる。

この民営化を進めるために、昨年の12月17日の県議会で条例が改正された。本来ならば水道事業は公営企業しかできないが、これを民間ができるようにするという条例の「改悪」改定。県議会の59人の議員中、賛成が39、反対が19ということで、かなりの多数で可決された。

この民営化を進める基本になる法律はPFI法という。「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」。等が3つもあるややこしい法律で、この法律に則って宮城県の条例が改定され、民営化が実行できるようになった。

県はこの2年間で民営化を進めていくということなので、2022年の4月ころには、民間の企業が運営する上工下水道事業が始まる。今後2年間で、正式に議会がこれについて意見を述べることができるのは、1回だけ。運営権設定契約という民間に公営企業体が運営権をお任せする契約をする段階で1回しか、法律上は求められていない。

このコンセッションというのは、民間の事業のやり方。民間は、相対で様々な交渉や妥協の結果として契約に至るということが、当たり前になっている。そういう進行の過程なり道筋が、県民にも県議会にもなかなか明らかにならないため、住民の関与の度合いが著しく低い。そういう意味で、公営事業を民間に任せるのはどうかという根本の問題がある。

最終的な結論を出すときにだけは、議会が関与できる。こういうような事業な進め方について、住民に情報開示しないで、住民の意見を取らないで、重大な物事を決めるというのは、非常におかしいんじゃないか、と折に触れて言ってきた。ところが、「いや、民営化というのはそういうものなんだよ。それがコンセッションなんだよ」というのが、この事業を担当している方からの答えだった。

宮城県の上工下一体の民営化は、全国初のもの。浜松で下水道のコンセッションが始まって一年経っているが、上水道だけでなく、工業用水道、下水道3つの水道事業を全部一体として民間に任せるというのは、日本で初めて。知事はモデルケースと言う。河北新報は実験台だと報道する。さて、どちらに転ぶのか。

浜松は市長が上水道も民営化したいと試みたが、市民の理解が進まないということで凍結している。この宮城の動きを力として、浜松も凍結したものを解除して、念願の上水道のコンセッションをまた始めるのではないかと言われている。水道事業の苦境にあえいで困っている全国の自治体にも、民営化の弾みをつけることになりはしないか。

 

みやぎ型

みやぎ型

      「水道民営化阻止」のために 佐久間敬子氏作成レジュメより

 

水道事業の変革と言って、さかんにみやぎ型と言うが、公が持っている権利を民間に委譲する、運営権を民間に移譲するコンセッションのこと。村井知事は、「民営化という間違った印象を振りまくな」と言っているが、民間に運営権を丸投げするのは、まさに民営化だ。

今までも、指定管理者とか業務委託とか、民間にいろいろ仕事をお願いするというのはあった。このPFIという事業も、いろんなバラエティーがあったが、今回コンセッションというのを生み出したことによって、民間にとって大きなメリットが生じた。それは、民間がリスクと厄介で高額な負担をすることなく、運営権を入手できる仕組みだ。このコンセッションの進化型、極めつけがみやぎ型

水道事業は膨大な装置産業で、これを全部民間が買い取るとなると、膨大なお金がかかるし、水道管の補修費も莫大なお金がかかる。そして、災害の時に対応しなければならないということで、業務の量が非常に増える。民間にとってはリスクが大きい。こういうリスクを引き受けないで、運営権の利益の上がるところだけを任せられる仕組みがみやぎ型である。

村井知事は、なかなかコンセッションが進んでいかない中で、民間が「負担が大きい、危険が大きい」と二の足を踏んでいるところに解決策を持ち込んで、民間の力を呼び込むということで、法律の改正を強く働きかけた。

公共インフラの民営化は、1980年代以降「大きな政府から小さな政府へ」、新自由主義の流れということで、ヨーロッパで始まった。

日本では「官から民へ」。官というのは、非常に怠惰で、非効率で、コストが高くて マンネリだ。民間は、非常にコストパフォーマンスがいい、質が高い、チャレンジ精神があふれている。こういう民間にお願いしようという流れが、小泉・竹中改革あたり から出てきた。それが今は、国内だけにとどまらず国境を越えて、多国籍企業が利益を追求するために、外国の公共インフラに乗り出してきている。「官から民へ」の「民」とは、私たちのような真面目で慎ましい市民ではない。巨大な利益を上げている大企業、しかも多国籍、これが「民」。

世界で始まっている「官から民へ」、あるいは新自由主義の流れの一つの段階として、今お話しているPFIという事業の方法が、各国の公共施設の中に取り入れられている。PFIというのは、プライベート・ファイナンス・イニシアティヴ、民間の財政を先導して公の事業をやってもらう。PPPというのは、パブリック・プライベート・パートナーシップ、公と民間が手を携えて困っている公共インフラの立て直しをするという印象がある。

この後だんだん、公共と民間の境目がわからなくなる、曖昧になるということが発生し、その結果、いろいろな不祥事が起きたため、PFIの先進国イギリスの労働党会計検査院は、「今後PFIは採用しない」と言っている。

尾林芳匡弁護士がまとめたPFIの失敗事例では、仙台松森PFI天井崩落事故や病院の経営で大失敗したり、コンテナターミナルの経営破綻など、再度公営に戻っている少なくない例が日本でもある。

 

         特定非営利活動法人AMネットのリーフレット

 

水道民営化反対         特定非営利活動法人AMネットのリーフレット

 

am-net.seesaa.net

 

PFIを反省する時代」に入った「PFI先進国」イギリス 。

2018年1月、PFI請負企業でありイギリス第2の巨大建設会社「カリリオン」が破綻。病院や学校・図書館・刑務所といった、様々な公共サービスに影響が出た。

PFI先進国のイギリスでは、すでにPFIに大きな欠陥があるとの見方が主流。「リスクは行政に、利益は民間に」と国際的に批判される。

このように先進国はすっかりこりて、PFIから転換をしているのに、宮城県は、「全国第一のモデルになるんだ」と水道事業の民営化を始めている。

国会の審議の中で、山本太郎さんが「水道の民営化は周回遅れの愚策だ」と非常に鋭く追及したが、「なんで宮城で?」という疑問がある。やはり知事の個性というのが、 かなり影響しているんだろうなと思う。水産特区という形で、水産業を一部開放して、仙台空港も民営化を成し遂げた、と知事は大変自慢している。こういう自信のもと、 水道事業の民営化もということになった。知事の今任期の最大の目玉政策は、原発も あるが、水道事業の民営化だ。

水道や下水道という公共のインフラは、果たしてどれぐらい企業が狙う価値があるのか? 

福田隆之     コンセッションの概要と最新動向 講演資料 2014年11月19日

コンセッションの概要と最新動向 講演資料  https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000067559.pdf厚生労働省HPより)

 

2014年に厚労省で福田隆之さんという方が講演した時の資料によると、主要公営 インフラの料金収入は、水道が一番大きく2.7兆円。下水道は1.4兆円。空港や公営交通はずっと低い金額。主要公営インフラの資産規模は、水道が31.9兆円、下水道が65.5兆円で、他のものよりダントツだ。日本の上下水道は、最大の公営のインフラである。

前の県議会で共産党の遠藤いく子さんが質問して、宮城県の水道の価値は3500億円ということだった。この民営化に貢献したのが、菅官房長官の懐刀と言われたこの福田隆之補佐官だが、2018年に水道法が「改悪」される直前に辞めた。フランスに行ってヴェオリアから不穏当な接待を受けたと騒がれたため。この福田氏はPFIやPPP導入の旗振り役をしていて、以前は新日本監査法人に勤めていた。2011年5月に、村井知事、外相辞任直後の前原誠司氏とともに、仙台空港と水道事業の民営化を提案している。

 

みやぎ型に対する疑問

みやぎ型に対する疑問

      「水道民営化阻止」のために 佐久間敬子氏作成レジュメより


民間に任せるとコストが247億円削減できるというが、果たしてどういう根拠なのか? 

コスト削減の算定方法であるVFM(バリュー・フォー・マネー)のための市場調査で、関係する企業35社に、監査法人が聞き取り調査を2回したが、実証的なデータを積算して出したというものではなく、「このくらいはだいたい削減できるんじゃないかな」という期待値、そう願っているという感じのものだった。

 

各費目の削減期待値   東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センター事務局長 小川静治氏作成資料


企業からの回答は、人件費は10~20%、20~30%、50%削減とばらついていて、薬品費は5%いけばいい方、維持管理費は5~10%、8%、10~20%とばらつく。動力費・修繕費・テレメーター費・管理経費・建設改良費は、削減率を回答した企業はなかった。

水道は命の水、そして公衆衛生に関わる。昔は水が汚染されてとんでもない健康被害を起こしたし、外国では鉛被害とかもあって、命と健康に直結しているし、水産業・養殖業といった産業にも影響するので、水質の保持・維持が大切。

これを要求水準ということで県が設定することになっているが、水質について水道事業に関わっている技術者の方々が非常に心配しているのは、本当にこれまでと同じような良い水質が維持できるのだろうかということ。

今、県も市も、「この時点で、こういう薬品をこれだけ、何日おきに入れて水質を守っていく」というホントに事細かなことが決められていて、これを仕様発注と言う。ところが、みやぎ型では性能発注というのに切り替わる。性能発注というのは「結果としてこのような水質基準を満たすことができればいいよ」ということ。水を作る過程については、「こういう方法で、これだけの回数、こういうふうにしてやれ」ということは 言わない。「結果良ければ、良し」という形になる。

今は、事細かく測定の場所とか頻度とか報告をしているが、こういうことがかなりいい加減にされるのではないか。たまたま出てきた水が良ければ良しになって、実は周りを測ったら悪かった、三日後測ったらもっと悪くなったということにならないか。

設備の点検・維持というのも、非常にこまめにやっている。水道事業がどういうものかということで、何回か県と市の講義を聞いたが、こんなにも、日々丹念に、各技術者が現場に張り付いてやってるんだ、と。これも、点検の頻度を減らしたりして、一回で終わらせるということもできる。

この要求水準というものを、どれだけ確実に、詳細なものを提示して、守らせるかということが重要になるが、県はこれについては3月13日に公表する。この要求水準が どの程度のものなのかの先例は、浜松の下水道にあるが、非常に大雑把で入ってくる水の水質については3項目、浄化して出ていく水については4項目。宮城は、日本で初めてのモデルケースである浜松の例を大いに学んでいる。浜松よりもっと工夫したというのが宮城県の担当者の自慢。この浜松の要求水準よりも上回るものが出てくるかどうか? たぶん無理だろう。

それから、モニタリングというのがある。各水質や設備などの点検をちゃんとやれるか? 今回の民営化では、運営権者、県、第三者機関の三重のモニタリングをするという。果たしてそれがきちんとできるのだろうか。

県が公営企業としてやっているときは、こういう過程の情報はオープンで、刻一刻と、膨大な情報がインターネット上に開示されている。ただ、企業が関与してくることになると、企業秘密にかかわるものは開示はしないだろう。

 

情報開示ができるか? 

モニタリングがちゃんとやれるか?

削減率はホントに根拠があるのか? 

水質は守られるのか?

 

水道 再公営化 海外事例

      「水道民営化阻止」のために 佐久間敬子氏作成レジュメより

 

海外では、民間に任せてから事業を再公営化したという事例は、2017年段階で32カ国267件ある。料金が上がったり、水質が悪化したりという問題があってのこと。

「一回民間でやってみて、ダメだったら、元に戻したらいいんじゃないの」という意見もあるが、それは難しい。民間企業との契約の中で途中解約時の違約金の定めがあったり、違約金の支払いができないということがある。外国資本が乗り出してきて、たとえば、コンセッションを認める法律をまた元に戻して公営でしかやれなくした場合に、「コンセッションができると思ってはるばる海外から出てきた投資家の利益を損なうものだ。本来ならば獲得できたはずである利益を賠償しろ」というISDS条項が、多国間の貿易協定にあり、そういうことにもなりかねない。

そして、20年経つと、水道の技術を知識と体験で身をもって知っている技術者がいなくなる。いざという場合に、素人で右往左往することになり、再公営化がとても難しくなってしまう。

 

命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ

      「水道民営化阻止」のために 佐久間敬子氏作成レジュメより

 

私たち命の水を守る市民ネットワーク・みやぎが、水道民営化の問題点として訴えてきたこと。

1.料金高騰

いろんな所で料金が上がっているという実例がある。公営でも上がるかもしれないが、民間だから安くなるという保証はどこにもない。パリは265%水道料金が上がった。

2.水質悪化ー要求水準、モニタリングの実効性に疑問

水質がすごく悪化した例が外国にはある。ピッツバーグの鉛汚染など。

3.災害対応

災害対応がうまくできるか? 日本はここ2~3年災害大国になった。

この前の台風19号でも、河北新報の連載記事によると、水道技術者が寝ないでずっと現場に張り付いて、水を被った設備を変に動かすとショートして火事のもとになるので、そういう知識や経験を活かして、何とかあまり長い時間をかけないで復旧にこぎつけた。それは公営企業だからできる話。これから一層災害が増えてきた場合、果たして民間の人たちが公営と同じように必死になってやってくれるか? 

自治体間の協力もある。3.11の時も、各地の水道の担当部署の人が来てくれて、水を供給してくれた。あんなことが民営でできるのだろうかという不安がある。

4.公共部門の現場技術の伝承不可、技術者枯渇

5.情報不開示

情報がどこまで開示されるのか?

6.民間企業の撤退・破綻のリスク

怖いのは、民間企業が破産したらどうなるのか。県は「引き継ぎをする相手をちゃんと決めておくようにと契約に入れる」と言うが、破産というのはそんな生易しい話じゃない。何も後始末ができないから破産しちゃうわけで、机上の話はやめてほしい。

7.命の水・公衆衛生にかかる水道事業は公共で

世界の中でこれだけ豊かな水があって、蛇口をひねれば水が飲めるというのは世界に10か国ぐらいしかない。日本はそういう貴重な水の国だが、地形も水道管を取り巻く環境もそれぞれ地域によってそ個々バラバラで、一つの方式で決められるというわけではない。その水道に依拠する地域の住民が、地域の特殊性をよくわかって、水道事業をどうしていくかということを考えないといけない。

水道のことを考えるということは、自治を考えること。

日本は、明治の時代からずっと、水道は公営企業でやってきた。一時、明治の時代に、民間に任せたらどうかという意見も出たが、当時の議会は「駄目だ」「水は公衆衛生に関わる問題で、民間に任せるようなものではない」と言って止めさせた。そういう貴重な伝統が日本にはある。

8.地域、流域の住民が関与して持続可能な水道事業に

宮城の水は非常に豊富できれいであると言われている。そういう私たちの地域財産を、もう一度勉強し直して、水道事業を考えていく必要がある。

9.公共サービス基本法、国連の「水は人権」宣言(2010・7)を学ぶ

www.shugiin.go.jp

水と人権 – 国際法学会 "JSIL" Japanese Society of International Law

 

命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ

命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ

      「水道民営化阻止」のために 佐久間敬子氏作成レジュメより

 

昨年12月17日に民営化を許す条例の改定ができてしまったが、私たちは、議会に「拙速な審議はやめて継続審議にしてほしい」という要請を出して、これに対する賛同者316筆を得た。いろんな人から賛同していただき、特に生産現場にいる業者さん、歯医者さんが賛同してくださった。

私が建設企業委員会で参考人として意見を述べた時、自民党の委員から「これは民営化を許すという条例ではない。それでもあなたは反対するんですか?」と聞かれた。

自民党は)「コンセッションありき、民営化ありき」できているのに、そういう質問をしてきたので、「そうです。コンセッションありきではなく、もっと幅広く水道事業の問題点を考えるというスタンスであっていいんじゃないですか」と答えた。

この条例が通ったからと言って、コンセッションが決まったわけではないんだというのは、与党もよくわかっている。

 

今後の水道民営化反対運動

      「水道民営化阻止」のために 佐久間敬子氏作成レジュメより

 注)「宮城県の水道民営化問題」は、フェイスブックではなく、はてなブログです。

私たちは、今後2年間で実現する民営化について、いろんな節目節目で意見を述べて、みなさんに行動提起をし、お願いしていく。

当面は、3月13日に公表される募集要項について分析し、意見を言っていく。

県の水道事業というのは、県の35市町村の中の25に水を卸売りしているので、市町村は消費者。この消費者である市町村を受水市町村と言うが、何も知らされていない。県からきちんとした説明を受けていない。

市町村の方から様々な質問書が出ているが、それについても、「後からね~」と言って県は答えていない。各受水市町村ごとに、首長さんや議会でこの問題をよく議論して、住民を交えて、不安なこと、わからないことを徹底的に県に説明させることが必要。

 

県は「コンセッションしかない」ということで突っ走ってきているが、お隣の岩手では違った方法で問題を解決している。岩手中部水道企業団というところで、水道の領域を広げる広域化と、高度経済成長期にダムや浄水場を散々作って過大になった水道設備を除去するダウンサイジングを実現して、統合から4年間で約76億円の投資を削減している。(参考:岩手中部水道企業団の年間料金収入は46億円)これは公営である。

私たち県民の最大の防波堤は、この問題で大変活躍している内田聖子さんが「地域主権自治」で述べているように、水の問題に取り組むということは、

① 自治を取り戻す

② 公共性を再評価し拡充する

③ 限られた公共財(コモンズ)としての水を大切にし、分かち合う

ということだ。

私たちが地域の主権者たる住民として、私たちの水を守っていく、そういう地域主権の確立と自治を守る場だと内田さんはおっしゃっている。

 

会場からの質問

「民営化に決まったことになったんじゃないですか? 新聞やテレビを見ると。民営化になることになったんじゃないですか?」

 

佐久間弁護士の答え

「現実はそういうことになってるんでしょうが、法律と現実は、またギャップがある。法律は『民営化もできるよ』ということで、公営のままでもいいんです。

さっきも申し上げましたが、『これで民営化するわけではないのに、反対ですか?』と、条例案の審議の席で言われたんですけど、理屈はそうです。ただ、(自民党は)民営化ありきで進めるので、二枚舌ですね。

私たちはこれで今後2年間で民営化を進めていくと思ってますが、ただし、民営化をしなくちゃいけないと法律で決められたわけではないです。そこが私たちがこれから頑張っていく最大の拠り所になるということです。

現実の力を、どうやってもう一度押し戻していくかといことで、県民のみなさん、12月の議会では野党のみなさんがすごく頑張ってくださったので、そういう方々と力を合わせて、『まだ決まってないんだ!』というのが、こちら側の最大の謳い文句です。 だって与党のみなさんがそう言ったんですから。

民営化しなくちゃいけないと決まったわけではないので、それを押し通すということですが、ただ、民営化の意味はだんだん強まっていきますよね。様々な契約交渉に入っていくと、それを変えていくのはなかなか難しくなるかもしれませんから。今後の2年間の運動は、これは厳しいです。

一番の問題は、県民のみなさんがどこまでわかっているか。これまで私たちが盛んに言ってきたのは、『県民のみなさんにどういう説明をしたんですか? みなさん理解してますか?』ということです。県は、説明が足りないということを認めていて、説明不足を突かれるのを非常に嫌がっています。

12月17日に条例が変わったが、今年になってからも、大崎と白石で県民説明会をやっている。県は、『これからも、できるだけ県民のみなさんに安心していただくように、説明会やります。出前講座をご希望なら言ってください。どこにでも行きますから』と言ってます。皆さんも是非、『出前講座やってくれ』と言ってください。

削減額というのはホントに根拠がある話か、水質の維持がホントに守られるかどうか、民間でやった場合に、公営でやるよりも、もっともっとお金がかかる。株主の配当、 役員の報酬、公の場合はお金を借りるとき低利融資と言って安い金利で借りられるが、民間は普通の民間の金融機関から借りるわけだから、金利がそれなりに高くなる。

今まで県だけでやってきたモニタリングを、運営権者・県・第三者機関でやるお金は、どこから出るの? 民間の方がずっとコストが安くなるというのは、果たしてそうかな? と首をかしげます」

 

  

水道民営化阻止